第11話5/7 逆転の雷鳴
ヴィグネシヴァの砲撃によって、あちこちから火の手が上がる王国。
「あ……あ……」
「出力をあげさせてもらったよ。……代わりに連射は効かなくなったけどね」
被害の大きさにカナリアは呆然となり、アドラーが語っている内容など耳に入らなかった。
アドラーにとってもこの破壊力は想像以上だった。冥鬼兵を使ったこれまでの戦いなど児戯に等しい。
『スルーズ!デシレア!無事か!?返事をしてくれ!』
『姉ちゃん!おい、返事しろよ!』
エクスとマグニが煙の中へ必死に呼びかけるも、2人から応答はない。
風が吹き地表の様子が見えてくると、レーダーが2機の信号を掴んだ。
「姉ちゃん!?」
2人のワルキューレがいた場所は瓦礫の山に埋もれていた。
そこから浮遊シールドと戦弓ユニットだけがかろうじて顔を覗かせている。
姉の安否を確かめようと、たまらずマグニは駆け出した。
その後を追うように、砲撃状態を解いたヴィグネシヴァは再び侵攻を開始する。
「これで打つ手無しかな?」
「くっ……!」
「お前だけは……絶対に許さない!」
怒りに身を滾らせ、カナリアとエクスは再びスレンドラと刃を交えた。
◆◆◆
姉と仲間の無事を願い、焼け野原となった大地を走り続けるマグニとランヴェルス。
そこに通信が入る。
『……ニ。マ……グニ……』
「姉ちゃん!無事だったのか!」
ノイズがあるが、間違いなく姉の声だ。
家族の生存にマグニは安堵する。
『マグニ、聞いて……』
「……え?」
だが、姉が続けた言葉を聞くと、彼はランヴェルスを立ち止まらせた。
◆◆◆
「ちいっ!」
トライアンフのライフルがスレンドラに斬り落とされる。
「このっ……!」
カナリアの右尾羽根がしなり、スレンドラの頭部めがけてその切っ先を向ける。
しかし悠々と掴まれ、奥の手の先端飛ばし(フェザー・ウェッジ)も避けられてしまう。
カナリアはそのまま背後に回り込んだスレンドラに拘束されてしまった。
「ぐっ!」
「カナリア!」
「おっと、コイツごと斬る気かい?」
スレンドラの背後から斬りつけようとしたトライアンフの刃が止まる。
「エクス、俺に構うな!」
「おっと」
密かにスレンドラを狙おうとしたもう片方の尾羽根も鎌で斬り落とされる。
「いたずら好きな羽根は切っておかないとね」
「ぐっ……」
◆◆◆
「女王様、ご無事ですか?」
煙で咳き込む女王に肩を貸し、親衛隊長カーラは城の外に出た。
背後には炎上する城、前方には燃え盛る故郷が広がる。
「カーラ、あなたも逃げなさい」
「いいえ、最後まで女王をお守りするのが私の役目。それに……」
女王の命令を拒んだカーラはいまだ続く戦いを見つめる。
「子供たちは……まだ戦っています」
◆◆◆
「さぁ、クライマックスだ。君の大切なものが全部吹き飛ぶ様を見せてあげるよ」
エネルギーの再チャージが完了したヴィグネシヴァが再び砲撃体勢に入る。
砲身の根本から先端へ順々に光が灯り、エネルギーが充填されていく。
「こうなったら……!」
「エクス!?」
エクスはトライアンフを砲身めがけて突撃させる。
機体をぶつけてでも砲撃を逸らそうというのだ。
仮に砲身が破壊できても、充満するエネルギーの爆発に巻き込まれればただではすまないだろう。
しかし、もうこれしか手が無い。
槍を構え、トライアンフは加速する。
『マスター!止まってください!』
「えっ……?」
だが、制止を呼びかけるナビの声にエクスが急制動をかけると、ヴィグネシヴァの砲身に巨大な矢が突き刺さった。
「なっ!?」
ヴィグネシヴァの砲身が吹き飛び、アドラーは驚愕する。
矢の射出点を見ると、2体のワルキューレが瓦礫の隙間から協力して弓を構えていた。
「やった!」
「お見事です!」
「なんとか……なったわね」
狙撃に成功したスルーズが歓喜の声を上げる。
砲撃が降り注いだ際、デシレアのガルディエーヌが浮遊シールドとともに身を挺して庇ってくれたのだ。
その分ガルディエーヌのダメージは大きく、デシレアの額から血が流れ落ちる。
「いや……まだだ!」
アドラーが慌ただしくコンソールを操作する。
半分を吹き飛ばされながらも、砲身内部にある3つの砲門のうち1つがまだ稼働可能だ。
ヴィグネシヴァの砲門はまだ生きているのだ。
アドラーは照準を定めなおし、発射しようとする。
「撃てぇ!」
「おおおおおおおおおぉ!」
そこに光る砲口めがけ、猛スピードで走っていく巨体があった。
逆転の名を関するワルキューレ、ランヴェルスだ。
マグニは先ほど姉から伝えられた言葉を反芻する。
『マグニ……私は大丈夫だから戻って』
「姉ちゃん!でも……!」
『私が必ずあれを撃ち抜いてみせる。でも、もし私が失敗したらマグニが最後の希望になる。……だから、マグニも自分の役目を果たして!』
姉は言葉通り、ヴィグネシヴァを撃ち抜いた。
姉の一撃を無駄にはしない。
次は自分の番だ。
走りながら、ランヴェルスは撃破した敵機の残骸を拾い上げる。
「でぇい!」
砲身の直下で地面に叩きつけた残骸を踏みつけ、同時にハイパーブーストを始動。
残骸の爆発を利用して一気に飛び上がる。
「スパーク・ナッッコォォッ!」
加速・帯電した拳がヴィグネシヴァの砲身を打ち上げる。
大きく揺さぶられた砲門から放たれた光が王国をかすめ、空へ一筋の線を描く。
その光景を見た全員が驚愕の表情を浮かべたが、彼らはさらに驚くことになる。
突然、雷鳴が轟いた――。
偶然か、それとも皆を守りたいというマグニの気迫が呼び寄せたのか。
それは空へ舞い上がり、身を翻したランヴェルスの右脚に雷鎚が落ちた。
右脚が激しく帯電し、白い光を纏う。
マグニには何が起きているのかわからなかった。
しかし、なぜか確信があった。
この力にはやつを砕くパワーがある。
ヴィグネシヴァへ向け、右脚を力強く突き出す。
再び発動するハイパーブースト。
マグニは即席で閃いた技名を力の限り叫んだ。
その技の名は――。
「ライトニング・フォォォォォル!」
青い機体が稲光を走らせ、弾丸のように砲身へぶち当たる。
バリア内へ退避する間もなくヴィグネシヴァの砲身は粉々に打ち砕かれ、人々から歓喜の声が上がった。
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