第14話3/3 ケートゥス飛翔
2体目のカースドオークが倒され、オークたちは結晶を回収しようと動き出す。
あれを取り戻されたら3体目のカースドオークが生まれてしまう。
「させない!」
飛び出したエクスが銃でオークを射抜き、生成した量子ボックスに黒結晶を収める。
「よし!」
「ガアアアァァ!」
それを取り返そうと襲いかかる無数のオーク。
「ランサーモード!」
銃を槍に変化させ、エクスは迫るオークを次々と薙ぎ倒す。
「諸君、お待たせした!離陸準備完了であーる!」
「よし!みんな乗り込め!」
ダクネの合図で皆がケートゥス内へ駆け込む。
最後にカナリアが乗り込むと砦の入り口、すなわちケートゥスの口が閉じた。
「諸君、離陸後は船体が90度傾くから注意するのであーる!それでは、タービン全開!」
船内の振動が大きくなり、外では地鳴りのごとき音にオークがたじろいでいる。
「発進であーる!」
巨大な船体が堆積した土を振り落とし、木々を薙ぎ倒しながら進み始める。
船外の様子を映すモニターに、逃げ惑うオーク達が映る。
「いざ、大空へ!であーる!」
下からぐっと押し上げるような力が加わり、ケートゥスが森を飛び出す。
傾いていた船体が水平に戻り始め、ダークエルフたちの混乱の叫びが聞こえてくる。
ともあれ離陸は成功した。このままイーダウォール王国へ帰ろう。
エクスとカナリアがそう考えた直後――。
「ぐぅっ!」
ケートゥスの苦しむ声とともに船体が傾き、高度がどんどん下がっていく。
「ケートゥス!どうした!?」
「エンジン出力低下、高度を維持できんであーる!」
ガタガタと揺れが激しくなり、ダークエルフたちの悲鳴が響く。
「不時着する!衝撃に備えるのであーる!」
「全員、今すぐ何かに掴まって!」
「俺に掴まれ!」
カナリアが皆を庇うように身体を丸め、翼で包む。
刻一刻と大地が迫る。
前方には砂浜。
船体は海岸をなぞるように高度を下げていく。
そして──。
ズガアァァァン!
「きゃああああああああああああ!」
「うわあああぁ!」
着陸の衝撃で船内は激しく揺さぶられ、阿鼻叫喚の巷と化す。
「ハァ……ハァ……」
次第に揺れは収まり、モニターに広い砂浜とそこに打ち寄せる波が映し出される。
「助かったぁ……」
「ケートゥス、何が起きたんだ?」
「我輩としたことが……何故自分があの場所に埋まっていたのか忘れていたのであーる」
モニターにケートゥスの全体図が映し出され、船体左後方が大きく赤く明滅している。
外に出たカナリアはその原因を目の当たりにした。
「これは……」
「ひどい傷だ……」
ケートゥスの船体左側、胸ビレの後ろから尾びれにかけて、まるで抉られたような巨大な傷が刻まれていた。
離陸前は地面で見えなかった部分だ。
「誰にやられたんだケートゥス!?」
「あぁ……。ラグナロクでヨルムンガンドに尾を叩きつけられたのであーる」
「ヨルムンガンド!?あのバカでかい蛇のことか!?」
世界蛇ヨルムンガンド。
山ほどの巨大さと、無限に思えるほど長い身体を誇った毒蛇だ。
「その時の衝撃で我輩はあそこまで吹き飛ばされ、眠りにつくことになったのであーる」
「傷は治るのか?」
「時間をかければ……だが、それまで飛ぶのは無理である」
「クソっ!ダークエルフたちの怪我人が大勢いるし、どうすれば……」
頭を抱えるカナリア。
しかし、エクスは動じていなかった。
「カナリア、何か忘れていないかい?」
「忘れてる……?」
「いるじゃないか。エインヘリアルの傷をたちまち治せる子が」
「エインヘリアルの傷を治せる子……あっ!」
――――
「連れてきたよ!」
「やっほー」
「シニューニャ!」
しばらくしてビフレストが開き、エクスがシニューニャを連れてきた。
「おっきいー」
「シニューニャ、あの傷を治せるか?俺にしてくれたみたいに」
「んー……、やってみるー」
「な、何をする気であーる……?」
「えい」
シニューニャがケートゥスの身体に触れる。
するとカナリアの時と同じようにケートゥスの傷がみるみる塞がり始め、船体の内外全てが新品のような状態になった。
「おぉ……力が戻ったぞ。全システム、オールグリーンであーる!」
「ありがとうシニューニャ。本当に凄い力だ」
「ほめられたー」
カナリアに誉められ、シニューニャは両手を上げて喜んだ。
「不思議な子であーる」
「ケートゥス、すぐに発進しよう。行き先は俺たちの国だ。さぁ行こうシニューニャ」
「わーい」
「垂直離陸、開始であーる!」
森を脱出した時とは違い、ケートゥスが胸ビレを羽ばたかせると、船体がふわりと優しく浮かびあがった。
空中を泳ぐがごとく、優雅にしなやかに高度を上げていく。
各ヒレから推進エネルギーである粒子が放出され、空にオーロラ状の軌跡を残していく。
「きれー」
破損していたモニターも復旧され、広大な海、山、森、河、そして空がパノラマで映し出される。
「エクス殿、我々の森はどの方角だ?」
「えっと、あの辺りがそうだよ」
「そうか。あれが我らが故郷か……」
故郷の森を見つめるダクネ。
その瞳には、必ずあの地を取り戻す決意の炎が灯っていた。
――――
「カナリアとエクスさん、朝からどこ行ったんだろうな」
「こんな大事な時にね」
ワルキューレのコクピットでマグニとスルーズがため息を付く。
彼らの前には、コクピットが開き、肩から白布を垂らした冥鬼兵が1体跪いている。
ゴゴゴゴゴゴ――。
「なんだ?」
響く轟音とともに急に辺りが暗くなり、マグニが空を見上げると――。
「おわああ!なんだありゃ!?」
「さ……さかな!?」
街を押しつぶさんばかりの巨大な物体が浮かんでいた。
それがエインヘリアルのケートゥスだと知る由もない2人は慌てふためく。
「デカすぎんだろ!どうやって戦えば……」
「マグニ、あれ見て!」
「カナリア!?」
スルーズが指差した先、ケートゥスの船上でカナリアが手を振っていた。
――――
「ほんとビックリしたぜ」
「初めてケートゥスを見たらそりゃ驚くよな」
街の外に着陸したケートゥスの前でカナリアとマグニが話している。
その後ろではダクネたちダークエルフがケートゥスから降ろされ、ひとまず同じエルフであるソフィさんの森に匿われる事となった。
「ところで、あの冥鬼兵はなんなんだ?」
「そうだ忘れてた!帝国から使者が来たんだ!戦争が終わるんだよ!」
「なんだって!?」
同じ頃、エクスは女王から帝国からの書簡を見せられていた。
そこにははっきり停戦の申し出に加え、アドラーの身柄引き渡しと書いてあった。
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