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天霊戦騎エインヘリアル  作者: 九澄アキラ
第06話「ビフレスト」
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第06話3/4 インナースペース

 ガレスからもたらされた情報により、王国では帝国の再侵攻に備えた準備が進んでいた。

 

「勝負は1ヶ月後か……」

「君だけでは守りきれない」

「……わかってる」

 

 今度は数十体の冥鬼兵が相手だ。

 単に戦うだけなら出来るだろう。

 だが、王国を守りつつそれをやるのは不可能だ。

 それに出来れば帝国の兵士達も傷つけたくない。

 人手が……戦力が絶対的に不足している。

 頼みの綱はエクスが作ろうとしているあれしかない。

 

「あれから既に4日経過している。残った日数で対抗策を完成させないと……。まずはこれ」

 

 エクスは背負った大きな巻き紙をカナリアに手渡す。


「これは……?」

「君にやって欲しい防衛策をまとめた」

「えーと、落とし穴に……森に張り巡らせる縄に……杭のバリケード」

 

 広げた紙には多数の防衛策が絵や文字で描かれていた。

 どれも人力では手間がかかり、カナリアがやった方が効率がいい物ばかりだ。

 地面に腰を下ろし、詳細を読んでいくカナリア。

 

「……」

 

 その傍らで、エクスはカナリアの胸の中央にある水色の、結晶のような部分が気になっていた。

 ガレス将軍との戦いの際、彼は人々の声援から力をもらっていた。

 だとするなら……。


「カナリア、ちょっといいかな」

「なに?」

 

 エクスはカナリアの胸元によじ登り、結晶に手を触れる。

 

「何しようってんだよ」

「少しじっとしてて」

 

 紙を巻くカナリアの眼前に、よつん這いになったエクスの尻が突きつけられ、彼は思わず目を逸らした。

 なんだか胸元がムズムズする。

 カナリアが目を逸らしている間に、エクスは目当てのものを探し当てた。

 

「あった!」

「え?」

 

 カナリアが顔を戻す。

 だが、エクスの姿がない。

 

「あれ?エクス?」

 

 周りを見てもエクスの姿はない。

 だが、ふと自分の胸元を見ると、身体が透けるようにしてエクスの姿が見えた。

 いや、見えただけではない。

 確かに”存在”を感じる。

 これ、もしかして……。

 

「うおおおおおおおおおおぉ!?」

 

 状況を理解したカナリアが絶叫する。

 

「エクス、お前……いや、え?お前、もしかして……俺の中に入ってんのかぁ!?」

「やっぱり君にもあったね、インナースペースが」

「イ、インナー……スペース?」

 

 エクスは今、カナリアの中の青く煌めく空間を漂っている。

 インナースペース――物理的な大きさに制約を受けない圧縮空間。

 コズミウムによって進化した生命体には、必ずこのインナースペースがある。

 緊急時に保護したい人や物を収納できる便利な場所だ。


「よっと」

「うおっ!?」

 

 エクスがインナースペースから身を乗り出すと、ちょうどカナリアの胸元から上半身が生えたような形になる。

 

「い、いったいどうなってんだよ?」

「君は身体の中に人を入れられるってこと」

「……マジ?何人くらい?」

 

 気にするのはそこなのか……とエクスは思った。


「それは試してみないと……」

「なにしてるのー?」

 

 聞き覚えのある声にエクスが振り向くと、シニューニャがいた。

 

「あ、シニューニャちゃん!」

「エクスとカナリア様、くっついてる……」

「ちょうどよかった!こっちに来てシニューニャちゃん!」

 

 エクスはインナースペースから出るとシニューニャの背中を抱いて飛び、カナリアの胸元に立たせる。


「カナリア、中に入れて」

「中に……ってどうやって?」

「念じればいい」

「念じる……」

 

 カナリアが中に入れ、中に入れと念じるとエクスとシニューニャの足元の感覚が消え、インナースペースへ落ちるように入っていく。


「ここ、どこ……?」

 

 様変わりした景色を見渡すシニューニャ。

 初めての体験だが落ち着いている。

 

「カナリアの中だよ」

「あったかい……」

 

 エクスはシニューニャを抱きながら、少し目を閉じた。

 確かに、ここは暖かくて安らぐ。


「カナリア、苦しくないかい?」

「あぁ、なんともない。……これ、もっと早く知りたかったな」

 

 カナリアは少し寂しげにそう言い、その感情はインナースペース内のエクスにも伝わっていた。

 これを知っていれば過去に誰かを救えた――。

 そんな感情だった。

  

「カナリア、このまま飛んでみてくれるかい?」

 

 エクスは落ち込みそうなカナリアの気を逸らすように、次の注文をする。

 

「お、おう……。落ちるかわからねえけど、落ちるなよ」

 

 カナリアが羽ばたくと、みるみる地面が遠のいていく。

 あっという間に王国全体が見渡せる高度に到達した。


「お、お、おおぉ~」

 

 シニューニャが手足をバタバタさせている。

 空を飛ぶなんて初めてだろうからこの反応も当然か。

 

「大丈夫だよシニューニャちゃん」

 

 エクスはシニューニャを抱きしめ、不安を和らげる。

 

「おそら、飛んでる……楽しい」

 

 カナリアにもシニューニャの楽しい気持ちが伝わっていた。

 しばしの間、王国の上空を旋回する。

 

「カナリア、そろそろ……うわっ!?」

 

 景色を眺め終わり、王国へ戻ろうとした時だった。

 

「なんだ!?」

 

 突然カナリアの周りが虹色の光に包まれ、3人の身体が空へ引っ張られ始めた。

最後までお読みいただきありがとうございます。

感想・高評価をいただけるととても励みになります。

完結できるように頑張ります。

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