表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天霊戦騎エインヘリアル  作者: 九澄アキラ
第06話「ビフレスト」
24/88

第06話1/4 思い出の料理

 搭乗席ごと負傷したガレスを抱え、カナリアは城に降り立つ。

 城では女王と兵士達がすでに待機していた。

 降ろされたガレスが搭乗席から歩き出す。

 だが、彼はすぐに苦痛に顔を歪め倒れ込んだ。

 

「将軍!?」

「むっ、ぐぅ……」

 

 脚を押さえてうめき声をあげているガレスに、エクスが駆け寄る。

 

「将軍、どうなされたんですか!?」

「脚が……引きずり出された時に折れたようだ」

「えっ!?あっ、すまない!力加減が……」

 

 カナリアが自分の不手際だと謝罪する。

 

「いい。負けた上に命まで救われた。贅沢は言えんさ」

 

「将軍、足を出して下さい。いま治します」

「治す、だと……?」

 

 ガレスはエクスの言葉に首を傾げた。

 折れた骨を”いま”治すとはどういうことだ?

 周りも彼女が何をするのか不思議に思う中、エクスは骨折箇所を見つけ手を触れる。

 

「将軍。目を閉じて、折れてない自分の脚をイメージして下さい」

「何を……」

「いいから言う通りに。目を閉じて、いつも通りの自分の脚を思い浮かべてください」

「……わかった」

 

 ガレスが指示に従うと、エクスの掌が光り始めた。

 すると将軍の脚から骨折箇所を覆うように虹色の結晶が生えていき、弾けて消えた。

 

「将軍、もう目を開けて大丈夫ですよ」

「いったい何が……んん?」

「脚はどうですか?」

「折れて……いない。治っている!」

 

 ガレスは難なく立ち上がり、周囲がざわつく。


「もしや、そなたも魔術を使えるのか……?」

 

 ガレスのその言葉にエクスの予感は確信に変わった。

 やはり帝国側には魔術師がいる。

 

「将軍。お聞きしたいことは山ほどありますが、まずは手当を受け、身体を休めてください」

「……うむ」

「牢ではなく、客人用の部屋にご案内して」

 

 エクスと女王の指示の元、ガレスは城の中へ連行されていった。


「ぐ……っ!」

 

 ズズン……と、エクス達の背後でカナリアが膝をついた。

 

「カナリア!」

「悪い。ちょっと力が抜けた」

「カナリア様も早くお休みになられてください!」

「あぁ……」

 

 カナリアはよろよろと洞窟へ歩き出し、エクスも付き添っていく。


「さっき、将軍の足に何したんだ?」

「折れた骨をそっくり作り直したんだ」

「作り……直した?」

「イメージしたものを実体化させるのが私の能力の1つ。それの応用で物質を別の物に作り変えることも出来る。でも、意志のあるものを作り変えるには相手の同意が必要なんだ」

「だから、将軍に折れてない自分の足を想像してもらったのか」

「そういうこと」

「本当にすごいな。お前は……」

「君の傷も治してあげたいけど、身体が大きすぎる」

「大丈夫、寝れば治る」

「後は私に任せて、ゆっくり休んでくれ」

「あぁ、頼む……」

 

 カナリアは洞窟に入り、ハツラツを一口かじると泥のように眠った。



「ん……?」

 

 鼻先に漂う良い匂いで、カナリアは目を覚ました。

 身体を起こすと、夕焼けの光が眼に刺さる。

 

「あ、起きた」

 

 エクスの声がするが、光で見えない。

 手で光を遮ると、エクスとエルダの後ろに沢山のテーブルと料理が並べられていた。

 

「これって……」

「カナリアが早く元気になるように、みんなで美味しい料理を作ってるところ」

 

 洞窟の外を見ると、沢山の人が肉を焼いたり、鍋や鉄板で調理をしている。

 

「祭り用の大鍋と大鉄板がまだあって助かったよー」

「さぁ、カナリア。冷めない内に食べてくれ」

「ああ、いただくよ」

 

 カナリアは手を合わせ、感謝の祈りを捧げる。

 用意された大きな木のさじを使い、料理を次々と口の中に放り込んでいく。

 それもそのはず、それぞれの皿に盛られた料理は人間にとっては数人分あるが、10mを超えるカナリアにとってはひと口だ。

 

「あ、これ美味い。こっちも美味いな……」

 

 並べられた料理は昔は無かったものが多いが、どれも美味い。

 ただ、大体のものにハツラツが入っているのが気になった。

 その中で懐かしいものを見つける。

 

「これ、まだ残ってたのか」

 

 この地に昔からある家庭の煮込み料理。

 見たところハツラツも入っていない昔のままだ。

 皿を手に取るカナリア。

 エルダはその様子を、胸をドキドキさせながら見つめていた。

 カナリアが料理を口に含むと、とても懐かしい味がした。

 

「……!」

 

 遠い過去、まだ自分が人間だった頃に食べていた味そのものだ。

 あの頃の情景が、家族の姿が次々とフラッシュバックする。

 

「カ、カナリア様!?」

 

 気がつかないうちに、カナリアの目から涙がこぼれていた。

 

「おおお、美味しくなかったですか!?」

「これ……君が作ったのか?」

「は、はい!ごめんなさい。私、お母さんほど上手く作れなくて……」

「いや、美味しかったよ。……本当に」

「あぁ、よかったぁ~」

 

 エルダが胸を撫で下ろす。

 

「これ、作ってくれてありがとう」

 

 カナリアがブレスレットを見せる。

 

「そんな、エクスさんにお願いされた通りにしただけですから」

「これが無かったら、きっと勝てなかった」

「お役に立ててよかったです。子供達も喜んでましたよ」

「大事にするよ……」

 

 今度はもう、無くさない。

 カナリアは強い想いでブレスレットを見つめた。


「さぁさぁ!まだ料理は残ってるよ!」

 

 大きな丸焼きの皿を掲げたエクスを先頭に、続々と新たな料理が運び込まれてくる。

 陽が落ちていく中、カナリアは満腹になるまで食べ続けた。

最後までお読みいただきありがとうございます。

感想・高評価をいただけるととても励みになります。

完結できるように頑張ります。


執筆ペースを鑑み、今後は毎週月曜更新になります。

代わりに休載はほぼ無くせると思いますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ