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天霊戦騎エインヘリアル  作者: 九澄アキラ
第23話「光来する闇」
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第23話1/3 邪竜アナンダ

「まさかマナスヴァインまでやられちまうとはよぉ〜」


 八闘士のアジトでバーナンダがぼやく。


(かえ)ってきてからずっと縮こまってるわぁ」

「マナスヴァインをここまで痛めつけるとは、奴らに対する認識を改める必要がある。お前たち、まだ身体は治らぬのか?」


 残る最後の八闘士、ウトパラカが尋ねる。


「それがおかしいんだ。いつもならとっくに再生してるはずなんだが……」

「ヴヴ……、オレもだ」

 

 不可解――。

 本来であれば、マナスヴァインを除く八闘士は既に肉体を再生しているはずなのだ。

 突き刺さっている大槍のせいか、それとも母体たるニーズヘッグ本体に何か異常があるのか。


「ウトパラカ。俺とバーナンダの身体は半分ほど治っている。俺たちを1つにすれば肉体を持てるはずだ」

「よいのか?」

「俺は兄者に従うぜ!」

「よかろう。オーム・アー・フーム!」


 ナンダの提案にバーナンダも同意する。

 ウトパラカが真言とともにニーズヘッグの体表が隆起し、半人半蛇の新たな八闘士が誕生した。

 

「「奴ら、今度こそ叩きのめしてやる!」



 ――――



「どりゃあ!」

「ていっ!」

 

 素早く、激しく打ち合う拳と拳。

 野原で組手をするエクスとマグニを、ゴズマ、イル、スルーズ、アルティナが観戦している。


「本当に強くなったねマグニ」

「へへ、エクスさん。相棒(ランヴェルス)をパワーアップさせてくれてありがとな!」

「私は巨大なパワーに耐えられるよう機体を設計しただけ。マナスヴァインを倒したのは君の力だよ」


 以前はエクスに翻弄されっぱなしだったマグニだが、今はパワー・スピードともに五角以上に打ち合っている。

 人を超えた存在である2人の打撃の衝撃は凄まじく、スルーズたちもかなり距離を取って観戦している。


「……ん?」


 突然、エクスが動きを止めた。

 

「どうした?」

「なにか来る……!」


 かすかに伝わってくる地響き。

 何かが地中を潜航している。

 すると突然地面がめくれ上がり、蛇のような下半身を持つ三ツ首の怪物が姿を現した。


「こいつは!?」

「八闘士? いや、こいつは見たことがない」

「見つけたぞぉ……ビリビリ痺れるガキぃ!」

「あの時はよくもやってくれたな!」

「その声……ナンダとバーナンダか!?」

「そうよ! 俺たちはお前らに復讐するために蘇った!」

「俺たち兄弟が合体したこの『アナンダ』で、貴様らを蹂躙してやる!」


 左右の首が怒鳴るように言い放つ。

 顔つきと口ぶりからして右がナンダ、左がバーナンダのようだ。


「……真ん中のやつは誰だよ?」


 中央の首を指差すマグニ。

 ナンダとバーナンダもわかってないような表情で中央の首を見る。


「うるせぇ! 潰れろぉ~っ!」

「なっ!?」


 アナンダの尾の一部が変形し、現れた両脚がマグニとエクス目掛けて踏みつける。

 逃げる間もなく、2人は踏み潰されてしまった。


「マグニ!?」

「エクスさん!?」

「「ハッハァー! ざまぁみやがれ~!」」


 二重の声で高らかに笑うアナンダ。

 だが突然、強く踏みしめたはずの足元がぐらついた。


「……な、なんだぁ!?」


 ゆっくりと脚が持ち上がっていく。


「「……ぅうおおおおおおおおおおおおおぉ!」」


 足の裏から聞こえてくる叫び。

 エクスとマグニが、両手でアナンダの脚を持ち上げているのだ。


「「おおおりゃああああああああっ!」」


 2人が渾身の力を込めると脚が押し上げられ、体勢を崩したアナンダが派手に倒れる。

 本来の力を取り戻したエクス、神族として覚醒したマグニ。

 生身であっても、2人の力はアナンダの巨体を投げ飛ばすほど高まっていた。


「大丈夫か2人とも!」


 異変を察知したカナリアが駆けつける。


「このガキ……なんて力出しやがる」

「あ、兄者! アイツだ! 兄者をやったやつだ!」

「あぁ、忌々しい奴らが揃ったな」

 

 アナンダが怒りに指を震わせ、カナリアを指差す。

 

「どうやら、ナンダとバーナンダが混ざってるみたいだな」

「そのようだ」

「「貴様ら、まとめてかかってこい!」」

「お望み通り、くらえっ!」

蒼炎斬(そうえんざん)!」


 マグニが雷撃を放ち、カナリアが炎の斬撃波を放つ。

 アナンダの身体が炎と電撃の渦に覆われるが、アナンダは容易く弾き返してしまった。


「なにっ!?」

「お前の電撃はもう効かん!」

「てめぇの炎もなぁ!」

「くっ……」

 

 アナンダは融合する際にナンダ・バーナンダ双方の弱点を克服し、その肉体はより強固なものとなっている。

 それを聞いてたじろいだカナリアの足元で、マグニが静かに腰を落とし構えた。


「小僧、何のつもりだ?」

「何をやっても無駄だと教えてやる!」


 マグニへ向け突撃するアナンダ。

 迎え撃つようにマグニが拳を突き出すと、後方から飛んできた巨大な鉄拳(ボルテック・ナックル)がアナンダの顔面を直撃した。


「がはっ……」

「なら、力でぶっ飛ばす!」

「ぬああぁっ!」


 再び転倒するアナンダ。

 その隙に残るパーツが次々に飛来し、マグニの背後にG・ランヴェルスが顕現する。


「ふ……フハハ、ハァーハッハッハ!」

 

 なら、力でぶっ飛ばす――。

 マグニの言葉を聞いたゴズマはおおいに笑った。

 かつての雷神トールも、雷撃の効かない魔物にそう言ったのだ。

 あれは間違いなく雷神の息子。

 ゴズマの中にかつての熱い想いが、死に場所を求めていた戦士に生きる活力が炎のように燃え上がった。


「おいエクス! お前の言ってたアレ。今すぐ出来るか!?」

「えっ……出来るけど」

「おし、やってくれ!」

「わかった。……はっ!」


 エクスが手を触れると、ゴズマの身体はコズミウムの結晶に包まれた。

 そして――。


「うおおおおおっ……どぉりゃあっ!!」


 雄叫びとともに結晶が弾け飛び、雄々しい2本角と強く逞しい肉体を誇る新たなゴズマ、ゴズマ・天が姿を現した。


「よくもやりやが……」

牛頭・天魔豪鉄拳ごず・てんまごうてっけん!」

「げはぁっ!?」


 起き上がったアナンダを再び鋼鉄の拳が打つ。

 大きさ・弾速・威力ともに増したゴズマのチェーンナックルだ。


「ゴズマ、その姿……」

「お前を見てたら心が(たぎ)った。いくぞ!」

「おう!」

 

 蒼き魔神と偉大な勇士が並び立ち、構えを取る。

 あつらえたかのように互いの全高が同じなのは、マグニと肩を並べ戦いたいとゴズマが願ったからである。

 

「「貴様ら、いい加減にしろぉ!」」


 アナンダの両首からうねる光線が放たれ、ランヴェルスとゴズマを狙う。


「ふん! 牛頭・天網恢恢ごず・てんもうかいかい!」


 ゴズマが合掌し両掌を突き出すと、巨大な闘気の掌がアナンダの光線を受け止め、球状に丸め始めた。


「なななっ!?」

()ァッ!」

「どわぁぁっ!」


 そのままエネルギーの塊をアナンダへ撃ち返す。

 激昂態レイジング・フォームと同等の力を誇るゴズマ・天の闘気が上乗せされたエネルギーはアナンダの強固な肉体すら焼き焦がし、大ダメージを与えた。

 

「すごい……」

 

 新たな姿となったゴズマの活躍を喜びつつも、イルは複雑な思いを抱えていた。

 もうゴズマの整備や、彼の為の装備の製作も必要無くなってしまうんだろうと。

 だが、その心配はすぐに吹き飛んだ。


「イル、ドリルを出せ!」

「え?」

「付けられるようにしてあんだよ」


 ゴズマの腕が変形し、これまでと同じアタッチメントが露出する。


「……うん!」

 

 イルは満面の笑みを浮かべ、ワークローダーの荷台からドリルを手渡し、ゴズマはそれを腕に装着した。

 

「ふぅ、間に合ったぜ」

「と、言ってももう終わりのようね」


 遅れてヒョウガとクライオーネが到着する。

 既にアナンダは虫の息だ。

 

「このまま決めるぞ!」

「吹き放題しやがってえ……なぁっ!?」


 起き上がったアナンダが見たのは、自身に向け必殺技の構えを取るエクス、カナリア、ヒョウガ、クライオーネの4人。

 さらに上空では雷鳴が轟き、既にマグニがトールハンマーブレイカーの準備を完了していた。


「ぬぅぅぅぅん!」

 

 最後にゴズマがドリルアームを空に飛ばし、闘気で巨大化させる。

 

「「お、お前ら……いつの間にこんなに強く……!」」

破龍(はりゅう)星烈斬(せいれつざん)!」

「ナイティック・エクスラッシュ!」

刃輝一閃(じんきいっせん)!」

「フロス・スティーリア!」

牛頭・轟心螺旋(ごず・ごうしんらせん)!」

「トールハンマーブレイカァァーッ!」


 恐れ慄くアナンダに、各々の必殺の一撃が同時に炸裂する。


「ぬわああーっ!」

「覚えてやがれー!」


 粉微塵となって消滅するアナンダ。

 捨て台詞を残し、兄弟は再び闇となって去っていった。


「えっ、もう倒しちゃったの!?」

「遅いよ姉ちゃん」


 爆炎から飛び出てきたマグニがエスペランサの肩に着地する。


「もう八闘士も敵じゃねえな」

「今の私たちなら残る八闘士も、ゲオルギウスもきっと……」

「あぁ、俺たちならどんな敵にだって負けないさ!」


 自分たちは強くなった。

 その確かな実感を掴むカナリア、ヒョウガ、クライオーネ。

 その頃、勝利に湧く彼らの様子を王国の中から眺めている者がいた。

 

「あーあ、なにやってんだか……」

 

 仲間の醜態に呆れるように、タクシャカは木陰で呟いた。



最後までお読み頂きありがとうございます。


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