料理包丁で聖剣を斬る――逃亡の始まり！
堇の移動販売車は国道を走り抜けていた。
四輪駆動、魔力エンジン、最高時速160――これが彼女が改造した古い商用車で、名前は「チャーハン移動販売車1号」となっている。
後部座席には座席はなく、鍋一つ、魔導コンロ一台、卵二箱、調味料三缶、そして売れ残った弁当箱が積まれている。
彼女はハンドルを握り、冷静な目で前を見つめ、右手には鍋のヘラを持ち、戦闘態勢に入っている。
バックミラーには、騎士団の追跡車両が映る。五台の標準的な魔導型偵察車で、車両の上には雷光装置が取り付けられ、尾部には王国の追捕紋章が刻まれている。
前方500メートル先に断橋が見える。
堇はアクセルを踏み込む。車体が激しく揺れ、残りの橋の斜面に突っ込む。
飛び越える瞬間、左手で運転席の装置を叩き、右手でコンロの火を点ける。
鍋が自動的に持ち上がる。
彼女は卵を割り入れ、塩を振り、油を加え、米を入れて、一気に作業を進める。
着地の瞬間、車のタイヤが地面を引きずり、耳障りな音を立てる。
騎士団の追跡車が後ろに迫るが、断橋の縁で一瞬躊躇し、二台だけが飛び越えることに成功する。
堇は肘でサイドウィンドウのスイッチを押し、最初のチャーハンを後部のスライドレールに送る準備をする。
最初の追跡車が加速し、接近してきた。車の上部に雷撃器がすでに作動し、エネルギーを溜め終わっている。
堇は急ブレーキを踏み、車体が90度横にスライドして鍋のヘラが飛び出す。
ヘラが雷撃器の底に当たり、火花が散る。
次の瞬間、彼女は車の後部から飛び出し、手に料理包丁を持っている——
短刀で、幅広の刃、古い刻印が施されている。
刃が相手の車体に触れた瞬間、音はせず、金属は紙のように切り裂かれる。
二台目の車がタイヤを破裂させ、何回転かした後、土手に衝突して煙を上げて止まる。
堇は車に戻り、二鍋目のチャーハンをひっくり返す。
ペースを速めず、火加減も正確に、機械的で冷静な動作。
彼女は一振りの胡椒を加える。
魔導通信機が鳴り、黒市場の情報屋の声が聞こえてくる。「お前、騎士団三隊を倒したのか、今、王国中がお前の居場所を知っているぞ。」
「知ってるなら、知ってていい。」
「次はどこに行くつもりだ？」
「海辺。そこは卵が安いから。」
「狂ってる！前方に国境線がある、すべての検問が人を締め出している。」
「なら、野生地帯から行く。」
「それは禁魔地帯だ。」
堇は答えず、通信機を置いて、予備のナビを起動する。
彼女は自分でご飯を盛り、ひと口食べて、味はまずまずだと感じる。
突然、後ろからノックの音が響く。
彼女はバックミラーをちらりと見た——誰もいない。
車の上に人影が現れる。
堇は急ブレーキを踏み、車頭が下がり、車尾が上がる。
その人は車から落ち、エンジンフードの上に転がり、二回転して止まる。
「……ちょっと便乗させてもらっただけだ。」
その人は体を起こし、草帽をかぶり、ボロボロのマントを羽織り、背中に琵琶を背負って、口元に笑みを浮かべている。「そんなに驚かないでくれ。」
堇はその人をじっと見つめ、言葉を発しない。
その人は横のドアを叩いて言った。「ここでチャーハンを売っているのか？」
「あなたは誰だ。」
「旅人、吟遊詩人、逃亡者、あるいは、ノアと呼んでもいい。」
彼は優しく笑った。
「どこで乗った？」
「断橋を飛び越えたとき、空から落ちてきたんだ。ちょうど通りかかったんだ。」
彼は肩をすくめる。
堇は警戒を解かず、手に持っていた鍋のヘラをしっかりと握り、指をヘラの背に添える。
ノアは両手を上げて、無害だと示す。
「武器は持っていない。これが唯一の道具、琵琶だけだ。ただ、チャーハンを食べたいだけなんだ。」
「王国の人間か？」
「もしそうなら、今頃お前を追っているはずだ。でも、こっちが追い詰められている。」
「正直に言え。」
「私は王国の人間じゃない。君の『聖剣チャーハン勇者』にとても興味があるんだ。」
堇の顔色が少し変わる。
ノアは座り、帽子を膝の上に置いて言った。「君の聖剣が今はヘラになっているって聞いた。」
「噂が早いね。」
「だから一つ聞きたいことがあるんだ。」
ノアは彼女を見ながら言った。「それ、まだ切れるのか？」
堇は答えず、ただ鍋を再び火にかける。
炎が上がり、熱い油が踊る。
彼女は料理包丁を抜く。
次の瞬間、遠くから高圧の魔法矢が飛んできて、車の後ろの窓を直撃しようとする。
堇は逆手に刀を振る。
刃が魔法矢と接触した瞬間、光の線が切れ、左右に分裂して地面と木に当たって火花が散る。
ノアはその一撃を見て、しばらく沈黙する。
「本当に斬れるんだな。」
堇は二鍋目のチャーハンを彼に渡し、「食べ終わったら消えろ。」
ノアは食事を受け取り、ひと口食べた。
目を閉じて、ゆっくりと噛みしめる。
車の外では、騎士団の残りの部隊が回り込んできており、距離はもう1キロ未満だ。
堇は手を伸ばし、再び鍋の火をつける。
三鍋目が始まる。
彼女はもう何も言わず、ただ料理を作り、野菜を切り、炒め、戦い続ける。
ノアは二杯目のチャーハンを食べ終わり、自発的に立ち上がり、窓辺に立って風を見守る。
「三時方向に伏兵がいる、茂みが動いた。」
堇はうなずく。
彼女はコンロの下から瓶を取り出し、瓶には古い符文の紙が貼られている。
瓶の蓋を開けると、魔法の気流が吹き出し、火の蛇となって車外に飛び出していった。
「それは爆炎の巻物？」
「自作だ。唐辛子と火炎の呪文、安定性はオリジナルよりも高い。」
火の蛇は茂みに突っ込み
