第05話2/4 城内の攻防
「シルヴィさん!」
「バインド・ブランチ!」
エクスの合図でシルヴィが地面に手を当てると波動が広がり、森の木々が侵攻する冥鬼兵を縛るように絡みついていく。
「な、なんだこれは!?」
予想だにしない現象に、焦る操縦者。
「いまだ!」
エクスは拘束された冥鬼兵へ飛び移る。
頭部に取り付くと、肩や背中に掴まっていた兵士達が襲いかかってきた。
エクスによって次々と蹴落とされる彼らを木々の枝がキャッチし、そのまま拘束する。
邪魔者を退けたエクスは逆手で剣を構え、刀身の出力を最大まで上げる。
初めて冥鬼兵と戦った時は装備の出力不足で歯が立たなかった。
だが、いくらか機能が回復した今なら――。
「あの時と同じと思うな!」
強く刃を突き立てる。
以前より高出力で発された光刃は甲冑を融解させ、円を描くように切り抜いていく。
「な、なんだあっ!?」
目の前に現れた熱と光に操縦者が慌てている間に円は繋がり、エクスは内部に侵入する。
即座に搭乗者をテイザーで無力化し、外に捨てる。
「よし、まだエネルギーは供給されている」
操縦席に座ると、拘束する木々を引きちぎり城へ迫る冥鬼兵が映し出される。
「シルヴィさん!拘束を解いて!」
「はっ!」
シルヴィが拘束を解くと同時に、エクスは冥鬼兵を走らせる。
操縦の仕方は鹵獲した冥鬼兵から粗方わかっていた。
複雑な動作は出来ないが、体当たりくらいならやれるはずだ。
城に辿り着き兵士を降ろしている最中の冥鬼兵目掛け、一直線に突進する。
「うおおおおりゃあぁ!」
ドガン!
勢いのまま衝突した2体の冥鬼兵はもつれ合うように転がり、そのまま岸壁にぶつかると機能を停止した。
エクスは上下逆になった搭乗席から地面に降りると、すぐに城へ駆け出した。
先の様子を見る限り、城には既に多くの敵兵が入り込んでいる。
同じように脱出した敵兵を銃から撃ち出した光の縄で捕らえつつ、エクスは城へ急いだ。
――
「ママ!」
「アルティナ、ここにいなきゃダメだよ!」
その頃、洞窟のマグニ達はアルティナを止めようと必死になっていた。
「でもママが!」
アルティナは母親が、城にいる女王が心配だった。
親衛隊長を母に持つマグニとスルーズも母を心配しつつも、アルティナを守れという言いつけに従っていた。
しかし……。
「……姫様を守るなら、姉ちゃんだけでもいいよな?」
マグニがぼそっと呟いた。
「え?」
「俺、行ってくる!」
そう言うとマグニは城へ駆け出した。
「マグニ!駄目だって!危ないよ!」
スルーズの叫びは届かず、マグニは城へ入っていった。
(待っててくれ母ちゃん!)
親衛隊長である母は必ず女王と一緒にいる。
荘厳華麗な廊下と階段を駆け抜け、騒ぎの大きい方へ向かっていく。
1番慌ただしい部屋を見つけたマグニの顔を、血飛沫がかすめた。
「っ……!」
部屋の中では互いの兵士達が、今まさに剣を交え戦っていた。
辺りの床には血しぶきとともに力尽きた兵士が転がり、斬りつけられた寝具から吹き出た大量の羽毛が舞い散っている。
「母ちゃん!」
部屋の奥には女王を守り奮闘する親衛隊と、母の姿。
「うおおおおおお!」
マグニは叫びと共に、敵兵を次々に殴り飛ばしていく。
殴られた兵士は甲冑を身に着けているにも関わらず、殴られた部位はひしゃげ、頭部を殴打された者は一撃で卒倒した。
「マグニ!?あなた、何でここに!?」
カーラはここに居るはずのない、居るべきではない息子の姿に驚く。
「俺だって戦える!うおおおおお!」
「あっ……。お前達!陛下をお守りしろ!」
カーラは息子へ近づくため、1人斬り込んでいった。
「ここは子供が来る場所じゃないの!」
「もう何人も倒した!」
母が背中合わせに子を叱るも、子は自身の力を証明する事に必死だ。
「そういう問題じゃないの!……あっ!こら!」
「うおおおおおお!」
マグニは再び敵兵に飛びかかり、追おうとしたカーラも斬りつけてきた敵兵と鍔迫り合う。
素早い身のこなしで敵の剣をかわし、マグニはさらに何人も殴り倒していく。
「このガキャア!」
巨漢の敵兵がマグニに掴みかかり、手四つの体勢で押し合いになる。
だが、ズンズンとマグニが押し始めた。
「こ、こいつ……。ガキのくせになんて力……!」
「うおおおおぉ!」
「ぐはぁっ!」
巨漢の相手を押し、壁に叩きつけダウンさせる。
「はぁ……はぁ……」
これで何人倒しただろう。
膝に手を置き、肩で息をするマグニはそんな事を考えていた。
自身の背後を狙う者がいるとは知らずに――。
「マグニ!」
母の声に振り向いたマグニの眼前に、棍棒を振り上げた敵兵が映る。
避けようにも消耗した身体は動かない。
マズったな……と、マグニが考えるより早く――。
バン!
扉が勢いよく開き、銃を構えたエクスが現れた。
部屋内の状況を瞬時に把握すると、マグニを狙う敵兵へテイザーを発射。
撃ち抜かれた敵兵は全身を痺れさせ倒れた。
羽毛が舞い散る中、エクスはそのまま敵集団へと歩を進めていく。
「エクスさん!?……おわっ!」
「マグニ!」
目尻に涙を浮かべたカーラがマグニを抱きしめる。
「大丈夫?怪我は?」
「平気だって……うおっ」
マグニはカーラの肩越しに繰り広げられる光景に目を見張る。
エクスが大立ち回りを演じ、ばったばったと敵兵を薙ぎ倒していたのだ。
テイザーで撃ち抜かれる者。
光の縄で縛られる者。
体術で締め上げられる者。
槍を奪ったかと思えば、それを棒術のように振るい敵兵を打ちのめしていく。
程なくして敵兵は全て床に伏した。
「今のうちに縛り上げて!」
エクスは兵士達に命令すると、ベランダに向かっていった。
「カナリアのところへ行きます!」
「よ、よろしくお願いします!」
女王が言葉を言い終えるより早く、エクスは空中へ飛び出していった。
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