ふらんべるじゅ、だいえんじょう
「キッキキー!!!」
ひょろ長い褐色の男が人の居ない狭い路地を、壁を蹴りながら縦横無尽にナイフで襲い掛かる。
「やあああああ!!!」
そうすることで出来る隙を、亜麻色の髪の騎士が的確について攻撃を加える。
「おっと、危ないな」
それを群青の英雄はセリフとは裏腹に危なげなく避けていく。
ジンはまだ、剣も魔法も攻撃に用いていない。
だが、それは単に余裕なのだからではなかった。
「しゃああ!!」
「ちっ」
ジンに対して、あり得ない方向からナイフが飛んでくる。
その刃は防がなければ確実に命を奪う上に、突如現れるためにジンは防御に回らざるを得ない。
しかも、一度現れた刃はずっと飛び続け、次々とジンに襲い掛かっていく。
「はああああ!!!」
「うおっ!?」
おまけに防御で脚を止めればそこを狙って確実にシャインが攻撃を仕掛けてくるため、全く気が抜けない。
「ちぃぃぃぃぃ!!」
ジンは二人を体内の気を解放することで弾き飛ばすと、一気に距離をとった。
すると、それを追いかける様にナイフが飛んでいく。
「“火炎弾幕”!!」
飛んでくるナイフを、ジンは魔法で撃ち落とす。
魔法が直撃したナイフは高い音を立てて地面に落ちた。
「キキッ、どうだぁ? キサマが言うお粗末な奴に手も足も出ない気分はぁ!?」
「……暗殺の奇術師とは良く言ったものだな。いつの間にこんなにマジックアイテム仕込んだ?」
「キキッ、イッツァシークレット!! 教える訳ナッシン!! さぁあ、いつまでチミは避けていられるかな?」
クルードはそう言いながら手を振ると、落ちていたナイフが再び宙に浮かび、景色に溶け込んだ。
気配のない暗殺道具に、ジンは意識を集中させる。
「……その余裕、いつまでもつかな?」
ジンはそう言うと、手にした大剣の構えを解き、手をだらりと下に下げた。
クルードは背中に寒いものを感じ、攻撃を躊躇する。
ジンが何を考えているか分からないのだ。
かつて、クルードは何度もジンのことを襲撃していた。
そのたびに返り討ちにされ、クルードは敗北の味をかみしめて日々を生きてきた。
絶対的優位に立ったと思っても、気が付いた時には相手の手の中に居る。
それが、ジンの敵として最も恐ろしい部分であった。
そして今、自分は間違いなく相手の手の中に居る。
それに気が付いた瞬間、クルードの思考に一瞬の空白が出来た。
「……クルード!!」
「遅い!!」
「キイ!?」
その隙をジンは見逃さなかった。
シャインが守りに行くよりも早く、ジンはクルードに斬り掛った。
クルードはかろうじて身をよじって斬撃を躱す。
……シャインが声をかけなければ、クルードは一刀両断されていた。
「はあああああああ!!!」
「おおっと」
クルードに追撃をかけようとするジンに対して、シャインは猛攻撃を仕掛けてそれを阻止する。
ジンはシャインの攻撃を受け、大きく後ろに後退する。
「……ちっ、避けやがったか」
ジンは舌打ちと共にクルードを見た。
その起き上がろうとするクルードを守るように、シャインはジンとクルードの間に立って剣と盾を構える。
「……あれは、ハッタリ?」
「あ~、ハッタリと言えばそうとも言えるな。実際、そうなるように誘導していた訳だからな」
シャインの問いに、ジンは余裕の表情を浮かべて答える。
それを聞きながら、クルードは歯を軋ませた。
それに対して、ジンは話を続けた。
「……だが流石だぜ、クルード。あの状況で俺に攻撃をしていたら、間違いなくお前を仕留められたんだがな」
少しあからさま過ぎたか、と言いながらジンは苦笑した。
「キ、キッサマ~……」
「……落ち着く、クルード。ここは一度退いて体勢を立て直すべき」
策が破られたクルードは憤怒に顔をゆがめてジンを見る。
そのクルードをシャインは押しとどめ、退却をしようとする。
「……おおっと、そうは問屋がおろさへんで」
「……!?」
「キッ!?」
すると突然シャイン達の退路に一人の男が現れた。
男はよれよれのジーンズとワイシャツを着て、その上から白衣を着用した黒髪の男だった。
「おいリカルド。お前、何でここに居るんだ?」
ジンがそう訊ねると、リカルドは咥えていた煙草を手に取り、煙を吐き出した。
「な~に、ちぃとばかりオドレに渡した薬の中に発信器を潜り込ましてん。そんでもって何やら妙ちくりんなとこ行きおるさかい、おかしいと思って来てみれば、案の定って奴や」
「……何でそんなことしたんだ?」
「オドレのことや、どうせ何か余計なことをして面倒なことになるやろうなと思うてな……ちったぁ学習せんかい、このドアホ!!」
呆れ果てた表情でリカルドはジンのことを見た。
そんな中、放置されていたクルードがリカルドに対して怒鳴りだした。
「キッキー!! おい、そこのヤブ・ドクター!! さっさと退かないと、お前の命ジ・エンド!!」
そう叫ぶクルードに対し、リカルドは冷笑を持って答えた。
「ハッ、何言うてはるんや、オドレは。ワイの首を取るより、オドレの首が取れることを心配しいや。大体、オドレ等の様な輩が居るとおちおち寝てもられへんねん。せやさかい、オドレ等の命運、ワイ等がここで断ち切ったるわ」
「キャーッ、リカルドさんカッコイイ♪」
「茶化すなドアホ!! オドレのドタマもぶち抜いたろか、ワレ!!」
ジン、全ての空気を台無しにする。
そんなジンに対して、リカルドは顔を真っ赤にしてジンに対してキレた。
「……退かないなら、斬る!!」
そんなリカルドに対し、シャインが斬り掛った。
「……ふっ!!」
「……っ!?」
リカルドはその斬撃を脚で蹴って軌道を逸らし、自らの後方に白衣から取り出した試験管を投げた。
すると着弾点から勢いよく火の手が上がり、クルード達の逃げ道をふさいだ。
それを確認すると、リカルドは素早くジンの所に移動した。
「さて、これでもうオドレ等に逃げ場は無いで?」
リカルドはそう言うと吸い切った煙草を捨て、新しい煙草に火をつけた。
それを受けて、クルードは頭を掻きむしった。
「ッキーッ!! 何でどしてホワイ!? 何でこうもたかがヤブ医者一人に……」
「阿呆。医者が戦えん何ぞ誰が決めた?」
リカルドは挑発するように、紫煙を吐きながらクルードにそう言った。
ジンはそんなリカルドに話しかけた。
「リカルド、戦えるのか?」
「ま、後方支援くらいならな。昔取った杵柄や、心配せえへんでも死なん程度には戦えるわ」
「そうかい、そいつは頼もしいな」
ジンとリカルドはそう言って笑いあった。
一方、クルードとシャインはそんな二人を冷静に見つめ、出方を窺っていた。
「……どうする、クルード」
「……キキッ、要は後ろの火柱をリリーフすればオールOK!! ヤブ医者殺して火が消えるまでサバイブすれば俺様達の勝利!!」
「……転移のナイフは使わないの?」
「そんなん使う暇ナッシング!! そのためにもあのヤブをヒッティング!!」
「……分かった」
クルード達はリカルドに的を絞って攻撃を加えることにした。
クルードは使えるナイフ達を入念にチェックし、シャインはどの方角から攻撃が来ても良いように身構える。
「「「「…………」」」」
両者ともに、無言で相手を見る。
そして、どちらからともなく動き出す。
「“火蜥蜴の尾”!!」
「“光剣撃”!!」
走りながら炎の鞭を繰り出すジンに、光によって長さを増した剣を叩きつけるシャイン。
二つの魔法はぶつかり合って打ち消し合う。
「おおおおおおお!!」
「はああああああ!!」
今度は魔法ではなく、気を込めた剣同士で斬り合う。
ジンが大剣で斬りつければ、シャインは盾で払って反撃する。
シャインが片手剣で隙を狙えば、ジンは別方向からの魔法で応戦する。
路地の中心は激戦となった。
一方、その横ではリカルドとクルードによる投擲合戦が行われていた。
「シャ、ハァ!!!」
クルードが投げているのは投げナイフ。
大きさや形状の違うそれらは、その違いによって様々な軌道や速度で飛んでいき、ジンやリカルドの動きを限定していく。
またそのナイフは手元に戻ってくるマジックアイテムとしての性質ももち、弾切れの心配は皆無であった。
「ふっ、ふっ!!」
一方、リカルドが投げているのは特殊な薬品が入った試験管。
その中身は触れたものを一瞬で凍らせる薬品であったり、先ほど用いた火薬であったり、様々な薬品が入っている。
それは、地面を凍らせ、火柱を上げ、確実にクルードやシャインの行動範囲を奪っていた。
「ジン!!」
「ああ!!」
その最中、ジンに対してリカルドが注射器を投げた。
注射器はジンの首筋に突き刺さり、薬剤を注入していく。
「……っ!?」
「でやああああああ!!」
シャインは寒気を覚え、直感的にジンから身を引いた。
そこに、ジンが振り下ろした剣が突きささる。
すると、剣が刺さった地面が爆発した。
「……どうや、調子は?」
「まあ問題は無い。いつも通り力が有り余って困るってくらいだな」
「なるほど、そりゃ問題ないな。時間はいつもどおり5分や。さっさと片付けたれ」
唖然としているクルード達の前で、ジンとリカルドは悠然と会話を交わした。
先ほどリカルドがジンに投与した薬は、体内の気の総量と出力を挙げる薬である。
これによって、わざわざ気を込めずとも気を込めたのと同様の攻撃が出来るようになるのだ。
なお、制限時間が5分と短いが、これは現状副作用が出ないギリギリの効用である。
「うおおおおおおっ!!」
「……くっ!!」
薬を投与してからの戦いは一方的だった。
ジンは防御を捨て、シャインに猛ラッシュをかけた。
一方のシャインは攻撃を捨て、全力を込めて防御に当たらざるを得なくなったのだ。
ジリジリと押されていくシャイン。
「キ、キキーッ!!」
その状態を打破すべく、ジンに対してクルードはナイフを投げる。
しかし、そのナイフは飛んできた試験管によって溶かされ、全て防がれた。
「甘いで、影。ジンの邪魔はさせへんぞ?」
「キ、キサマァーーーーー!!!」
そうして、クルードが激昂した時のことだった。
「ウホッ、なかなかにいい男達じゃないの」
「貴様等の様な愚者共などレ○プしてくれるわぁぁ!!!」
「ヒャッハアアアアアア!!! 戦闘狂は消毒だぁぁぁぁ!!!」
止まる時。
戦っていた者たちは青ざめた表情でその闖入者たちを見やる。
その闖入者たる屈強(で言葉に表しがたい)な衛兵共は殺る気マンマンである。
「……逃げるぞ」
「……せやな」
「……異議ナッシン!!」
「……全面的に同意」
一斉に走り出す四人。
「おっと、せっかくのいい男達を逃がす訳にはいかないな」
衛兵の一人がそれを取り押さえに走り出すと、残りの二人も一斉に走り出した。
かなり距離は開いていたはずなのだが、衛兵たちはぐんぐん差を詰めていく。
「うおおおおお、来んなやボケ共おおおおお!!」
追ってくる衛兵たちに、リカルドは火薬入りの試験管をありったけ投げつける。
割れた試験管からこぼれた薬品は、巨大な炎の壁となって衛兵の前に立ちふさがった。
「ヒャッハアアアアアアアアアアア!!! 放火魔は消毒じゃあああああああ!!!」
「貴様等の罪は俺が罰する、俺は地獄からの使者、貴様等の尻を八つ裂きじゃああああああ!!!」
「あっつい歓迎じゃないの。おかげでもう辛抱たまらないぜ」
が、全く効果がなかった。
「何やねんあいつら!? バケモンちゃうか!?」
「ツッコミは良いからとにかく走れ!! 捕まったら法の裁きよりも悲惨だぞ!!」
「キーッ!! あんなキチガイ、相手にするなんて絶っっっっ対にノゥ!!」
「「お前(オドレ)が言うなぁ!!!」」
全員必死の形相で逃げる。
しかしそんな中、一人遅れ始めた。
「……はあ、はあ、はあ!!」
シャインである。
他の人間が割と軽装なのに対し、シャインは防御力を重視した青い甲冑に、大きな盾まで持っている。
必然的に、重量の重いシャインが遅れ始めたと言う訳である。
そのシャインの後ろからは、着実に衛兵たちが迫っていた。
シャインは両目をギュッと閉じ、祈るような表情で息を大きく吸い込んだ。
「……クルード~!! 置いてかないで~!!」
「……キィ!?」
その声に、前を走っていたクルードは思わず振り向いた。
見てみると、いつもクールなシャインの翡翠色の眼からは涙がこぼれおちていて、庇護欲を掻きたてるような半ベソの表情を浮かべていた。
「待って~!! 置いてっちゃ、やぁ~!!」
途中で転びそうになりながらも、泣きながら走るシャイン。
普段の冷静さは完全に失われ、あどけなさを残すその見た目以上に子供っぽく泣いていた。
「……リカルド、何かすごく罪悪感を感じるんだが……」
「言うなや……ワイも心が痛いんや……けどそれ以上に捕まりたくないんやぁ~!!!」
ジンの問いに、滂沱しながらリカルドは走る。
そんな中、キレた人間が約一名。
「……キッシャアアアアアアアアアアア!!!」
クルードは突然つんざく様な声で叫ぶと、踵を返して来た道を逆に走り始めた。
「……うわっ!!」
即座にシャインを回収。
「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
「あああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」
そして前を走るジン達を、ドップラー効果を残しながらあっさりと追い越し、遥か彼方へ消えていった。
人間の限界を遥かに越えた動きだったのは間違いない。
「「…………」」
風となって消えたクルード達を呆然と見送るジンとリカルド。
「……なんやねん、あれ……」
「さあ……だが一つだけ分かったことがある。クルードはかなりの変態だ」
「せやな……」
「そして、もう一つ重大な事態が」
「何や?」
「もう少しで衛兵の手が俺達の肩に掛る」
「な、なんやってーーーーー!!!」
「や ら な い か」
「貴様等などSATSUGAIしてくれるわぁ!!!」
「ヒャッハアアアアアアアア!!!」
「「いーーーーーーーーーやーーーーーーーーーーーー!!!!」」
それからと言うものの、街は地獄絵図と化した。
もはやジンもリカルドも、それを追う衛兵たちも一切の手加減をしなかった。
街中は魔法が飛び交い、薬品がばらまかれ、火炎放射が街を焼き、非情なる一撃が猛威をふるい、道行くいい男が掘られた。
そのたびに、救護班はその後始末に東奔西走する羽目になった。
「どないするんや、ジン!! このままじゃ埒が明かへんで!!」
「とりあえず城まで走れ!! 事情を話せば何とかしてくれるはずだ!!」
二人は全力で城に向かって走る。
そして、とうとう城門が見えてきた。
「こ、ここまでくればあと少し「や ら な い か」……うそん」
ジン達は、城まであと数十歩と言うところで、とうとう衛兵たちに捕まった。
「ウホッ、見れば見るほどいい男」
「恨みはらさでおくべきかぁ!!」
「ヒャッハアアアアアア!!! 消毒だあああああああ!!!」
ジン達を取り囲んで、じりじりと近寄ってくる衛兵たち。
「……リカルド、どうやら絶望が俺達のゴールの様だ……」
「……せやなぁ……はぁ……ホンマ、オドレに付き合うと碌なことにならへんなぁ……」
ジンとリカルドは力尽き、その場に座り込んだ。
そして、静かに眼を瞑った。
「もし……貴方達、何をなさってるんですか?」
「……え?」
ジンは突然聞こえてきた声に眼を開けた。
するとそこには、長く艶やかな黒髪を風になびかせ優雅に佇む和服の女性の姿があった。
「あの、何をなさってるんですか?」
ユウナは柔らかい笑みを浮かべて衛兵たちを見る。
しかし、その鳶色の瞳はぐるぐると渦を巻いており、背後にはどす黒くて赤いオーラが立ち上っていた。
「……ぐっ……」
「ヒ、ヒィィィィィ……」
「ば、馬鹿な、地獄の使者である俺が臆するだと……!?」
圧倒的な恐怖に、思わず後ずさりする衛兵たち。
狼狽する衛兵たちににこりとと笑いかけると、ユウナは少し俯いた。
「……先ほどから、貴方達は誰かを追いかけまわしていましたよね? ふふふ……困っちゃいますよね……その人が誰か、貴方達は知らなかったんですか?」
ユウナは黒い笑みを浮かべてそう言うと、両の袖をサッと振った。
すると、何故か袖の中から桜吹雪と紅葉嵐の二本の刀が現れた。
……目の前にその追われていた誰かがいることなど、もはや気が付いていない。
「……ふふっ、教えてあげますよ。追いかけていたのが誰なのか……それから、私の、愛しい愛しい私のジンに手を出したらどうなるのか、その身を持って教えてあげますね……うふ、うふふ、うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ♪」
ユウナはひたひたと、ゆっくり衛兵たちに近づいていく。
その壊れた笑い声に呼応するように、その手に持った太刀と小太刀が血を求めているかのように輝きを放つ。
そして、錯乱して声も出ない衛兵たちの前でゆっくりと刀を振りかぶり……
「「「ぎにゃあああああああああ!?」」」
「「ひいいいいいいいいいいいい!!」」
…………二人の前でトラウマ物の惨劇が繰り広げられた。
「うふふふふ……ジン……私の愛しい人……私の一番の英雄さん……貴方に危害を加える人は、みんな私が退治してあげますからね……うふふふふ、あはははははははははははは♪」
もはや眼の前にジンがいることすら気付けないユウナは、二人の前で大声で笑い始めた。
どうやら頭のネジがぶっ飛ぶほどお冠だったらしかった。
「……なあジン。オドレと言う奴は、なんちゅう物騒なねーちゃんと知りおうとるんや……」
「……ははは……小さい頃はこんなんじゃなかったんだけどなぁ……」
「な~にを安心してるのかしら、お二人さん?」
背後からの声に振り向くと、そこには赤い髪のシスターの姿があった。
その肩には『サイコパス・クラッシャー』と書かれた、レオの制裁に使うハンマーの数倍の大きさの棘付きハンマーが担がれていた。
それを見て、二人は見事なまでに顔から血の気が引いた。
「アンタ達子供じゃないんだし、自分達が何しでかしたか分からない訳じゃないわよねぇ?」
「え、えーっと、その、俺たち命の危機にさらされていてだな……」
「そ、そうや、ワイ等はそれで仕方なく」
「黙らっしゃい!!」
「「ははーっ!!」」
リサの恫喝に、思わず二人は平伏した。
そんな二人を、リサは瑠璃色の瞳で睨みつけた。
「アンタ達、自分が逃げるためだけにどんだけ怪我人出せば気が済むのよ? ……悪いけど、初対面でも容赦しないわ。何か遺言はあるかしら?」
リサは凄まじいプレッシャーを放ちながらそう言ってくる。
その圧力に、二人は指一本動かせなくなる。
「……リカルド、やはり絶望が俺達のゴールの様だ……」
「……もう勝手にしいや……ワイは疲れた……」
そして、地面に深紅の大輪の花が二つ咲いた。
……何だろう、このやりすぎた感は……特にユウナさん。
暗殺者も何だか愉快なことになったし、リカルドさんも超ツッコミキャラとしての地盤を築きつつあるし、リサは……平常運転だな。
そんなこんなで、ご意見ご感想おまちしております。
……そろそろ感想ほしいのね……