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拝啓、親父殿。幼馴染が怖いです。  作者: F1チェイサー
第1章 じゅんびきかん
19/60

おうじょさまとおはなし

盛大に寝坊をかましたので更新。

「私はエルフィーナ・フラン・モントバン。一応モントバン国の王女だよ」


 少女は可愛らしい唸り声を上げた後、自分の身分をジンに明かした。

 目の前の少女が王女と知って、ジンは慌ててだらけていた姿勢を正した。


「……失礼いたしました。まさか王女様がここに居られるとは思わず……」

「いーよ、今まで言わなかったのはこっちだし。それにあんまり敬語は使ってほしくないな、仲良くしたいもん。だから、あなたのことはここじゃあジンって呼ばせてもらうよ。あ、私のことはフィーナって呼んでね」


 突如態度を急変させたジンに、エルフィーナは苦笑しながらそう答えた。

 それに対して、ジンは軽く深呼吸をして落ち着いてから話を続けた。   


「そ、そうか……で、その王女様が何でこんなところに?」

「あのね、今私は狙われてるの」

「狙われてる?」

「そ、どうにも毎日誰かに見られている気がしたの。でね、調べてみたら私の部屋の周りに強い魔力が残ってたんだ。だから、安全が確認できるまでここで誰にも見つからないように隠れてたの」

「なるほど、つまりは未だにその魔力の正体がつかめないから、俺に護衛か調査を願いたいといったところか?」


 エルフィーナの言葉を聞いて、ジンは納得してから頷いて答えた。

 エルフィーナもコクコクと頷いて答える。


「ん、そーなるね。だからお城に来て欲しいんだけど」


 期待を込めてじっと見つめてくるエルフィーナの言葉を聞いて、ジンは考えた。

 何故護衛や調査と言ったことに自分を雇うという発想に至ったのかが分からなかったのだ。

 何故なら、王家の城には腕の立つ騎士や頭の回る魔導師が常駐していると言うのに、わざわざ外から雇う理由が無いからだ。

 そこで、ジンは質問を重ねることにした。


「調査に関しては俺じゃなくてもフィーナには信頼できる優秀な魔導師が付いてるんじゃないのか? ほら、そこの入り口の封印をした魔導師がさ」

「ん~、エレンのことかな? エレンは忙しいからいつも私の周りにいられるわけじゃないんだ」

「何で最初から護衛を雇わなかったんだ?」

「雇ったんだよ? でも、雇った人はみんな最初の一日でいなくなっちゃんたんだ……」


 エルフィーナは少し悲しそうな声でジンの質問に答える。

 そこまで聞いて、ジンは再び考え込んだ。

 王家が外からわざわざ雇ったということは、その者達は少なくともAランクを超えたチームであり、一流の冒険者であるはずなのだ。それもエルフィーナの言い分によれば複数契約している、つまりその度にランクを上げているとすればSランク以上が必要である可能性すらあり得た。

 これらのことから、ジンは次のような推測を立てた。

 この部屋自体の目的はフィーナの保護および護衛と調査員の選抜を兼ねているのではないか、と。

 思えば、あれほどの隠ぺい術に三重に保護をかけるくらいならば、隠ぺいと偽装を重ねた方がはるかにばれにくい。だと言うのに実際は若干の魔力の淀みを生じる術式にし、それを堅牢化する方向で組まれていた。

 つまり、敢えてそれを発見させ、それを解除させることで高レベルの魔導師のみが突破できるような仕組みになっていたのだ。かなり危険な賭けになるが、これならば確実に高ランクの冒険者が釣れることであろう。

 そして隠ぺいの度合いと術式の堅牢さから言って、術式を組んだ魔導師はフィーナと二人でこの洞窟に入り、辺りの魔物を一掃してから隠せるような凄腕と考えられた。つまり、仮に釣れたのがフィーナの身を害するような人物だった場合、その人物はその魔導師に消されることが容易に想像できるのだった。

 ……更に言ってしまえば、その魔導師は自分がフィーナを見捨てて立ち去ろうとすれば即座に現れるだろうとも。

 ジンはそのように自分の考えをまとめ、選択肢が元より用意されていないことを悟った。


「……強い魔力が残っているため耐性のある魔導師による護衛が必要、かつ相手の正体が不明で武力も欲しい。確かに俺みたいな魔法剣士向きで、行方不明者が出ているところから言って危険度も高い仕事だな。……はあ、少し寄り道になるが仕方ないか。ちょっと待ってな、今他の連中と相談してくるから」

「うん、いーよ」


 ジンはそう言うと、ふうっと溜め息をついて仲間の所へ向かい、現状の説明をした。


「と言う訳なんだが、皆はどうする?」

「王族関係か……もらえる報酬には期待できそうだけど、受けて大丈夫なのかい? ジンにだって旅の予定はあるんだろう?」

「そっちは別に変更したって問題は無い。むしろ問題は別の所にあってだな……」

「別の所、ですか?」

「一つ、今のままだと予定より早く路銀が尽きる。結構余裕があったはずなんだがな……」


 ユウナの問いかけに、ジンは額に手を当てて答えた。

 どうやら資金不足がかなり深刻な問題になりそうなのだった。


「やっぱ装備を買いすぎたんじゃね? 調子に乗って馬鹿みたいに金を使ったわけだし」

「やっぱりあの時これじゃなくて青いローブにした方が……」


 自分に支給された装備を見ながら口々にそう言うジンを除く一行。


「一番の問題は貴様らの食費と酒代なんだよ! 毎度毎度アホみたいに飲み食いしやがって! 一食金貨一枚以上ってなにをトチ狂ったらこんな額になるんだよ!?」


 それに対して、ジンがキレた。怒髪天を突き、息荒くまくし立てる。

 実は、ジンの資金の大半は仲間の……と言うよりもルネとルーチェの二人の飲食代に消えていたのだ。


「いや、だって僕の場合戦闘に気を多用するからその分エネルギー補給をしないといけないじゃないか。だからあれくらいの量は適正量だと思うよ?」

「んな訳あるかあああああああ! お前よりも気を使うレオの方が食う量は少ないんだぞ!? お前、俺が支払い持ってるからって遠慮なく食ってるだけだろ!?」

「うん、それは否定しない」

「否定しろやああああああ!」


 己の所業を悪びれもせず肯定するルネに対し、ジンはのどが切れそうなほど吠えた。


「うるさいのです。そんなに怒ってるとそのうち胃に穴が開くのですよ」


 それに対して、ルーチェがうんざりとした表情で追い打ちをかける。

 ジンは怒り心頭といった表情で、ルーチェの方を向いた。


「己は何を言っているのだ? 毎晩毎晩酒をボトル五本以上飲むわ、おまけに毎度毎度俺に絡むわ何のつもりだ!?」

「お酒は精神安定剤なのです。精神すり減らして魔法使うのですからこのくらいは当然なのですよ」

「嘗めとんのかおんどりゃあ!? 魔法で精神がすり減るか! それに魔力回復に酒なんて聞いたこともねえよ!」

「良いではないですか、ジンも女の子にくっつかれて役得なのですし」


 ニヤニヤ笑いながらそう言って脇腹をジンの肘でつつくルーチェ。

 その態度に、ジンの額にどんどん四つ角マークが追加されていく。


「胃に穴をかけるのが役得か、よし、お前ら表出ろ」

「まあまあ、暴力に訴えるのは良くないと思うよ?」

「そうなのです。お金が減ったなら稼げばいいのですよ」


 怒りの炎をメラメラと燃やし、噴火寸前のジン。そんな彼に対して、元凶二人は極めて楽観的にそう答える。

 そして、ジンの堪忍袋の緒はとうとう天寿を全うすることになった。


「……ふんっ、ふんっ!」

「あいたあああああああ!?」

「あうああああああああ!?」


 ジンはルネとルーチェに容赦なく手甲付きのげんこつを、最大の痛みを与える様に叩きつけた。

 そのあまりの激痛に耐えかねて、二人は頭を押さえて床を転げ回った。

 しばらく転げ回った後、ルーチェが深緑の瞳に涙を湛えて頭を押さえながら抗議の声を上げた。


「な、何をするのですか!? 女の子に手を上げるなんて最低だとは思わないのですか!?」

「じゃっかあしいわ! 何を他人事のように言っとんのじゃ! その金稼ぎに俺を使う気満々だろうが貴様ら!」

「だって、それが一番効率が良いじゃないか……」


 ジンの言葉に、なおもルネはそう言ってごね続ける。

 その一言を聞いて、ジンは背中の剣を留めるベルトを解いた。


「お・ま・え・ら~……」 

「に、逃げろーーー!」

「に、逃げるのですーーー!」


 鬼の形相で鞘に入れた剣を振りまわしながら追いかけてくるジンから、キャーキャー喚きながら二人は逃げる。

 そして部屋の中で盛大な追いかけっこが始まった。


「ああもう、ジンも少し落ち着きなさいよ! とりあえず事情は分かったわ。で、この依頼受けるの?」


 しばらく駆けずり回った後、リサの言葉を聞いてジンはようやく止まり、元の場所に戻った。

 なお、ルーチェとルネは二回目のげんこつを受けた後に正座の刑に処されていた。


「……その相談をしに来たんだが。まず、俺はこの依頼は受けるべきだとは思う。さっき言った資金の面もそうだし、王族に恩を売ることができれば何かと便利になりもする」

「ふむ、では何故躊躇しておるのだ? ジンが護衛に付くだけで良いのならば迷うことは無かろう」

「懸念事項は大いにあるんだ。まず一つ、俺一人では護衛をしきれない。流石に不眠不休でやることにも限度はあるし、風呂の中とかそんなところまで護衛出来るわけじゃないからな。次に、ルネは平気かも知れないが、お前らがこの手の護衛に関する経験が無いのが気になる。この依頼、万が一姫に何かあれば俺達の首が飛ぶからな、失敗ができない。それにもう一つ、下手をすると王家の騒動に巻き込まれる可能性がある。相手が何者か分からないが、もしこれが王家の関係者だった場合、俺達は間違いなく担ぎあげられるだろうな」

「担ぎあげられるってどういうことですか?」

「この間確認した通り、俺達の戦闘スキルは一般の兵士に比べるとアホみたいに高いわけだ。そんなレベルの人間……約一名世界の主神なんて規格外が居るが、それがまとめて七人、一人の権力者の下につく。他の権力者から見ればそれは脅威でしかない。何しろ、何をやらかしても力でねじ伏せられる可能性があるわけだからな。だから、俺達の存在を知らせることで周りの人間に対する抑止力となるわけだ」


 例え平和な世の中でも、相手をけん制して自国を守るために武力を持つ国がほとんどである。そして、名将ともなるとその人物が居るだけで相手に攻め込むことを躊躇させることが出来るほど、強い抑止力があるのだ。

 そんな中、世界で同一の基準で最高位のSSSが四人、更にかなりハイレベルなAAAが二人も一国の王の下に付く。しかも、そのうちの一人は世界に名を轟かせる英雄なのだ。他国にとって、これは非常に脅威的なことである。どの程度の脅威かといえば、古代ローマの戦争においてアメリカ空軍を投入されるぐらいの脅威である。

 ジンの説明を聞いて、レオが自分なりに解釈をして口を開いた。


「つまり何だ、俺らはそこにいるだけで周りの人間をビビらせることができるってわけか?」

「そういうことだ。すると当然俺達のことを邪魔に思うやつは出てくる。となると、ありとあらゆる手段を使って俺達を消しに来るだろうな。と言う訳で、場合によっては暗殺される危険性すらあるという訳だ」

「……話が見えないな。ジンの話だと利益とリスクが釣り合わない。報酬が欲しいだけならばそこいらのギルドで依頼を受けた方が余程安全だし、他の権利だって金さえあれば買えるかもしれない。正直命をかけてまで欲しいものでは無い筈だ。それなのに、君は受けるべきだって言う。これは一体どういうことだ? それと僕はいつまで正座してればいいんだい?」

「恐らく、ジンが懸念してるのは受けなかった時のリスクなのですよ。そうなのですね、ジン? それからもう足の感覚が無くなってきたのです、もう勘弁してほしいのです」


 もぞもぞと体を動かしながらのルネの質問に、ルーチェももじもじしながら答えてジンに確認を取る。

 なお二人は手を後ろで拘束され、正座したひざの上に錘としてジンの大剣とリサの大金槌を置かれている。


「ご明察、そういうことだ。何が一番問題かと言えば、『俺達がエルフィーナ姫の存在と現状を知っていること』が問題だ。ここの魔法陣が破られたのは調べればすぐにわかることだし、そうなった時に一番に疑われるのも恐らくは俺だ。そして何より、フィーナが俺達のことを隠しておく理由がない。さあ、この状態で俺達が依頼を断り、フィーナの身に何かが起こったとしよう。俺達は捕まったら縛り首物のお尋ねものになるだろうし、下手すりゃエストックの村さえ危うくなる。……正直、俺達がここを発見して、フィーナに依頼をされた時点で詰みなんだよ。そう言う訳でお前らまだ正座、逃げようとしたらげんこつ三発な」

「何よそれ。それじゃこの話し合いなんて意味無いじゃない。それならさっさと依頼を受ければ良いじゃないの」


「殺生なーーーー!」と叫ぶルネを無視してリサがジンにそう言った。

 ジンは「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」と繰り返しながら頭を押さえて震えるルーチェを無視してそれに言葉を返した。


「……依頼を受けた時点で即座に暗殺を警戒しなきゃいけないと分かって言ってるか? その危険性を認識させるために話し合いをしたんだが」

「うっ……」

「ううっ、何にせよ、受けなくちゃいけないことには変わりないんだね。ふう……王族関係か……正直あんまり関わりたくはなかったんだけどな、面倒くさそうだし。て言うかもう許してください……」


 足がつらいのかプルプル震えながらルネがそう言う。青い短パンから伸びる脚は圧迫されて青白く変色している。

 それを見て、ジンはにっこりと微笑んだ。


「そう言ってくれるな、ルネ。受ける以上、そのリスクに見合った報酬は掴み取って見せるさ。あ、正座を解かせろっていうのは却下な。さて、俺はフィーナと話を付けに……」


「そんなぁ……」と涙をこぼすルネにジンは背を向けると、エルフィーナの元に行こうとする。その肩にぽんっと手が置かれた。

 それに不穏な空気を感じたジンはギギギ、と言う擬音と共に後ろを振りむいた。そこには、先程のジンと同じようににっこりと微笑んだユウナが立っていた。


「……な、何でしょうか……ユウナさん?」


 ジンが笑顔のユウナにそう話しかけると、ユウナはジンの頬を撫で始めた。その行為にジンは言い表せない恐怖を感じ、顔から血の気が一気に引く。


「ジン? あったばかりの女の子ともう仲良くなったんですね……一国のお姫様にもう愛称で呼ぶことを許されるなんて、とんだ女誑しですよね……」


 ユウナはそう言うとジンの顔を鷲掴みにし、アイアンクローをかけた。ミシミシという音がジンの頭蓋骨から聞こえ始める。


「あだだだだだだだだだ! 割れる割れる割れるぅぅぅぅぅぅ!」

「女の敵は滅べば良いです」


 喚き散らすジンの声に構わず、笑顔でアイアンクローをかけ続けるユウナ。しばらくすると、悶えていたジンの動きがだんだんと緩慢になってきた。


「ちょ、ちょっと、ユウナさん!? ジンはお姫様とお話をしなきゃいけないので早く放すのです! はうぁ!? あ、足が……」

「……それもそうですね」


 それを見て、ルーチェが慌てて止めに入ろうとして思いっきりコケた。足が痺れて、上手く動けないのだ。

 しかし効果はあった様で、ユウナはルーチェの声を聞いてゆっくりと手を放した。

 ジンは一瞬がくっとひざを突き、こめかみを押さえながら立ち上がった。


「あたたたたたた……ユウナ、別にお前が思ってるようなもんじゃないから。多分ここにいる全員が皆そう呼ぶように言われるから気にするな」

「……分かりました。それじゃお話を済ませてきてください」

「言われなくてもそうするって。んじゃま、行ってくる。あ、ルーチェさっきはありがとう、ちゃんと正座して待っとけよ」


 不機嫌な顔でそう言うユウナに、ジンは苦笑して答えた。

「助けてあげたのにあんまりなのですーーーー!」と泣き言を言うルーチェを置き去りにしてジンはエルフィーナの所に戻る。

 椅子に座って退屈そうにしていたエルフィーナはジンが近付いてくるのを見ると、ゆっくりと顔を上げた。


「すまん、待たせた」

「……全部聞こえてたよ」


 エルフィーナは少し拗ねたようにそう言うとジンの眼を見つめた。自分達が強く警戒されていることがかなり不服のようである。

 それを受けて、ジンは思わず後ずさる。


「う……それはすまんかった。言い訳にしかならんが、あいつらはまだ少し認識が甘いからああいう言い方をさせてもらった。気分を害してしまったのなら謝ろう」

「いーよ、本当ならもう人に頼むのは諦めよーかなって思ってたから。自分の立場は分かってるし、危険だっていうのも分かってる。だから私はジンが受けてくれるんなら文句は言わないよ」

「そう言ってもらえると助かるよ。それじゃ、仲間に紹介するからそちらも自己紹介を頼む」

「その前に……みんな強いの? ジンが言ってるみたいに、とっても危ないんだよ?」


 そう言って可愛く小首をかしげながら、エルフィーナはジンの後ろのレオ達に眼をやった。

 それに対し、ジンは少し考えるそぶりをして答える。


「あいつらか? そうだな……経験を積めば今の俺より強くなる可能性があると言っておこうか。クラスは三人はもうSSSだし残りの二人もAAAだから実力的には申し分はないぞ」


 ジンがそう言った瞬間、エルフィーナの眼が再びまあるく見開かれた。


「うわぁ~、みんな強いんだねー。でも、ジンより強くなるってホントに?」

「それは保障するよ、何しろ条件次第じゃ俺に勝つこともあるからな。追いつかれないようにするのは俺でも苦労すると思うぜ?」

「そうなんだぁ~……うん、それじゃあ期待してるよ、英雄さん?」


 エルフィーナの発言にジンは照れくさそうに目線を逸らし頬を掻く。


「あんまり英雄って言われるのは慣れてないからくすぐったいな。それからそれを言うなら俺だけじゃなくて全員に言ってほしい。それじゃ、紹介しよう」


 そう言うとジンは仲間を全員呼び付け、自己紹介させた。

 なお、正座を続けていた二人組は、しびれた足に悶えながら地面に這いつくばっている。重ねてその二人の様子を見て、アーリアルが二人の足をつっつきたくて隣でうずうずしていた。


「モントバン国王女で、エルフィーナ・フラン・モントバンと言うんだ。依頼を受けてくれたみんなとは仲良くしたいし、私も使わないから敬語は使わなくていいよ。それから私のことはフィーナって呼んでね。これからよろしくね」

「ああ宜しく頼むよフィーナちゃん……どうだい、今夜あたりお兄さんと一緒に」

「逝けよやぁ!」

「はんぎゃああああ!?」


 ふざけたことを言いだしたレオに即座にリサが「色ボケ制裁マシーン・どっすん二号」と描かれた巨大なハンマーを叩きつける。

 レオは殴られた衝撃で、腰のあたりまで垂直に床に埋まる。


「少しは自重しなさいよ、レオ! ごめんなさいねフィーナ、この馬鹿は今この場できっちり絞めといてあげるから」

「ううん、気にしてないよ。だから少し手加減してね」

「了、解!」

「おぶぅ!? と、とめないのかよおぉぉぉおうふっ!?」


 リサは苦笑するエルフィーナに応えながら、釘を打つようにレオの頭をハンマーで連打する。レオも殴られるたびに釘よろしく床に撃ち込まれていく。

 派手な衝撃音が部屋中に響いているところから、リサが一切の躊躇もなくハンマーを振りぬいていることが分かった。


「い、いや、流れ的には止めないだろう……不敬罪で連帯責任取らされたらたまらないからね、しっかりと干されれば良いと思うよ……ああっ、やめてアーリアル様! アッー!」

「ほれ、つんつんつん……♪」


 耐えきれなくなったアーリアルにしびれた脚を突かれて、ルネが声を上げる。

 それを見て、エルフィーナはくすくすと笑い始めた。


「そんなことしないよ。本気でそんなことはしないって信じてるから、ね?」

「じゃあ、何で止めなかったのですか……ひぃぃぃ! や、やめるのですアーリアル様ぁ!」

「ぐりぐり……はっはっは、たのしいなぁ♪」


 今度はしびれた足をかかとで踏みにじられて、ルーチェが声を上げる。

 その様子を見て、アーリアルは楽しそうに笑った。


「えーっと、止めた方が良かったの?」

「いつものことですし、止めなくても大丈夫です……」

「あんぎゃああああああ! こ、こぼれるっっっっ!」

「……こ、こんな扱いで大丈夫ですよね?」

「大丈夫だ、問題無い」


 レオの断末魔を聞いておろおろするユウナに、ジンは微笑みながらそう答えた。

 その回答を聞いてエルフィーナはほーっと頷いた。


「そーなんだー。私はみんなが楽しければそれでいいよ。それよりさー、そろそろおとーさまの所へ行こう?」

「ああ、そうだな。事情を説明しないといけないし、報酬に関する相談もしなきゃならんからな。ただし、依頼に関することは自分で言ってくれよ? フィーナがどういう考えを持って俺を雇おうとしたのかなんて俺には分からないんだからな」

「だいじょーぶだよ、お父様ならきっとわかってくれるよ。でも、ジンはちょっとだけ気を付けたほーが良いかも」

「そりゃまた何で?」

「えーっとね……行けば分かると思うよ?」


 あどけないエルフィーナの表情からは、ジンは何も掴むことは出来なかった。


というわけで、訓練明け最初の依頼は王女様からの依頼です。

……こいつら駆け出しなのに。

リーダーの名声が高すぎると合わせる仲間もきつかろう。


それにしてもメンバーズがちっとも自重しないなぁ。

勝手に動いて気が付いたらこうなってるし。


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