第22話3/6 見えない勝機
「なんてデカさだ……」
あまりにも巨大になったマナスヴァインの姿に一同は圧倒される。
「今まで見せていた姿は擬態だったのか」
これだけ巨大な身体なら、マグリアを破壊し尽せたのも納得がいくというもの。
「どうだい? これがボクの本当の姿さ」
自身の巨大さに慄く獲物を見て、マナスヴァインは笑みを浮かべた。
擬態した自分の姿に油断し、嘲笑してくる相手の表情が恐怖へと変わる。
この瞬間がたまらない。
「グオオオオオォ!」
「うわっ!」
金属と氷塊が擦れあい、軋むような甲高い音を含んだ轟音が空と大地を震わせる。
その音圧、風圧にカナリアたちは耐えきれず、吹き飛ばされてしまった。
「くっ……怯むな!いくぞみんな!」
「ゴズマは洞窟の人たちを守って!」
「ちっ……仕方ねえ」
体勢を立て直したカナリアが先陣を切り、一同はマナスヴァインへ挑んでいく。
「アームズアップ!」
かけ声とともに、エクスの周囲に灰色の無骨なアーマーがいくつも召喚され、装着されていく。
タクシャカから機巧体を奪い返し、完全体となったエクスは虚数空間に収納しているA〜Z、26種類の装備を自在に召喚・使用できる。
「オプションD・ヘビーウェポンユニット!」
装着されたアーマーが展開し、内蔵された数多のミサイルポッドとビーム砲の照準がマナスヴァインを捉える。
「全弾一斉発射!」
放たれたミサイルとビームの雨はマナスヴァインへ直撃。
その巨体を覆うほどの爆炎が巻き起こり、雪原に火の手が上がる。
「こそばゆいね」
「くっ……」
有効弾――無し。
一斉射に混ぜられた観測用ミサイルから絶望的なデータが送られてくる。
「ガァッ!!」
マナスヴァインの口から冷気が放たれ、薙ぎ払われた大地が凍りつき崩れていく。
「カナリア、ヒョウガ。あいつには生半可な攻撃は効かない。同時攻撃だ!」
「よぉし!」
カナリアとヒョウガが激情態となり、エクスとともにマナスヴァインへ狙いを定める。
「蒼炎紅蓮斬!」
「斬滅光輪!」
「ナイティック・エクスラッシュ!」
3人の必殺技が下方から迫る。
対するマナスヴァインは頭を振り上げ、帯電させた額の一本角を豪快に振り下ろす。
激しい光を放ち、3つの刃と巨大な衝角がぶつかりあう。
結果は体格差をそのまま反映したものとなった。
「「「うわあああああっ!」」」
吹き飛ばされる3人。
振り下ろされた衝角はそのまま大地をも両断した。
「そんなチンケな攻撃なんて、ボクには通じないよぉ!」
さらにマナスヴァインの身体から冷気が放たれ、吹雪を伴う極寒の波動が周囲に浴びせかけられる。
「うおおおっ!?」
カナリアの剣の炎も一瞬でかき消され、その身が暴風の中へ巻き込まれる。
身も心も凍りそうなほどの冷気。
荒れ狂う吹雪により体勢を保てず、地上へ降りることを余儀なくされる。
そこを狙ったようにマナスヴァインは尻尾を振るう。
それだけの動作だが、マナスヴァインが行えば大地が蹂躙される。
カナリアの眼には吹雪の中、巨大な壁が叩きつけられたようにしか思えなかった。
「キシシシシ!」
マナスヴァインの発する吹雪は更に激しくなり、視界が真っ白に遮られる。
「ぐあっ!」
「ヒョウガ!? 大丈夫か!」
「カナリアか……うおっ!?姐さん!」
「いたた……。みんな、無事だったのね」
カナリアの背中に吹き飛ばされてきたヒョウガがぶつかり、さらに次々と仲間が吹き飛ばされ集まってくる。
「全員、ここに集められたのか?」
「やつはどこだ……!?」
探そうにも視界は真っ白で見えない。
その時、吹雪が止んだ。
「なっ!?」
同時に強烈な光が頭上から射す。
見上げた一同の瞳に映ったのは、チャージしたブレスを今まさに放とうとしているマナスヴァインの口だった。
「やべぇ!」
「みんな逃げ……あっ!?」
逃げ場を探し回りを見渡したカナリアは気付いた。
周囲が全て、高い壁に囲まれている。
それを見て彼は理解した。
自分たちが今、とぐろを巻いたマナスヴァインの中心にいることを――。
「ガアアアッ!」
放たれるブレス。
カナリア、エクス、クライオーネ、ガルディエーヌが咄嗟に障壁を張るも、放たれ続ける冷気が周囲を徐々に凍らせていく。
「このままじゃ氷漬けになるぞ!」
「みんな!俺に掴まれ!」
「え?」
「早く!」
障壁を維持しつつ、全員がカナリアに触れる。
次の瞬間、障壁を破ったブレスは地中深くまで打ち込まれ、大爆発を起こした。
「……はぁっ、はぁっ!」
マナスヴァインから離れた場所にカナリアたちが瞬時に現れる。
ブレスが放たれる直前、カナリアは転移先の座標となる自身の剣ガンバンテインを飛ばしていた。
「みんな、無事か?」
「だ、大丈夫……」
「ん~? なんだ、生きてたんだ。小さいやつは逃げるのが上手いね」
マナスヴァインが気付く。
「どうすんだよおい……。勝ち目が見えねえぞ」
「どこかに奴の弱点はないのか……?」
ヒョウガが似合わぬ弱音を吐く。
口には出さないがカナリアも同様だった。
どうすればいい。
どうすれば奴を倒せる。
あの強固な外殻を貫くには、針のように鋭く、刺し貫く破壊力が必要だ。
それが出来る装備は、手順は……。
カナリアが考えあぐねている中、エクスには1つ策があった。
「みんな!私に考えがある。時間を稼いでくれ!クライオーネ、私のサポートを!」
「わかったわ!」
「つっても、どう時間を稼ぐんだ?」
「とにかく動き回って引きつけろ!」
エクスがああ言ったからには、必ず勝機があるはずだ。
カナリアたちが時間を稼いでる間、クライオーネは周囲を飛び回り、エクスの指示に従い準備を進める。
「みんな!こっちに奴を誘い出して!」
クライオーネがその座標を光で知らせる。
「合図だ。ヒョウガ!」
「おいこっちだ! その図体で俺の速さに着いてこれるか!?」
ヒョウガが挑発し、座標へ向け走り始める。
「シシッ、わかってないねぇ」
マナスヴァインがヒョウガを追い始める。
「ん……うおおおおぉ!」
「身体がデカいって事は、それだけ速くも動けるんだよぉ!」
なんとマナスヴァインはヒョウガに追いつきそうなほどの速度で移動し始めた。
巨体であればあるほど、一度の動作で進む距離が大きくなる。
高速移動を得意とするヒョウガの数百歩も、マナスヴァインにとってはただの一歩にすぎない。
ヒョウガの背後にガブガブと噛みつくように巨大な口に迫る。
「グァウ! グァウ!」
「うおおおおっ! うおっとおおぉ!」
「ヒョウガ、がんばって! あとちょっとよ!」
ヒョウガが座標を通過し、マナスヴァインがそこへ到達した瞬間――。
「縛り上げなさい! フリージング・チェーン!」
周囲に現れた複数の魔法陣からいくつもの巨大な鎖が飛び出し、マナスヴァインを拘束した。
「ギッ!?」
「今です!」
クライオーネが合図を送ると、後方の氷壁の一角が砕け散り、その中から長大な砲身を誇るバスターランチャーを構えたエクスが現れた。
身の丈の数倍はある砲身は既にチャージを完了している。
自身を氷の偽装で隠し、チャージまでの時間をカナリアたちに稼がせる。
続いて指定座標まで誘い込んだマナスヴァインをクライオーネの魔術で拘束し、自身の装備の中で最高の貫徹力を持つバスターランチャーを撃ち込む。
それがエクスの策だ。
「なんだ!?」
「シュート!」
バスターランチャーから激しい砲撃が放たれ、身動きできないマナスヴァインの口腔を直撃する。
「グギャアアア!」
ドゴン! と、貫徹したビームによってマナスヴァインの後頭部はぐちゃぐちゃに吹き飛び、斃れ、動きを止めた。
「やったぜ!」
「さすがエクス!」
「……ふぅ」
討ち取られた大蛇の姿にカナリアたちから歓喜の声が上がり、エクスは作戦が上手くいったことに胸を撫で下ろした。
大蛇マナスヴァイン、間違いなくこれまでで最強の八闘士だった。
しかし、今回も自分たちは勝てた。
そう安堵し、一同の緊張が解けた直後――。
「……シシシ、この程度なのかい?」
「なにっ!?」
屍となったはずのマナスヴァインから声が響いた。
それだけではない。
破壊された後頭部の傷口がうぞうぞと蠢き始め、傷を修復し始めたのだ。
「残念だったねぇ」
再び頭を上げたマナスヴァインは、目論見の外れた弱者たちを嘲笑うように咆哮を上げた。
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