第16話3/5 闇の尖兵ナーガルジュナ
「まずは小手調べだ」
ナンダが黒い欠片をばら撒くと、吹き出した闇が形を成し、死霊を思わせる無数の雑兵が出現した。
「なんだ、あいつら!?」
「ゆけい、ナーガルジュナども!」
ナーガルジュナが一斉に突撃し、掌からエネルギー弾を放つ。
「うわああ!」
「きゃああ!」
それは応戦するカナリアたちだけでなく、八闘士の襲来に慌てふためき、急ぎケートゥスに乗り込もうとする帝国の人々の周囲にも被害を及ぼす。
「悲鳴が心地いいぜぇ!」
「貴様らの恐怖が、我らが母様復活の糧となるのだ……」
人々が恐れ戦くさまを嗤いながら眺めるナンダとバーナンダ。
更にその様子を、ニーズヘッグの元へ帰還した他の八闘士が観戦している。
ナーガルジュナを介して集められた人々の苦しみが雫となり、負時計の中の瓶に溜まっていく。
「まずい!帝国の人たちを守るんだ!」
エクスが指示を飛ばし、ワルキューレ隊が防衛行動に移る。
「くそっ、なんて数だよ!」
マグニが歯噛みする。
ナーガルジュナ1体1体はそれほど手強くないが、とにかく数が多い。
「ひゃっはっはっはっ!苦しめ苦しめ!」
「蒼炎斬!」
「ん?」
「……んあ?」
防戦一方のワルキューレ隊にバーナンダが愉悦の笑いを発した直後、蒼い斬撃波がナーガルジュナを薙ぎ払った。
「うおおおおぉ!」
飛び出したカナリアが魔術の腕輪に剣をかざす。
「蒼炎・旋風刃!」
青い炎の竜巻が剣から放たれ、ナーガルジュナを舞い上げながら燃やし尽くす。
続いて撃ち出された尾羽根の尖刃が魔術によって無数に分裂し、地上に蔓延る敵に降り注ぐ。
「おいおいカナリアのやつ、随分強くなってねえか?」
激昂を果たしたカナリアは、ヒョウガとクライオーネの知る彼より遥かに強くなっている。
過去の戦いで失われた魔術の腕輪を取り戻し、その力を存分に振るっている。
だが、なによりカナリアの強さを引き出していたのは、もう人と戦わなくていいという想いだ。
いま戦っている相手は純然たる魔物。
手加減や配慮は必要ない。
ただひたすら、人々を守るために戦える。
種族の調和を保つ、エインヘリアル本来の使命を行える。
その気力がカナリアの強さの源だった。
「私たちも負けてられないわ!降り注げ!アイシクル・レイン!」
クライオーネが杖を掲げ、ナーガルジュナの頭上に発生した魔法陣から無数のつららが降り注ぎ、串刺しにする。
「残りは任せろ!斬滅光輪!」
ヒョウガが両腕のブレードを分離・合体させ手裏剣のように投げ放つ。
高速回転する円刃が不規則な軌道を描き、ナーガルジュナを斬り刻んでいく。
「うおおおっ!」
「はあああぁ!」
「とりゃあっ!」
3人のエインヘリアルの活躍により、瞬く間にナーガルジュナは一掃された。
「ほう、やるじゃねえか。なら、お次はコイツだ!」
ナンダが地中に両掌を向け力を込める。
「何をする気だ!?」
「さぁね、見てのお楽しみ……だっ!」
ナンダの引っ張り上げるような動作と共に、地中から大量の冥鬼兵……いや、巨人の骸が大量の金属片とともに浮き上がった。
ここ帝国の地はラグナロクにおける最終決戦場。
地中には大量の巨人の遺骸や神々の遺品が埋まっている。
ナンダはそれを掘り起こしたのだ。
「弟ぉ、たまには馬に乗りたいよなぁ!」
「わかったぜ兄者!黒縄・操演恐!」
バーナンダの腕から伸びたワイヤーが残骸の中に縦横無尽に張り巡らされ、巨大な塊となっていく。
カナリアたちが見上げる中、巨大な鉄塊の馬が出来上がった。
「ハイヨォー!」
その背に乗ったバーナンダが騎手のようにワイヤーで操り、鉄塊馬が疾走を始める。
「あれを狙え」
バーナンダの後ろに飛び乗ったナンダが指差したのは、ケートゥスだ。
あと少しで避難民を収容し終え、離陸準備に入ろうとするケートゥスへ鉄塊馬が迫る。
「あれを近づけさせるな!」
エクスとスルーズのワルキューレが鉄塊馬へ射撃する。
しかし、どちらの攻撃も鉄塊馬へ届く前に歪曲し、逸らされてしまった。
「ビームが曲がった!?」
鉄塊馬の体表に何らかのバリアが張られ、攻撃が通らない。
「そおら、潰れろぉ!」
ケートゥの全高ほどもある鉄塊馬が前足を大きく振り上げ、ケートゥスの側面に伸し掛かる。
ケートゥスの船体が激しく揺れ、乗り込んだ避難民から大きな悲鳴が上がる。
ナンダとバーナンダはそれを愉しむように、何度も伸し掛かる。
「ケートゥスを守るんだ!」
間に入ったカナリア、クライオーネ、デシレアのワルキューレがそれぞれバリアを張り、鉄塊馬の攻撃を受け止める。
その他の面々は攻撃を続けるが、鉄塊馬の背に乗ったナンダが放つ爆発性ボウガンに苦しめられる。
「うおおおおおぉ!」
ボウガンを掻い潜ったマグニのランヴェルスが飛び上がり、鉄塊馬の頭を殴りつける。
「ちょこざいわあっ!」
「うあぁっ!?」
無駄だとばかりに、鉄塊馬がランヴェルスに噛み付く。
金属の牙が食い込み、ランヴェルスから血のように赤い循環液が噴き出す。
動かせる左腕で鉄塊馬の顔を何度も殴るが、効いていない。
抵抗する様を見て、機体への圧力がさらに強まる。
「このまま噛み潰してやるわあ!」
「くそっ!やられて……たまるかぁぁぁ!」
マグニが気合を込めると、ランヴェルスの左腕に稲光が走った。
スパークを伴い放たれた拳が鉄塊馬の目を抉り、突き刺さる。
さらにその電流は鉄塊馬の巨体を構成する破片の一部と共鳴、増幅され、巨大な放電現象を引き起こした。
「ぬうぅっ!?」
「あ、あばばばばっ!」
高圧電流を浴びたバーナンダの縄が千切れ、鉄塊馬はバラバラに崩れ落ちていく。
「お、俺の縄が……痛って!」
落下の衝撃で尻餅をつき、千切れた自身の縄に驚くバーナンダの頭に落ちてきた破片がぶつかる。
「くっ……」
ナンダも激しい目眩に襲われ、頭を抑える。
「何が起こったんだ……!?」
鉄塊馬をバラバラにしたマグニ自身も、自分が何をしたのか理解できなかった。
「……はっ!今だケートゥス!離陸しろ!」
「了解した!」
ナンダとバーナンダの動きが止まった隙を突き、ケートゥスは飛翔。
王国へ向け最大速度で戦域を離脱した。
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