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<魔術の塔>のアリエス   作者: なぎさん
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第24話 「爺さんになっても」前編

約束通り、盗賊姫エディに付き添い、砂漠のオアシスで合議に臨むアリエス。

敵をあぶり出す駆け引きですら、やはりストレートだったが…。


ハイファンタジーです。TRPG・RPG・リプレイ等お好きな方、ぜひ…。前編です。


<魔術の塔>のアリエス 第24話「爺さんになっても」前編



砂漠のオアシス、天蓋境。


巨大な闇市は、外れも多いがアタリもある。安いものもあればクゾ高いものもある。

…要するに、自分の目が試され、駆け引きが試される。


夕刻、アリエスは美貌の盗賊姫エディを連れ、闇市に来ていた。

馬鹿なモノを買うつもりはないが、書物を集めている。


ホンモノの魔導書でもあれば、大当たりだが、まず、そんなものには当たらない。

そこで、先に、物語の本など物色して、買いまくる。

古代書の必要はない。吟遊詩人の書き起こしたモノでも、歌姫の言葉を綴ったモノでもいい。

暇人の吸血姫へのプレゼントだから。


<3人のお笑い冒険者>あの子には良さげ。

<西の湖に散る>悲劇は読まないだろう。パス。

<瓶の中の小島>うん、ちょっといいかな。

<バルザ・ヤガの恐怖の夜>恐怖の魔法使い?まぁいいか。

<伝説の魔術師、マーリーン伝>あれ、どっかで聞いた名前だなぁ…。一応買う。

値段も禄に見ず、ひょいひょい買う。如何にも、カモ。


「アリエス…何で、そんなバカな買い方をするんだ…?」

エディは婚約者の馬鹿な行動を不思議がる。

「シャルロナの暇つぶし本」

エディは、少し嫉妬したらしかった。

「私には…?」

「この後、素敵な靴でも、キミの為に。」

「本当だろうな…」


店の奥から、店主と思しき男が近づいて来た。狙い通りに。

「貴族様、貴方様に相応しい本ならば奥に御座いますが、どうですか?」

「へえ、良い物なら即買わせてもらうよ。金は出す。」

「へへ、どうぞどうぞ…」


「…こちらの魔術書などは…」

ああ、ニセモノだなぁ。

「この詩歌集など…」ふうん、悪くないかな。

「この本などは…」

「貰おうかな。それを」

「中をご覧にならないので?」

「表紙で決めちゃったよその本」

魔力がある。本物だ。


こんな風に、時間は過ぎて行き、約束通りエディには抑え気味にしかし美しい装飾の付いたブーツを買い、夜を待つ。


――――――――――

夜。

ギルドの使いが集結する、天幕へ。


いつかのように、切り株にダーツの如くダガーを突き刺し、円卓に座る。

東方の主なギルドが揃った。


エディ以外は、屈強な者を背後に10名ほどは従えている。

「…ツァルトのエディ、剛毅だな。1人だと言うのか。」

「いや、ボディーガードを連れている。」

「…ほう?」


中央に座っていた年老いた男がコインを投げ、それはエディの元へ転がる。

「…ツァルトから聞こうか。」

「今回の代弁者はコイツだ。」

エディは抱いていた猫を円卓に乗せた。

「…猫?」


「やぁ、ギルドの皆さん、ツァルトの要求を簡単に言おう。先日、こちらに暗殺者が送られたようだけども、仲良くしようか。別に全てのギルドを滅ぼすつもりはないんだ。こちらの要求は簡単だ。ツァルト盗賊ギルドの掟を東の全てに守らせたい。それだけだ。」


失笑が起きる。エディはムッとしたが、猫は笑った。

「はは、楽しく行こうよ。 “ラフ・オール” さ、次の方どうぞ?」


「…次は、ファルトラントだな…」

周りを取り囲む部下たちの笑いが、治まらない。

「貴様ら、何時まで笑っている!?」


あはっはは、はははは、はぁあああ

男たちは、笑いながら、苦しみ始めていた。


猫が再び口を開く。

「いやぁ、笑いたかったらしいので。永遠の笑いをあげただけ。どうぞどうぞ、続けて、続けて…」

「貴様!魔法を!?」

「まぁまぁ、<魔術の塔>代表としてちょっとお仕置きをしただけだよ。殺すつもりも無いし。タダのおふざけ。ゴメンゴメン。」

我ながら、実に白々しい。苦笑いしてしまう。


「魔術の塔の代表、だと?」


ツァルトの盗賊ギルドと、魔法ギルドが繋がっているのは周知の事実。だが、まさか直々に、塔の使いが来るとは。使いが<低い>階級の魔術師なはずは無く。


猫は、にゃああ、と鳴いた。魔法の笑いは収まった。

だが、もう誰も笑わない。

恐ろしい程の緊張感と共に、無数の駆け引きが、腹の探り合いが起きている。


盗賊ギルドは世界の裏を支配する、力の1つかも知れない。

だが、魔術ギルドもまた、確実に、世界を動かす力を持っている。

純粋なる戦闘力は、盗賊の比ではない。ファイアボール一撃で数十人を焼き払う奴らだ。暗殺を得意とする盗賊だが、魔術師達もまた、姿を変え、場所を軽くテレポートし、心まで操る。


誰が、魔術師ギルドを全面的に敵に回したいものか――。


「…さぁ、続けようか。」

猫は笑って言った。


盗賊団の代表たちが再び口を開くまで、少々時間が必要だった。


「我らは変わらぬ、商売を出来ることが優先だ。広く。深く。」ファルトラントが言った。

「エリゴールは、どこぞの奴らに借りを返す。だが、謝罪を受け取る度量はある。城塞都市のシマについては当然我々のものだ。」

「我らは西と東の仲介役。大きな変革は災いをもたらす。」


「では、概ね方向性は見えたようだな。互いの発展を。何処と何処が血を流がし、または流さぬかは任せよう。」

――――――――――


エディは、猫を抱きながら、宿へ歩き始める。

「あれで良かったのか?すがすがしい程、脅しをかけて。 敵を作っただけのようにも見えるんだけど…」

「ああ、ゴメンね。敵は増えてないよ。ファルトラントの爺さんは、<血を流す所は任せる>って言ったんだ。関わらないって意思表示だと思うよ。ツァルトの敵はエリゴールだけ。」

「…この間、襲って来た所か。」

「謝罪を受ける度量はある…つまり、引く意思も見せている。メンツを立てれば、丸く収まるかもね?」

「アークマスター様が謝るのか?」

「事情説明位は言えるよ。悪いのはあの城塞都市ガランサンの団だったし。罪を被ってもらおう~!」


猫は、不意に振り返って、背後に付けていた1人に向かって“ブラスト”を放った。

建物の影だったが、その一角ごと吹き飛ばした。


アリエスは、大切な者の敵に対して、本当に容赦なく、時に冷酷だ。



誰よりも強いお前が好きだ。でも、優しさを前面に出してくれた方が、もっとお前らしくて、好きなんだ。


…エディは、言わなかったが。



―続く。


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