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拝啓、親父殿。幼馴染が怖いです。  作者: F1チェイサー
第1章 じゅんびきかん
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どーしてこうなった!!! by ジン

いまさらですが、地震の死亡者の方々の冥福を祈ります。

私は被災地より離れた地域に住んでいるため、実際に被災者の方々がどのような心境で毎日を送っているかを知ることなどは不可能です。

私にできることと言えば、せいぜいが募金とこのように訳のわからない言葉を並べるだけです。

ですが、これを読んでくださる方の中に被災者の方がいらっしゃるのであれば、今回の話で少しでも笑顔を提供できたら幸いだと思っております。


……というわけで今回はギャグらしきパートです。

 ここはとある通りの大衆食堂。

 石造りの店内は冒険者や下級騎士などで賑わっており、店内では店員が休むことなく働いている。

 ジンたち一行は今日の食事どころをそこに決め、皆それぞれ思い思いに食事をしている。

 しかし、その食事中にジンは深々とため息をつくのだった。


「……まあ、レオが大量に食うのはそれなりに納得できる。リサが酒飲んで酔っ払うのはそこまで珍しいことでもない。でもなぁ……」


 ジンはそう言って隣に目をやる。


「こらぁ、きーてるのれふか、じん! あーたのまほーのちゅかいかたはめたくたなのれふ! ろーいうほろかふぇふめーひれほひのれふ!」

「ルーチェ、落ち着きなよ。さっきからもう十回は同じことを言ってるよ? あ、すみません、ホウレン草のグラタン十人前と魚介類のボンゴレ二十人前追加で」

「ルーチェが酒乱で、ルネがレオを上回る大食漢なんて聞いてねーよ」


 するとそこには、ワインの瓶を持ちながら絡んでくるルーチェと、皿を天に届かせるような凄まじい勢いで食事を平らげるルネの姿があった。

 そんな二人の姿を見て、ジンはほろほろと涙をこぼした。


「諦めよ、人生生きていればそういうこともある」

「ことの発端が何を言ってやがりますかなぁ、神様?」


 優雅にレオの膝の上で食事をしているアーリアルをジンは睨んだ。

 そう、事の発端はアーリアルの、


「今日はパーティが集まった初日なのだ、全員で盛大に騒ごうではないか、ジンのおごりで!」


 などと言う、超無責任な発言から始まり、調子に乗ってルーチェとリサが酒をかっ食らい、レオとルネが猛スピードで食事を食べ始めたのだった。


「ひうっ、レオー! ジンがいじめてくるぞ!」

「……なあ、ジン……お前、銭足りるか?」


 睨みつけてくるジンの視線を受けて、アーリアルはレオに泣き付く。

 レオはそれを頭を撫でてなだめながら、少し青い顔でジンに声をかけた。


「大量に皿を積み上げた一因のお前が言うな! ……まあ、金貨五枚を越えなきゃすぐに払えるが……ここが大衆食堂で助かるぜ、まったく……」

「テメェどんだけ金持ちなんだよ……」


 ジンの回答に、レオはげんなりとした表情でそう返した。何しろ、一般人の給料並の金額を即座に出せると言うのだから、ジンの懐の異常さが伺える。

 それを聞いて苦笑しながらジンが目の前のステーキに手をつけようとすると、


「り~ん~、わらひのおはなひひいれまへんね~? がふ~!」


 ルーチェがジンの頭に思いっきり噛みついた。まったくもって性質が悪い。 


「いってぇ!? こらルーチェ、噛みつくなだだだだだだだ!」

「にへ~、りゃあわらひのおなはひひいれふれるのれふね~?」


 ルーチェは長い耳の先まで真っ赤に染め、とろけた表情でジンに後ろから抱き付いた。

 誰もが一目見て可愛いと答えるであろうその顔がジンの頬にくっつく。


「聞いてやるから少し離れろ! 顔が近い、近すぎる!」


 そのあまりの近さにジンが軽く頬を染めて目を背けながらそう言うと、ルーチェはキョトンとした顔で、


「あれれるのれふよ?」


 と、呂律の回らない舌でそう言ってジンに頬と豊満な胸を押し当てるのであった。

 どうやら酔っているせいで、自分が何を言って何をしているかがよく分からなくなっているようである。


「やめんか! もう嫌だこの人、性質が悪すぎる……」


 ジンはそう言うと、しっかりホールドされたまま涙を流した。


「ねえ~、そう言えばユウナはどこに行ったのよ~? さっきから姿が見えないんだけど~?」

「ユウナならここのコックが過労で一人倒れたって言うのでその助っ人に行ったぜ? ユウナも料理の勉強がしたいって言っていたしな」


 群青のすわった目でリサがレオに問いかけると、レオは簡潔に答えた。


「そうか、それは大変だね。しかし、そのコックも日ごろから体調管理をしていなかったのかな……」


 それに対し、ルネが目の前の十四個目のハンバーグを食べながら反応を返した。

 人間でいえば十歳くらいの大きさの華奢な体のどこにそんな容量があるのかは誰も知らない。


「どう考えてもお前らが原因です、本当にありがとうございました」

「り~ん~? ひいれるのれふか~?」


 その様子を見て、ジンがボソッとそう呟いた。

 なお、いまだにジンはルーチェにとっ捕まって頬ずりされている。


「……なあ……何か周りからじろじろ見られてるような気がすんだけどよ……」

「奇遇ね~、アタシもなーんか視線を感じるのよね~、そこらじゅうから~」

「そりゃあ、君たちがSSSランクをあっさりクリアしたからさ。僕も気になってさっき訊いてみたら、リーダーが英雄でSSSクラスがその他に三人いるチームってことでもう話題になってるみたいだ。それに、ジンも変装していないしね。それはそうとミートドリア十五人前追加で」

「お前ら自分の行動が原因だとは欠片も思わんのか!? ユウナぁぁぁぁぁぁ! カムバーーーーーーーック! 俺を助けてくれぇぇぇぇ!」


 自重しない面々に対してとうとうジンの堪忍袋の緒が切れた。


「り~ん♪ にへはらおみみはみはみにゃのれふよ~♪ はみはみ♪」

「ひにゃあ!? やめろくすぐったい!!」

「おいひいのれふ~♪」


 ジンは立ち上がろうとするが、すっかりハイテンションになり、とろけた笑顔のルーチェに耳を甘噛みされて阻止された。

 


「にゃはははは! 聞いた~レオ、今ジンひにゃあって!」

「あ~あ~聞いたからお前少し声のトーン落とせな? 客は俺たちだけじゃねえんだからな?」


 奇声を発したジンをリサが指をさして笑い、レオは他人の迷惑を考えてそれを諌める。

 レオはアーリアルの相手をしていたためにそこまで飲んでおらず、まだ割と理性的である。


「お待たせいたしました、ホウレン草のグラタン十人前と魚介類のボンゴレ二十人前でございます。……ルーチェさん、少し落ち着きましょうか? ジンがとっても困っていますよ?」

「にゃにおいっているのれふ、りんにりょうひひろいうものをれふね~」


 その時、ユウナが厨房から料理を持ってきた。そして、ジンの様子を見るなり笑顔で怒気を振りまいた。

 それは耐性の無い者がまともに受ければ失神するようなレベルだったが、完全に酒がまわっているルーチェには通用しなかった。

 それどころか、話し相手を逃がすまいとギュッとジンを抱きしめた。それを見て、ユウナの周りの気温が下がる。


「ひいいいいいいっ!? レ、レオー! ユウナがとってもとっても怖いぞーーーーー!」


 ユウナの出す怒気、もとい殺気に当てられ、アーリアルが再びレオに泣き付いた。

 金色の眼には涙が湛えられていて、何も見ないようにレオの胸に顔をうずめるのだった。

 その様子に、レオは深々とため息をついた。


「テメェ一応神だろうが……もう少し威厳っつーものを保てねえのかよ? それからこういうことはせめて口を拭いてからにしろよ……ったく」

「んっ……すまんな……」


 自分のシャツについた染みを見て再びため息をつきながら、レオはアーリアルの口の周りについたソースをナプキンで拭う。

 アーリアルは若干頬を染めながら、黙ってそれを受け入れた。

 銀髪の二人がそうやっている有り様は、親子そのものだった。


「レオ~? アンタやけに冷静じゃな~い? 飲みが足りんのよ飲みが~!」

「ブルータス、お前もか」


 そんなレオの様子が不満だったのか、若干ふくれっ面でリサが酒瓶を片手にレオの肩に腕をまわした。

 その様子を見て、レオは自らの末路を悟った。


「ええい、今のレオは我の従者だ! 飲むなら一人で飲め!」

「アンタ神様でしょ~? 神様ならこれくらい広い心で許しなさいよ~?」

「ルーチェさん……少し表に行きませんか? いつまでジンにくっついているつもりですか?」

「いやにゃのれふ、りんにはおはにゃひひいれもらうのれふ」

「右下がり斜線、かっこアクサン シルコンフレクス、おー、アクサン シルコンフレクスかっこ閉じ、右上がり斜線、オワタ」

「……混沌としてるね。あ、そろそろデザートのプリン五十人前ください」


 文字通り混沌とした状況でルネはそう呟くと、十皿目のグラタンを食べ終えた。

 なお、その日の食事代金貨二枚なり。(日本円にして十二万円くらい)

 


以上、新参組の大暴走でした。


……幼馴染ーズより性質が悪いぞ、どうしてこうなった。

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