第四幕 運命は素直な収束
いままでの中でも結構いいんじゃない。
私の12月のクライマックスが通学の電車だったなんて…。
まず言う。12月は16日を過ぎ、半分を切る。言った通り、金曜日までのカウントダウンを心の中で静かに始める。残された課題はあと五つ。作り笑いでつぶやく。
なんだ、これならなんとかなりそうなんじゃ…。
何事もなく訪れた19日、学校は確かに慌ただしかった。ただならぬイベント尽くしの日の学校が始まるのはいつもより遅れた。
私の家から駅までは歩いて20分ほどかかって、道中露出した肌である顔や手を人つながりの石になったように冷やされる。改札を通ったらいつも通り階段を降りて構内に行くのだ。
おかしいな。
なんか、人がわらわらとうごめいてる。焦りが気化して空気感に摩擦が。
これは遅延だ。
掲示板にはいつも通りの時間のはまだ表示さえされておらず、ホームには3、4本前の電車が停まったままだった。かじかんだ手先にくっと力が入って、緊張すると、周りの音が少し際立って耳に入り込んだ。
ドアの前には10人分ほどの厚さの列ができていて、今は空の車内に入るか心配だ。
思い返すと師走は18日まで倒れ込んでいる。ただならぬ焦りの中には今日が尋常の日ではないことを予感させる。
いつもは見ない顔ぶれが並んでいる。電話の声も通話のスピーカーも大きい彼は、私の前にいて出勤が遅れることを話している。背中側に背負ったままのカバンに当たらないよう様子を伺いながら、私の後ろにも列を伸ばす人々の気を感じていた。
いつもの電車に乗ると、十数分の遅れを生む。ただ目の前にあるのは各停。その差は2本…。
いいんだ。私はこの各停を使う。なんだか考えるのがめんどくさいのもあるけど、負けたら遅延証明をもらう。それだけだよ。
扉が開いて、人が吸い込まれていく。もしここでこの列を出たなら、もう一度戻る勇気が私にはない。このまま入っちゃおう。
おえ、車内はぎちぎちで身動きが取れない。なんとか扉から二人ほど隔てた距離の地点を保って、そこのつり革を…。
私はつり革は握れてないけど、みんな最後までがんばろうね。
いいところまで荷物が入っても、やっぱりまた扉が開いてしまう。がんばるんだ、踏ん張るんだ、閉じたらこっちのもん。いけいけ。
入った。私の耳には動き出す電車もお腹が張ってて苦しそうな音を出しているように聞こえた。各停は停まる駅が多いから、私が置きざりにした急行に抜かされないか不安だ。いやまてよ、抜かされるとしたらきっと急行の停車駅のはず。
ならタイミングは一つ。今は見えないが、私達がぽつぽつと駅に停まっているうちに彼が迫ってくるのを思っていた。そうすると私も、周りの緊張感に溶け込めた感じがして、少し胸が高鳴る。
運命の停車駅。なんだかんだこの無知による賭けに必死になっている自分がいるのだが、後になっても私は楽しむことがいつも正解だと考えている。
今回も扉が開いた途端に人が溢れ出し、外の列に波紋を描く。ただ、乗り込んだ人が収まらない。急げ、がんばれ。急行が来て抜かされる前にここを出るんだ。いちにのさんで後ろに下がって、閉まり始めた扉は三度か四度私達を焦らした後にきっちり閉じたのだった。
二度と開くことはなく、しばらくして隣のホームに例の急行が停まる音が響いた。
私達ここで待つの?目の前で発たれる悔しさの波が沖の方から向かってくるのが見える。アナウンスは入らないし、背の違う人の真ん中からでは外の様子を伺おうともできない…。
人間はこういう不安や心配を表現するために力を尽くしすぎた。車内からは見えない空の代わりに私の心には暗雲が立ち込め始めた。ただ願った。
二つに一つ、それは動き始めた。目と共に閉じたあらゆる感覚がその結論を認識するまでには時間を要する。
私の身体が揺れると、私が押し込まれた先にちょうど良くあった吊り革を握りしめて、ちらちらと差す外の光を見つめた。
駅につくのはいつもより10分遅かった。まだ間に合うでしょ。私はもとの賭けには勝ったが、残された結果はちょっと無惨だった。
遅延証明をもらう窓口のには行列が敷かれたのを見たが、はなから並ぶ気はない。
間に合えば良いだけだ。
どんな先人も、これから先のいつの私でもこれを選んだはずだ。
駅を出て目の前の信号が青になるのを見て、私は歩き出した。
なんか怠けてたのか、ここらへんで終わってるんですけど。
書きかけのやつとかがあるので、今年の同時期に書けたらいいなとか思ってます。




