第23話 「お前は狙われるだろうと言っておきながら?」後編
アリエスの兄、皇太子レオの盛大な婚姻の祭典。その裏で、盗賊ギルドに呼び出されるエディ。
それぞれのギルドが、思惑が、動く。
ハイファンタジーです。TRPG、RPG、リプレイ好きな方是非。
第23話、後編です。
「離宮の外が少々騒がしいね…?」
「お祭りとはいえ…離宮に人が来るわけがないのでは…?」
ホールでは、3人の姫。
初めてツァルトに滞在するノエル姫はダッカーヴァの貴賓としてもてなされているため、ここには居ない。王宮に居る。
メイフェアは、一生懸命客に酒を運んでいる最中なので居ない。城や魔術の塔を除けば、冒険者の酒場など、最も高いセキュリティーに守られる場所の1つ。周り中、冒険者なのだから。
今、離宮には、<八重歯が長く、異様に肌が白く、赤い瞳の姫>と、<ハーフエルフの美少女>と、<離宮の侍女姫ティアナ>の3人がお茶を飲んでいた。
初めは、少々、微妙な空気感。
ハーフエルフは物知りで、何故か、一度訪ねて来た美少年によく似ている。アリエスが連れて来た子の中では最も幼く見える…が年上なはず。エルフだから。色白な自分より更に透き通るように白いエルフの美少女。
…お友達…なのかなぁ…違うのでは…うん。覚悟しておいた方が良いのでは。
もう一人の可笑しな子は、会話のテンポがとても個性的。言動にドキドキしちゃう目の離せない可愛い子だ。肌は異様に白く、赤い瞳が不思議で、牙が…牙みたいな八重歯が…もっと不思議。
…お友達…なのかなぁ…この子も…すきだったり…?
しかし、物知りなエルフと、ワケわからないがお喋りな不思議娘の取り合わせは楽しく、会話が弾んできた。ティアナも混ざって、和やかなひと時だ。オトコの話題にならなければ平和なので。
―――なのに。無粋な誰かが入り込んできたらしい。
第3王子の離宮とは言え、王家の館に。
殆ど、町に接するような場所にあるとはいえ、王子の館に。
普通の者が来るわけは無い。
まともに考えれば、王子の離宮を襲うなど、死罪以外ないのだから。
外で、獰猛な叫びと共に、何かが打ち壊された大きな音がした。
ティアナは知っている。彼女だけは知っている。
この館の屋根に飾られている羽の在る像は全て、ガーゴイルだ。
館の内部にある石像は全て、ストーンゴーレムだ。
敵意ある侵入者には、牙をむく。
一方通行のテレポート魔方陣の置かれた部屋が隠され。
中に逃げ込める、<絵>まである。
此処は、アリエスの屋敷。
アークマスターが防備を重ねた絶対の砦。
窓を割ろうと、叩くメイスが見えた。メイスは、弾かれ、罵声が聞こえる。
無理な話だ。窓も全て“エバーロック”されている。攻城兵器でも弾くだろう。
メイド、給仕たちがホールに集まって来た。
心配そうではあるが、パニックな程ではない。
「皆さん、心配いらないのです。此処が誰のお屋敷か忘れたのですか?」
「侍女姫、だってあのアリエス様ですよ?どこか呪文掛け忘れたりしてません?」
…給仕たちの評判はそんな感じだったらしい。
アークマスターの事は誰も知らないんだから。
「アリエス様は、やる時にはやる方です!」
「ティアナ、そりゃ、妃になるアナタはそう思うだろうけど…」
「俺の目から見ても、王子は一流だ。大丈夫だ。勿論、俺も戦えるからね…」
ハーフエルフの美少女が細い剣を抜いた。見かけとは違ってワイルドな物言いになっている。
「あー、あたしも戦うかー。強いぞ、あたしー。」
肉を齧りながら、赤い瞳の少女も立ち上がった。
そんな時だ。アリエスがエディと共に帰って来たのは。
「みんな、勿論無事だね!?」
「アリエス様…!」
「キミが来たなら、もう安心かな?」
「おそいぞー。カワイイあたしが戦うところだったぞー。」
「正体は判っている。僕を狙っている盗賊団だよ。じゃあ、行ってくるから。」
「いや、俺が行くよ、王子。」と、キャステラ。
「私も戦う。私を誰だと思っているんだ」と、エディ。
「あたしもまぜろー。強いぞーあたしー。」吸血の姫。
ティアナは両手を組んで祈る様にアリエスを見ている。
アリエスはティアナの頭を軽く撫でる。
「いいかい、殺さないで、捕らえるんだ。ガーゴイルを倒すくらいは出来るらしい。キミ達のお手並み拝見と行こうかな? 勿論、いざとなったら僕が守るよ。行こう。館の中で暴れる訳にも行かないからさー!」
鉄より固く閉ざされた扉を自ら開けて、アリエスと姫たちは外へ飛び出した。
――まさか打って出てくると思わなかった黒装束の雇われ冒険者たちを驚かせ――
キャステラの自然魔法は、草のツルを伸ばして、1人をぐるぐる巻きにした。
エディは、剣の柄で当身をして男を気絶させた。
そして。剣を持った男を持ち上げ、投げ飛ばす、赤い瞳の少女。
キャステラとエディの驚きは言うまでもなく。
その少女の目の前に立った敵は、何故か急に大人しくなり。立ち尽くす。
切られそうになったと思ったら、煙になって、その男の背後に回って投げ飛ばした。
「お前、なんて強いんだ。意外だ…」
「き、キミの強さは伝説的だ…一体…!?」
「あたりまえだー、と、ドヤるあたしー。何と言っても、吸血姫~!」
エディと、キャステラは、大きく口を開けて。
美貌を崩して。生まれて初めてと言ってもいいような間抜けな顔をしていた。
無論、賊は、捕まった…。
ん?僕の知ってるコ達って、もしかして武闘派多い…?
――――――――――
アリエスは、賊を縛り上げ軍に引き渡した。
知っている所までは、吐いて貰った上で。
この魔法の世界に黙秘など通用しない。嘘も通用しない。
「…まぁ、仕方ないか。僕、名乗って城塞都市ガランサンのギルド潰したからねえ。とは言え、タダで済むと思っちゃこまるなー。」
「お前のそういうところが大っ嫌いだぜ。普通はよ、地下組織に睨まれるのを避けるモンだ。何時、首切られるか。毒殺されるか。家族を狙われるか…そんな恐怖に震えて眠るもんだぜ?」
「だって、無理だもの。僕に不意打ちは無理だもの。家族にも。友達にも。」
「“僕に”ってところはキライじゃねえ。お前も強大な組織の長なのにな。」
「二度と手を出されないように、ちょっと交渉してくるよ。」
「じゃ、妹のお使いについて行ってもらおうか。」
「ホイホイ。でも、Kの御意見と僕の意見が一致するかな?」
「するさ。どうせオマエの交渉なんてご立派なモンじゃねえ。」
「そりゃ酷いなぁ。」
「言う事聞かなきゃ、ぶちのめす。そう言うんだろ?」
―続く。




