第22話5/6 覚醒、蒼雷魔神G・ランヴェルス!
マナスヴァインとの戦いにグングニルが参戦する中、マグニはいまだ眠り続けていた。
ベッドに横たわる彼の掌を母カーラがそっと握り、語りかける。
「マグニ、あなたを拾う少し前……私は夫に先立たれて悲しみに暮れていたわ」
カーラはエクスに言われた通り、息子との思い出をその始まりから追憶する。
「そんな時、森であなたを見つけた」
記憶の世界――。
あの日、訓練終わりに通った山道が崩れ、カーラは森に転げ落ちてしまう。
身体を起こすと、断崖に掘られた遺跡の入口があった。
崖上から身を案じる兵たちの声が響く。
カーラは自身の無事を告げ、遺跡へと足を踏み入れた。
中は神殿のような作りで、見たこともない文字が壁に刻まれている。
奥まで行くと、開けた部屋の中央にシャボン玉のような球体が浮かんでいた。
「あなたは遺跡の中で、玉に包まれて浮かんでいた……」
玉の中には赤子がいた。
まるで時間が止まっているかのように、赤子は動かない。
カーラが玉に触れるとそれは弾け、カーラの腕の中に収まった赤子は時が再び動き出したかのように、泣き始めた。
慌てるカーラの前に、男女の立体映像が映し出される。
「あなたを拾い上げると、あなたの本当のご両親が語りかけてきたわ。この子を頼む。きっと強い子に育つと……」
これから大きな戦乱が起こり、全てが滅ぶかもしれない。
だが、我が子だけは守りたかった。
その為に時のゆりかごに我が子を託し、平和な未来で生きられるようにと。
映像の中、赤いマントを羽織い、神々しいまでの逞しさを感じさせる男はカーラにそう告げた。
「運命だと思ったわ。あなたは神の贈り物、あなたを育て上げるのが私の責務だと……」
初めて言葉を喋った日、初めて立ち上がった日、初めて姉弟で喧嘩した日。
カーラの脳裏に、マグニとの思い出が次々と浮かび上がる。
「いつの間にかこんなに立派になって。マグニ、あなたにとって私は……良い母親だったかしら」
カーラの瞳から涙がこぼれた。
「母さん……」
母の記憶の世界を、マグニはその場にいるかのように見ていた。
場面は変わり、マグニは天界と巨人族が争い合う戦場=ラグナロクの真っ只中に佇む。
「トアアアアッ!」
叫び声を上げ、先の映像で見た男がハンマーを振り上げ、世界を呑み込むほど巨大な蛇に戦いを挑んでいく。
男が魔鎚の一振りで大蛇を屠るも、大蛇は今際の際に猛毒を男に浴びせかけた。
毒に蝕まれ、やがて男は地に伏した。
(マグニ、強く生きろ……遥か、未来で……)
それが男の、雷神トールが最期に思ったことだった。
『覚悟は決まったか?』
辺りが急に暗くなり、マグニは背後から聞こえた声に振り返る。
『お前の使命に、向き合う時だ』
その声は父の、雷神トールの声にどこか似ていた。
マグニの見つめる先に、人型のシルエットが浮かび上がる。
「父さん……なのか?」
『いや……我はお前の父ではない。我は、お前とともに闘ってきた。そして――これからも共に闘い続ける者だ』
シルエットが変化し、マグニは声の正体が愛機ランヴェルスだと気付いた。
マグニに語りかけながら、シルエットはより力強い形へと変わっていく。
『さぁ、掴め。お前の本当の力を……』
眼の前に赤い結晶が現れる。
マグニは手を伸ばし、それを力強く掴んだ。
――――
「きゃあっ!?」
突然、部屋中に雷鳴が轟いた。
マグニから発した激しい閃光に、カーラとアルティナが目を覆う。
「マグニ……?」
光が収まるとベッドの上からマグニの姿は無くなっていた。
「ありがとう。母さん、姫様」
その声に振り返ったカーラとアルティナが窓際を見ると、放電のアークを身体に纏い、新しい衣装に身を包んだマグニが立っていた。
その髪は稲妻のように逆立ち、その目は炎のごとく赤く燃えている。
「俺、みんなを助けにいくよ」
もう何ひとつ迷いはない。
自分が何者で、何を成すべきなのか。
全ての答えを得た。
マグニは窓から文字通り飛び出し、西へ、マグリアの方向へ飛んでいった。
そして彼を追うように、山から飛び出した十数個の蒼い閃光が空に軌跡を描いた。
――――
マグリアでは戦いが続いていた。
ニーズヘッグ細胞を抑制する力を持つグングニルだが、体格はマナスヴァインの方が何倍も大きい。
再生能力がなくなったとはいえ、巨大すぎるマナスヴァインを倒す決定打が足りない。
「グングニル! 俺に炎を!」
カナリアの意図を察し、グングニルがブレスを放つ。
「蒼炎紅蓮斬!」
剣にブレスを吸収させたカナリアの必殺剣がマナスヴァインの頭角を砕く。
「グギャアアッ!」
苦しみ悶え、溶岩の海に沈むマナスヴァイン。
だが、まだ息がある。
ヤツの動きに合わせて揺らめく溶岩がそれを教える。
「ギシャアアッ!」
再びマナスヴァインが飛び出し、迎え撃つグングニルがブレスを直撃させる。
だが、マナスヴァインはそれをものともせず突進、グングニルを弾き飛ばした。
「きゃあああっ!」
激しい衝撃にシニューニャが悲鳴を上げる。
氷山に叩きつけられたグングニルは力なく横たわり、翼からの干渉波も止まる。
「よくも……好き勝手やってくれたね」
立ち上がったマナスヴァインは黒い外殻に身を包んでいた。
その正体は煮えたぎる溶岩を自身の能力で急速冷却し、鎧としたものだった。
干渉波の発生が止まった事で、マナスヴァインの肉体がみるみる再生し始める。
「今度こそ、終わりだよ!」
迫るマナスヴァイン。
もはや万策尽きた。
今度こそ絶体絶命だ。
(マグニ……助けて!)
スルーズが願う。
ともに育った、最も信頼する家族の名を──。
「ん……? ギャギババババッ!?」
突然、氷結ドームの天井を砕き、激しい稲光が降り注いだ。
マナスヴァインに激痛を与えるほどの雷撃が収まると、1人の男が降り立った。
「待たせたな。姉ちゃん、みんな!」
「マグ……ニ?」
振り返り、マグニは皆に笑顔を見せる。
スルーズは歓喜の涙を浮かべ、ゴズマはトールと重なるマグニの姿に心を震わせる。
「な、なんだ。お前は……!」
一方、マナスヴァインは困惑していた。
こんな豆粒ほどの小さなやつが、自分にこれほどの痛みを与えたのか?
ありえない!
「なんなんだお前はぁ!……うっ!?」
怒り狂うマナスヴァインの威圧に一切臆することなく、マグニは鋭い視線を向ける。
そして、彼の後ろにいくつもの物体が積み重なるように降下してくる。
それらは組み合わさり、足首、脛、腿と次第に人のカタチを成していく。
「こ、こいつは……!?」
最後に頭部が組み合わさり、巨大な蒼き魔神が姿を現した。
その威容はランヴェルスよりも更に力強く、更に強靭に、更に神々しい。
「俺はマグニ。雷神トールの息子だ!」
「神……だってぇ?」
「俺とランヴェルスが、お前を討ち倒す!」
マグニの動きと同期するように、蒼雷魔神 G・ランヴェルスはマナスヴァインへ宣戦布告を突きつけた。
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