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天霊戦騎エインヘリアル  作者: 九澄アキラ
第17話「鮮血の森!殺刃鬼婦人サーガラージャ」
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第17話1/4 破片

 ニーズヘッグ八闘士(はちとうし)のナンダとバーナンダを撃破した後、バルドルから呼び出されたカナリアたちは天界の資料室に来ていた。


「これを見てくれ」


 バルドルが古代の歴史を立体映像で映し出す。

 映像は宇宙から巨大な隕石が落ちてくる所から始まり、そこから9つの龍頭(ドラゴンヘッド)を持つ黒龍が現れた。


「こいつがニーズヘッグだ」

「これが……」


 それぞれの龍頭から放たれる熱線が大地を薙ぎ払い、空を燃やす。

 さらにニーズヘッグから染み出した黒い泥が大地を覆い始め、そこからナーガルジュナや巨人並の大きさの怪物が無数に湧き出してくる。

 ニーズヘッグに対抗するため、神々や巨人、人間を含んだ様々な種族が力を合わせ立ち向かった。

 しかし強大な力に加え、尋常ならざる回復力を持つニーズヘッグを打ち倒す事は叶わなかった。

 神々の連合軍が苦戦を強いられる中、天より舞い降りた戦士が黒龍の動きを制した。


「こいつは……ゲオルギウスか!?」


 甲冑は白く、胸に龍頭こそないが、その姿はまさしくゲオルギウスだった。

 煌めく大剣を携えたその姿から、邪悪なものは感じられない。

 むしろ、悪しき存在を絶つ聖戦士と呼べる威容を放っている。


「あぁ、そうだ。記録によると、星の世界からニーズヘッグを追ってこの星に来たらしい」


 ゲオルギウスの協力により勢いを取り戻した連合軍は、ニーズヘッグの龍頭1つを魔術で異空間に放逐する事に成功する。

 そして、ゲオルギウスがニーズヘッグの額に剣を突き立て、動きを封じた直後、天より放たれた主神オーディンの神槍グングニルがニーズヘッグを貫き、地中深く埋葬した。

 ゲオルギウスを諸共(もろとも)に……。


「これがニーズヘッグのあらましだ。お前らエインヘリアルが生まれるより、もっと前のな」

「こんな事があったなんて……」

「ゲオルギウスがニーズヘッグを倒すために来たのなら、今のアイツはいったい……?」

「おそらく……私と同じように身体を乗っ取られたんだ」


 ニーズヘッグと共に地中に埋まったゲオルギウスをニーズヘッグが乗っ取り操っているのが、今のゲオルギウスなのか。

 

「なんで今まで教えてくれなかったんだ、おっちゃん」

親父(オーディン)からお前らには伝えないように言われてたんだ。知ったところでどうなるもんでもないからな」

 

 カナリアたちがゲオルギウスについて話す中、エクスは別の事実に気付いていた。

 自身の身体を奪い、この世界に流れ着くきっかけとなった黒い物体。

 あれが異空間に放逐されたニーズヘッグの龍頭であり、タクシャカだったとしたら全ての辻褄が合う。

 運命はあの時から始まっていたのかと、エクスは唇を噛み締めた。



 ――――



「あの下にニーズヘッグが……」


 カナリアたちは外へ出て、(そび)え立つグングニルの根元へ視線を向ける。

 こんなにも近くに本当の敵がいるとは、誰も想像していなかった。

 

「ニーズヘッグが目覚める前に攻撃するか?」

「無理だ。戦力も整ってないし、もし八闘士の残り6人が待ち構えていたら……」


 ナンダとバーナンダの2人にあれだけ苦戦したのだ。

 八闘士をまとめて相手にすれば敗北は必至。

 悔しさを抱えつつ、カナリアたちはまずは八闘士への対応策と戦力の充実を図ることにした。


 

 ――――


 

 その頃、ニーズヘッグが眠る八闘士の根拠地では……。

 

「まさか、アンタ達がやられるなんてねぇ~」

 

 破れたナンダとバーナンダに話しかける八闘士唯一の女怪(にょかい)、サーガラージャ。


「まったくだ……」

「ちょっと油断しただけだ!」

 

 ニーズヘッグの表皮にナンダとバーナンダの顔が浮かび、無念を語る。


「再生するまで大人しくしてなさぁい。次は私の番よぉ」

「ちっ……!」

「やれやれ、またおねんねかい」

 

 八闘士はその身が撃破されても死ぬわけではない。

 聖母(マータ)たるニーズヘッグの元へ還り、身体を再生し何度も蘇ることが出来るのだ。

 ただし、直ぐにではない。

 特にニーズヘッグ自体に封印が施され、エネルギーの不足している今の状態では通常より遥かに時間がかかるだろう。

 

「あれ……?これ、どうやったら開くんだ?」


 サーガラージャたちが話している傍ら、タクシャカはエクスから奪った容器に入っているカースを取り出そうとするが、見知らぬハイテク技術が使われた容器の開け方がわからない。


「貸しなさぁい」


 バリン――!

 サーガラージャは容器を取り上げると力を込め、強引に砕いた。

 

「こんなものこうすればいいじゃない」

「乱暴だなぁ」

「これで何するのぉ?」

「面白いことさ」


 ふぅん、といった表情でサーガラージャはアジトの出口へ向かう。

 

「それじゃあ、行ってくるわねぇ。たっぷり負念(ふねん)を集められそうな良い場所を見つけたのぉ」

「ナンダとバーナンダがやられたんだ。あいつらを侮っていると、痛い目を見るかもしれないよ」

「別にあいつらと正面から戦う必要なんてないじゃなぁい……」

 

 サーガラージャはそう言ってアジトを後にした。


「さて、ぼくも良い場所を探しに行くよ」

「ブブ……俺モ……」

「……」

「ボクはもう目星をつけてあるから、そこに行くよ」


 残る八闘士もウトパラカを除き、それぞれ地獄を創るに相応しい場所を見出しに行った。


 

 ――――

 


「うわぁ……」

 

 カナリアたちが王国へ帰還すると、ひどい騒ぎになっていた。

 王国前は帝国からの避難民で溢れかえり、女王や衛兵たちが対応に追われている。


「スゴいことになってるな」

「これだけの人数が一度に押し寄せたんだ。無理もないよ」

 

 女王も帝国民全てが一度に避難してくるとは、流石に思っていなかったようだ。


「そーれ♪」


 クライオーネが積み上げられた資材を魔術で動かし、次々と住居を作っていく。

 避難民の住居に関してはひとまずこれで解決したが、次に問題になったのが食料だ。

 食料が豊富にある王国でも避難民全ての食料を賄うことは出来ない。

 幸い、帝国は今がちょうど収穫の時期ということで、被害を免れた備蓄や、畑に残してきた作物を収穫してくればなんとかなるという事だった。

 カナリアたちは八闘士への警戒と、収穫に従事する人々の護衛を兼ねて再び帝国に赴いた。

  

「おいしょっと……これで全部だな」

「ありがとうカナリア」


 カナリアがケートゥスの中に動かなくなった冥鬼兵(めいきへい)を1体残らず運びいれる。

 タクシャカの術を解かれ機能停止した冥鬼兵を回収し、ワルキューレと同じ仕組みで動くように王国で改修を施す。

 あの大量のナーガルジュナに対抗するには、とにかくこちらも数を揃えるしかない。

 エクスが帝国に来たのはこのためでもあった。



「ふんっ!……だめかぁ」

 

 作業の傍ら、同行してきたマグニとスルーズはクライオーネの指導のもと、魔術の鍛錬(たんれん)(いそ)しんでいた。

 だが、マグニは相変わらず魔術が苦手だ。

 

「術者によって得意な魔術は違いますから、別のを試してみてはどうですか?」

「そうなのか。じゃあ……」


 マグニは目の前に落ちている煉瓦(れんが)を浮かせてみようと集中した。

 すると――。


「いてっ!」

「マグニ、どうしたの?」

「いや、なんか石が……」


 マグニが魔術を発動させようと集中していると、豆粒ほどの小さな石が頬に当たった。

 風で飛んできたのかと、マグニは気に留めずに再び集中する。

 だが――。


 ベチベチッ――!

 

「痛ったぁ!?」


 再び石が飛んできた。

 先程より少し大きい、しかも2個だ。


「どうしたのよ?」

「誰か俺に石投げてないか!?」

「なわけ無いでしょ?私たちしかいないのに」

 

 確かに……と、マグニは周囲を見渡す。

 遠くに作物を収穫している人達は見えるが、とても石を投げつけられるような距離ではない。


「ナビ、周りに誰かいる?」

 

 ナビがワルキューレの監視映像を確認する。

 

「100m圏内に人影なし。でも、確かに何処からかマグニさんに向かって小さな石が飛んできています。マグニさんの後ろのもそうです」

「後ろ?」


 マグニが振り返ると、先程より更に大きな、拳ほどの大きさの石が転がっていた。

 もしこれが当たっていたらとゾッとする。

 

「石を引き寄せる術でも使ったの?」

「してねぇよ。そこの煉瓦を浮かそうとしてたら石が……」

「何かあったの?」


 エクスが様子を見に来た。


「それが……」


 マグニはやってきたエクスに事情を話した。


 

 ――――



「準備完了。いいよ、マグニ」


 魔術障壁(しょうへき)を張ったエクスとスルーズが、マグニを挟んで構える。

 上下左右を障壁で囲み、これでどこから石が飛んできても大丈夫だ。

 

「よし……いくぞ!」

 

 マグニは先程より強く集中する。

 すると……。


 カン――。


「あ、飛んできた」


 石が1つ、バリアで受け止められる。

 だが、次の瞬間には――。

 

 ガガガガッ――!


「うわわわっ!こんなにたくさん!?」


 次々に石が障壁へ打ち付ける。

 飛来する石が十数個まで増えたところで、それ以上飛んでくることはなくなった。


「マグニ、もういい!」


 マグニが集中を解くと石は全て地面に落ち、動きを止めた。


「なんなのこれ?」

「これ、天界の文字だ……」


 エクスが石を拾い上げると、表面に天界で使われている文字と同じものが刻まれてあった。

 それに集まってみると石というより、破片のように見える。


「もしかして……」


 エクスが破片をスキャンすると、断面がピッタリと一致する部分があった。

 

「ほら、くっついた」


 ぴったりと合致した2つの破片をマグニとスルーズに見せる。


「ほんとだ!」

「じゃあ、石じゃなくて何かが砕けたもの……?」

「復元できそうだから、持ち帰って調べてみるよ」

 

 エクスは破片を全て拾い集めていく。


「でも、どうしてマグニのところに……?」

「俺にわかるかよ」


 不可解な出来事にマグニとスルーズが首を傾げる中、エクスは先の戦いで鉄塊馬が破壊された際の強烈な放電現象の事を思い出していた。

 ランヴェルスが鉄塊馬を殴りつけた直後に生じたあれは、いったい何だったのだろう――と。



最後までお読み頂きありがとうございます。


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