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天霊戦騎エインヘリアル  作者: 九澄アキラ
第22話「目覚める雷鳴」
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第22話4/6 巨龍咆哮

「再生した……!?」

「こんなの……どうやって倒せばいいのよ」


 再び眼前に現れた無傷のマナスヴァインに、カナリアとスルーズは戦慄した。

 ただでさえ攻撃が通らない堅牢さを持ちながら、驚異的な再生能力まで有している。

 しかも、その巨体から繰り出す攻撃は強力無比。

 この岩山の如き大蛇を打ち倒すには、如何なる策を(ろう)せばいいのか。

 考えつくより早く、マナスヴァインが再び吹雪を起こし、周囲の視界を奪い始めた。

 

「また囲む気か!?」

 

 だが、なにも起きないまま吹雪は消えた。

 澄み渡る視界と空気。

 氷の大地がどこまでも広がる。

 だが、そこにマナスヴァインの姿は無い。

 

「え……?」

「奴はどこだ!?」

「消えた……?」

「いや……」

 

 全長400mを超える巨体をいったいどこに隠したのか。

 答えはすぐにわかった。

 

「下だ!」

 

 エクスが叫んだ次の瞬間、大地が割れ、高熱のマグマと共にマナスヴァインが宙へと飛び出した。

 

「うわああああああっ!」

 

 自分たちが立っている大地そのものを吹き飛ばす規格外の攻撃。

 カナリアたちは成すすべなく吹き飛ばされた。



 ――――

 


 一方その頃、王国では――。

 

「――!」

「ぐんぐー?」


 シニューニャと遊んでいたグングニルが、何かを察知したように頭を上げる。

 その瞳は空の彼方、マグリアの方向をじっと見つめている。

 不思議に思ったシニューニャが近づくと、グングニルは突然走り出した。

 

「ぐんぐー、どこいくのー?」


 追いかけるシニューニャ。

 どんどんと距離を離すグングニル。

 やがてグングニルは城門の外に出ると立ち止まり、シニューニャの方へ向き直った。

 

「ぐんぐー……?」

 

 首をかしげるシニューニャ。

 すると、グングニルの身体が淡く光り始めた。

 その光はみるみるうちに大きく、とても大きくなり……。


「おおー」

 

 

 ――――


 

「うぅ……」

「みんな、無事か……?」


 地に伏したカナリアが辺りを見渡す。

 どうやら全員無事のようだ。


「なんだこれ……」


 だが、起き上がった一同は息を呑んだ。

 マナスヴァインの潜行によって破壊された地殻からマグマがとめどなく溢れ出し、今までの極寒の世界は一転して溶岩の海が広がる熱地獄へと変わっていた。

 マナスヴァインはその溶岩の海に平然と君臨し、(わら)っている。


「地面ってサァ……柔らかくて困っちゃうよねえ。すぐに壊れちゃうんだから……キシシシシ! 君たちはいつまで壊れずにいられるかなぁ!?」


 再び潜航を始めるマナスヴァイン。


「みんな! はやく上空へ……うわあぁっ!」


 エクスが指示を飛ばすよりも速く、マナスヴァインが地中から飛び出した。


「今度は上からだよぉ!」

 

 氷結ドームの天井近くまでジャンプしたマナスヴァインがその巨体を回転させる。

 その遠心力によって身に纏わりついた溶岩が振り落とされ、大地に向け無数の火炎弾となって放たれた。


「みんな避けろ!」

「おいおいおいおい!」


 空中へ逃れるカナリア、エスペランサ、ガルディエーヌ。

 地上に残されたヒョウガは慌てて高速移動で大地を駆け回る。

 火炎弾を避けながらマグマの海に浮かぶ大地に次々に飛び移っていく。


「こいつは洒落にならねえ!」


 洞窟周辺にも火炎弾が降り注ぎ、至近弾をゴズマがアームバスターで迎撃していく。

 

「くっ……」


 その頃、エクスも同じく火炎弾を避け続けていた。

 マナスヴァインの浮上時に至近距離にいたため、空中へ逃げ損ねてしまったのだ。

 火炎弾が落ちるたび、爆炎と蒸発した氷による水蒸気で周囲が見えなくなっていく。

  

「エクス!」

 

 自身を呼ぶ、張り詰めたようなカナリアの声に振り向いたエクスは違和感に包まれた。

 辺りが暗いのだ。

 カナリアは明るい場所から、こちらに手を伸ばしている。

 そして、見える範囲にマナスヴァインの姿はない。

 まさか――と、エクスは頭上を見上げる。

 悪い予感は的中し、眼の前に現れたのは深淵のような巨大な口。

 落下してきたマナスヴァインが、今まさにエクスを丸呑みにしようとしていた。

 

「しまっ……」


 間に合わない。

 避けようにも巨大すぎる。

 なすすべなく、エクスが呑まれようとした時――。


「ギジャアッ!?」

 

 ドームの外壁を貫き、青い閃光がマナスヴァインを穿った。

 その威力にマナスヴァインは軌道を逸らされ、大地に叩きつけられる。


「ギジャッ……! な、なんだ今のは!?」

 

 起き上がったマナスヴァインの頬が抉られ、焼け焦げている。

 いったい何が起きた?

 誰があの閃光を放った?

 皆が外壁に空いた穴へ注目する中、更に大きく外壁が砕かれ……。


「キュオオオオオッ!」


 真紅の身体に純白の外殻を纏った、巨大なドラゴンが姿を現した。

 背に生えた2対の翼は剣のように鋭く、走る金色のラインが神々しさを放つ。


「なんだ、こいつは……」

 

 思わぬ乱入者にマナスヴァインが眉を(ひそ)める。

 巨龍はエクスを護るように、逞しい四肢で大地を踏みしめた。

 その青い瞳は、自身を善なる存在だと知らしめるように輝いている。

 

「やっほー」

「シニューニャちゃん!?」

 

 巨龍から聞こえてきたのは、意外にも聞き慣れた声だった。

 よく見れば、巨龍の胸部にある青い結晶の中からシニューニャが手を降っている。

 

「ぐんぐー、おっきくなった」

「えっ……これ、グングニル!?」

 

 驚いて見上げたエクスに、巨龍も目線を合わせ頷く。

 小さかった頃の面影はわずかだが、巨龍は確かにグングニルの特徴を備えていた。

 その全高は約20m。

 マナスヴァインには及ばないが、エクスやカナリアと比べれば十分に巨大だ。


「ちょっとばかりデカいのが来たところで、ボクに勝てるわけがない!」

 

 傷を再生したマナスヴァインが吠える。

 受けて立つように後ろ足で立ち上がり、翼を広げるグングニル。

 すると剣状の翼が中央から2つに割れ、形成された飛膜から金色の波動が放たれる。

 

「ギッ……なんだ、この気持ち悪い音は!?」

 

 波動を受けたマナスヴァインは、まるで全身の力が抜けるような感覚に襲われた。

 続けざまにグングニルの口より放たれた、エクスのバスターランチャーを超える破壊力の閃光がマナスヴァインの外殻を穿ち、削りとる。

 

「ギギャアッ!? だけど、こんな傷すぐに再生して……」

 

 だが、抉られた傷が治癒することはない。

 

「どうしてだ! なんで治らない!?」

「ぐんぐ、治るの止めてる」

 

 シニューニャにはグングニルの感情が伝わっていた。

 グングニルの翼から放たれた波動がマナスヴァインの肉体を構成するニーズヘッグ細胞に干渉・弱体化させ、再生能力を阻害しているのだ。

 

 聖槍龍(せいそうりゅう)グングニル――。

 その正体は、天界の主神オーディンによりニーズヘッグへ突き立てられた聖槍がその体組織を解析し、対抗策となるべく生み出した存在。

 シニューニャに保護されて以降、使命を果たすため人知れず成長を続けていたのだ。


(これが君の使命なのか……)

 

 その光景を見て、エクスは先日のグングニルの行動の真意を理解した。

 この波動はマハーナーガから造られたエインヘリアルにも影響を与えてしまう。

 だから、カナリアたちを護るために保護プログラムを注入した。

 彼らが倒れたのはその副反応だったのだ。

 

「奴は弱ってる! 反撃するぞ!」

「なめるなぁ!」

 

 再び、激しい攻防が始まった。



最後までお読み頂きありがとうございます。


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