第21話 「思い出多き暇人」後編
捕虜、吸血姫シャルロナが不憫に思えたアリエスは、彼女を連れだって町へ。
ポンコツな吸血姫の過去と、2人を待ち受けるおぞましい事件。
ハイファンタジーです。TRPG、RPG、リプレイ等お好きな方是非。
後編です。(順番間違えたので出し直しました…)
「ん?何処へ行くんだ?」
「まぁ、ついておいでよ。」
「…えっち」
「やめろその流れ!」
しばし、空を飛び。
ちなみに、アリエスは呪文。シャルロナは、コウモリの羽。
アリエスは、シャルロナが眠っていた、祠へ来た。
「キミさ、何度も故郷の歌、歌うよね?来たかったんじゃないの?此処へ」
「遺跡が故郷の奴いるか。バカ?」
ぐさっ。そういやそうだ!
「気持ちはかんしゃ。ありがとう、と、てれるあたし。」
「照れるんだ…」
でも。シャルロナは、祠の碑文周りに何かを見つけた。
碑文の周りに、砕けた何かが在るのを。もう、あめつちに腐り、それでも辛うじて…原型を伝えたものの努力を、感じ取った。
泥の塊と、小さな黒い二つの石を、彼女は胸に抱きしめた。
「…それは?」
「…人形。この黒いのは、目」
吸血の姫は、その赤い瞳から、すっと、涙を零した。
彼女の、きっと両親が此処へいつも何かを供えていたんだろう。
娘の長い、もしかしたら永遠の眠りを、安らかたらんと祈ったのだろう。
吸血姫は、泣くんだね。
アンデッド…死人のイメージしかなかったけど。吸血鬼は何なんだろう。死者で、死者じゃない。魔物で、魔物じゃない。
そういや、アンデッドって、<死者>じゃないよ。<不死>だもの。
「…アリエス。もう一ヶ所、行っていいだろうか?」
シャルロナは、コウモリの翼を広げ夜空へ。アリエスもそれに続く。
――――――――――
そこは、古い、お屋敷だった。
古いと言っても、廃墟じゃない。中には、人の気配がある。
「煙になろう…」
「簡単に言うなぁ。出来るけど。“ミスト・フォーム”」
二つの霧は、家の中へ。
…眠りにつこうとする家族。
複数の部屋へ回ってみた。特に、肖像画などを探していたようだった。
シャルロナの霧は、屋敷を出た。
…実体化する。
「がっくりアタシ。」
「どうしたの?」アリエスは優しく聞いた。いや、想像はつくのだけど。
「なかったね。なかった。時間経ってるもんな~」
「家族の、だね」
「子孫でもないみたい。商人だったからなー。潰れたかな。引っ越したかな。」
「……引っ越したのさ…シャルロナ」
「オマエ―、コノヤロー。何で判るんだよー。」
「判るよ?」
「なんでだー。と問うあたし。」
「キミのような子が、それ以上不幸になっていいハズがない。」
「…こえー。」
「何が!!」
シャルロナは、何も言わず飛び立った。追うアリエス。と言うか、追い抜き。
「シャルロナ、もう一回、さっきの所で飲もうか。朝まではまだまだ時間があるよ。」
シャルロナは笑って頷いた。
――――――――――
先程の広場あたりで、翼を畳み地面へ。
…だが、そこで。今度はシャルロナが険しい顔つきになり、言った。
「アリエス、血のニオイがする…かなり…」
さっきの男たちは、もうどこかへ行ったらしい。いない。
シャルロナは、暗がりの広場の、更に奥、小川のある方へ指さす。
2人は、そっちへ向かった。
やがて。
ぺしゃ、ぺしゃ、と。
ぐちゃ、ぐちゃ、と 嫌な音が聞こえて来た。
気配に気が付いたのか。人影が立ち上がった。背の高い、男の影だった。
手にしていた、人間の様な、くにゃくにゃしたものを、足元に投げ捨てた。
「“ブライト・アイ”」アリエスが呪文を唱える。
唱えなければ良かったが。
足元には、人間だったものの、哀れな残骸があった。しかも。見覚えがある。
…あの、絡んできた。2名。躍らせていた2名。
背の高い男の目が、赤く赤く光った。
「…よう、兄弟…食事だったか?それとも、違う方か?」
吸血鬼。それは、そもそも滅多に出会うものではない。
仮に複数の吸血鬼が街に居たなら、それはもう、地獄だ。手練れの冒険者が呼ばれるか、聖騎士団が出撃するほどの事態だ。
「その男、魅了出来てないのか?面倒だ。後ろから腕ごと掴んでやれ。呪文使いでもそれで終わりだ。」
シャルロナは、後ろからアリエスに、抱き着くように腕を回して来た。
「それでいい。さぁ、一緒に血を楽しもう。コイツ、魔力がある。旨いぞ。きっとぉ」
男が、アリエスに近づく。
「“サモン・ウェポン!”」
アリエスの呪文が暗闇に響く。
「何だと!なぜ押さえていない!?同族だろうが!!」
「残念。あたしは人間だったり。少なくとも、心は。」
最初から判っていた。シャルロナは、軽く抱き着いただけ。腕を押さえてなどいない。
吸血鬼の力なら、本当に抑えることも出来るが。
「むふ。演技派のあたし。」
「悪いね。この子は、僕の友達だ。」
アリエスは頭上の100本もの木の杭を、吸血鬼に向かって飛ばした―。
――――――――――
…灰になった敵を川に流す。
哀れな被害者を、埋める。
「シャルロナ、この男たちは吸血鬼になる?」
シャルロナは首を振る。
「ならない。無理。」
アリエスは、シャルロナの真正面に回り、目を見て言った。魅了は気にしない。
「…たった今から。キミを捕虜から、友達に変更。いいかい、シャルロナ。」
「こえー。」
「何が!!」
アリエスは、真正面から。彼女を抱きしめた。
シャルロナは、ビクッと体を硬直させた。それは、他の姫たちとはまるで違う反応。
「オマエ―、あらゆる友達に抱き着くのかー?へんたいかー?」
「あ、イヤだった?ゴメン?」
「こえー。」
「だから何でぇ!?」
「まぁ、オマエはイヤじゃないけどなー。」
「そう?」
「友達には娯楽をふやせー。なんかよこせー。」
「やれやれ。考えるよ!じゃぁ、気を取り直す!飲もうか~!」
「おー!っと気勢を上げるあたしー。」
2人は、再び酒場へ。
2人の犠牲者の事は、当然頭をよぎるけど。切り替える。
切り替えることが出来る程には…アリエスは、人の死をたくさん見ている。
…シャルロナの方が、よっぽど僕より…魂が穢れていない。
「何だよーアタシを見つめてー。困るな~もうちょっと時間を掛けろよー」
「違うってえ!」
「そういや…あたし、さっき倒したヤツの服。どっかで見たなー。」
「どこで?」
「あたしが覚えていると思うのかなー?」
アリエスは首を振った。
このおかしな吸血姫が覚えている筈もない。
「…キミって思ったより変じゃないね?」
「しつれいなー!と、怒るあたしー!」
――――――――――
数日後、アリエスは、彼女に<親愛の指輪>と、更にもう一つ。いやもう一人。
彼の2匹目となる<使い魔>を、呼び出した。
名を“アーリア”と名付けた、黒猫。メス。
アリエスと視覚を共有でき、アリエスの一部魔法を使え、何よりも。
知恵があり、意思がある。
アリエスは彼女に命令した。
「キミの役割は、シャルロナの“おしゃべり友達”、そして彼女を守ること。」
「僕も、今までより来るようにするよ。友達だから。」
シャルロナは、笑顔で黒猫を抱きかかえて、小屋へ消えて行った。
――勿論、お茶とお菓子で、沢山お話するんだろう。
続く―




