第20話1/4 集まった破片
タクシャカを退けて数日、一同は格納庫で八闘士についての情報を整理していた。
「改めて整理しよう。これまで撃破した八闘士はナンダ、バーナンダ、サーガラージャの3体」
空間ディスプレイとそこに表示されたホログラムを指しながらエクスが解説する。
画面にはそれぞれの八闘士の姿と名前、出現場所がマークされた地図と、これまでの戦いの記録が映し出されている。
「残る5体、タクシャカ、アナヴァダッタ、マナスヴァイン、ウトパラカ。そして、ゲオルギウスと彼らの本体であるニーズヘッグを倒さなければならない」
「……まだまだ先は長いな」
「彼らの目的は封印されているニーズヘッグを復活させること。そのために知的生命体の集まる場所に地獄を生み出し、苦しみや悲しみを始めとする負のエネルギーを集めているようだ。ゲオルギウスとタクシャカは退けたけど、また現れると考えていい」
「次こそは勝つ」
意気込みと共にカナリアはグッと拳を握り込んだ。
次に画面には天界に設置されているアンテナ上の機器が映し出される。
「そこで彼らの出現を察知できるレーダーを天界に設置した。撃破された八闘士が煙になって逃げる際の粒子と、サーガラージャが現れた際のエネルギー波長を元にそれを探知するものだ。これで彼らが現れたら、その位置を大まかに特定出来る」
話は進み、エクスが連絡事項をあらかた話し終えた頃、ナビから通信が入った。
「マスター、例の破片の解析が終了しました」
「やっとか。モニターに映して」
「こちらです」
モニターに復元された"それ"が映し出されると、エインヘリアルたちがどよめきたった。
「なぁ、あれって……」
「これは……斧? ハンマー?」
「不明です。内部に高エネルギーの結晶を確認、コアだと思われます」
「お、おい!それ……ミョルニルじゃねぇか!?」
座っていたゴズマが急に立ち上がり、声を荒げた。
「ミョル……?」
「どこで見つけた!?」
「ちょ、ちょっと待ってこれは一体……?」
「どこなんだ!」
興奮した様子でゴズマはエクスに迫り、問い詰めると同時に拳で床を大きく叩いた。
「その前にこれがなんなのか説明してくれ!」
「ミョルニルの魔鎚……」
興奮したゴズマに代わりクライオーネが”それ”についての説明を始める。
「別名トールハンマー。天界随一の戦神、雷神トールが持っていた武器です」
「トール……」
「トール様は主神オーディン様の御子息で武勇に優れ、その逞しい御身体から凄まじい雷撃を放ち戦うお方でした」
「この俺を創った神でもある」
落ち着きを取り戻したゴズマが自らの出自を明かす。
エインヘリアルにはそれぞれを創造した神がいる。
カナリアはフレイとフレイヤ。クライオーネはオーディン。
そして、ゴズマは雷神トールによって力と武勇に優れた個体として生み出された。
担当した神とエインヘリアルは師弟のような関係であり、共に戦場へと赴くこともある。
ゴズマにとってトールは師であり、気の合う友人であり、並ぶ者の無い戦友であった。
――――
「どりゃあ!」
「おわぁ!」
背負い投げされたゴズマの身体が激しく床に叩きつけられる。
「はぁーはっは!俺の勝ち!」
投げ飛ばした張本人、雷神トールが灼熱の様なウェーブがかった髪から汗を滴らせ、高らかに笑う。
「どうした?もう終わりか?」
「ちっ……まだまだぁ!」
ゴズマは何度打ち負かされてもへこたれることなく、果敢にトールへ挑んでいった。
「ふぅ、ちょっと休憩するか」
階段に腰掛けた両者はハツラツを食べながら雲の下に沈んでいく夕陽を眺めた。
「お前を作って正解だった」
「……なぜ俺を作った?」
エインヘリアルの製造技術が確立されると、神たちはただの巨大な兵士としてではなく、自身の求める理想の戦士やそれぞれの目的のためにエインヘリアルを生み出すようになっていった。
ゴズマもその内の一体だが、トールにその理由をまだ聞いてはいなかった。
「遊び相手が欲しかった」
「はぁ?」
「俺の力は天界で1番だ。だから誰も俺と力で張り合おうとしない。そこでお前を作った。メギンギョルズを1つ与えてな」
「メギ……なんだって?」
「メギンギョルズ、力の帯だ。これを付けると筋力が2倍になる。2つあったから1つをお前に与えた」
トールは自身とゴズマの腰に巻かれたそれぞれのメギンギョルズを指差した。
「こいつが……」
「ま、これが無くても俺の力は天界随一だがな!」
「なら、アンタを倒せば俺が1番か」
「お、やるか? よし来い!」
その後もトールとゴズマは互いに研鑽し親交を深め、ラグナロクまで共に戦い続けた。
――――
「俺らよりよっぽど強かったよなぁ」
「俺も訓練で何度も投げ飛ばされたっけ」
ゴズマが過去に浸る傍ら、カナリアとヒョウガも当時の思い出を語る。
「投げ飛ばされたって……、トールって神様はそんなにデカかったんだな」
「ん……? いや、人間と変わらないぞ」
「えぇ……」
「すげえな神様って……」
自分たちと同じ大きさでエインヘリアルを投げ飛ばす?
マグニ、スルーズ、デシレアは信じられないといった表情を浮かべた。
「それで……どこで見つけたんだ?」
過去から戻ってきたゴズマが改めて尋ねる。
「帝国の跡地でマグニが集めた」
「はぁ……? なんでコイツが!?」
「知らねえって。こう……魔術の練習してたら集まってきて」
マグニは掌を前に出しあの時と同じ体勢をとる。
すると画面の向こう、天界にある解析ケース内の破片がガタガタと動き出し、マグニへ向かうかのように側面にびっしりと張り付いた。
次第にケースそのものにヒビが走り始める。
今にも壊れそうだ。
「マグニ、止めて!」
マグニが掌を収めると破片は即座に落下しケース内へ散らばった。
破片がマグニの行動と連動しているのは明らかだった。
全員の視線がマグニに向き、マグニ自身も自らの力に戸惑っている。
ミョルニルが持ち主の手に引き寄せられる――。
エインヘリアルたちの脳裏には、トールが投げたミョルニルを手元に呼び戻している様子がフラッシュバックしていた。
だが……何故、雷神と同じことをこの少年ができる?
「小僧、お前……ナニモンだ?」
「俺は……」
ゴズマに問われても答えは出ず、マグニはじっと自らの手を見つめた。
そこにけたたましく警報が鳴り響く。
「八闘士反応だ!」
「噂をすればかよ!」
急ぎ出現場所を確認する一同だが、地図を見て首を傾げることになる。
「なんでこんなところに……?」
そこは国どころか、森以外何もない場所だった。
八闘士が生物の負念を集めるなら、こんな場所より知的生命体の多い場所を選ぶはずだ。
エルフのように知らない種族がいるのか、それとも罠か……。
真偽を確かめるべく一同は天界へ向かった。
――――
「霧が濃くてよく見えねえな」
天界から下界を覗く望遠鏡でも現地の詳細を捉えることはできない。
「よし、まず私とカナリア、ヒョウガ、クライオーネで向かう。もし罠だったり、救援が必要な時はマグニたちも呼ぶから」
「わかった」
「よし、行くぞ!」
カナリアたちはビフレストで現場へ急行した。
「……え?」
地上に降り立ちビフレストが消えると、一同は人に囲まれていた。
いや、ただの人ではない。
緑や青、赤い肌のエインヘリアルと同サイズの人間……。
それはかつて天界と世界の命運を賭け雌雄を決した存在。
ラグナロクで滅び去ったと思っていた種族。
巨人がそこにいた――。
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