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天霊戦騎エインヘリアル  作者: 九澄アキラ
第05話「誰がために」
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第05話1/4 巨大冥鬼兵・襲来

「デカいな……」

 

 カナリアは待ち構える冥鬼兵を見て呟いた。

 縦も横も、自分よりひと回り大きい。

 巨人の中でも特にデカいやつの骨を使ったのだろう。

 堅牢そうな鎧、右手には大きな戦斧を持ち、背中にデカい大砲を2つ背負っている。

 いかにも重装甲のパワータイプといった風貌だ。


「来たか、エインヘリアル」

 

 降り立ったカナリアに対し、冥鬼兵から言葉が発される。

 

「お前は?」

「私はナグルファー帝国将軍ガレス・ファジル!エインヘリアルよ、貴様に勝負を申し込む!」

「たった1人でか!」

「貴様の相手など私1人で十分!皇帝陛下の命を狙った罪、この冥鬼兵バーリム・アスラで裁いてくれるわ!」

 

 ガレスは言葉とともに、冥鬼兵の斧をカナリアへ突きつけた。

 

「っ……」

 

 決闘の申し出に、カナリアは返答を躊躇した。

 これで三度、人間と戦うことになる。

 エクスに諭されて、覚悟は決めたつもりだった。

 だが、こうして相手を目の前にするとそれが揺らぎかける。

 返答を躊躇するカナリアへ通信が入る。


『カナリア、相手の頭部に生体反応がある。相手の身を案ずるなら、首から下を狙うんだ』

「……わかった」

 

 ありがたい。

 手の震えが収まった。

 エクスからの助言を受け取ると、カナリアは強く宣言した。

 

「いいだろう。受けて立つ!」

 

 どのみち、これ以外に選択肢はない。

 避けられない戦いなら、自分にできる精一杯の事をするだけだ。

 カナリアは静かに剣を構えた。

 一触即発の緊張が高まる。


「その前に」

「……!?」 

 

 突然、冥鬼兵が左手で静止の動きをする。

 

「戦死した我が兵士達を埋葬してくれたこと、礼を言う」

「えっ……?」

 

 予想外の感謝の言葉にカナリアが驚く。

 ガレスは冥鬼兵を兵士達の墓へと振り向かせた。

 皺の多い顔が、憂いを含んだ瞳で墓標を見つめる。

 

「俺の……」

 

 哀しみの混じった声に、ガレスは再びカナリアを見据える。

 

「俺なりの責任のとり方だ」

「そうか……。だが、それとこれとは話が別!貴様を討ち、この地を皇帝陛下に献上する!ゆくぞ!」

「うおおおおぉ!」

 

 2体は互いに走り出し、真っ向から激突した。

 振り下ろされた剣と戦斧がぶつかり、衝撃波が走る。

 

「うぉっ……!?」

 

 押し負けたカナリアが吹き飛ばされ、地面に爪を突き立て踏みとどまる。

 

「図体通りってわけか」

 

 真正面からは戦いたくない相手だ。


「ならスピードで!」

 

 カナリアは素早い身のこなしで冥鬼兵を撹乱し、相手が空振りした後の隙を狙う。

 どんなに巨大でも、身体を支える脚を破壊すれば倒せるものだ。

 大振りな攻撃をかいくぐり、懐へ入り込む。

 

「足元がお留守だぞ!」


 ガキン!


「なにっ!?」

 

 足首を狙った剣は、突如浮き上がった小さな紋章陣によって弾かれた。

 

「今のは……!?」

 

 おそらく魔術による障壁。

 斬りつけた力と同じだけの力で刀身が跳ね返された。

 困惑するカナリアを尻目に、冥鬼兵は何事もなかったように向き直る。


「うおおおっ!」

 

 カナリアが今度は正面から何度も斬りかかる。

 だが、斬りつける度に浮き出る障壁が刃を弾き返していく。

 

「くっ……」

「いくらでも斬ってみるがいい。このアスラは貴様の力を上回るように造られている!生半可な攻撃など通用せぬわ!」

「ぐっ!」

 

 アスラがカナリアを殴り飛ばすと、両肩の大砲が自律起動し照準を定める。

 アスラには人間とエインヘリアルの反応速度差を補うため、このような機能がそこかしこに組み込まれている。

 先程の魔術障壁もその1つだ。

 砲塔が高速回転を始めると、無数の光弾がカナリアへ向け連続発射される。

 面の制圧を目的とした放射状に広がる光弾が、空中へ逃れたカナリアの翼や脚を撃ち抜いていく。


「ぐあっ……!」

 

 これもカナリアを研究し、空中を飛び回る彼を確実に仕留めるための武装だ。

 カナリアは体勢を崩し、高度を落としていく。

 

「くらえ!」

 

 ガレスは続けざまに冥鬼兵の胸部に搭載されたエネルギーアンカーを放ち、カナリアの身体を絡め取って引き寄せる。

 

「捕らえたぞ!」

「ぐっ……離せ!」

 

 カナリアがもがいても、チェーンはびくともしない。

 カナリアの拘束に成功したガレスは次なる作戦を実行に移す。

 

「お前達、今だ!」

「なにっ!?」

 

 ガレスの号令で森の中から4体の冥鬼兵が飛び出し、城壁へと向かっていく。

 その背中や肩には、縄で身体を固定した兵士達が何人も掴まっていた。

 

「私がエインヘリアルを抑えている隙に、城を占拠するのだ!」

「なっ……卑怯だぞ!一騎打ちじゃなかったのか!?」

「貴様の勘違いだ!」

「くそっ!」

 

 なんて卑怯な奴らだ。

 戦死兵の墓を立てた事を感謝されたから、この人は実は良い人なのかもしれないと、少しでも思った自分が馬鹿だった。

 そうカナリアは後悔した。

 

 ガレスもまた、卑怯な手である事は自覚していた。

 アドラーの策の真似事をするのも癪にさわる。

 だが、現状の戦力で1番現実的な手がこれだったのだ。

 己はどんなに手を汚そうとも皇帝の願いを叶える。

 ガレスにとって皇帝の御心こそ全てであり、それ以外は全て些事であった。


「こうなったら……!」

 

 全身に力を込め、一気に解き放つ。

 

「うおおおおおお!」

 

 気合を込めたカナリアの身体から蒼い炎が吹き出す。

 

「むおっ!?これは……!」

 

 その姿を見て、ガレスは乗る前に受けたアドラーからの忠告を思い出した。

 

(やつが身体から炎を吹き出したら用心してください)

 

 カナリアの身体を拘束するエネルギーチェーンが、蒼炎の熱によって焼き切れていく。

 

「はぁっ――!」

「なんとっ!?」

 

 拘束から抜け出し、高く飛び上がったカナリアは自身に秘められた武器を解き放つ。

 

装翼甲(そうよくこう)!」

 

 尾羽根を根本から分離すると、カナリアはそれを掴み、弓のように構えた。

 引き絞る動作とともに光の矢と弦が形成されていく。

 宙返りの体勢で狙いを定め、限界まで引き絞った弦を解き、放つ!

 

烈尖(れっせん)!」

 

 放たれた矢は城門から入り込んだ冥鬼兵の腰を射抜き、転倒させる。

 

「なんだあの武器は!?」

 

 初めて見るカナリアの攻撃にガレスは驚きを隠せない。

 続けて放たれた2射目は渡河中の冥鬼兵の片脚を穿ち、河中に孤立させる。

 カナリアは冥鬼兵に掴まっていた兵士達の無事を祈ると同時に、左右に別れた2体へ狙いを付ける。

 

「させるかぁ!」

 

 やらせぬ、とばかりにガレスが砲撃を加える。

 

「くっ!?」

 

 この砲撃の雨をかわしながら狙いのをつけるのは無理だ。

 こうしている間にも2体の冥鬼兵は城壁と森の境目を駆け上がり、城へ向かっている。

 後ろから撃たれるのを覚悟でカナリアが城内へ向かおうとした時だった。


『カナリア!こっちは任せてくれ!』

 

 通信機からエクスの声が聞こえてきた。

最後までお読みいただきありがとうございます。

感想・高評価をいただけるととても励みになります。

完結できるように頑張ります。


このガレスとの戦いが序盤で1番盛り上がるポイントです。

必ず面白いものになっていると自負しています。応援よろしくお願いします。

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