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拝啓、親父殿。幼馴染が怖いです。  作者: F1チェイサー
第2章 おうじょさまのいらい
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おひめさまとおにーさま

 ここは壁面を白い大理石で覆われたエルフィーナの部屋。

 窓からは柔らかな朝日が差し込んでいて、部屋の中を照らしている。

 部屋の片隅では、王女の御付の従者がいつでも彼女の要望に応えられるように、壁際で待機している。

 その中央にある真っ白なテーブルに付けられたおそろいの真っ白な椅子に、栗色の髪の少女と銀色の髪の男が座っていた。


「なー れおぽん、今日はれおぽんが先生をやるってほんとー?」

「あ~、良く分からねえけどエレンのねーちゃんも忙しいみてえだしそう言うことらしいな。何で俺にお鉢が回ってくるのか知らねえけど」


 エルフィーナは琥珀色のくりくりとした眼を好奇心で光らせながら、レオに向かって楽しそうに声をかける。

 冒険者に教わることが新鮮に感じるようだ。


「それじゃ~れおぽんは何を教えてくれるのかな~?」

「さあ……俺が教えられるもんなんざ、精々経営学くらいのもんだけどな」


 レオがそう言うと、エルフィーナはキョトンとした表情を浮かべた。

 目の前のいかにも力仕事が得意そうな青年の口からこぼれた一言が、とても予想外のものであったからだ。


「あれ~? 何でれおぽんが経営学?」

「俺元々宿屋の経営者。言ってなかったっけか?」

「言ってないよー?」

「そうかい。でもまあ、俺に教えられるのはそんくらいのもんだし、そもそも独学だから話したところで正しいとも思わねえ。何か適当に話でもしますかね」

「いーよ。ねーねー、れおぽんは何で旅に出ようと思ったのー?」


 レオの袖をくいくいと引きながらエルフィーナはそう問いかける。

 それに対して、レオは当時を思い返して苦笑いを浮かべた。


「いやさね、ついこの間俺の宿があった村がオークの集団の襲撃を受けてな。んでもって鉄巨人なんていたもんだからうちの宿は全壊、立て直そうにも金がないからジンにくっついて旅に出たって訳だ」

「うわぁ……それは災難だったね……でもちょうど良いところにジェニファーがいたんだね」


 レオの本当に世間話をするような軽い口調とは裏腹に、想像以上に重たい理由にエルフィーナは形の良い眉をハの字に曲げる。

 レオはそれを見て気にするなと言わんばかりに笑みを浮かべた。


「ホントにな。多分ジンがちょうどあの場に居なかったら俺は旅に出てねえんじゃねえか?」

「そういえばさー、れおぽんずいぶん強いみたいだけど、旅に出てからどれくらい経つの?」

「んあ? そうさなぁ……精々二ヶ月ってとこだな」

「えー、ほんとにー? 前の冒険者さん達よりも強いのにー?」


 琥珀色の眼をまあるくしたエルフィーナが疑いのまなざしと共にレオに問いかける。

 無理もない話である。何故なら、通常のAランク程度のいっぱしの冒険者は少なくとも三年は修行を積んでいるはずであるからである。

 対して、SSSランクを持っているレオはまだ精々二ヶ月。普通なら、十年以上激戦区を生き延びたものの中でもごく少数しか取れない領域に居るのであった。

 半信半疑のエルフィーナに、レオは少し困った表情でため息をついた。


「嘘ついてもしゃあねえだろうが。それに冒険者みたいな荒くれ共をガキの頃から相手にしてりゃ自然と喧嘩も強くなるってもんだ。なんせ冒険者に負けてたら宿が滅茶苦茶になっちまうからな」

「そーなのかー? 私が旅行に行った時の宿の人はふつーだったけどなぁ?」


 レオの話を聞いてエルフィーナは首をかしげながら自分の記憶を堀り返した。

 彼女の記憶の中では宿屋の人は特に変わった様子の無い普通の人で、少なくともレオの様に王国の正規兵たちを片手で薙ぎ倒すような人物ではなかった。

 ……もっとも、錬度の高い王国直属の軍隊を片手で薙ぎ倒すような奴は熟練の冒険者にも滅多に居ないのだが。


「そりゃフィーナみたいなお偉いさんが泊まる宿とうちみたいな安宿じゃあ話がちげえよ。うちの場合は特に大体の客が冒険者でな、冒険者同士で喧嘩したりする馬鹿共が多かったんだよ。刀傷沙汰でも起こされたらたまんねえだろ?」

「あー、確かにねー。でも、冒険者の宿の人ってみんなれおぽんみたいに強いのかなぁ?」


 レオの言葉を聞いて、エルフィーナはにこにこ笑いながらそう口にする。

 剣を抜いて暴れる冒険者達をレオが拳一つで黙らせる様子が簡単に想像できたのだ。

 そんな彼女に、レオは特に気にかけることもなく話を続ける。


「まあ、SSSは無くても大体はそこらの冒険者よか強いんじゃねえか? 大体そういうとこは宿主本人が冒険者崩れか、用心棒を雇ってっかどっちかじゃね?」

「そーなんだー。でさ、れおぽんの宿って儲かってたのー?」

「まあ、それなりさね。そもそも貧乏な冒険者を狙いにしてやってたから、そんなに一人あたりの利益はだせねえわな」

「あれー、もっとお金持ちのお客さんは狙わなかったの?」

「狙わねえな。そう言うのを呼び込もうとするとそれなりに準備せにゃならんし、そのために金がかかんだろ。そうなると宿代上げにゃやってられんくなるし、元々の客だった貧乏な奴らが離れていっちまうからな。それに貧乏人は数が多いから、大部屋に適当に突っ込んでやって頭数稼いでりゃ十分稼げるんだぜ? だからやっすい宿代でそれなりのもてなしをするくらいで良かったし、楽な仕事だったぜ」

「ふーん、お金持ちのお客さんを狙うだけじゃダメなんだぁ……」

「そういうこった。それにどんな雑な仕事でも宿代がそれに見合ってりゃ案外上手く行くもんだぜ? 寝床があって飯が食えて酒が飲めて、ついでに馬鹿騒ぎが出来るんなら上等って奴よ」

「そっかー……」


 そう若干懐かしむように話すレオの話を聞いて、エルフィーナは感心した様子で頷いた。

 彼女の想像する宿はとても綺麗に整えられた、貴族が宿泊する高級ホテルのような宿であり、自身はそういったところにしか泊まったことがない。それゆえに、レオの言うような冒険者の宿泊する安宿の話がすごく新鮮なのだ。

 更にそれを話すレオの表情が笑顔に変わっていくのを見て、とても楽しそうなものに思えたのだ。

 エルフィーナは微笑ましげに表情を緩めると、机に両手で頬杖をついてレオの顔をじーっと眺めた。


「ん、どうかしたか?」

「んーん。私の勘だけど、れおぽんはお客さんからすごく人気があったんだろうなぁ~って思ったの」

「あー、まあダチは沢山出来たわな。と言うか、案外常連客は多かったぜ。小さい宿だったが、部屋が常連で少し溢れるくらいにはいたぜ。まあ、そいつらは食堂で酒かっくらって寝てやがったがな」


 レオが何とはなしにそう話すと、エルフィーナはキョトンとした表情を浮かべた。

 冒険者の宿と言うことは、客は世界各地に己の都合でばらばらに動いているのである。そんな彼らが常連として部屋から溢れるほど来て、部屋がなくとも食堂で食事をすると言うことは、彼の宿は相当の人気があるということが感じられたからだ。


「それ、結構すごいことだと思うよ? じゃあさ、じゃあさ、れおぽんがいつも気をつけていたことって何?」

「まずは客に遠慮しねえことだな。つーか、下手に遠慮すっと宿で大喧嘩したりされても「部外者は黙ってろ」で済まされちまうからな。それに、遠慮なく話すことで客が大体どんな奴かも分かる。大人しそうだがスイッチが入ると面白い奴とか、話してみねえと分からねえこともいっぱいあるしな」

「お~、成程な~、他には?」

「後はまあごく常識的なことばっかだ。安宿なりの最小限の常識を守った、それくらいだな」


 レオはキラキラと眼を光らせるエルフィーナの質問に簡単にそう言って答える。

 しかしそれを聞いた瞬間、エルフィーナは不満げに眉をひそめて頬を膨らませた。


「む~……な~んか足りない気がするな~……」

「何が?」

「れおぽんれおぽん、ほんとはもっと大事なことがあるんじゃないの? 今のお話だけだと、そこまで人気にはならないと思うんだけど?」

「んなこと言われてもだな……」


 レオは困った表情で頭を掻いた。何故なら、自分では本当に何か特別なことをしていた覚えは無いのである。

 一方、エルフィーナはレオの話だけではどうにも納得がいかず、どうしてそんなに人気だったのかうんうん唸りながら必死で考えていた。

 そして、しばらく考えてエルフィーナはレオに質問することにした。


「ねえ、常連客って、どんな人たちだったの~?」

「案外ばらばらだぜ? あーっと、どんなのが居たかな……ゼフィールはカラドヴルフ貴族の家出坊ちゃまだったし、マシアスは修行中のグラップラー、エルフのミシェルは近くから安酒飲みに来てたし、ドワーフのエルンストは破天荒な冒険野郎だったな。当たらねえ占い師のミシディアは俺にクダまきに来てただけだし……あ、あとはフェイルノートから来てた四人組は……」


 エルフィーナの言葉を聞いて、レオは自分の宿の常連客だった者の顔を思い出しながら名前と素性を口にする。

 その口から客の名前が途切れることなくするすると出てきて、指折り数えようとしていたエルフィーナが途中で諦めて呆然とするほどであった。


「ほえ~……」

「ん? どったの?」

「れおぽん、よくそんなにお客さんの名前覚えてるねー」

「当たり前だ。常連客が多いっつーことは、宿の中がごった返すだろ。だから、名前と顔くらい覚えておかねえと、咄嗟のときに案外困るんだよ」

「でもでも、忘れたりしないの~?」

「忘れたことはねえな。あれだ、ダチの名前を忘れることがねえのと同じこった。つーか、ゼフィールとか今頃何してんだか。あいつのことだから派手に散財してすっかんぴんになってんだろうけどよ」


 客の一人のことを思い出しながら、レオはそう言って笑った。彼にとって、宿の常連客と言うのは気の置けない親友のようなものなのである。

 その言葉を聞いて、エルフィーナも嬉しそうに笑った。


「それじゃあ、私のことも忘れないね♪」

「そりゃ忘れたくても忘れられねえっての。可愛い王女様と仲良くお話しました、なんて忘れる奴はいねえよ。つーか、個人的に見たって良いキャラしてると思うぜ、俺は」

「ふ~ん……そっかぁ」


 レオの言葉にエルフィーナは嬉しそうにそう言って笑うと、席を立ってレオの隣にやってきた。

 突然のその行為の意味が分からず、レオは首を傾げた。


「フィーナちゃん?」

「えいっ」

「お?」


 レオが声をかけると、エルフィーナはレオの膝の上に乗ってきた。

 突然の出来事にレオの頭の中は混乱の様相を呈してきた。


「おいおい、いきなりどうしたってんだ?」

「んーん、何となくこうしてみたくなっただけー。あーたんをいつも膝の上に乗っけてるんだし、別にいーよね?」

「そりゃ構わねえけどよ……」


 レオは平静を装っているが、内心かなりヤバかった。

 普段アーリアルを膝に乗せることが多いが、それはアーリアルが子供の姿をしているからである。

 しかし今膝の上に乗せているエルフィーナは十代半ばの見目麗しい年頃の少女である。

 レオはパニックになりそうな気持ちを素数を数えることで無理やり落ち着かせる。

 さすがに王女相手に冗談は言えても、本気で粗相する度胸はレオには無いのだった。


「おおーっ、これは良い座り心地だねー。むー、あーたんはいつもこれを一人占めしてたのかー」


 そんなレオの気持ちに気付いていないのか、エルフィーナは琥珀色の目をキラキラと輝かせてぽすっとレオの胸板に背中を預け、レオの両腕を自分の腰の位置でシートベルトの様に組ませて満足そうに笑った。

 この王女、何だかんだで自分がそういうことをするということがどう映るかいまいちよく分かっていないようである。

 そんな彼女に、五十七まで数えていたレオが彼女の質問に即座に答えた。


「いや、アーリアルは勝手に乗っかってくるだけだし」

「でも、嫌じゃないんでしょー?」

「まあ、ぶっちゃけそこまで嫌じゃねえよ。だけどよ、流石に食事の時とかは邪魔になってしょうがねえ」


 気恥ずかしそうに己の本音をさらけ出すレオ。

 正直なところ、レオもアーリアルに悪い感情を持っているわけではないのだ。レオにとって、彼女のわがままに付き合うのは近所の子供を構うのと大差がないのである。

 そんなレオを見て、エルフィーナは柔らかい笑みを浮かべた。 


「……やさしーなぁ、れおぽんは」


 そういってエルフィーナはレオの頭を撫でる。

 突然の行為の意味が分からず、また普段口にしないことを口にして心が浮ついているレオは眼に見えて困惑する。


「な、なんだいきなり?」

「んーん、私が勝手にそう思っただけー。よーし、今度は肩車だぁ!!」

「はぁ!? おいおい、幾らなんでもそいつは」

「あーたんは良いのに私はダメなのー?」


 勢い良く言い放つエルフィーナに流石のレオも突っ込まざるを得なくなった。

 しかしその言葉を遮ってエルフィーナは林檎のように赤い頬を膨らませてレオに抗議する。


「いや、だってあいつは小さいからであってな……」

「むーっ、私だってそんなに大きくないよ?」


 何とか肩車を阻止しようとレオは説得を試みるが、ずいっと近づいてきたエルフィーナに気圧される。

 レオは壁際にいる御付の女中に視線で助けを求めるが、女中は微笑ましそうに笑うばかり。

 助けが得られないと分かった彼は、何とか説得しようと再びエルフィーナに向き直る。


「うっ、いや、あの、少々危険でして……」

「うう~……」


 レオの腕にしがみつき、涙目で上目づかいをするエルフィーナ。

 その光景はレオの心を粉砕するには十分だった。


「どうぞご自由にお乗りください」

「やたっ♪」


 両手を地面について項垂れるレオの肩にエルフィーナがまたがる。

 レオはエルフィーナが落ちないかどうか気を配りながら立ち上がる。


「おお~ 高い高い♪ れおぽん、談話室までダッシュでごーごー!!」

「だからあぶねえって!! バランス崩してこけたらどうすんだ!?」

「その時はリサねえが治してくれるよ、たぶん。そう言う訳でれっつごー♪」


 レオの肩の上でエルフィーナは無邪気にはしゃぐ。

 そのエルフィーナを諌める様にレオは声を荒げるが、楽観的にそう言い放つエルフィーナにもう何を言っても無駄だと悟り、ため息をついた。


「はぁ……OK、だったらしっかり掴まってろよ!!」


 レオはそう言うと部屋を飛び出し、城の廊下を疾走した。


「わーっ♪ 速い速い!!」

「おらおら退いた退いたぁ!! 姫様のお通りでい!!!」


 暗殺者の侵入によって警備兵が増えているところを、レオははしゃぐお姫様を肩に乗せて兵士を蹴散らすようにして駆け抜ける。

 二人の行く先では驚いた兵士たちが蜘蛛の子を散らすように逃げていき、モーゼが海を割ったかのように道が開いていく。

 レオはそのまま談話室まで風のように駆け抜けると、エルフィーナを肩から降ろしてソファーの上に腰を下ろした。


「あー、楽しかった♪ またやろう、れおぽん♪」

「あーはいはい、心臓に悪いからまた今度な……」


 自然にレオの膝の上に乗ってエルフィーナは太陽の様に笑ってレオにそう言った。

 レオは疲れた表情を浮かべてソファーに体を預ける。国家の要人を肩車して全力疾走するなどと言う危険なことをすれば、それは心臓に悪かろう。

 その様子を見て、エルフィーナはレオの胸にしなだれかかった。


「……おにーさまかぁ……」

「ん? なんか言ったか?」

「私におにーさまが居たられおぽんみたいな人だったのかな~ってね。ほら私一人っ子だから兄弟とか欲しかったんだ。エレンはいたけどずっと忙しくて、私はいつも一人だったよ……」


 エルフィーナは淋しそうにレオにしなだれかかったまま、レオのシャツをつかんでそう言った。

 彼女には、気軽に会える友人はほぼ居ない。冒険者達も身分をわきまえて自分からは一歩引いた位置から話しかけていた。

 しかし、冒険に出てから日の浅いレオはそういった経験も少なく、また元々の性格が相手に突っ込んでいくものである。

 そのある意味世間知らずな態度を取るレオに、彼女は嬉しさを覚えると共に普段抑えていた感情をこぼしたのであった。


「そっか……フィーナちゃんは王族だから自由に友達も作れないんだったな。俺みたいにリサやジン、ユウナちゃんみたいな幼馴染も居ないのか」


 レオは慰める様にエルフィーナの頭を優しく撫でる。

 それをエルフィーナはくすぐったそうに眼を細めて、しかし笑顔で受け入れる。


「うん……ね、にーさまって呼んでもいい?」

「俺なんかで代わりになるなら別に良いぜ」

「……ありがと、レオにーさま」


 エルフィーナはそう言うとレオに抱きついた。


「どういたしまして、だな」


 それに対して、レオは微笑を浮かべてエルフィーナの頭を撫で続ける。

 しばらくそうしていると、談話室のドアが勢いよく開けられた。


「レオー!!」

「んっ?」


 開けられたドアからはアーリアルが息を切らせながらレオのことを見ていた。

 そしてその膝に収まって抱きついているエルフィーナを見て、わなわなと肩を震わせた。


「おい、貴様ぁ!! そこは我の指定席だぞ!! すみやかに我に譲るが良い!!」

「えーっ、いつもあーたん独占してるんだし、たまにはいーじゃん?」


 自分を指差して喚き散らす純白の幼女に、エルフィーナはレオの身体を抱きしめるようにしながらそう口にした。

 すると、アーリアルは再び派手に地団太を踏んでエルフィーナに喚きだした。


「良くないわぁ! それにさっきの肩車だって我の特権なのだぞ! それを何で貴様が!!」

「まーまー、心を広く持たないと将来大人になった時に苦労するぞー?」


 まったりとした表情ですりすりとレオの胸に頬ずりしながらエルフィーナはそう言った。

 その様子を見て、ぷっつーんと何かがキレる音が聞こえた。


「うがーーーっ!! 良いだろう、そうまで言うのなら力ずくで……」

「やめんかアホォ!!」

「あうっ!?」


 激昂してエルフィーナに向けて手をかざしたアーリアルを見て、レオはエルフィーナを上に放り投げてソファーから立ち上がり、アーリアルの頭をはたいた。

 その後、落ちてきたエルフィーナをレオはキャッチし、お姫様だっこの状態になった。


「わーっ、面白かった♪ ねえねえレオにーさまもう一度やって!!」

「……フィーナちゃん、ちょっとだけ空気読んでくれるか?」

「あうーっ、そうでした……」


 レオの腕の中ではしゃぐエルフィーナに、レオはそう言って溜め息をつく。

 そしてエルフィーナも状況を思い出し、おとなしくなった。


「ひっく……わ、我よりもその娘の方が良いと言うのか……?」


 アーリアルは金色の瞳に涙をたたえてレオにそう問いかけた。その表情はまるで捨てられた子犬のようなものであり、レオの言葉次第では号泣してしまいそうな様子であった。

 レオはエルフィーナを降ろして、アーリアルの前にしゃがみこんだ。


「そうは言ってねえだろ。大体女の子に優劣を付けるほど俺は落ちぶれちゃいねえよ。今のは単にお前がフィーナちゃんに攻撃しようとしたから止めただけだ。だからサッサと泣きやみな。お前に涙目は似合わねえよ」

「う、うん……」


 レオはそう言ってアーリアルの頭を撫で、アーリアルはくしくしと赤くなった眼をこすって涙を払う。

 レオはそれを見て笑顔で頷くと、エルフィーナを手招きした。


「んー? どしたの?」

「なあに、ちっとばかし湿っぽくなった空気をとっ換えようと思ってな。そうら!」

「わわわっ!?」

「ぬおおっ!?」


 レオは突然両肩にエルフィーナとアーリアルを担ぎあげた。

 二人はレオの肩に腰掛け、頭を挟んで隣り合う形になった。


「二人ともしっかり掴まってろよ!! そぉ~れ、わっしょいわっしょい!!」


 レオはそう言いながら二人を肩に乗せたまま跳ねまわる。

 身体を深く沈めて思い切り飛び上がり、床と天井の間を何度も往復する。


「きゃははは♪ おもしろーい!! わっしょいわっしょい♪」

「うわあああ!? レ、レオ、やめんか、落ちるぅぅぅぅ!!!」


 エルフィーナは満面の笑みを浮かべて楽しそうにはしゃぎ、アーリアルは顔面蒼白でレオの頭に抱きつく。

 こうして談話室には、男の掛け声と少女の笑い声、そして幼女の悲鳴が響くのだった。



子供に好かれる男、レオ。

彼は村でもこんなかんじですた。


……あとは特になし。


それでは皆様、ご意見ご感想お待ちしております。

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