第08話3/6 操者探し
ワルキューレ1号機が完成したことで、量産の目処もついた。
予定通りいけば帝国の侵攻までにあと3機は完成するだろう。
となるとあと3名、搭乗者が必要だ。
エクスは候補を探すため地上へ降りた。
「とりあえず女王様に相談しよう」
ワルキューレを操るにはそれなりの適性がいる。
それと搭乗席のサイズ的に、あまり大柄な人間は不適応だ。
必然的に子供や女性が候補になるが、実戦に耐えられる肉体と心を持つ者となるとそれもまた限られる。
あれこれ考えながら城に向かうと、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「頼むよ母ちゃん!」
「駄目に決まってるでしょう!」
城の脇でマグニと母親のカーラが言い争っている。
「マグニ、もういいでしょ?」
「ほっとこうよスルーズ」
スルーズとアルティナも一緒だ。
「どうしたんですか?」
「エクスさん!」
エクスの姿を見たマグニは、さっとエクスの方へ身を寄せる。
「エクスさんも母ちゃんに言ってよ!巨人が完成したら俺を乗せるんだって!」
その言葉でエクスは2人が何を言い争っていたのか理解した。
「エクスさん!子供をからかうのは止めてください!この子、すっかり本気にしてしまって……」
「俺は本気なんだって!」
「マグニは少し黙っていなさい!」
叱られたマグニが口を噤む。
カーラがキッとエクスを見つめ、真剣な空気になる。
大人と大人の会話、ということだろう。
「……お母様。私は確かに彼を巨人に乗せると言いました。その時は言葉のはずみに過ぎなかった。でも、巨人が……ワルキューレが完成した今、確信しました」
エクスがマグニの顔を見る。
「マグニくんにワルキューレに乗って欲しいと」
「エクスさん!」
嬉しさのあまりマグニはエクスに抱きついた。
「だ……駄目です!子供にそんな危険なことさせられますか!?」
「母ちゃん!俺はみんなを守りたいんだよ!」
マグニの訴えにカーラは眉をひそめる。
本気で言っているのはわかっている。
だが、この子はまだ子供だからわかっていない。
勇気と無謀の区別がついていないのだ。
先日の城での戦い、エクスが現れなければマグニは敵兵に斬られ死んでいたかもしれない。
夫を失い、さらにマグニまで失うかもしれないと考えたら……。
カーラはその不安を拭いきれなかった。
「母ちゃん……」
俯く母の正面にマグニが立つ。
「俺……母ちゃんの本当の子供じゃないと知った時から、自分が誰なのかずっと考えてた。なんの為に生まれたのか。なんの為に母ちゃんに拾われたんだろうって、ずっと……。だから、巨人に乗れば、それが分かるかもしれないって思ったんだ!」
マグニの言葉に、カーラがハッとして口に手を当てる。
母の脳裏に、マグニを拾った時の記憶がフラッシュバックする。
「だから頼む、母ちゃん!」
マグニの必死の説得を聞き終えると、カーラは少し考えこんだ後、深く溜息をついた。
これが、この子の運命なのかもしれない――。
「わかりました……。認めましょう」
「ありがとう、母ちゃん!」
真剣な表情だったマグニの顔がパッと明るくなり、母親に抱きつく。
「お母様、ありがとうございます」
「生身で巨人に向かっていくよりは、マシでしょうから……」
確かに、マグニならやりかねないとエクスは思った。
「決まりね。まぁアタシは初めから賛成だったけど。存分に戦ってきなさいマグニ」
空気がほぐれ、沈黙を貫いていたアルティナが口を開く。
「うん、決まりね。……マグニが乗るなら私も乗る!」
「はぁ!?」
「姉ちゃん!?」
スルーズの予想外の宣言にその場の全員が驚きの声を上げる。
「スルーズ!?あなたまで……」
「弟を守るのはお姉ちゃんの務めでしょ!」
「駄目よ!スルーズはそんな危ない事しちゃ駄目!お母様も止めて!」
「……マグニにうんと言った手前、止めるわけにもいきませんね」
「お母様!?」
マグニの時はあれだけ反対したカーラだが、スルーズの提案はすんなり受け入れた。
マグニは許して、スルーズは駄目となったら実子と養子で差をつけてしまうことになる。
カーラにとっては、2人とも実子なのだ。
それに、スルーズがいればマグニの無茶も止めてくれるだろう。
「だ……だったら私も乗る!」
「それこそ駄目でしょ!」
「なんでよ!?」
「姫様に何かあったらそれこそ国が……」
「スルーズに何かあったら私がどうにかなっちゃうー!」
その後、駄々をこねるアルティナを皆でなんとか静めた。
「巨人の乗り手……ですか?」
「はい、若い男性か女性で……なるべく信頼できる方がいらっしゃらないかと」
マグニたちと別れたあと、エクスは残り1人について女王に相談していた。
「では、親衛隊か騎士団から選びますか?」
「そうですね。どなたにお会いすればよろしいですか?」
「では、まず親衛隊から……」
「エレオノーラ~、お酒切れた」
2人が立ち上がり部屋から出ようとした時、銀色の髪と褐色の肌をした女性がドアを開け、ふらふらと入ってきた。
祭りの日に踊りを披露し、カナリアに先祖代々のブレスレットを見せて契約を迫ったエインヘリアルの巫女だ。
見れば手に空の酒瓶を持っている。
「また昼間から呑んでるの、デシレア」
「だってやることないも~ん」
巫女デシレアはそう言いながらソファに横になると、そのまま寝てしまった。
これまで見た厳粛な雰囲気とは真逆のだらけた姿にエクスは困惑する。
「……エクスさん、適任者が見つかりましたよ?」
「へ?」
女王は静かな怒りを含んだ笑顔でエクスに振り向いた。
「なんでアタシが!?」
目覚めた途端、ワルキューレの操手になるよう告げられたデシレア。
なぜ自分が選ばれたのか、全く理解が出来ないという顔だ。
「デシレア、あなたの仕事はなんですか?」
「カナリア様を奉ったり、祭りで踊る……こと?」
「その祭りは年に何回ですか?」
「えーと、3回……だっけ?」
「……代々続く巫女の家系と言うだけで生活を保証され、年に数回、祭りで踊るだけで後は遊んで暮らしてる身なんですから、こういう時にちゃんと働いてもらわなくてはね」
「うぐっ……」
女王の言葉に、デシレアは次第にバツが悪そうな表情になっていった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
感想・高評価をいただけるととても励みになります。
完結できるように頑張ります。




