第08話4/6 特訓
翌朝、天界――。
「なんでこんなことに……」
朝日を浴び、寝ぼけ眼で嘆息するデシレア。
その隣にマグニとスルーズも並んでいる。
今日から訓練を始めるとエクスに集められたのだ。
その当のエクスはというと……。
「しょくーん!本日より君たちにはワルキューレの操者になるための訓練を受けてもらう!期限は帝国が攻めてくるまでの2週間!2週間で諸君らを1人前の操手に育て上げる!気合を入れていけー!」
サングラスを掛け、竹刀を持ち、メガホンで叫んでいた。
「あの格好……なに?」
見たこともない風体のエクスに、スルーズはマグニに小声で話しかける。
「さっき聞いたら、キャラ作りだって……」
「キャラ作り?」
普段の優しげな雰囲気が無くなり、人が変わったようなエクスにマグニも戸惑う。
「まずは身体能力を測る!闘技場10周!」
「え”ぇ”~」
内容を聞いただけでデシレアが悲鳴を上げた。
1周200メートルの円形の闘技場を走っていく3人。
結果はマグニが1位、全速力を保ったまま走りきった。
2位はスルーズ、自己の体力を考えた計画的な走りだ。
「もう無理~」
デシレアは5周でリタイアとなった。
続いて反射神経。
エクスの周りに3つ、小さな球体型のドローンが浮かんでいる。
「今からこのボールが君たちを攻撃する。1分間避け続けろ!」
ドローンはマグニたちを取り囲むと、体当たりを始めた。
「うおっと!?」
「いたっ」
「あたっ!」
マグニは持ち前の身体能力で回避するも、スルーズとデシレアは避けきれなかった。
ドローンの表面はゴムのように柔らかいが、ぶつかればそれなりに痛い。
「当たっても避け続けろ!」
エクスの激が飛び、ボールから逃げ惑い続ける3人。
エクスは3人の身体や目線の動きを見ながら、それぞれの反射速度を測っていく。
実戦では被弾しても戦いは続く、そして敵はこちらより多い。
このテストは彼らの適性を測ると同時に、その状況に慣れさせるためのものだ。
「よっ、ほっ!……あだっ!?」
マグニは反応は速いが、背後への注意が疎かだ。
「マグニ後ろ……いったっ!」
デシレアは逆に自分や仲間が狙われている事にいち早く気付くも、身体を動かすのが間に合っていない。
「はっ!ふんっ!」
スルーズは最初こそ被弾したが、すぐにボールの速度や予備動作を見抜いた。
見えない位置にいるドローンもその動作音で位置を把握し、次第に少ない動きで避けるようになっていく。
「残り30秒!今度は攻撃を避けろ!」
ボールの動きが変わり、中心から低出力の光線が発射される。
「攻撃?あっづ!?」
テーザーがマグニの手に命中。
熱を伴ったビリっと痺れるような痛みが走る。
「そんなのあり~!?」
今度は飛び交う光線から逃げ惑う3人。
マグニとデシレアが被弾の痛みで跳ね回る中、スルーズだけは先ほどより余裕をもって避けている。
「そこまで!」
1分が経ち、ボールが動きを止める。
デシレアが崩れ落ち、マグニとスルーズは肩で息をする。
1分とはこんなにも長いものだったのか。
3人ともがそう感じていた。
「ビームとか……反則だろ……」
「え?私、後のほうが避けやすかったよ?直線でしか飛んでこないもん」
ビームに切り替わってから、スルーズは1度も被弾しなかった。
「マジかよ……。すげぇな姉ちゃん」
その後も格闘、剣術、弓など様々なテストを行い、全てが終わる頃には夕方になっていた。
「よし、今日はここまで!」
「はぁ~……」
「やっと終わったぁ~!」
「づかれたぁ~」
疲れで3人とも地面に倒れ込む。
「みんなお疲れさま~!よくがんばったね!はい、ハツラツジュース」
服も性格もいつもの調子に戻ったエクスが持ってきたジュースをマグニは一気に飲み干す。
「……ぷはっ、うめぇー!」
「みんなの協力で良いデータが取れたよ」
「っていうか、エクスさん。さっきまでの恰好はなんだったんだよ?」
「えっ!?あぁ、あれはその……」
エクスは恥ずかしそうに頬を掻いた。
歯切れの悪いエクスにマグニとスルーズが首をかしげる。
「実は私、他人を育て上げるというか、指導というものをしたことがなくてね。どういう風にしたらいいかわからなくて、知ってるイメージの真似をしていたんだよ」
「そんな理由かよ……。あんなに怒鳴らなくても言うこと聞くって」
「ごめん」
「ふふっ……、エクスさんにも苦手なものがあるんですね」
ペコリと頭を下げたエクスにスルーズが笑みを漏らす。
3人の笑い声をデシレアは倒れたまま聞いていた。
検査の結果、各人の適性はこのようになった。
マグニ:体力・運動能力ともに優秀。格闘能力に秀でる。射撃が苦手。周りが見えなくなる傾向あり。
スルーズ:あらゆる分野で優秀。発想力に富む。弓の適性あり。
デシレア:身体能力はどれも平均以下だが、危機察知と視野の広さに優れる。
地上に戻る前に、エクスはそれぞれの特性に合わせた装備案をまとめていた。
「エクスさん、ワルキューレって全部こういう感じなのか?」
そこにマグニが話しかけてくる。
「と、言うと?」
「こういう……女の子っぽい見た目のしか無いのかってこと、俺が乗るのはもっとガッチリして、カッコいいのに出来ないかな?ほら俺、男だから」
「んー……」
男がどうとかは置いておいて、今の計画では共通規格の装備違いが4機だ。
確かに、1つくらい特化機を作っておくのもいいかもしれない。
エクスは前向きな返事をした。
その夜、エクスはある物を制作していた。
いま自分はワルキューレの開発をしながら、マグニたちの訓練もしている。
両方を満足いくものに仕上げるためには、自分の役割を肩代わりできる存在が必要だ。
エクスは座布団ほどの大きさの機械を前に、夜通し作業を続けた。
時を同じくして、捕虜となっているガレスはあるメッセージを受け取っていた。
「近い内にお迎えにあがります」と――。
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