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<魔術の塔>のアリエス   作者: なぎさん
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第21話 「思い出多き暇人」前編

捕虜、吸血姫シャルロナが不憫に思えたアリエスは、彼女を連れだって町へ。

ポンコツな吸血姫の過去と、2人を待ち受けるおぞましい事件。


ハイファンタジーです。TRPG、RPG、リプレイ等お好きな方是非。

前編です。

 あれから。

狂える?吸血姫シャルロナは模範囚的な?生活を送っている。と、思う。


 魔術の塔(真)のそびえる不可思議な空間。その巨大な庭で。

塔を囲む湖の外側に広がる豊かな草原には、今、石組みの簡素な家が立っている。

一応地下室まである。この家に何かあった時、太陽を避け逃げ込むためだ。

キッチンもある。窯もある。食器もある。クローゼットや鏡台まである。鏡は外したが。


吸血姫シャルロナの為に、アリエスが作り上げた小屋。


今、月が上がったところだ。


「…お茶飲め。客人。」

「僕が作った部屋だけどね?」

「気にするな。さぁ、お茶だ。茶菓子もあるぞ」

「僕が運んだお菓子ですけどね~」

「そうでしたテヘ。」


「…気にいった?」

「気にいったけど、もっと遊びたい。ポリポリ。」

「吸血鬼っておかし食べるんだ…ポリポリ。」

「カワイイあたしに娯楽カモン。」

「むむむ…キミ捕虜なんですけど」

「ルラ~遠いふるさと~そしてヒマ~♪」

「聞いてる?」

「何だ?惚れちまったのか?照れるあたし」

アリエスは深いため息をつき、しかし、誰とも接触がない彼女に罪悪感があった。


「遊び、行こうか…これから」

「何だとー!」

「ごめんなんかごめん!」

「行くー!」

「待て!今おしゃれするからまて。髪整えるから待て!」

「お早く~」

「オトコはせかさず待ってろー!」

「はーい」

「てか部屋出ろー!」

アリエスは追い出された。


――――――――――

 鏡に映らない彼女がどうやって髪を整えたのかは知らないが、整っていた。

ドレスはこの間買った、白いキュートなヤツだ。


確かにこうすると普通の少女に見えなくはない。

夜月明かりで出会う分にはその血の気のない白すぎる肌も判りにくい。

瞳の赤さも、魅了されなければ問題ない。この世界の人々の目の色は千差万別だが、赤はあまりいない。髪は多いけど。


 夜に出歩いて良い所、まずは酒場だ。

多少気を利かして。アリエスは彼女の故郷。砂漠の無法地帯、オアシスへ。

テレポートで、飛ぶことにした。


 シャルロナは、帽子を目深に被り、魅了の目を見せないようにした。

アリエスが2人分のミルク酒とチーズ、スモークチキンを頼み、酒場の笑いと旅芸人の演奏を聞きながら、2人でくだらない話をする。


「これも冒険者の宿なのか~?」

「イヤ、普通の酒場兼、宿。」

「この酒はミルクが入っているぞ~お子様も飲めるのか~」

「まぁ飲めなくはないけど?」

「あーアのオヤジ服へんなの~」

「聞け?」

「え?ファッションセンス?」

「言って無い。」

「そう言えばキミ、最初も立派なドレス着てたよねえ破けてたけど」

「えろいーそこを見る所がエロいー」

「違ううう!」

「肉うめー」

「聞け?」


冒険者の宿ではないので、屈強なものばかりという事もない。

ただ、さらに無法者が多い。ここは無法地帯の、オアシス。



 酔った、若い男二人が、アリエスとシャルロナの阿呆なテーブル横に来た。

見かけで盗賊上りか。野党崩れか。まっとうには見えないが、ここでは仕方ない。

「小僧、綺麗な娘を連れているな。譲れ。1Gやろうじゃないか。」

もう一人の男も笑った。

「いいじゃねえの。痛い思いもしないし、金も入る。1Gありゃ5杯は飲める。へへへ。」


無論、これでアリエスがビビるわけも無いのだが。

「むむむ、いつもどおりモテすぎあたし。」

「ふふ」


吸血鬼は例外なく、怪力だ。おまけに再生し、魅了し、変身できる。この程度の輩がシャルロナをどうこう出来るはずもない。のに。


「たすけて~だぁりいいん!」

シャルロナは下手な演技をかました。

「助けてってよ~どうする、あんちゃーん」

「うん。仕方ないなぁ。」


アリエスは左手の指輪を唇に寄せ。

「“テレキネシス”」

2人を宙に持ち上げ、操り人形のようにステージに持って行った。

ステージでは派手で露出の高い4人の踊り子がくねくね踊っていた。その中央に。

「皆さーん、ツァルトの魔道士でーす。絡んできたバカな2人のショーをどうぞ。」

2人は、強制的に体を操られ、カクカクと動いた。

同じようにガラの悪い連中は、同業者が大恥をかかせられようと関係なかった。


2人は真っ赤になって呪いの言葉をかけていたが、酒場は大いに盛り上がった。

街中の呪文も関係ない。ここは無法の街。


「あーチーズうめー。と感涙するあたし。」

吸血姫はすでにそちらには興味なく、笑顔でチーズを食べていた。



 2人は、支払いを終え、外に出る。

少々、ガラの悪い2人には強めの罰を与えたが…。そもそも、ツァルトでは婦女暴行は死罪。あの程度、アリエスにとっては軽い処罰。


 夜風に当たりながら。

「吸血鬼って、不思議だねえ。アンデットと酒を飲む日が来るとは思わなかったな~。」

「惚れたか…やはりモテすぎのあたし…」

「聞け?」

「実はずっと寝てたので世間をしらない。それがあたし」

「聞け?」

シャルロナは、アリエスの目の前にすっと立ち。キスできるくらい近くに立ち。

アリエスの手を取った。

アリエスの手を、そっと自分の頬に当てた。

「どーよ」

「何が!」

「固くないだろー!」

「そうだけど。」

「な!?」

「なじゃない!…でも確かに不思議だ。どうしてキミは柔らかい?」

「わ、言い方エロい」

「ちがーう!」


…ん…?来たか?仕方ないな…。

ここで、アリエスは望まない<悪意>が近づいたのに気づく。


「シャルロナ、敵だ。」

「え、命だけはお助けを。」

「僕じゃないって!」


弓が、アリエスに飛んできた。

すぐ近くで、弓は急に止まり、地面に落ちる。

「お兄さんたち、さっきは面白かったよ。」


「てめえ。気づいてたか!」

暗がりで、剣を抜く音がした。

「この町で小僧1人死んでいようが、誰も気にしねえ!」

「死ねや!」


「キャー助けて~姫~」

アリエスはシャルロナの真似をして、彼女の影に隠れた。

「まじかー!ひどい男だー!」


剣を振りかぶる2人。

目の前のシャルロナを見て、止まった。

魅了の瞳を見て、止まった。

「やはり、モテすぎあたし。」


「あ、あ、美しいひめ…」

「お前ら、そこの広場でさっきの踊り朝までしてろー」

「はい!貴方の為ならばぁ」


2人は暗がりの広場でフネフネと踊り出した。


アリエスとシャルロナは笑って、飛んで行った。



後編に続くー


すみません、順番間違えました…

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