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拝啓、親父殿。幼馴染が怖いです。  作者: F1チェイサー
第2章 おうじょさまのいらい
25/60

すみれいろにあかいはな

流血表現って全て残酷な表現に入るのだろうか?

ふと気になったのでタグ追加しました。

 エレンが戻ってきてから、ジンは今後の方針を話しあうことにした。

 そして一しきり話し終わった後、ジンはエレンに話を切り出した。


「ところでエレン、俺達の前に雇っていた冒険者たちはどんな奴らだったんだ?」

「特にこれと言って欠点の見えないような冒険者の団体だったわね。ランクはチームでAAAランク、個人では大体がAやAAランクだったわよ。それがどうかしたのかしら?」

「いや、フィーナに話を聞いたら最初の一日で全員いなくなったって聞いたもんでね。一体どうしていなくなったのかは調査したのか?」


 ジンは疑問だったのだ。何故なら、この行方不明事件はただの行方不明事件では済まされないからである。

 と言うのも、国の中枢である王城で起きた事件であるからである。これは城の中が決して安全ではなく、職員はもちろん王族すらも危険にさらされている状態だからである。

 そんな状態を、宰相であるエレンが黙ってみているはずが無い。必ず徹底的な調査をして、原因を調査しているはずである。

 それはどうして今回何も起こらなかったか、と言う疑問を解決する手がかりにもなるのである。


「それなりにはしたわよ? でも手がかりなんてほとんど無かったわ。分かったのは侵入者に冒険者がさらわれていったという事と、それが魔法によるものって事ぐらいよ」

「魔法? どんな魔法だったんだ?」

「分からないわ。調べたときにはもう術式は消されていて魔力の残滓しか残って無かったらしいもの」


 ジンはここまでの情報を整理した。

『欠点が無いAAAランクのチーム』をまとめて攫っていけることから相手のレベルは少なくともSランクはあると考えられる。

 使われた魔法は考えられるものとしては転移か幻影の魔法。無理やり遠くに放り出すか、何らかの幻を見せて誘い出したかのどちらかであろう。

 ……しかし、他のことについては情報が足りない。

 仮に自分の推測が正しかったとしても、消えた冒険者がどこに居るのかは分からないし、何故自分達には何かが起こる気配さえ感じなかったのかが分からないのだ。


「エレンさん、ちょっと良いですか? 魔力の残滓の残り方はどんな感じだったのですか?」


 ジンが考えている横でルーチェがエレンにそう質問をした。

 エレンは額に手を当てて少し疲れた表情で答えた。


「私が直接調べたわけじゃないのだけれど、調べたときには魔力が薄くなりすぎていたらしくて良く分からなかったらしいわ。そうね、私の部下がまとめた報告書を持ってくるわ。王宮勤めの私達には気付かない、冒険者だから気付く面もあるでしょうしね“亜空の扉(アナザクレム)”」


 エレンはそう言うと魔法を使って空間をつなぎ、一冊のファイルを取り出した。

 ファイルには『冒険者連続失踪事件』と銘打たれていた。

 ジンはその様子をジッと見つめ、ぽつりとつぶやいた。


「……便利だな、その魔法」

「ええ、とっても便利よ? でも、今のジンが使いこなせるようになるには少し時間がかかるんじゃないかしら?」

「だろうな。今の俺にはそこまで高度な空間魔法は使えん。何しろ今覚えている魔法だって文字通り死にかけて覚えた魔法だからな」

「……本当に貴方はどんな修練を積んできたのかしら? 貴方の魔法は三年間で使えるようなものでは無いものだったのだけど?」


 若干遠い目をして話すジンに、エレンが若干呆れ顔でそう問いかけた。

 魔法とは基礎を固め、己の力量と才能を理解し、その魔法をじっくり研究して初めて実践に耐えうるものになるのである。ジンが自分との戦いで見せた魔法は、どう考えても普通なら三年間で習得できるものではなかったのだ。

 エレンの見積もりでは、一般の人間がジンと同レベルの魔導師になるには魔法の修練だけに集中しても二十年は掛かり、才能のあるものでも十五年は掛かるという解が出たのだ。

 そのことはジンの才能の異常さがよく分かるものであり、逆に何故そんな力量を持っているのかを分からないものにしていたのだ。


「んん~? エレン、俺の記憶を覗いたんなら何が起きていたか分かるんじゃないのか?」


 そのエレンの問いかけにニヤニヤと笑いながらジンはそう答えた。

 その答えを聞いた瞬間、エレンは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。


「意地悪な人……旅に出る直前の記憶と今の名前を授かるところしか見せてくれなかったくせに良く言うわ。と言うより、貴方レジストが出来るからすんなり記憶を読ませてくれたのでしょう?」

「当然。誰が好き好んで自分の記憶を人にさらすかっての。大体、本人確認に何でわざわざ記憶を読むなんていう面倒くさい手段を取ったんだよ? 単純に解析の魔法をかけりゃ一発だっただろうに」

「それは貴方がモントバン王家の敵に協力をしていないかどうか確かめるためよ。もっとも、レジストされてしまって分からずじまいでしたけど」

「で、踏み絵の代わりにあの誓約書か。そんなに信用ないかね、俺達は?」

「貴方自分で言っていたでしょう、王家の護衛に付くならばこれくらいは当然って。それにあれだってその内解除するわよ。依頼の内容を全てこなしてくれたらちゃんと貴方達の眼の前で焼却させてもらうわ」


 ジンとエレンは互いに笑みを浮かべたまま穏やかに舌戦を繰り広げる。お互い本気で殴り合った後の男の友情の様な雰囲気がそこにはあった。

 もっとも、エレンは女性であり、それに黙ってられない人間もいるのだが。


「む~? ……エレン、いつの間にジェニファーと仲良くなったの?」

「……ジン? ずいぶんエレンさんと仲が良いみたいですね?」

「ちょっと待て。フィーナ、アンタ俺のことはジニーって呼んでなかったか? ジェニファーってもはや誰だよ? それからユウナ、何を考えてるか分からないがその手に持った短刀と黒いオーラをしまってくださいお願いします」


 紅葉嵐を取り出して笑顔で黒いオーラを放つユウナから、青ざめた表情で距離をとりながらジンはそう言った。

 その横ではエルフィーナがニヤニヤ笑いながら、ジンに話しかけていた。


「いーじゃん、こっちの方が面白いもん。それでー? 何があったのー?」


 エルフィーナはくりくりとした琥珀色の瞳を期待に輝かせて、エレンにつつっと詰め寄った。

 エレンはそれに対して、笑顔のまま答えた。


「ふふふ、二人で熱い夜を過ごさせてもらったわよ」

「おおー、じゃあ二人ともラブラブなんだね」


 エルフィーナがそういった直後、空気を切り裂く鋭い音と共に素早く白刃が翻った。

 ジンはその一撃を先読みしてしゃがみ、紙一重のところで回避して正面を見据えた。

 そこでは、桜吹雪を八相に構えたユウナがジンにじりじりと近寄っていた。ユウナの背後には陽炎の様な黒い怒気が映っており、どこか禍々しさすら感じる有様であった。


「ジン……貴方……」

「いや待て誤解だその刀をしまえ! こらエレン! 誤解を与えるようなことを言うな!」


 自らの命の危機に、ジンは慌てふためいてそう叫んだ。

 エレンはその様子を見て、悪戯を思いついた子供の様に笑った。


「あらあら、つれないわね。昨日のあれはデートの様なものでしょう? 貴方も私もお互いに楽しんだじゃないの」

「お、おい!?」


 エレンはサッとジンの左腕を抱き寄せ、うっとりとした表情で肩に頭を預けた。その突然の命知らずな行動に、ジンの顔は青を通り越して紫色に染まる。


「……良くわかりました。ジンが女を誑しこむのはジンだけの責任じゃないんですね。そうです、良く考えたらジンですもの。ジンなら女が誘惑を仕掛けてくるのも無理はありませんものね……」


 そんな彼らの行為に、ユウナは鳶色の瞳にぐるぐると渦を巻きながら昏い笑みを浮かべた。

 エレンはそれを見てなお余裕を見せているが、ジンの顔には滝の様に冷や汗が流れていた。


「は、はなせぇー!」

「嫌よ♪」

「良いから放せ! 命が惜しくないのか!?」

「あら、大丈夫よ。相手は刀なんだからこれくらい離れていれば……」

「危ない!」

「きゃあ!?」


 エレンは突如ジンに体を引っ張られ、その直後、エレンの首があった辺りを刀の切っ先が通り過ぎて行った。

 まさに間一髪といったところであり、後には斬られたエレンの金茶色の髪の一房がはらりと舞った。


「え……?」


 その突然の出来事に、エレンは呆然とした表情を浮かべた。

 魔導師に有利な距離を一瞬で詰められた上に、ユウナの動きに全く反応できなかった。それを自覚した瞬間、エレンは事の重大さにようやく気が付き、顔が一気に青ざめた。


「確かに、一般的には魔導師は一定の距離を保っていれば剣士に負けることはまず無いと言われてるな。だが、残念ながらユウナに一般の剣士の常識は通用しない……どうしてくれるんだ?」


 ジンは恐怖に震えるエレンにジト目をくれながらそう言った。

 その二人に、ユウナはゆっくりと眼を向ける。


「……ジン、何でその女をかばうんですか?」

「当たり前だアホォゥ! お前天下の王宮で国家の重鎮ぶっ殺す気かぁ!?」

「そうですか……なら貴方にも少しお灸を据えなければなりませんね……」

「何 故 そ う な る」


 もはや成立していない会話にジンは頭を抱えた。

 その間にユウナは刀を平正眼に構える。もはや完全に二人ともぶっ殺す気満々であり、じりじりと近づいていた。

 エレンはそれを見てジンにすがりつく腕に力を込めた。


「ひっ……ジ、ジン、貴方ユウナを止められるかしら?」

「止めるのは無謀、逃げることをお勧めする、と言うか逃げたい」

「……いつまでくっついているんですか……うらやましい……」


 引き寄せて抱き合った状態で話を続ける二人に、ユウナは絶対零度の声で話しかけた。

 その声に、二人してビクッと震える。


「くっ、“亜空の扉(アナザクレム)”」

「逃がしません!」


 エレンは魔法で足元に扉を開いて、ジンごと逃走しようとする。

 しかし移動する前にユウナが神速で二人の服を掴み、逃走を阻止した。ユウナは二人を異次元の扉から片手で引きずり出し、左腕でしっかりと首をまとめてロックした。


「捕まえました……さあ……じっくりとお話をしましょうか……」

「……うわぁい、ユウナの眼が据わってら……」

「がっ……ちょ、ちょっと、絞まってるわ……」


 ぐるぐるおめめで右手に抜き身の紅葉嵐を持つユウナを見て、ジンはひきつった笑みを浮かべた。

 そのジンの隣で、エレンは気管がしまっているのか蒼い顔でユウナの腕をタップしていた。


「ゆ、ユウナさん? もう少し落ち着いて私の話をですね……」


 ジンはそう言いながら先ほどから傍観しているメンバーに助けを求める視線を送った。

 すると、レオ、リサ、ルーチェ、アーリアル全員顔を軽く見合わせた後、にっこり笑って、


「「「「リア充死ね♪」」」」


 と言って親指で首を斬る動作をした。

 さっきまでは止めに入っていたリサもどうやら腹に据えかねたのだろうか、止めることをしなかった。


「おいコラちょっと待てぃ!」

「それでは三人でじっくり話をしましょうか……」

「あ……ぁ……」


 ユウナは喚き散らすジンと蒼い顔をしてぐったりとしたエレンを引きずって部屋の外へ出て言った。

 後にはジンに死刑判決を下した陪審員と、ただのじゃれあいにしか見えていないお姫様が残された。


「でよぉ、俺らはどうすんだっけか?」

「レオはまずは騎士の教導だったと思うのです。その後のことは今日のお昼に話し合いをして細かいことを決める手はずだったはずなのですよ」

「アタシは病人怪我人の治療だったわね。ルネは情報収集で街に行ってるし、ルーチェは図書館で希少文献の調査ね」

「てことは私のお付きはゆーさまとジェニファーか~ どんなお話が聞けるかなぁ?」


 外では阿鼻叫喚の凄惨な光景が広がっているであろうことを無視して、各自の予定をそれぞれ確認して行く。

 部屋の防音性はバッチリの様である。


「レオが教導に行っている間我は暇なのか……むぅ……レオについて行きたいぞ……」


 そんな中、一人予定の無いアーリアルがそう言いながらレオのズボンを引っ張る。

 金色の視線は、レオに構ってオーラを全力で放っていた。


「無茶言うんじゃねえの。後でしっかり構ってやるから少しは我慢しておけ」

「むぅ……言質は取ったからな、絶対だぞ」


 レオはふくれっ面をするアーリアルの前にしゃがみこんで、目線の高さを合わせてそう言った。

 アーリアルは未練たらたらと言った体ではあったが、レオの言葉を聞いて納得したようだった。


「やっぱり何度見ても親子にしか見えないよ……ねー、るーるー?」

「わ、私に振られても返答に困るのです。でも、下手な親子より余程らしいのは認めるのです」


 銀髪コンビの会話を聞いてエルフィーナがルーチェに話を振り、ルーチェはそれに同意した。


「……俺、そんなに老け顔かなぁ……」


 その言葉はどうやらレオのガラスの心を粉々に粉砕したようだった。

 レオはしゃがみこんでのの字を書き始めた。


「レ、レオ? 親子に見えると言うだけでレオが老け顔とは言っておらんのではないか?」

「そう言ってくれんのはお前だけだぜ……」


 突如へこんだレオをアーリアルは頭を撫でながら慰める。

 アーリアルの言葉を聞いてレオは嬉しいのやら悲しいのやら分からない涙を流した。


「あ~もう、メンドくさいわね、アンタは! たったあんだけ言われたくらいでヘコんでんじゃないわよ!」

「おぶぅ!?」


 そこにリサが割り込み、レオを蹴り転がした。

 いきなりの暴力的な乱入にレオも少しばかり腹に据えかねたらしく、起きるなり怒りだした。


「何だよ!? 俺が一体何したってんだよ!」

「うっさいわ! 何でアンタのウジウジした泣き顔見なきゃなんないのよ! アンタは常に笑っていればいいのよ! 大体アンタは鏡見て自分で老け顔だって思うワケ!? バッカじゃないの!? アンタが老け顔じゃないことはアタシが認めるわ! だからとっととその顔はやめなさい、分かった!?」

「お、おおう……」

「分かればよろしい!」


 異常な剣幕でまくし立てられ、レオは訳が分からないと言った表情で返事をした。

 リサも叫びまくって頭に血が上ったせいか、真っ赤な顔で返答を受ける。

 そこに、さらなる乱入者が現れた。


「あれリサ、そんなに怒ってどうかしたんですか?」


 声をかけてきたのは非常にすっきりした顔を見せているユウナだった。

 ……着ているすみれ色の着物に赤い花が咲いているが、突っ込む者はいない。誰しも命は惜しいのだ。


「ご主人様~ 執行部から今日の会議に使う書類が……ってひょえええええええええええ! ご、ご主人!? それにジンの兄さんも!? な、何があったんスか!? 廊下が血の海っスよ!? か、回復、今すぐ回復を!」


 開いたドアの外では書類を持ってきた使い魔の妖精が何やら慌てているようだが、ユウナの笑顔のプレッシャーに気圧されて誰ひとりとして確認に行くものはいなかった。

 そんな中、リサは額に手を当てて一言。


「……とりあえず、ユウナ。アンタは着替えてらっしゃい」

「……はい」


 流石にユウナも血濡れの着物は具合が悪いようで、着替えに行った。


話が進まない……少し喋らせるとすぐに脇道に転がっていくなぁ……

かと言ってあんまりサクサク進めても拍子抜けするんだろうしなぁ……難しい。


いろんな人の小説読んで勉強しても上手く活かせてない気がする。

何事も日々精進せにゃ。


感想は小説家の活力!!

というわけでご意見ご感想お待ちしております。

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