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拝啓、親父殿。幼馴染が怖いです。  作者: F1チェイサー
第2章 おうじょさまのいらい
28/60

あんさつこわい

なんとかギリギリ間に合った。

少し短いけど、勘弁してくだしぁ;;

 午前中の仕事を終えて昼食を取ったメンバーは、情報収集にでているルネを除いて談話室に集合していた。

 ジンはメンバーにルネが持ってきた情報、特に自分達の周辺を嗅ぎ回っている人間ついてを伝えた。


「……と言う訳で、今後は出来る限り二人一組で行動してくれ。依頼ではフィーナを守ることが最優先事項だが、その前に自分がやられちゃ話にならない。だから場合によってはフィーナの護衛よりもそっちが優先されることもあるからな。周囲で何か異変があったらすぐにでも俺に伝えろ、良いか?」


 ジンの発言で、メンバーの間に一気に緊張が走る。

 無理もないだろう、自分が誰とも知らない暗殺者に狙われているかもしれないのだから。


「なあジン、それ誰がやってくるか見当つくか? 誰が仕掛けてくるか分かればちったぁ対策が立てられるんじゃねえの?」

「分からないな。何しろ俺の命を狙ってくる奴なんて、心当たりが多すぎて困る。俺を倒して名声を挙げたい奴、戦場で俺に斃された奴の復讐、それから俺の存在が邪魔な奴……どれもこれも数えてみれば凄い数が居そうだな」

「英雄さんは本当に大変なのですね、ジン」


 レオに対するジンの返答に対して、ルーチェは深緑の瞳に憐憫を込めたまなざしで見つめながら溜め息をついた。

 するとジンはそれに呆れ顔で大きなため息をついて言葉を返す。


「何を他人事のように言ってんだよ、ルーチェ。はっきり言うけどな、俺自身は暗殺なんざこれっぽっちも心配していない。来たところで大抵の奴なら素手でも返り討ちに出来るからな。一番の問題はお前とルネなんだよ」


 ジンのその言葉を聞いて、まさか自分に話が飛んでくると思っていなかったルーチェは、長い耳をビクンと跳ね上げて驚きの表情を浮かべた。


「ふぇ!? ど、どう言うことなのです!?」

「もし、お前が今俺をどんな手段を使ってでも抹殺しなきゃならなくなったとする。だがお前には俺に正面切って勝つことも出来なければ、暗殺を実行することさえ難しい。さて、お前ならどうする?」

「ジンよりも強い人を探す……のは幾らなんでも難しいのです。となると、ジンの弱点を探すことになるのですが……」

「そう簡単に俺の弱点は突けないさ。そんな簡単に弱点を突けるのなら俺はとっくのとうに死んでいる。ルーチェ、それがどうして自分につながるかを考えてみな」


 そうやってこめかみに人差し指を付けて唸り始めるルーチェを見て、ジンは苦笑した。

 ルーチェはしばらく考えると、ハッとした表情と共に耳をピクッと動かした。


「……あ、私を人質に使う輩が出てくるってわけなのですか。でも、私だってAAAランクですし、そうそう狙える人は……」

「居るじゃないか。そのAAAランクを襲えそうな奴が、今この町に」


 ジンはそう言って、ルーチェに自分が何を言いたいのかを考えさせる。

 すると、しばらくしてルーチェは少し血の気の引いた顔で口を開いた。


「……ウォッチャーですか……」

「そう言うことだ。AAAランクのチームを抑えられると言うエレンを出しぬけるような奴だ。同じAAAでもルーチェは個人だし、ルネはともかく、ルーチェはそう言った事に対する経験もない。恐らくウォッチャーに狙われたとしたら、その冒険者と同じようにこの城から姿を消すことになるか、俺をおびき出す餌にされるだろうさ」

「……狙われたとしたら? それってつまりウォッチャーの線は薄いってこと?」


 ジンの言葉に横で聞いていたリサが首をかしげた。彼の言い方が、犯人がウォッチャーではないと言うように取れたからである。

 ジンはその言葉に対して首を縦に振った。


「俺は少なくとも今はそう思ってるな。ウォッチャーはこの城に忍び込んで王女の部屋まで行っておきながら、何もせず、自分が侵入したと言う証だけ残していくような愉快犯的行動をする奴だ。もしこいつが本当に何の目的もない愉快犯ならば、俺が居る所に侵入はしてみても暗殺とかそういう実力行使に出るとは思えない。そんなことをしたら、おそらく奴が望んでいない妙な波風が立つからな。つまりウォッチャーとは別口で、少なくともAAAランク相当の実力者がこの近辺に潜伏していると考えた方が良いってことだ。まあ、だからと言ってウォッチャーが危険ではないと結論付けることは出来ないけどな」

「んで、そのルネちゃんやルーチェちゃんを襲える様なレベルの奴で、襲ってきそうな奴は居るのかよ?」


 白銀の小さな少女を肩車したレオの言葉に、ジンはあごに手を立てて該当する人物を思い浮かべた。

 いくつか思い当たったらしく、ジンはゆっくりと頷いた。


「……確かにいるな。しかも中には下手をするとレオやユウナと肩を並べる様な奴もいるぞ」

「うげえ、マジかよ……」


 それを聞いてレオは心底嫌そうな顔をした。もしそんなのが複数人でやって来られたら、仲間を守り切る自信が無かったためである。

 そんなレオに対して、ジンは苦笑いを浮かべた。


「唯一の救いはそいつは犠牲を嫌うから、そう簡単には俺を襲ってこないってところか。とにかく、自分の周囲には気をつけておくように。俺からの報告はこれで終わりだが、何か言うことがある奴は居るか?」

「アタシからは特に無いわね。強いて言うならレオにもうちょっと手加減しなさいって言うくらいかしら?」


 リサはそう言いながらレオにジト目を送る。どうやら治しても治しても次々に患者を増やされたのがよっぽど頭に来たようであった。

 レオはそれに対して、手をひらひらと振りながら言葉を返した。


「へーへー、次は善処してやんよ。俺からも特には何もねえな。兵隊に話聞いてもいつもと変んねえって言ってたし」

「ア、アンタねえ……人の苦労を考えろおおおおおおお!!」

「な、ま、やめ「砕け散れぇぇ!」うぎゃああああああ!」


 善処する気など全く無さそうなレオの声に、リサが憤怒の表情で『日頃の恨み・天罰二号』と書かれた大金鎚でレオの頭を木っ端微塵に粉砕した。

 レオは頭を強打され、銀色の髪を真っ赤に染め上げながら膝から崩れ落ち、床に赤い湖を作り出した。


「私からは調べ物は順調に進んでいることを報告するのです。ですが、さっきの話では少し調べ物を控えなければならないかもしれないです」

「レオー! 死んじゃやだぁーーーー! 痛いの痛いの飛んでけーーーー!!」


 そんなレオの惨事を無視して、ルーチェは涼しい顔で報告を続けた。

 その後ろでは、錯乱したアーリアルがレオの治療を泣きながら必死で行っていた。

 ……いい加減慣れろと思わなくもない。


「オーケー、わかった……」


 全員の報告を聞いてジンはあごに手を当てて首をひねった。

 どうやら何か腑に落ちないことがあったようだ。


「どうかしたんですか?」

「いや、何かが引っかかる気がするんだよな……そんな気はするんだが、それが何なのかが分からないんだ……とにかく、今は暗殺者とウォッチャーに意識を集中させよう。それじゃこの後俺はまたエルフィーナやエレンと話をしなきゃならんから、それから戻ってくるまで待機。今日の予定を確認しながら待っていてくれ」


 ジンはそう言うと談話室を辞してエレンの元へ向かうことにした。

 待ち合わせをしている会議室に入ってしばらく待っていると、エレンが小走りで会議室の中に入ってきた。

 そしてジンの隣にある椅子に腰をおろし、ジンの方に向き直った。


「待たせたわね。それで、突然呼び出してどうかしたのかしら?」


 エレンは紫色の瞳でジッとジンの灰青色の眼を見つめながらそう訊ねた。

 ジンはそれに対して憂鬱なため息をつきながら答えた。


「いや、少し厄介なことになったもんでな。もしかしたら、俺が暗殺者に狙われることになるかもしれん」

「あら、でも貴方を暗殺出来る様な人間がいるのかしら? 私があれだけの労力を絞っても無理だったのに?」

「……アンタ、この前の決闘で俺を暗殺する気だったのか?」


 微笑を浮かべてそうのたまったエレンに、ジンはジト目をくれてやった。

 しかしエレンは全く動じず、浮かべた笑みを深めた。


「ご冗談を。貴方を殺してしまったらSSSクラス三人とAAAクラス二人をまとめて相手にしなきゃならなくなるし、第一貴方みたいな稀代の英雄のサンプルを殺すなんて私は得をしないし、する理由もないわ。私は貴方の研究がしたかっただけ、それだけよ」


 笑顔で滔々と自分の考えを述べるエレンにジンは深々とため息をついた。

 その顔には、一種の諦めの表情が深々と現れていた。


「研究材料にされるのも良い気分はしないがな。まあ、そんなことはどうでも宜しい。問題はこのまま俺達にフィーナの護衛を任せるのかどうかだ。場合によっては俺が護衛に付くことによって逆にフィーナが危険にさらされる可能性だってあり得るんだが、どうするんだ?」


 ジンの言葉にエレンは口に人差し指を当てて考え出した。

 そしてしばらく考えた後、エレンは答えを出した。


「そうね……護衛は継続して続けてちょうだいな。それから貴方のことを調べている人物に関しては、私の部下にも調べさせてみるわ。恐らく貴方の所の諜報員は裏を調べているでしょうから、私達は表側を調べましょう。新しい情報が入り次第連絡させてもらいますわ」

「それは助かる。ああ、それから街の門の通行記録を持ってきて欲しいんだが。ひょっとしたら心当たりのある名前があるかもしれないしな」

「良いでしょう、後で持って来させますわ。それよりもジン……午後、良いかしら?」


 穏やかな笑みを浮かべるエレンのその言葉に、ジンは怪訝な表情を浮かべた。何やら嫌な予感をひしひしと感じているようだ。


「……何だ、実験か?」

「ええ、貴方がどういう術式を使っているのか少し教えて欲しいのよ。それから、出来れば血液とか採取したいわね。それと貴方とはもっとしっかりお話したいことがあるし、ね」

「それは構わんがね、その旨をちゃんとうちのメンバー全員に伝えてもらおうか。一応俺はチームリーダーなんでね、俺が動けないと不便な点もあるだろうからな」

「ええ、分かってるわよ。それに私達の方からも伝えておきたいことがあるから、集合させてもらえるかしら?」

「それなら全員談話室に集めて待機させてるぞ。ああ、ルネは買い物に出ていて不在だがね」

「そう、それなら良いわ」

「そうしようか。……ところでフィーナの姿が見えないが、どうかしたのか? 俺達かアンタのどちらかの近くに常にいるものだと思ったが?」


 ジンはエルフィーナの姿を探して辺りを見回した。

 しかし、会議室にはジンとエレンの他の人影は無く、机と椅子が整然と並んでいるだけであった。


「姫様なら今は陛下と一緒に先ほどのレポートをチェックしていますわ。それじゃ、早速行くとしましょう」


 エレンはそう言うと立ち上がり、会議室のドアに向かって歩きだした。

 ジンもその後に続いてドアに向かう。


「護衛についてなくて良いのか? 実質的な被害が今のところ無いとは言え、王族ならばいつどこで何があってもおかしくは無いだろうに」

「今は私の信頼のおける部下が傍についているから、そんなに心配することはないわよ。それに、姫様の耳にはあまり入れたくないお話もあることだしね」

「なるほど、ならば早く済ませて護衛の任務に戻るとしようか」


 そう言うと二人は会議室から出て、他のメンバーが待つ談話室に向かうことにした。







「キキッ、見つけたぜぇ……」

「……情報通り」


 ジンとエレンが談話室から出て食堂に向かうところを、外から見ている人間が二人。

 二人は木に登って外套をかぶり見つかりにくくした上に魔力を察知されないように望遠鏡を使って、窓の外からジンの姿を確認していた。


「……隣にいるのが宰相、エレン・レミオール……これも情報通り」

「キヒヒ、そんなことはどうでもヨロシ! さぁ~、どうしてやろうかぁ?」


 静かな方がやたらとハイテンションな相方の外套を引っ張ってそれを諌める。


「……うるさい……見つかる前に一度帰る」

「ふむ、良かろう! ではではこの場は一時撤退!!」


 テンション超爆の一人がそう言うと、二つの人影は音もなくその場から消え去った。


 

暗殺者に狙われたジン。

とばっちりを受けそうな周り。

だというのに緊張感まるでねえな、こいつら。


それと暗殺者がなんだか愉快なことになった。

……よし、こいつには後で大暴れしてもらおう。


それではご意見ご感想お待ちしてるのですよ~

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― 新着の感想 ―
[一言] たまにいるよねぇ〜、奴さんに妙に愉快な方が時折。 そんでそんな奴に限って強いという。
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