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<魔術の塔>のアリエス   作者: なぎさん
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第27話 「国王と魔女」

ついに、魔女バルザ・ヤガの手は家族に伸びてくる。自身、超一流の魔術師である国王そして側近、大陸最強と呼ばれる剣士アジ=メが、魔女を迎え撃つ。 アリエスのいない場所で、死闘、始まる。


ハイファンタジーです。TRPG・RPG・リプレイ等お好きな方ぜひ。第27話です。

 アリエスの父は国王だ。


国外は勿論、国内の辺境に在っても、その旅には猛者たちが付き従う。

馬車には前後を挟み、30名以上の護衛。


彼は良き王である為、時に自分の足で諸問題に向き合って来た。


今日は、隣国にして敵対国でもあったダッカーヴァでの会談を終え、帰路についたところだ。



不肖の息子は、何と、敵対国の新公爵となったノエル姫を妻に迎える。

この国で幾度も武勲を立てた息子は、ツァルト国民でありながら英雄視され始めていた。


せっかく溶け始めた氷。内まで溶かすには、真実が必要だ。


言ってしまえば息子の尻ぬぐいでもあるが…。

何人も出来なかったダッカーヴァとの友好を、あの阿呆が成し遂げつつある。


新公爵ノエル姫も、会談においては最大限の配慮をしてくれたように思う。

あのご令嬢が娘となるなら悪くない。いや、是非。


可憐な姫は、色の濃い、ゆったりとしたドレスを着ていた。

夜宴では、あまり食さず引き上げてしまったが…。


馬車で静かに揺られながら、何となく、覚えのある姫の様子について、側近の無口な剣士に問うてみた。


「なぁ、アジ=メ。ノエル姫のあの様子なぁ。どう思ったかね?」

「…うむ。」

親子そろって異様な無口だが、おおよそ判る。

「…かもなぁ?」


国境まではダッカーヴァの精鋭たちも30名ほどついて来た。引き返していく。

もうじき、この低い<山>を越えれば港町に着く。後は海だ。



…そんな、心落ち着き始めるタイミングであったのに。



一行の馬車を、1人の女が塞いだ。


少し赤の入った黒いローブ。不思議な、一つの目が付いた帽子。

歩みはまるで一歩一歩足を絡ませる様に色香を纏い、歩むごとに色の付いた空気がまとわりつくような錯覚を感じる。


「女、何者だ。今、高貴な方の馬車が通るのだ。どけ。」


女が、微笑み、何かを呟く。護衛がバタバタと倒れた。


首を押さえ。倒れた。

白目をむいていた。


馬車から、異変を感じ取った2人が飛び出す。


――――――――――


 貴族が、王族が賊に襲われる。

あり得ることだからこそ、普通は十分な護衛をつけ、旅をする。


普通と違うのは、国王が元冒険者であり、超一流の魔術師であること。

そもそも、ツァルトで王位に就くには、継承権だけではなく、強さが求められる。

彼は、国王サウズ・メイフィールドは、魔術の塔で<銅>の称号を得ていた者。


しかも、彼の横には今も、共に冒険していた剣士が居る。

側近の名はアジ=メ。 ユ=メの父、大陸最強と云われる仮面の剣士。

先の<黒炎の魔神>との対戦にて、真祖と共に幾千万の魔物を葬った英雄中の英雄。


国を代表するような強豪2人が、連れだって旅をしている。


護衛は、飾りだ。王の体裁を整えているだけだ。民に見せる為の姿でしかない。

まして、一流の魔術師である国王は、テレポートで国内の大半に移動できる。


それを襲うなど、正気の沙汰ではない。



 しかし、それをやってのけようとする者が、今現れた。

30人の部下、叫びもせず、バタバタと倒れていた。


アジ=メが剣を抜いた。3mは有ろうかと思える狂気の剣を抜いた。

国王サウズは、銀の指輪を口元に近づけながら、女に問う。


「よもや、この我らに襲撃とは恐れ入る。しかも、1人か。」

女は、その問いには答えず。


「…私は、お前の様な、お前達のような強きものを尊敬するし、大切に思う。何故なら、美しいから。」

「ほう、では何故、襲う?」


また、答えず。

「そしていつも考える。そのような者を屈服させ、絶望のうちに死なせるにはどうしたら良いかと。」

「それは、無理な話だ。」


アジ=メが、巨大な体躯を感じさせぬ一瞬の踏み込みで女の前に立つ。剣はもう、切る軌道を描いていた。


一撃。だが5筋もの光が走り、女の体は寸断される。

少なくとも、僅かな間は。


女が呻き。血を吐く。だが、バラバラの体は、すぐに元に戻った。

剣を戻す力で、アジ=メはバックステップ。サウズ王の前に位置を変え飛び退いた。


「化け物か。不死の化け物。」


また答えず。

「…例えば、お前の妃たちを汚して粉々に。だが、そんなことをしてもお前は怒り狂うだけ。魂は穢れない。そんなことでは。だが、例えば王が国を守れない失意に落ちて行ったらどうだろう。 それどころか、正気を失い、自分の手で国を滅ぼし、家族を血祭りにあげるなどはどうだろう。笑えないか?」

「…貴様、悪魔か。魔界へ戻す必要がありそうだな。」

「…お前も素晴らしいな。息子程、異様な魔力は持ち合わせていないようだが。真祖とやらにも逢ってみたかったものだな…」

「…もう、話さなくとも良い。十分だ。」


国王は、呪文を唱え始めた。強力な。光の呪文を。

「魔界へ送り返す。“ライトジャベリン!”」

3本の光の矢が、巨木のように大きな光の矢が、女へ向かって放たれる。


だが、女の目の前で、光る球体に阻まれた。

「アンチマジックか!」

「ああ、そうだ。ではどうする?」


アジ=メが割って入った。

一瞬で斬り、斬って、斬り続ける。

オンナは少し驚いたようだ。斬られながら。再生しながら。

「流石、大 陸最強と云 われ る 男」


「アジ=メ、少々時間を頼む。この大魔法は時間がかかる!」

云われる前に、アジ=メは再び切りかかった。

微塵に斬る。斬る。斬る。

再生する。再生する。再生する。

斬る。斬る。斬る。

再生を、アジ=メはしっかりと見届けていた。


「ふふ、素 晴 らしい、斬りなが ら。一見無駄な ようだ が、見極め、手筈を 探している。素晴ら しい。お 前達が如何に 歴戦であ るかを見せてもらった。」


「“大魔法!ゲート・ブリンク・スペル・ジェム・ライトジャベリン!”」


世界の壁を越え、アンチマジックの壁を超える、大いなる魔法。

光の宝石が女の前で炸裂する。


女の体には大穴があき、血が滴っていた、しかし…すぐに塞がりはじめた。


「光魔法でも再生するか!?」


再生した女の、その体が変わっていく。変化していく。

大きなコウモリの翼。角、角、角。魔界の悪魔の様でもあり。竜の様でもあり。


アンチマジックが掛かっている状態で変化したならば、能力か。魔物。竜のような、悪魔のような、不死の魔物。


「大魔法、“時間停止、タイム・フリーズ”」


「アジ=メ、お前をツァルトへ送る。私の事は心配するな。何とかするよ。勝つことは出来ないだろうが、後で追いかける。…何故、共にテレポートで逃げないのかって?部下を連れて来なければ良かったな。気絶している兵士を見殺しにする王など、王では無いだろう? 怖しい女だ。そこまで計算して、部下を殺さずにいたのだろう。 ああ、もう時間がない。 “マス・テレポート” 我がツァルトへ。あとは10人程… 」


時が動き出す。目の前に、魔神の姿をした女が迫る。

「惜しいな、さっきの方が美人だ。」

「惜しいな、息子の方が好みだ。さぁ、心を明け渡せ。」

魔女の全身から、黒い、蛇のような霧が吹き出し、国王を包んだ。

呪文を唱えた様子はなかった。


王はせき込みながら、次の魔法を使った。

「“マス・テレポート!”」これで部下は逃がした。



「心を渡す? 悪いな、お断りだ。逃げるよ。」霧の中で王は言う。

「もう、何処へ逃げようと無駄だ。 今、お前は呪いを受けた。じきに狂うだろう。」


「そうか。では、溶岩の中でしばし眠ろう。さて、お前は呪文が効かないわけでは無いようだな。何度も、死んでいる。 再生はするようだが、来れるのか? 溶岩の中へ? はは、俺もまた、楽しみにしよう。我が息子がお前を滅ぼし、その呪いとやらが消えるのを! “テレポート!” 」


―――魔女は、珍しく、舌打ちした。

「見事、これが魔術の塔<銅>の力か。 どうせ死んではいない。溶岩にも耐える“硬質化”が出来るのだろう。大したもの。」


女は、笑った。笑って、描いた物語の狂いを楽しんでいた。




…アジ=メ。伝えてくれ。呪いを受けちまった。正気の間に、キルメット火山の溶岩に眠る。


私が見聞きしたことは、姫たちの元に残した使い魔から聞けるだろう。…使い魔の存在は、俺が生きている証でもある。安心してくれ。生きている。


だが、執政は取れん。譲位を宣言してくれ。息子たちは、俺より強い。


あとは、信じて待つ。息子の助けを信じて眠るなんざ、父親冥利に尽きる。



おやすみ。愛する妻たち。

         …アリエス…お前なら…



―続く。

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