第22話6/6 逆転のトールハンマーブレイカー
氷と溶岩の大地に顕現した、新たなランヴェルス。
頭部のコクピットにマグニが飛び乗ると、滾る力が雷鳴の如き迸りを見せる。
マナスヴァインへゆっくりと歩を進める。
「何が神だ。一息で凍らせてやる!」
マナスヴァインの氷結ブレスが蒼き魔神を凍りつかせる。
だが、G・ランヴェルスのパワーは張り付いた氷を容易く砕いてしまう。
マナスヴァインが眉をしかめる中、マグニは拳を構える。
G・ランヴェルスの拳が高速回転し、稲妻を纏っていく。
「ボルテック・ナックルッッッ!」
力強く突き出された拳が弾丸のごとく打ち出され、螺旋と雷光の軌跡を描きマナスヴァインを貫く。
「がっ……!?」
干渉波を受けていない状態でありながら、拳という矮小な物を射出するだけの攻撃でありながら、マナスヴァインの土手っ腹に大穴が空いた。
ボルテック・ナックルの纏った稲妻は、マナスヴァインの体内を貫通する際にその肉体をズタズタに破壊し、質量以上のダメージを与えていた。
戻ってきた拳を再装着し、堂々と佇むG・ランヴェルスの姿にマナスヴァインの自尊心が揺らめく。
「ふ……ふざけるなぁっ!」
傷を再生し、ランヴェルス目掛けてマナスヴァインが突撃する。
この身を貫く拳があったとしても、いくらでも再生できる。
所詮は30mほどのちっぽけな機械にすぎない。
「押しつぶしてやるぅ!」
迫るマナスヴァインに動じることなく、再びランヴェルスの両拳に稲光が走る。
「サンダー・バインド!」
「ぐあっ!」
ランヴェルスの両掌から放たれた雷撃が、マナスヴァインを拘束する。
「おおおおりゃあああっ!」
「そんなっ……馬鹿な!?」
そのままマナスヴァインを振り回し、氷の大地へと叩き落とした。
「ゲギャアァッ!?」
自らの数百分の一の大きさしかない存在に殴られ、振り回され、打ち付けられる。
大きさこそ、質量こそ強さを決定づける力のはずだ。
己の信念を真っ向から打ち砕く存在に、マナスヴァインの自信が徐々に砕けていく。
「なんなんだおまえはぁ! そんなに小さいのに、なんでそんな力が……ギギャッ!?」
起き上がったマナスヴァインにG・ランヴェルスが矢継ぎ早にパンチやキックを浴びせかける。
その一撃一撃に大蛇の巨体がよろめく。
「すごい……」
グングニルを治療しながら、エクスは驚愕していた。
G・ランヴェルスはワルキューレではない。
発掘されたミョルニルの破片を機体各部に組み込み、エクスが自身の能力で創り上げたこの世界唯一の”スーパーロボット”だ。
だが、作成者のエクスも眼の前で繰り広げられる魔神の如きG・ランヴェルスの戦闘力は想定を超えるものだった。
あの稲妻は、間違いなくマグニ自身の力だ。
マグニの発した稲妻が機体各部のミョルニルによって増幅され、あの巨大な蛇を穿つ破壊力を与えているのだ。
「サンダー・サーベル!」
「ウアアアァッ!」
空へ飛び上がったG・ランヴェルスが雷鳴を呼び、雷をその手に掴み、投げる。
雷光の剣がマナスヴァインの首元を貫き、目打ちするように大地に固定する。
「とどめだ!」
G・ランヴェルスの頭部が開き、マグニが空中へ飛び出す。
胸元に下げたペンダントを掴むと、それは巨大な柄へと変わる。
そして、掲げた柄にG・ランヴェルスのパーツが次々と組み合わさり、大蛇を討つ巨大な魔鎚が完成した。
「な、なんだ、あれは……。 ぐあっ……!?」
雷鳴轟く空に慄き、なんとか拘束から抜け出そうとするマナスヴァインの肉体が悲鳴を上げる。
グングニルの干渉波だ。
快復したグングニルが再び干渉波を放っていた。
身動きの取れぬ大蛇へ向け、巨大な鉄鎚が落下を始める。
まずい。
今、あの攻撃を受けるのは絶対にまずい。
マナスヴァインの心が恐怖に震える。
「させるかぁっ!」
苦し紛れに打ち出す氷塊弾。
だが、それがマグニに届くことはなかった。
「はぁっ!」
割り込んできたエクスが氷塊が砕く。
しかもその手に握られているのは、マグリア王のワルキューレの盾。
(あれは……アイツの!?)
エクスはそのままシールドをマナスヴァインの瞳に突き立てた。
「ギャアアアアアッ!」
「マグニ! 今だ!」
エクスの離脱を確認したマグニは万感の想いを込め、雷神の……父の名を冠した鉄槌を振り下ろす。
「トールハンマァァァ……ブレイカァァァァァァッ!」
「ギギャアアアァッッッ!!」
雷鳴一閃──。
極限の一撃がマナスヴァインの頭部を打ち砕き、肉体全てを破壊する。
勝利を告げる爆炎の火柱からマグニが飛び出し、力強く拳を掲げる。
その後ろにG・ランヴェルスも降り立ち、逆光が新たな雷神の姿を照らし出した。
――――
「マグニィー!」
戦いは終わり、スルーズが勢いよくマグニに抱きつく。
「本当に、本当に心配したんだから……!」
「姉ちゃん……ありがとう」
涙を流す姉の頭を、マグニは優しく撫でる。
そこにズシン、ズシンとゴズマがやってくる。
「おまえ……」
ゴズマは機械鎧を脱ぐと、何も言わぬままマグニを抱きしめた。
「よく戻った……!」
「へへっ……少しは父さんに近づけたかな」
ゴズマらしくない、相手を労るような力加減。
マグニの顔から思わず笑みがこぼれた。
――――
「ていっ!」
「おうっ」
王国に戻ったマグニの胸を、アルティナがドカッとどつく。
「ずっと看病してたんだから、これで借りは無しだからね!」
「はいはい……。ありがとう、姫様」
「マグニ、少し明るくなった?」
「なんだよ。前から明るかったろ?」
弟の変化に、姉は気付いていた。
以前のマグニは明るくもどこか寂しそうで、影のある性格だった。
だが、今の彼は自分が何者であるか知っている。
(やるよ父さん。父さんから受け継いだこの力で、必ずみんなを守ってみせる。俺と……相棒の力で)
夕焼けの中、若き雷神は決意の拳を握りしめた。
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