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<魔術の塔>のアリエス   作者: なぎさん
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第7話 「昇格試練と誰かの野望」その②

第7話その②です。第7話はその③まで続きます。


盗賊の娘エディは「守るため」と言われてアリエスの離宮に送られます。そこで出会うのは侍女のティアナ。

 アリエスの部屋に送られたエディは、バッタリとティアナに遭った。

まさに、<はたき>でタンスを掃除していた侍女と。


金色の髪、丸っこいボブカットの可憐な侍女は、あまり驚かなかった。

「…エディ様、ですか?」

「…そうだ。もしや、ティアナ、か?」


あー、アリエス様の好みの女性では…連れて来たってことは……。

ティアナは、嫉妬を押さえ目の前の少女を分析した。黒く長い艶やかな髪。ほんの少しきついけど美しく、意志の強さを感じさせる大きな瞳。野生の黒猫のよう…綺麗なヒト…。


この少女は…侍女か…少し年下だな。落ち着いた感じの子。少し憂いのある瞳、小さな唇。…可愛らしい娘。でも、何だろう。年の割に、妙に色香を感じさせる…。あぁ、そうか…。

エディは、少し胸に棘が刺さるのを感じる。この子、アイツの、オンナか…。



 「エディ様、此方の部屋をお使い下さい。すぐに部屋を暖めます。お食事は――」

「アイツの部屋でも良いんだが?」

エディは、少々無理したセリフで、様子を探ってみた。

少女が、ピクッと反応したのを見て、「冗談だ。その部屋で頼む。」そう言った。


「知っているなら聞かせてほしい。私は何故、此処に連れて来られた?」

「知っている限りで宜しければ。エディ様はーーー」


――――――――――

 

 エディは、怒りに震えた。

「…ふざけるな。私はそんな女じゃない!」

「エディ様、何を怒っているのです…?」

「私は守られて、抱かれて、家で帰りを待ってる女じゃない!お前とは違う!」


怒りに任せぶつけた言葉で、多分、目の前の少女を傷つけたと思う。


「…私は、13の時に家族を殺されて、<盗賊団>に攫われました。」


盗賊団。意趣返しであるとするならば秀逸だ。盗賊団の、私に。エディは、冷静にその言葉を受け入れた。


「すぐにオークションにかけられました。汚されずに済んだのは、幼かったから。それだけ。」

「…盗賊の私が憎いか?」

ティアナは首を振る。


「私は、アリエス様に助け出されました。それ以降、此処に居ます。私は、貴方みたいに戦えない。だから、此処にいます。アリエス様の為だけにここに居ます。<そんな女>でも、一緒に居られるから幸せです。」


「…済まなかった。意地の悪い言い方をした。お前の生き方を否定するつもりはない。いや、むしろ…女の生き方はお前の方が先輩らしい…。」


「ただ、私には出来ない。私は、常に傍で戦っていたい。守られるだけじゃ嫌だ。対等でありたい。」


「はい。わからなくは、ないのです…。」

「悪いが私は盗賊だ。奪えるものは奪うよ?」

「はい。出来るものなら、どうぞ。」


2人は、顔を見合わせて、ぎこちなく微笑んだ。


――――――――――


 …メルカーナ連合国のダッカーヴァ公爵領。先日、メイフェアと訪れた国。


 突然の来客だが、先日の活躍もあり、アリエスはすぐに中へ入ることが出来た。

招き入れてくれたのは、現公爵の孫姫、ノエル。豚から救った、ノエル姫。


広間でお決まりの接待を受けた後、アリエスは小声でノエルに相談した。

「キミの部屋で相談したいことが有るんだけどー。」


 ノエルは非常に複雑な顔をしたが、アリエスを伴って部屋に入った。


「即お入りなさい!…早く!見られたら大変です!」

「そんな大事になるぅ?」

「なります。これだから…もう。」


 薄い青で整えられた、姫の寝室。

「この部屋に無事に入れた男性は貴方が初めてです。アリエス王子。」

「それは光栄です。次はちゃんと恋の用事できますね。」

「…あんな綺麗な子を同伴で来たくせに、口のお上手なこと。」

「ん?メイフェアも大好きですよ?」

「最低…。とっとと、用件を済ませて下さいませ。」


「―――――――」

「貴方が…!?わたくしに何故そんな秘密を?」


「―――――――――」

姫は息をのんだ。

「そんな…わたくしにそんな権利は…。」


「――――――――――――――――」

「!無礼者…!サイッテー!ツァルトの王子はそんな人ばかりなのかしら!?聞かなかったことにしてあげます!お帰り下さい!」


「―――――――」

「一応、その一言だけは受け取ってあげます!じゃあね!アリエス王子!」


風のように、テレポートで消える、敵国の王子。

「敵ったって、昔の話。昔の因縁なんて、わたくしには無縁だけど…。国の者たちのわだかまりは残ってる。それも受け入れるのが王家の務めでは?アリエス王子?」


はっと思う。

「…くだらない。考える余地も無かった…バカですわね。」


「バーカ。」


ノエルは、既にカラのカップを手にし、口をつけた。


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