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<魔術の塔>のアリエス   作者: なぎさん
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第14話 「神祖の宿題」後編

ハイファンタジーです。

女の子とサボりが大好きな、魔法使いの王子。自分の言動のせいで今日もやること増えて行く。


エルフの森に横たわる巨大な氷の大波。真祖が残した壮絶な魔法の解除に、アリエスが挑む。

後編です。

 あれからひと月、アリエスはエルフの村と離宮、ダッカーヴァ、魔術の塔を行き来しながら、真祖の魔法を安全に解く方法を探した。


――まだ、結論は見つからなかった。勿論、銀のハイメルやレオにも相談した。別に、一人の力で解くことを最優先ともプライドとも思わない。大事なのは、閉じ込められた人々を救う事なのだから。キャステリオの母も。だが、まだ見つからなかった。


エディからの報告は聞いていたが、城塞都市ガランサンのクーデターは思わぬ方向へ話が飛んだ。

新しい王、シーガスと名乗る盗賊ギルドの男は、早速、繭の守りを解いたエルフの村へ、ガラの悪い使いを寄越した。


「城塞都市ガランサンに従え。力を寄越せ。魔法の品を差し出せ。軍として動け。」


当然、長は即決で断った。

男たちが帰った後、エルフたちは大魔法で再び“迷いの森”を創り出した。



 ――アリエスは王宮へ。


一切、言葉は発しない。全て、テレパシーによる。誰にも聞かせない。


<父上、エリゴールの7つの城塞都市。その一つに盗賊ギルドが素性を隠し王の地位に就いたとの事。>

<大胆なことだ。連中は、影から支配が好きなはずだがね。>

<エリゴールの盗賊ギルドは、盗賊の会議で支配を願ったとの事です>

<つまらぬ輩を要職に付けるからそうなる。>

<潰します。良いですか?>

<アークマスターとしての決定か。王子としてか。>

<エルフの人々が隣接する城塞都市の隣です。早速、エルフに被害が及びました。恭順を命じてきました。こともあろうに>

<まだ答えておらぬ>

<僕の願う世界の安定に連中は不要>

<1国を潰すと?エリゴールは7つの城塞で一国をなす。それぞれの城塞は我らにとっては1都市にすぎんが、それでも王は王。国同士の戦いとなる。>

<なりません。潰すのはギルドです>

<…思う通りにせよ。お前は大陸を支配するアークマスターとなる者>


アリエスは、礼をして消える。


…銀のレオ、ここへ。


―お呼びでしょうか父上。

―アリエスはこの半年で随分名を広げたな…。

―アイツが動く理由は主に女の為ですが…結果として、北のダッカーヴァ公爵領から東のエルフたち所まで。本人は考えていないでしょうが、見事な“侵略”。


―気は変わらぬのか?

―変わりません、父上。

―近く、妃たちを集めよう。公爵家が言うことを聞いてくれると良いがな。

―まぁ、この度の城塞都市の件、それ次第。

―判った。お前も、無欲なことだな…。


――――――――――


 城塞都市ガランサンの王が譲位した。副官にして王の補佐役であった男シーガス。民は反対の意を示したが、強行された。先王は城塞都市の端に屋敷を与えられ、軟禁となった。


何より民が反対したのは、補佐官が盗賊ギルドとの繋がりを噂されていた男だからだ。

前王の評判は悪くはなかった。


先日の魔物の軍勢退治は、その男の策による手柄とされていた。勿論、嘘だが。


新しき王はバルコニーに立ち、豊かな生活を約束した。翌日、言った通り民に金がばら撒かれ、なびく者も出て来た。

男たちには軍に入ることが進められ、酒場では急速に盗賊たちが威張り出し、被害が続出した。


新王は、すぐに隣の城塞都市やエルフの森を傘下に収め、隷属させることを宣言した。


長年エルフ達と付き合いある民は反発。そして牢獄に入った。

隣の城塞都市は、すぐに門を閉め交易を停止した。当たり前だ。

シーガスは、王になったならばすぐに誰もがいう事を聞くと思って居たのだろうか、すぐに機嫌が悪くなり、様々な横暴が始まった。


 そのすぐ後だ。数人のエルフが交易に城塞都市を訪れていたが、捕まったのは。

人々の目の前で、何もしていないが捕まった。人質だった。


――――――――――


「んじゃ、行ってきます。」


 アリエスは、ハーフエルフの少年と共に城塞都市を訪れた。

1人で行くつもりだったが、キャステリオの強い希望で一緒に行くことになった。

「エルフの民がこの事態に行かなくてどうするのでしょう。」その一言で。


アリエスは、わざわざ馬車を借り、仰々しく入城した。キャステリオは従者という事になる。

―あれがツァルトの王子か?何故この騒乱の時に?

―まさか王を称えに?ツァルトはあの男を王を認めると?


アリエスは、一番大きな、市に隣接する広場へ馬車を乗り付けると、2人で馬車の上に乗り、民に向かって大きく、繰り返し叫んだ。


「恩義ある先王、タイザルフ殿を救出しに参りまっしたー!」

キャステリオは気絶しそうになった。なんという正攻法、というか策なし!

人々は呆れ、笑った。

「では早速助けに行きますが、あなた方はどうしますか!?」


アリエスに、弓が飛んできた。アリエスの目の前で落ちた。

「ハイ、早速弓が飛んできましたが、無駄ですよ盗賊の皆さん!僕に飛び道具は効きません」

魔法か!

さすがツァルトの王子、魔法使いか!?


アリエスは、表情を変え、集団テレパシーで周り中に伝えた。

「かかって来い、エリゴールを盗まんとする野盗共。お前達は先王を幽閉しただけでなく、エルフも攫い人質に取った。許さない。これは、僕の個人的な行動だ。お前達は、ツァルト魔術の塔、紫のアリエスを怒らせた。滅べ。」


「行くよ、キャステリオ!パッシブあるの忘れないで!」

「判っている!助かるよ王子!」


2人は低空を飛びながら、北東の館へ向かって行く。


 民の笑いは、何時しか応援に変わった。応援は、何人かの勇気あるものを行動に駆り立てた。

城塞都市を訪れていた冒険者も加わった様だ。彼らは酒場での盗賊団の横暴に腹を立てていたから。


北の屋敷前には、常駐で盗賊ギルド配下の者がいた。

眼前に飛来し、叫ぶ。「先王を開放しに来た!志あるものは助力せよ!」


8名の男のうち、2人が武器を捨てた。「お前らのやり方にはついて行けん!」

怒り出す6名は、“ロープ”の呪文で一瞬でグルグル巻きになった。

「案内してくれ。」

2人の男は、館へ、先王の部屋へ案内する。



「先王、ツァルト王子アリエスと申します。救いに参りましたよ?」


アリエスは、王を抱え、広場へ飛び戻った。


「王!! 王!!」


「では次は、城!我と思わん者は、来い!!」


 アリエスは、今度は徒歩で、城へ王と民集を引き連れた。

盗賊団の構成員が300や400居たところで、元々の民の方が多いに決まっているのだ。

元々、忠誠心など低い盗賊たちは、あっという間にボスを見捨てた。


嫌々従っただけの城門の兵たちは、進んで門を開けた。



そして。


玉座の間には、エルフたちと先王の家族を人質に取った数人の盗賊が立てこもっていた。

「近づくな。お前ら武器を捨てろ。」


“タイム・フリーズ”


人質、12名、敵、5名。


族を吹き飛ばすのは簡単だが、喉元に当てられた短剣が人質を傷つけないよう念のため。


災害。救いたい人。

ああ、そうか。


これは、真祖がエルフの村を凍らせたのと同じ。


時を止めた後、どうする?


“メタライズ”。12人の人々を、鉄に変えた。

“アシッド” 武器が全て錆びて粉になった。

“ワイア” 6人の盗賊を、光る針金で巻いた。動けば、死ぬ。


…時が動き出す。


「お前ら、近づくと!」

アリエスは平然と進み、後ろに雪崩打つ兵たちに告げた。


「もう無力化したから。鉄になった人々を助けておいて。僕、ボス追うから。」


玉座の近くにある地下への階段。恐らく、地下通路を通ってギルドの迷宮に繋がっている。


キャステリオ、ここからは僕一人で。

何で。

お願いだ。



“サモン・ゴーレム・シルヴァ” “サモン・ガーゴイル”

銀のゴーレム、飛行する悪魔の像。


2体が先行する。所々にある罠を、片っ端から“発動させて”前にすすむ。

時折出て来る人影を、顔を確認もせず粉砕する。


思った通りの所へ出た。捕まった人々、売られる寸前の女たち、拷問された男たち。

全員を解放する。城へ走らせる。


彼らが階を上がるのを見て、アリエスは怒りの表情で次の魔法を放つ。

“フラッド”

洪水の魔法。水の大魔法。通路はどんどん水没していく。

“ライトニング・ボール!”


アジトに響く絶叫。悲鳴。二度も、三度も、アリエスは呪文を撃ち込んだ。


静寂が訪れた後、アリエスは全ての扉を開けそして、ついさっきまで王であった男と、ギルドマスターであったその父親の姿を確認し、静かに戸を閉めた。


城のバルコニーに出た。アリエスは、人々に告げた。


「先王は取り戻し、僅かな間キミ達を支配した横暴な軍勢は大半打ち倒した。城下にあるギルドへの通路には彼らの亡骸と財宝がある。王の指示の元、キミ達で分け合ってくれ。もともと、ほとんどは君たちのものだ!」


「そして、ギルドの生き残りと家族に告げる。正当なる復讐の機会を差し上げる。地下のギルド本部には、拷問された人々や攫われた女たちが居た。彼らは解放した。その地下に居た賊は全員、この僕が討ち果たした。この僕を告発する者は前に出よ!また、一矢報いんとする者あらば、この場でかかって来い!後に暗躍を図るならば一族ごと処罰させて頂く!!」


家族を本当に処断するかどうかは置いといて…明らかな恫喝。


神祖は、家族を人質にとった旧ダッカーヴァ王家を皆殺しにしたという。今は判らなくはない。怖かったんだろう。報復の連鎖が。


アリエスは、下に飛び降りて、誰かが出て来るのを待った。

…誰も、来ない。


「城塞都市、このアリエスが解放を宣言する。王の元、健やかなる発展を望む!」


人々の歓声。

恐るべし、ツァルトの王子。

アリエス王子、大したもの…。


アリエスは、先王タイザルフに耳打ちする。

「ツァルトとの友好が長く久しいもので在りますよう。…副官や大臣の人選は考えられた方が。」

「済まぬな。恩に着る。若き王子。」


再び空へ。キャステリオと共に、森へ飛ぶ。

キャステリオは、一言。

「君が判らなくなる…。」


「キャステリオ、氷へ飛ぼう!」

「え?」


―――二人は、時の止まった氷の大波へ。


「神祖は、初めに、時を止めた。」

「その中で、人々を炎の奔流から救う方法を考えたんだ。」

「この場を守るために、扱いやすくするために空間を切り離した。」

「そして、時間を二重に止められないから、多分…止めていない。」

「ゆっくり。0に近い時間の流れに変えたんだ。」

「だから、怖れなくて良かったんだ。初めから、真祖は助かる様に呪文を使った。」

「“ディスペル・フルパワー!”」ほぼ全ての精神力を使う。

勿論、そうしなければ神祖の呪文を解けはしない。


パキっと、音がした。

次元が、繋がった。


アリエスは石を投げ込んだ。空間に入った瞬間、空中で止まった。

「あとは、ゆっくり救い出そう。中に入らず、呪文で引っ張り出すよ。全員救ったら、障壁で囲んで、時間の流れを戻す。」

「助かるのかい!?王子!!母さんは助かるのかい!?」

「うん。」

「君は、何なんだ?神なのかい?悪魔なのかい?」

「うーん、ゆっくりしたい人?」

キャステリオは大粒の涙を流して、アリエスに抱き着いた。

長く抱き着いて、最期、唇にキスをした。


アリエスは男色の趣味はないが。そのまま抱きしめた。どうしてか、嫌じゃない。

だから、そのまま唇を重ねていた。


あれー、僕、こっちもイケるんだろうかー。そんなバカなー。


――――――――――


 …その後、4日ほどをかけて、エルフの民を救出する。全員、無事だ。

最期に、巨大なフィールドで炎を覆いつくし、時間を戻す。


再び、全精神力が必要だった。真祖が、慌ててかけた程度の呪文に対して。

轟音、熱気。炎渦巻く透明な壁。しかし、村は無事だった。やがて、炎は収まった。


アリエスは、抱き合うキャステリオと母親らしき姿を確認すると、その場で意識を失った。



後日、盛大な宴が催される。本来の人口を取り戻し、活気あるエルフの里。

人々の喜びは、口をついて歌となり、踊りとなり、或いは酒となり、新鮮な果物となり、エルフの森に賑やかな時間を生み出した。


なお、キャステリオの母はやはり美しく、背が高かった。キャステリオがエルフの割に背が高いのは母の影響らしい。


――素晴らしい夜だった。


だから、ここでアリエスは去ることにした。長々いて甘えるのも、引き留められるのも、何だしね。


母と手を取り合うキャステリオに、遠くから手を振った。

彼は気づいて駆け出してきたが、アリエスは消えて行った。



――呆然と見つめるキャステリオに、母は言った。


「もう遅い。追うなら、しっかり準備をして、明日にしなさい。」

「母上?」

「カエルの子はカエルというか…好きなのね?キャステラ?」

「…そうかも…。妃が2人も居るふしだらな奴なんです…憎らしい。」

「じゃぁ辞めたら?」

「もし俺が3人目の妃になったら、笑う?」

母は首を振った。

「まず、その言葉使いを“戻す”ことね…」


――王子、私が元の姿で会いに行ったら、何て言うかな。


まあ、キャステラは他の2人の存在を知らないのだが、夜空を見上げて、その髪にそよ風を受けていた。




――続く。


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