1-1
ーーライゼ・レイノルズ。
彼は人助けの奴隷だ。しかし、”英雄”でもある。
(『グランフェルラン王国』より抜粋。 レティシア・グランフェルデン著)
*
手の感触が未だに良く伝わってきて気持ち悪い。
ぬちゃとした感じ。
しっかり質量を持っている短剣。
それを使って死体の狼から肉を取っていく。
『食える物は焼いて食え』
今、僕は師匠の教えを実行していた。
おおよその作業が終わり、自分の体を見る。
愛用の武器は魔導銃。
振り回しが良く、標準を定めて引き金を引くだけだ。
左腕で腰から魔導銃を取り出す事が出来るようにしている。
かなり人見知りで、影でこそこそ動くスタイルの僕に合う武器だ。
それを使って狼を狙撃した。
たまに気づかれて、襲われる時もある。
その時は腰に有るショートソードを抜き、左腕に取り付けているバックラーも併せて戦う。
もちろん、怪我もする。
せっかく金を貯めて買った鎧もへこんだ。
まぁそんなことで落ち込んでも仕方ない。
腹が鳴る。
先ほど落ち葉を集めて火を付けておいた。
採れた骨付き肉を、燃え上がる炎の傍に置いた。
本日二度目の腹鳴り。
あぁ、早く食いたい。
そうだ。リュックの中身を確認しながら待つことにしよう。すぐに寝れるように寝袋を出しておこう。それと弓と矢の位置も確認しよう。
陽が落ち、暗くなる。
だんだん寒くなってきた。
そろそろ焼いた肉を食える頃かな?
漂う匂いが腹を刺激する。
おっと、だよれが出てきた。
よし、もういいかな。
熱くなった肉付き骨を慎重に持ち上げて、豪快に喰らう。
おお、予想はしたけど、おいしい。
あっという間に肉が腹に消えてしまった。
まだ眠たくならないので、いつもの持ち物点検で時間を潰す。
毎日の積み重ねが大切だと思うと、つい点検に余計な力が入ってしまう。
ふと、空を見上げると、無数の輝く星が見えた。
幸いにも彗星に遭遇した。
だが、彼方に飛んでいき、消えてゆく。
呆然と眺めてた後、欠伸をした。
「いつになったら、故郷に戻れるんだろう・・・・。はぁ、よし、寝るか」
火をそのままに、魔物避けの匂い箱を傍に置いて。
肩まで寝袋で覆い、寝始めた。