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天霊戦騎エインヘリアル  作者: 九澄アキラ
第08話「ワルキューレ」
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第08話5/6 サポートAI・ナビ登場

「皆さん!おはようございます!」

「なに……これ?」

 翌日、ワルキューレの格納庫に集合したマグニ、スルーズ、デシレア。

 彼らの前に、座布団ほどの大きさの白い物体が浮いている。

「でっかいパンケーキが喋ってる……」

 八角形をした円盤状のボディからは3本のアームが伸び、人間の手のように表情豊かに動いている。

 

「ワタシは本日より、マスターの代わりに皆さんの訓練教官を務めるAIドローン・ナビと申します!」

「えーあい?どろーん?」

「……あ、きっと妖精さんだよ!」

「これが?」

「”これが”とはなんですかー!」

 疑いの目で見るマグニに怒った様子を見せるナビ。

 

「じゃあ本当に妖精なのか?」

「違います!」

「なんだよそれ〜!」

「ナビは私が手を離せない時に、代わりに君たちの面倒をみてくれる子だ。仲良くしてあげてくれ」

 今日は普段通りのマスターことエクスはナビを撫でると、ワルキューレの方へ向かっていった。

 

「さて……今日からは通常の訓練と並行して、シミュレーターを使った訓練をやる!」

「シミュレーター?」

 マグニが首をかしげる。

 さっきからAIだのドローンだの、聞いたことのない言葉ばかりだ。

 そこにガション――と音がしてワルキューレ1号機の頭部が開き、搭乗席が分離・自律飛行して、マグニたちの元へと降りてきた。

 

「おぉ~!なんだこれ!?」

「これが君たちの愛機となるワルキューレの搭乗席だ」

 初めて見る乗り物にマグニが興奮する。

 搭乗席を覆う半透明の外殻から中の搭乗席が透けている。


「じゃあ、まずはスルーズ。乗ってみて」

 外殻が開き、エクスはスルーズを中へ乗せる。

 スルーズは物覚えが早い。

 シミュレーターにもすぐに馴染めるはずだ。

「まずペダルに足をかけて、次にこれを掴んで、最後にここに腰を乗せる」

 スルーズが搭乗席に腰を乗せると、筋肉樹の枝がスルーズの腰を掴み、身体を固定する。

 

「ワタシが操縦をサポートします」

 ナビが同乗すると外殻が閉じ、外が見えなくなる。

「チュートリアル開始します」

 搭乗席のモニターに王国の大地と冥鬼兵が映し出される。

「わっ、巨人が!」

「スルーズさん、これは映像です。あれが攻撃してくることはありません。まずは移動から覚えましょう」

 その後、スルーズたちは連日シミュレーター訓練を続け、ワルキューレの操作を覚えていった。



 2週間後、3機のワルキューレが完成した。

 スルーズ用の2号機、エスペランサは高い空中機動力と弓による攻撃を得意とする。

 デシレア用の3号機、ガルディエーヌは4基の自律飛行障壁を操り味方を守る。

 1つ飛んでマグニ用の5号機ランヴェルスのみ、マグニの要望を取り入れ男性型巨人の遺骨をフレームに使った特殊な機体だ。

 本来、マグニの機体になるはずだった4号機はマグリア王への献上品として仕上げられる事になった。


 闘技場に並ぶ4機のワルキューレ。

 そこにドローンによるホログラムを使って、8体の冥鬼兵が映し出される。

「今から1分間、敵の攻撃をかわして倒し続けろ!ただし、頭部への攻撃は禁止!」

 エクスは訓練初日に行ったテストを、今度は自身もワルキューレに乗って行う。

 

「おっしゃあ!」

「かかってきなさい!」

「あんたら元気ねえ」

 4人は倍の数で襲いかかる敵を難なくいなしていく。

 ホログラムの頭部には敵兵の姿も映し出されている。

 傷つけないように手足や胴体を狙って反撃していく。

 反撃で冥鬼兵が倒されると次が補充され、常に8体と戦うことを強いられる。

 だが、つらい訓練の日々は彼らにチームワークを与えていた。

 

「マグニ、危ない!」

「サンキュー、デシレアさん!」

 マグニのランヴェルスを背後から狙う冥鬼兵にデシレアがガルディエーヌの自律飛行障壁をぶつける。

 操縦は上手くないものの、視野の広さと危機察知能力の高いデシレアに与えられた武器は空飛ぶ盾。

 守りたい対象に手を伸ばすだけで盾が飛んでいき目標を守る。

 また、その堅牢さから敵に直接ぶつけることも出来る。


「ふふん……うわぉ!?」

 得意げに笑みを浮かべるデシレアの眼に、自機の真横まで迫ったホログラムが映る。

 だが、そのホログラムはエクスのトライアンフによって斬り裂かれた。

「自分を守るのも忘れないこと」

「はい……」

 エクスに注意されつつも、彼らは互いの弱点をカバーし見事に1分間、敵の猛攻をしのぎきった。


 

「いいなー、姉ちゃんたちは飛べて」

 慣熟訓練中、闘技場の上空でエクスから空中機動を習うスルーズを見上げるマグニ。

 自分の愛機、ランヴェルスはパワーや格闘能力を高めるために男の骨を使って、筋肉量を2倍以上に増やした代わりに飛べなくなったらしい。

 自分に合わせたワルキューレを作ってくれたエクスには感謝しか無いけれど、子供心にはやっぱり空を飛んでみたかった。

 

「飛べますよ?」

「え?」

 同乗していたナビが答える。

「ランヴェルスでもあの高さまで”飛び上がること”は出来ますよ」

「マジで!?」

「ランヴェルスには瞬間的に全推力を一点に集中させる機能があります。思い切り踏み込んでから、飛び上がってください」

「ようし……おりゃあっ!」

 マグニは両足で思い切り踏み込み、全力で飛び上がった。

 同時にランヴェルスの装甲の一部が開き、露出したスラスターが地面へ向け衝撃波を放つ。

 ランヴェルスは弾丸のごとく上空へ飛び上がった。


「いっけえええ!」

 エクスとスルーズの2機のワルキューレの間を抜けるように、ランヴェルスが弧を描いて飛んでいく。

「わあっ!」

「マグニ?」

「すげぇ!本当に飛んだ!」

 ジャンプの頂点で感じる無重力感。

 夕陽で赤く照らされた雲海がどこまでも広がり、その美しい景色にマグニは目を奪われる。

  

「ところでマグニさん、着地点は考えられていますか?」

「……え?」

 重力に引かれランヴェルスが降下し始める頃、マグニは大事なことに気付いた。

 下を見ると浮島がない。

 ここは天界、浮島のすぐ外は雲以外何も無い場所だ。

 方向も考えずジャンプしてしまったせいで、島の外まで飛んでしまったのだ。

 

「おわああああああああ!」

「マスター!たすけてくださーい!」

 雲の中に落ちていくランヴェルス。

 視界ゼロで回転する身体に叫び声を上げるマグニ。

 だが、衝撃とともに落下する感覚が無くなった。

 雲の下に出るランヴェルス。

 その機体をエクスとスルーズのワルキューレががっしりと掴んでいた。


「大丈夫かい?」

「もー、なにやってるのよ」

「あ、ありがとう。エクスさん、姉ちゃん……」

 マグニが安堵する。

 その顔は冷や汗でびっしょりだ。

 

「いやー、死ぬかと思いましたね」

「お前が飛べって言ったんだろ!?」

 他人事のように語るナビにマグニがツッコむ。

「すみません。着地点のこと考えるの忘れてました♪」

「忘れるか普通!?」

 

「マグニ、ランヴェルスの飛行手段ならもう考えてあるよ」

「え、本当!?」

「デシレア」

「はいはーい」

 エクスの呼びかけにデシレアのガルディエーヌがやってくる。

 

「魔法の絨毯を出して」

「魔法の……これ?」

 デシレアはコンソールから魔法の絨毯と名付けられた盾の組み合わせを選択する。

 すると4つの盾が組み合わさり、1つの大きな盾となった。


「乗ってみて」

「う、うん……」

 足元に来た盾にランヴェルスが足を下ろす。

 盾はランヴェルスを乗せても十分な推力で飛行している。

「本当だ!乗れてる!」

 マグニはそのままサーフィンのように盾を乗りこなす。

 

「そういえばこれが有りましたね」

「知ってたなら初めから言えよ!」

「すみません。生まれて間もないもので」

 マグニとナビの掛け合いを挟みつつ、4機は天界へ戻っていった。



「エクスさん!ガレス将軍が!」

 翌早朝、エクスの元へ親衛隊長カーラが血相を変えてやってきた。

 報告を受けたエクスも表情が一変し、城へ急いだ。

 目指すはガレス将軍が勾留されている部屋。

 だが、そこにはすでに将軍の姿はなく、こう書き置きがしてあった。

 

 女王陛下。

 エクス殿。

 カナリア殿。

 何も言わず去る事を許されたい。

 だが、私は陛下を守らねばならない。

 アドラーを討った後、必ずこの戦争を平和的に終わらせると約束する。

 しばし辛抱されたし。


「駄目だといったのに……」

 エクスの手に思わず力が入り、書き置きがくしゃりと歪む。

 帝国へ向け遡上する舟の中、ガレスはアドラーを必ず討つ覚悟を固めていた。

最後までお読みいただきありがとうございます。

感想・高評価をいただけるととても励みになります。

完結できるように頑張ります。

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