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第2話 犯罪集団

「ん、う…。」


私はまた知らない場所で目を開ける。


…この何日間はよく知らない場所に連れていかれるな…。


あの男といい、今度はさっきの変な男。


…にしても、ここどこだろう。


全く、身に覚えがない。


ここは、廃坑か何かだろうか?


ボロボロだし、なんか古い機械みたいなのもあるし。


私はそう考えながら、キョロキョロと周りを見て気づく。


縛られてる…。


気づかなかったのが不思議なくらい。


と、その時だった。


「…起きたか。」


そんな、低い声がそこに響く。


「…誰。」


私は、前から現れたその男を睨みつける。


「おいおい、そんな睨むなよ。てか、ひでえもんだな。つい最近まで、うちのヤツらにおわれてたってぇのに。忘れちまったか?。」


「追われてた…?。」


その言葉で私は思い出す。


「…捕まった…。」


「お、気づいたか。そうだ。捕まったんだよ、また。あん時は、逃げられたから困ったよほんとに。」


男はそう言いながら、私の目の前まで来る。


そうして、私の顔を触ってこう言った。


「俺好みだなお前。年下ってのが少し残念だが、そこを除くといい。…そうだ。おい、お前俺の嫁に来ないか。」


「…は?。」


いきなりのその言葉に私はそんな声を漏らす。


この男は何を言ってるんだ、一体。


頭のネジが吹っ飛んでいるのだろうか。


「さすがに言葉足らずか。お前にも、俺の嫁になることでいいことがあるんだ。まず、お前は売られない。俺らは、人身売買とかを主として生計を立ててる闇組織だ。お前も俺らに捕まって売られそうになったろ?。だが、俺の嫁になることでその心配はなくなる。お前に損は無いだろう?。」


たしかに、私に損は無い。


「それに、嫁になりゃ、沢山甘やかしてやるよ。どうだ、いい条件だろう。」


…外見だけ聞けば、そう聞こえる。


だが、この男がそんなことをするようには見えない。


多分、嫁になった次の日には、性処理道具として扱われて、捨てられることなんて目に見えてる。


私が仕返しできないことをいいことに。


だから…私は…。


「…断る。私は、あなたの思うつぼにはならない。」


「…そりゃ、残念だ。じゃぁ、あの男が来たら一緒に殺すかぁ。別に、今日連れてきたのはあいつの囮として連れてきただけだし。」


「残念ね。あの人は、この前あっただけの他人だよ。私のことを囮にしても意味なんてない。」


「………お前、本当にそう思うのか?。」


そんな、意味深な言葉に私は首を傾げる。

どういうことだ?


私は、あの人はと会ったのはつい最近どころか、昨日だ。


そんな相手にあの人が、わざわざ助けに来るだろうか?


普通なら助けに来ない。


あの人は、きっと長くこのスラムに住んでる。


だから、その行動が馬鹿なことくらいわかるはずだ。


「あなたこそ、何言ってるの?このスラム街でわざわざ、他人を助けるやつなんているわけないでしょう?長くいるならそれくらいわかるはず。」


「…なるほどなぁ。お前、まさか記憶なくしてるのか。」


「記憶を無くしてる…?」


いきなりそんなことを言い出す男に私は首を傾げる。


言っている意味がよくわからなかった。


「いいだろう、教えてやるよ。どうせ、死ぬんだからな。」


そう言って、男は近くにあったドラム缶の上に座る。


「やつは、昔死んだとされた男だ。死因は、火事の現場にたった1人で人命救助に向かった馬鹿な死因。その近くには、ある2人の少女がいた。それがお前ら姉妹だった。その2人は事件終了後は気絶して倒れていた。だが、今回わかった。あれは全くのでっち上げ。本当のところは、やつは姿を消して生きていた。そして、今現在でわかったことはその時の記憶は全てにおいてお前の頭の中にはないということか。事故のショックかなんかで消えたんだな。」


「…どういうこと…?」


「要は…。」


そう言いかけた瞬間だった。



「よくそこまで、調べたな。」


「…な!」


そこには、そいつがいた。


なんで、こんな早く…。


「わかりやすい場所に隠れたな、お前。こんな廃坑直ぐにバレるに決まってるだろう?俺が何年このスラム街にいると思っているんだ?。まぁ、昔はスラム街ではなかったんだがな…。」


「ここに来たということはどういうことか、わかっているんだろうな…。」


「…残念だ。お前の仲間なんて来やしないよ。期待しない方がいい。」


「なに?そんなわけが…ない!」


そうは言ったが、たしかにさっきまであった仲間の気配が感じられなかった。


どうやって、あの人数を倒した?


「あーあ…本当に俺の事を調べるなんて趣味がわりー奴もいるもんだなぁ。…まぁ、いいや。とりあえず答え合わせしてやるよ。」

「答え合わせ、だと?」


「あぁ、そうだ。お前が言っていたことで間違ってる部分がひとつ…いや、2つある。まずは1つ目だ。こいつは、記憶を失った。ただ、それは事故のショックからでは無い。俺が消したんだよ。こいつの記憶を。」


そいつは、冷酷にそう言った。


消した…?


なんのために?


こいつに何か、利益でもあるのか…?


「なんのために…。」


「まぁ、待てよ。それは2つ目に関係してる。…2つ目は、お前らも知ってるんじゃないか?このスラム街を作った組織の名前くらいは。」


「そんな、馬鹿な。奴らがあの事件に関係してるってのか?」


「全くその通りだ。理解が早いな。そう、奴らはあの時火事を引き起こしたんだ。それは、警察に取ってバレては困る案件だったために、そうしてデマの情報を流出させているが、本当のところはこういうことだ。」


これが真実…か。


自分が考えていた、はるか上をいっていた。


「ふふふ、はは…。」


あぁ、俺らの時間はなんだったんだ。


こいつのことを調べてた気になっていただけ、か。


「本当に気の毒だ。お前の今までの時間は無駄だったってことだ。そして、そのせいで自分の命を捨てることになった。」


「…そんな簡単に、俺の命を刈り取られてたまるかよ…!」


俺はそう言って、戦闘態勢に入る。


そうだ、俺は腐ってもこの団のリーダー。


死ぬ訳には、いかねぇんだ…!


「うおお、あぁぁあ!」


その瞬間、能力を発動してそいつに飛びかかった。


「大人しくしてくれてた方がありがたかったんだがな。すまないがお前に時間を割いてる暇もない。」


そうして、そうして…。



弱い、弱すぎる。


「がフッ…!こりゃ、ぁ、やられ、たなぁ…。」


その場に倒れ伏している、そいつはそう言って息絶えていった。


可哀想に。


恐らく、こいつらは俺のことをそこまで強くないと思っていたからこそ、はめようとした。


だが、あまりにも俺とこいつらとの圧倒的な力の差がそこにはありすぎた。


「気の毒だ。戦う相手を間違えたな。」


少なくとも、こんなことをしなければ、こいつらはもっと生きられただろうに。


この、弱肉強食の世界で相手の力量を見て図れないのは、あまりに致命的なものだ。


こいつらのように、それは自分達に死をもたらす。


だからこそ、ここでは気を緩めたりしてはダメなのだ。


相手の力量を、常に見て生きなければならない。


…来世では、もう少し実力をあげられるといいな。


そう思いながら、椅子で気絶しているそいつを抱えてその場を後にするのだった。



ここでどんなことがあった…?


私はその場で立ちつくすことしか出来なかった。


部下から連絡があった。


それは、スラム街のある廃工場で密売組織が全員殺され、山積みにされてると。


その現場に急いでくるやいなや、この惨状があった。


この山積みになった死体は何?


見るからに死んでから何日か経っている。


誰が、なんの組織がこんなことを…。


組織的犯行という可能性は十分ある。


ここは、私たちがよく言っているスラム街と言うやつだ。


私たちが住んでる環境とは全く異なり、法律だのなんだのは通じない。


あるのは弱肉強食、この一言だけである。

この世界では約半分がこのスラム街だと考えていい。


私たち警察という組織は、スラム街とそのもうひとつの世界にある。


そのもうひとつの世界は、年々少しづつ潰されていって、スラム街と化してしまっている。


その原因となっているのが、ある組織だ。


絶命会。


この世界を壊して、生命を殺し、新しい世界を築こうとする組織。


この組織が、原因でスラム街は増えていっている。


こちら側の世界では、この名前を聞いただけでも動揺してしまうくらいやばい組織だ。


絶命会がある限り、スラム街は消えないし、増え続けてしまうだろう。


すぐに潰せばいいと言う人もいるかもしれないが、そううまくなんていかない。


絶命会は、私たち警察と同等でやり合える力を持つ組織だ。


そんじょそこらの組織と比較できないほどに強い。


だから、下手に手は出せない。


1度この組織を潰しかけたことがある。


昔は、私たち警察の方が力はあった。


だが、私が気づけなかったせいでいつの間にか、復活していた。


挙句の果てに、絶命会は力をましていたのだ。


そのせいで警察と絶命会の力の差はほぼないに等しくなってしまった。


それだけだったらまだ良かった。


スラム街が増え、犯罪集団の動きが活発になり、新しい犯罪集団が次々にできる。


この世界では当たり前になってしまったのだ。


スラム街では、私たち警察の力は通用しなくなってしまった。


本当に悔しい限りだ。


絶命会をどう対処すべきなのだろうか…。


…それにしても…話は戻るが、この惨状…組織的犯行にしては、随分と綺麗な現場だ。


組織で争えば、もっと現場が荒れているはずだ。


なのにここは荒れていない。


明らかにおかしい。


まさかとは思うが、これをやったのは…1人なのではないか…?


ありえない話ではない。


もしも、本当にこの予想が正しければ、この事件の捜査をもっと急がなくてはならない。

理由は単純明快。


そんな奴に絶命会にはいられたら、いよいよこちらに勝てる見込みが無くなるからだ。

急がなくては…。


そんなことを考えていると、こんな声がひとつ。


「お姉ちゃん…お姉ちゃんも組織的犯行じゃないと思う?」


「えぇ、思うわ。これは、単独の可能性が高い。もし、組織的犯行だとしたら、ひとりやふたりくらいの他のグループの死体があるはずだもの。だけど、ここにはこの組織メンバーのしたいしかない。だとすると、単独犯の可能性を考えるのが自然ね。…でも、絶命会のメンバーでないのも確実。絶命会はわざわざ殺したりなんてしない。」


「…じゃぁ、誰がこんなこと…。」


私と同じくらいの強さだろうか。


この量の人間を相手にするなら、それくらいじゃないとできない。


「なにか、周りに証拠品とかはなかった?。」


「私が見た所にはなかったよ。」


「叶江様、こんなものが見つかりました。」


部下が、何かを私に手渡してくる。


それは、ヘアピンだった。


…このヘアピン…どこかで…。


…まさか!


「このヘアピンの持ち主を捜索できるかしら?たしか、3日前までのものならギリギリできるはずよね。」


「了解しました。捜索してみます。」


そう言って、部下はどこかに行った。


あれは、ここに囚われていた子がみにつけていたものだろうか?


だとしたら、これをやったやつはその子を助けるためにここで暴れた。


その子が暴れたとも考えられるが、可能性としては五分五分だ。


とりあえずは、あのヘアピンを身につけていた子を追えばわかる事だ。


「礼華、戻るわよ。部下を集めて頂戴。」


「了解。」


今はこれをやった子を探すのが最優先事項。


絶対に見つけだす。


敵に回ってしまう前に…。

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