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天霊戦騎エインヘリアル  作者: 九澄アキラ
第22話「目覚める雷鳴」
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第22話2/6 氷結王国

「おいエクス!これを見てくれ!」

 

 突如入ったバルドルからの通信。

 上空からの映像にエクスは目を疑った。

 凍りついた大地に、捻くれた樹氷のごとき氷の層が幾重にも重なって球体を作っている。

 さながら国を覆うほどの、氷のドームとも呼べるものが眼前に広がっていた。

 

「ここは、どこ……!?」

「マグリアだ」

「なっ……」

 

 マグリアは火山地帯にある温泉の国。

 自然にこんな状態になるなんて考えられない。

 

「八闘士の仕業か?」

 

 レーダーに反応はなかったが、他に考えられない。

 氷のドームのせいで探知できなかったのか?

 

「みんなを集める!バルドルさんはビフレストの準備!」

 

 エクスはまずマグニの家に駆け込み、状況を話した。

 

「スルーズ、君はマグニの側にいて構わない」

「……ううん、私も行く」


 エクスの提案に、スルーズは強い眼差しで返す。

 

「気を付けてね……」

「絶対、絶対帰ってきてね!」

「大丈夫、マグニの事をおねがい」

 

 カーラとアルティナがスルーズに声をかける傍ら、エクスはマグニの首に赤いペンダントをかけた。

 

「伝えてあげてください。彼への想いを、これまで過ごした思い出を。彼は……きっと戻ってきます」

 

 エクスはカーラにそう言うと、スルーズを追っていった。



 ――――



 氷結王国マグリア――。

 ビフレストを下り、マグリアへ降り立った一同はドームを目指し歩いていく。

 かつて温泉地として栄えた国も今は氷に閉ざされ、静まり返っている。

 賑わっていた街も、荘厳な建築も、立ち上っていた湯気も、氷のドームに阻まれ見えない。

 カナリアがドームの外壁を剣で焼き切ると、中は吹雪で荒れていた。

 

「ひどいな……」

「どれだけの力があれば、これだけのことが出来るんだ……?」


 見渡す限りの街が瓦礫となり、凍りついている。

 国ひとつが丸ごと破壊されたと言っていい。

 これから相対する八闘士の強大さがそのまま示されているようだ。


「くっ……動きが鈍い」


 ゴズマの纏っている鎧が軋み始める。

 同じ機構で造られているワルキューレも性能低下が著しい。

 筋組織である筋肉樹(ミュスクル)の活性が低温により下がっているのだ。


「……あれは!?」


 吹雪の中を進み続ける中、エクスがあるものを見つけた。

 それは氷漬けになった大勢の人間たちだった。


「人間が……こんなに」


 皆、恐怖に引きつり逃げ惑う姿のまま凍っている。


「この人は……」


 その中にはマグリアを訪れた際、マグニと会話していた屋台の店主もいた。

 エクスが手を伸ばそうとすると一際強い風が吹き、氷像は全て砕け散ってしまった。


「あぁ……」


 あまりの光景にスルーズは口を手で覆い、立ち竦む。


「おい、あれを見ろ!」


 ヒョウガが指差した先にうっすらと巨大な人影が見える。

 近づくと、切り立った山肌を背にして1体のワルキューレが氷漬けになっていた。


「これ……王様に送ったワルキューレか!?」


 盾を眼前に構え、吹雪を防ぐような体勢のまま氷結しているそれは、紛うことなきマグリア王の専用機であった。


「洞窟の中に人が!」


 ワルキューレの背後にある洞窟に、大勢の人間がいた。

 中は地熱で温度が保たれ、人がかろうじて生存出来る環境だ。


「皆さん、私たちはイーダウォールから来ました。いったい何があったのですか?」

「きょ、巨大な蛇が……」

「い、いきなり襲ってきたんだ。それが国をメチャメチャに……」

「王は民をここに避難させ、そして私たちを守るために……」

「そうでしたか……。我々がマグリア王の意志を引き継ぎ、必ずあなたたちを助けます」

「吹雪が止んだぞ!」


 外に出ると先程までの視界の悪さが嘘のように、澄み切った光景が広がっていた。


「あなたは……本当に立派な王でした」


 エクスは氷像となったワルキューレへ賛辞を述べ、人々はマグリア王の死を偲んだ。


「シシシ……」


 その祈りに水を差すように、笑い声が響いた。

 声の主を探すと氷原に子供が1人、ぽつんと立っている。


「子供?」

「いや……」


 エクスの超視覚が少年の顔を捉える。


「彼は……八闘士のマナスヴァインだ」


 エクスの言葉に、一同の空気が張り詰める。


「シシシ、ボクの氷結地獄は気に入ってくれたかな?」

「お前が、これをやったんだな?」

「そうだよ。ボクがちょっと暴れただけでみんな壊れちゃって退屈してたんだよねぇ。そいつもつまんなかったし」


 ひらひらと指を動かし、マグリア王を指してそう言い放つマナスヴァイン。

 カナリアとエクスに怒りの感情が湧き上がる。


「君たちはもっと楽しませてくれるんだよねぇ?」


 怪しい眼光を輝かせ、マナスヴァインが異形の姿へ変身する。

 頭部が6つの目を持つ蛇に変化し、ローブの端から尻尾が伸びていく。

 だが、その大きさはエインヘリアルの半分ほどだ。


「へっ!お前みたいな小さいやつ、あっという間に倒してやるぜ!」


 ヒョウガが軽口を言い放つも、エクスたちは警戒心を強めていた。

 この小さい身体でどうやってこれほどの破壊を引き起こしたのか。

 得体のしれない不気味さが纏わりつく。

 だが、彼らはすぐにその納得を得ることとなる。


「シシシ、誰が小さいって?」


 不敵に笑うマナスヴァインの背中が脱皮するように割れ、膨れ上がっていく。

 地面を覆っていた氷が増大する質量に耐えきれず、ひび割れ、沈み込んでいく。


「なっ……!?」


 瞬く間に壁のように立ち塞がった”それ”に、一同は息を呑む。

 頭部にそそりたつ金色の一角。全身を覆う黄金の龍鱗。

 エインヘリアルをひと呑みに出来そうな巨大な口、そこに生えた鋭い牙。

 その姿形は大蛇、手足の翼のないドラゴン……ワームと呼ぶのが適切か。

 立ち上がった部分だけでゆうに数百メートルはあるだろう。


「でかすぎる……!」

 スルトルすら超える、超がつくほどの巨大な怪物が姿を現した。



最後までお読み頂きありがとうございます。


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