死神と契約書 番外編⑤.5―星に願いを―
私は雨が降る丘に立っていた。
ここは毎年同じ日に雨が降る。これが偶然なのかどうか確かめに来たわけだが、どうやら偶然ではないことがわかった。
―契約によるもの―
全くもって面倒な契約をしてくれたものだ。
このことはある人間の女性が思念が私に教えてくれた。7月7日にこの場所の晴れを願うその想いが私に届いた。
私は、まずこの契約について調べてみることにした。契約を破棄するには大きな力が必要になるからだ。契約状態には大きく3つの状態がある。契約して願いが実行前の状態、願いが継続中の場合、そして願いは果たされた状態の3つだ。前の2つの場合は、破棄するために大きな力が必要となる。
契約の内容はこうだった。
契約者は、この近くに住んでいた老人男性。亡くなった妻が大好きだった花育てていたが、体調を崩し水をやることができずに花は無残にも枯れてしまった。―1日水やりを欠かしたくらいで枯れてしまうとは思えないが…。本人が原因をそう思い込んでしまったのだろう―その日が7月7日。老人の妻の誕生日でもあるらしい。妻の誕生日に妻の大好きだった花を見ることが毎年の楽しみだったのだろう。そこにつけこんだ死神の契約により、毎年7月7日に雨を降らす契約がなされたが、老人はその花を見ることはなかった。契約による寿命を使ってしまったためだ。
それから数年経ち、その花は、今年から市の植物園が引き取ったそうだ。これは余談だが、植物園に引き取ることに尽力したのは、その植物園に務める彼の息子のおかげだということだ。それまでの花の手入れも彼がしていたらしい。
これでこれから先、花は咲き続けるだろう。つまり本当の願いが果たされた今、この契約は満了ということになる。
「特に労する必要はなかったな」
そう小さく呟くと、ここに来るだろう人物を待つことにした。暫くすると遠くから足音が聞こえてきた。
足音の主は近くまで来ると私に話しかけた。
「ひょっとして私の願いを叶えてくれたんですか?」
「雨を止ます…か?私は何もしていない」
「でも、彼に会えました」
「それは、よかったじゃないか」
「はい」
「私は何もしていない。それだけ伝えに来ただけだ」
「それでも、ありがとうございました」
「来年は晴れるといいな」
「はい」
そして、私は丘をあとにした