第11話4/7 防衛線・壊滅
「いくよカナリア!」
「おう!」
エクスのトライアンフから射出されたマイクロミサイルポッドが戦いの火蓋を切る。
射出されたポッドからさらに多数のマイクロミサイルが射出され、敵機を狙い誘導・追尾していく。
さっそく2機が撃墜され、残る飛行型冥鬼兵は5機となった。
◆◆◆
「私ならやれる……私ならやれる……!」
「落ち着いてくださいスルーズさん。時間はまだあります」
戦弓ユニットを展開したスルーズのエスペランサが、狙撃ポイントでヴィグネシヴァを待ち構える。
緊張から固くなるスルーズをリラックスさせようと、同乗するナビは彼女の肩を揉む。
「撃ってきたら受け止めろって……無茶言うわよ」
エスペランサの前方で浮遊シールドを従え、待機するデシレアのガルディエーヌ。
砲撃が来たら浮遊シールド全てを犠牲にしてでもスルーズを守れと命じられているが、そもそもあの砲撃を受け止められるのだろうか?
予備のシールドを追加で持ってきたとはいえ、不安が残る。
◆◆◆
「うわ、もう始まってんじゃん!」
少し遅れ防衛線に到着したマグニのランヴェルス。
上空ではカナリアとエクスが戦っている。
2人を手助けできず、地上でやきもきしているマグニにナビからの通信が入る。
『マグニさん、間に合わせですがランヴェルスに飛び道具を付けておきました!』
「本当か!?」
『掌に気合を込めてください!』
「よぉし!」
気合を込めると、ランヴェルスの掌にバチバチと弾けるエネルギーの球が創り出される。
『技名はお好きに』
「えっと、じゃあビリビリしてるから……スパーク・ボール!」
ランヴェルスが振りかぶり放ったボールは上空へ飛び、トライアンフの攻撃で体勢を崩した飛行型冥鬼兵の土手っ腹を撃ち抜き、爆散させた。
「あ、当たった!」
『助かったよマグニ。その調子』
「へへっ!いくぜぇ!」
マグニは続けて2球目を放ち、それを避け肉迫してきた冥鬼兵の1体と戦い始めた。
「へぇ、面白いことをするね」
「お前の相手は俺だ!」
ランヴェルスに気を取られたスレンドラにカナリアが肉迫し、剣と鎌がぶつかり合う。
「アドラー!ガレス将軍が教えてくれた!全ての元凶はお前だってな!」
「ジジイめ……。そうだよ!この戦争全部、僕が好きに遊ぶために仕組んだものさ!」
「遊びだと!?」
鍔迫り合いを解いたアドラーは饒舌に語り始めた。
「実は最近やっと自由になれてさぁ。なにか面白いことないかなってさ、あちこちをふらふらしてたらあの国に辿り着いたんだよね」
「お前、何を言ってる……」
「で、試しに埋まってた巨人の死体を動かしてみたら随分驚かれてさ。初めは罰当たりだとかなんとか言われたけど、次第に農業が変わるだとか、労働革命だーとか言い始めてさぁ。人間って面白いよね。自分らの都合で簡単に掌を返すんだから」
まるで友達にでも話しかけるような軽い口調で己の来歴を語るアドラーに、カナリアとエクスは困惑の色を隠せない。
その直下ではヴィグネシヴァが休むことなく歩を進めている。
「それからしばらくはあいつらのために冥鬼兵を作ってたけど、それにも飽きちゃったからこの戦争を始めたわけ」
『なら、皇帝の言っていた復讐というのは……!?』
「あんなの建前だよ。帝国とこの国に因縁があったのは事実さ。でもクルルは復讐しようなんて思ってなかったからね。僕の術で怨みを増幅してやったんだよ」
アドラーが言葉を続けるたび、カナリアの苛立ちは大きくなっていった。
人の心を玩び戦争を仕掛け、今また国を1つ滅ぼそうとしているにも関わらず、アドラーの口調にはまるで緊張感も真剣味も感じられない。
「そんなくだらない理由で大勢の人間の命を……!」
「キミが蘇ってくれてよかったよ。人間を冥鬼兵で踏み潰すだけじゃ張り合いがないと思っていたからさ!」
「お前ぇっ!」
「ハハハハッ!」
これまで真剣に、本気で故郷と人々を守ろうと奮戦してきたカナリアにとって、アドラーの態度は到底許せるものではなかった。
だが、怒りで斬りつけてきたカナリアを嘲笑うようにスレンドラは逃げ回る。
『ガレス将軍はどうした!?帝国に戻っているはずだ!』
エクスは飛行型冥鬼兵と戦いながら、アドラーに問う。
「あぁ、あいつかぁ。僕を殺しに来たから黙らせておいたよ」
『……殺したのか!?』
「違う違う。僕の術で意思を無くした人形になってもらっただけさ」
「お前は……!どこまで人を玩べば気が済むんだ!」
アドラーとエクスの会話に割って入るように、再びカナリアとスレンドラが斬り結ぶ。
「お前のせいで……俺は人殺しをさせられた!」
「人を殺したくらいで大袈裟だなぁ」
「お前を倒してこの戦争を終わらせる!」
「……ところでさぁ。君、さっき僕の遊びをくだらないと言ったよね……?」
その言葉とともにアドラーの態度が鋭く、冷たいものに変わる。
次の瞬間、カナリアの視界からスレンドラが消え、背後に回り込まれていた。
「なにっ!?」
「君に何が分かるんだい!」
「ぐあっ!」
「僕にとって、自由がどれほど大切なことか!」
豹変したアドラーの感情を表すように、スレンドラが執拗にカナリアを攻撃する。
カナリアはその目にも留まらぬ速さに翻弄され、防御もままならない。
「ん……?」
攻撃の最中、スレンドラのレーダーが王国正面に展開する2体のワルキューレを補足する。
大型の奇妙な装備を構えていることから、アドラーはそれがヴィグネシヴァ攻略用のものだとすぐに理解した。
「あれが君らの切り札か」
大方、攻撃の瞬間にヴィグネシヴァを狙撃しようというのだろう。
だが、そう上手くいくかな?
「なら、まずその希望を打ち砕かせてもらうよ!やれ、ヴィグネシヴァ!」
山岳地帯を抜けたヴィグネシヴァが砲撃体制に入る。
「撃つ気だ!」
「スルーズ!鼻がバリアの外に出る!」
『了解!』
エスペランサが戦弓ユニットの弦を引き絞る。
集められた巨大なエネルギーの矢が形を成し、その先端をヴィグネシヴァへ向ける。
あちらはまだ砲身にエネルギーを溜めている最中だ。
『スルーズ!』
『姉ちゃん!』
「今です!」
「……っ!」
ナビの合図で意を決したスルーズが弦を離すと、ズドン――と重い衝撃波を生じさせ、光矢が走る。
タイミングも、狙いも完璧。
超音速の光矢は2秒後にはヴィグネシヴァの鼻先を射抜くだろう。
誰もがそう思った。
「……なんだと!?」
だが、矢は射線上に連なるように割り込んだ3体の飛行型冥鬼兵によって押し止められてしまった。
串刺しになり爆散する冥鬼兵。
その爆炎の向こうからチャージの完了した無傷の砲身が姿を現す。
「残念♪……お返しだよ」
ヴィグネシヴァから砲撃が放たれる。
巨大な光の筋が空に向けて伸び、そして弾けた。
消失したのではない。
花火のように拡散し、無数の煮えたぎる雨となって地上に降り注ぎ始めたのだ。
『2人とも逃げるんだ!』
「なっ……!?」
降り注ぐ砲撃の多さにデシレアは言葉を失う。
4基のシールドではまるで数が足りない。
絨毯爆撃のように大地が焼き尽くされ、2機のワルキューレは呑み込まれた。
「ああっ……!」
「女王!」
王国を覆うバリアにも次々に砲撃が降り注ぐ。
耐衝撃の許容量を超えたバリアが砕け、消失していく。
そして抜け穴となった箇所から入り込んだ砲撃が、王城の半分を吹き飛ばした。
さらに砲撃は避難民の近くにも降り注ぎ、イーザウォール王国は一瞬にして焦土と化した。
壊滅した王国。
再び巨象が砲撃を放つ時、少年の想いが奇跡を起こす。
次回「逆転の雷鳴」
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