第7話 「昇格試練と誰かの野望」①
魔術師ギルドを継いでしまったテキトウ王子の、恋と冒険のお話。
魔術師ギルドの昇格試練に駆り出されたアリエス。昇格試練は、大きな事件に発展していきます。
毎回長かった?という…自己反省で今回から部分投稿です…。TRPG好きでお暇な方ぜひ。
魔術の塔の7階は、塔の内部とは思えぬ広さを持つ。実際に空間を歪めて固定していると言われている。ここが、試練場だ。
そしてこの度、<赤>に称号に挑む男が1人いる。
その試練には、アークマスター達の使い魔が立ち会う。
<赤>に認められても、なお拝謁できぬ、雲の上の存在。
試練場の中央で、男は跪く。年のころは20代後半。両端の黒髪を刈り上げ、魔術師としては精悍な方に見える。紫の襟章を着け、魔道具の指輪を口に寄せる。
「魔術師モルティオ・ファソンの、赤への昇格試練を執り行う。」
<黒>の執務官バルトアの言葉で、面倒な儀式が始まる。
試練場正面の机には1羽のフクロウ。1羽の鷹。1っ匹の黒猫。どれも、通常とはやや違う毛色をしている。これが、使い魔の証。
フクロウには金の差し色がある。アリエスのフクロウ。
鷹は金の目をしている。皇太子レオの使い魔。
黒猫の尾が赤い。これが銀のハイメルの使い魔。
主たちも、使い魔の目を通じこの場に参加している。
「アークマスター、試練の獣をここへ。」
アリエスのフクロウが、男の周りに小石をばら撒いた。
「<ライズ・ゴーレム・ストナ>」
男の周りに、3体のストーンゴーレム。
一体2mはある石でできた凶悪なゴーレム。拳で盾も鎧も押しつぶし、魔法の影響も受けにくい。
<ほう、なかなか手厳しいですな、マスター。>
<……やりすぎかも知れんがな…。>
さて、どう動くのかな? アリエスは紅茶を飲みながら見ていた。
常に考えるのは一瞬。それが魔術師の最大の戦い。誰が戦闘中に、最大効果の呪文をじっくり唱えさせてくれるのか?逆に言えばそれができる状況を作れるかどうか。それが試練。
魔術師モルティオは、迷わず動いた。
「<ブレイド・バリア!>」
ふうん?石のゴーレムを切る?
男の周囲を竜巻の如く、鋼の刃が回転する。ゴーレムは、削り取られながらも、男に拳を振りかぶった。
鎧も盾も無い魔術師の頭部など、トマトのように潰れるだろう。
だが、ゴーレムが近づく前の時間は作れている。呪文を打てば間に合うはず。衝撃の呪文<ブラスト>や粉砕系、<デストロイ>を使えば。
男は、呪文を唱えた。
「<ブレイド、シャープネス!>」更に、剣を強化したのだ。
ゴーレムが、押し戻される。削り取られる。
ふうん。あくまでも剣で。自信のある魔法なんだなー。
アリエスの魔法が雷に偏っている様に。魔術師には得意魔法がある。
ゴーレムを撃破し、再び男は跪く。
「ツァルトに栄光を。我、ギルドの剣とならん。」
その言葉に嘘はなかった。3匹の使い魔を見る目は憧れに満ちていた。狂信的なほどに。
魔術師モルティオは、<赤>に昇格となった。
――――――――――
後日。旅に出る前に、アリエスはツァルトの盗賊ギルドを訪れた。
<謁見の間>に突如現れ、幹部たちを驚かせる。
!!「…来るなんて聞いてない…」マスターの妹エディは急ぎ私室へ戻った。
「何用かな?」
「人払いを良いかな?K?」
………ここで、アリエスとカルロス、若くしてそれぞれのギルドを継いだ2人は何かを話した。
「…じゃぁ、エディ貰ってくね。」
「…本人がどう言うかは知ったこっちゃねえぞ?」
アリエスは、エディの部屋をノックした。
「…どうぞ…少しなら。」
少し遠くでは、何人も入れなかったエディの部屋にオトコが入って行ったことでざわつきが起きている。
「何用?」
「エディ、髪を後ろで結んだんだね、蝶の髪飾りつけて。カワイイよ。」
エディはプイと横を向いた。
「軽い男はキライだ。」
「うん、じつはちょっとだけ、重たい話。」
「何?」
「僕の館で暫く、身を隠しておくれよ。」
「!!何だと!」
「僕の部屋でもいいよー。嫌なら近くの部屋でもいいよー。オイデー。」
「ふ、ふざけるな!ちょ、調子に乗るな!!私は軽い女じゃない!」
「知ってる。今回は真面目。キミを守る。」
「な、何を?」
「僕はしばらく戻らないから、ティアナと仲良くしてて!」
「てぃ、ティアナってだ…」「<テレポート!>」
エディは、ライバルの待つ邸宅へ飛ばされた―――。