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<魔術の塔>のアリエス   作者: なぎさん
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第14話 「神祖の宿題」前編

ハイファンタジーです。

女の子とサボりが大好きな、魔法使いの王子。自分の言動のせいで今日もやること増えて行く。


エルフの森に横たわる巨大な氷の大波。真祖が残した壮絶な魔法の解除に、アリエスが挑む。

前編です。

 2つ目の課題。


エルフの隠れ里、この森の目の前に迫った氷の壁を、どうやって解除するのか。


アリエスは空から、地から。入念に観察した。


はぁ。炎の息吹まで凍り付いてる。逃げ惑うエルフの民も。一部の住居も。


――まぁつまり。氷じゃない。


氷に見立てただけだ。これは時の魔法だ。時を凍らせるのを範囲で、永続。

…そんなバカな魔法があるか。まぁ、あるんだなぁ。



アリエスは、巨大な氷の壁の前で、座り込んだ。

解除は、出来るかもしれない。何度も試せばいけるかも。まして、ハイメルやレオ兄さんと共に唱えれば。


しかし、解除した瞬間に、この村人は死ぬ。炎は、隠れ里を覆いつくす。無理難題。

はぁ~~~~~。



「王子、どうだい?」

キャステリオが隣に座り、差し入れの細長い菓子を持ってきた。

「…どうぞ、花の蜜や蜂蜜をかけた卵の菓子だよ。」

アリエスは遠慮なく頬張った。

「!うっま!これすごいなぁ!初めて食べたよ!!」

「ふふ、喜んでくれると嬉しいな。」

アリエスは、美味しいお菓子を戴きながら、キャステリオの横顔を覗き込む。


氷の壁を見つめるその顔は、寂しそうだった。


「…昨日、キミの“姉さん”に会ったよ。」

「そ、そう……あのさ、どんな子だった?」

「どんなって君が知ってるんじゃぁ…。君によく似てて、美しくて、白いというか透明な感じで…守ってあげたくなるような、抱きしめたくなるような……あ、ゴメンなんか口説こうとしてるポイ?警戒しないでおくれよ」


キャステリオは、何故か向こうを向いて、立ち上がって離れて行った。

怒らせたのかもしれない…。


―――ダメだ。思いつかない。


 暫くして、キャステリオが戻って来た。別に、怒っている様には見えなかった。

「キミの姉さん、キャステラ。甘いお菓子みたいな名前だよねえ。外見通りだから全然おかしくないけど。」


再び、キャステリオは立ち上がって向こうへ行ってしまった。今度こそ怒らせたかもしれない。沸点がわからないなぁ。


―――僕が真祖なら、どうしただろうか。


救いたい状況、しかし余りに広範囲。

うん、まず最初に時を止める。真祖なら、僕より長く止めるだろう。で、次に森ごと時を止め……。


…られる筈がない。時を止めた中で更に止めるって何だ。

アリエスは、氷に近づき、触れる。

やはり、冷たくない、似た感触を先日味わった気がする。そう、北の国で。エディと。


「これ、次元障壁だ…時の無い世界で囲んだ…そんな感じか?」

または時から切り離した…そんな事が可能?


…うん、可能だったんだな。神々と戦えるほどの魔力って何だ。

あ、魔神と刺し違えたんだからそりゃそうだ。


「えー使えませんけど~そんな魔法知りませんけど~」

アリエスは転がった。キャステリオが戻って来た。やはり怒っては居ない様だった。

そして、アリエスの横に転がる。

「さすがの君も中々思いつかない?」

「そうだねえ…。ちょっと休憩。」


暫く、2人は無言で転がっていたが、先にキャステリオが口を開いた。

「父上は、人間の母と恋に落ちたんだ。母上は、今、その壁の向こうに居るというわけさ。」

「………」

「この壁から母上を救う方法を探して、1年と少し、世界を旅したんだ。」

「……」

「済まない、プレッシャーを与えるつもりじゃなくて、君には知ってほしかった。」

「…うん、お母さん。君の母親なんだから素敵な人なんだろうなぁ。」

「…ふふ、人間を好きになるのって、エルフの中では変わり者扱い。」

「はは、全然普通じゃない?僕は全然気にしないけどね。」

「君ならそう言うんじゃないかと思ったよ。王子。」



――指輪から、エディのメッセージが頭に響く。

<アリエス。時間があったら愛しい私の所へ。相談がある。>


「キャステリオ、僕は一回、魔術の塔へ戻る。逃げ出しはしないよ。確認したいことがある。」

「そ、そうかい?俺はここでキミを待とう。良い方法を見つけ出してくれ。」

「はいよー。」


アリエスは、軽く言って、テレポートで消えた。


―――――――――――


 魔術の塔、真。


偉大なる10階建ての書庫。居住空間は10階のみ。だが全てが揃っている。この場所を使うのは現在アリエスとエディのみ。


ベッドの上に、手紙が置いてあった。


「ばーか、ばーか、早く来い。私を待たせるな。」


アリエスはくすっと笑った。


 奥から、湯浴みをしたばかりのエディが出て来た。

…裸で。

「もう来てたの!!?」慌てて絹で隠す。


「キミが来いって言ったんじゃないか~!おまけにこんな手紙まで。」

「も、もうちょっとかかるかと!」


「わかったよお!後ろ向いてるから着ていいよ!」

くるり。


「…兄から連絡が着て。エリゴールの事で話があるからギルド来いって」

「エリゴール?知っての通り僕の仕事はその近く…というか、魔物の群れを退治したとこ」

「明日行くけど。いいか?」

「判った。フーゴをネックレスに変化させてキミと行かせるよ。安心して。」

「…今日は、このままここに?」

「うん、次元魔法の本探す。」

「………」

エディは、アリエスの後ろに立って、囁く。

じゃぁ、朝まで私を独り占めできるけど。この塔、私のだからな。


アリエスは振り返る。

彼女は、さっきの姿のまま、着替えてなかった。


――アリエスは、すぐに彼女を独り占めすることにした。


――――――――――


――ツァルト盗賊ギルド。喰いあう蛇と竜の紋章を持つ。世間には比較的義賊扱いされている。この盗賊ギルドと魔法ギルドが繋がっていることは周知の事実である。ツァルト国内で敵に回そうとする者はいない。だが、その構成員になるには盗賊ギルドとは思えないような厳しい掟を守らねばならない。


それが、もう200年も続く、契約。

女に手を出さぬ事、商売にしない事。薬物を商売にしない事。盗みにおいて殺しをせぬこと。

まるで時代劇の正統派のようなこの掟を守らなければ、確実に殺される。容赦なく。



さて、エディは久しぶりにフードを被り、ギルドの隠し扉を通った。

きっとフーゴの力を借りればテレポートできたのだろうが、歩きたかった。


盗賊ギルドの姫、久しぶりに帰還。ギルドは大いに沸いた。

「盗賊姫」「盗賊姫」

アリエスの許に居ることは既にバレバレで、この様に囃し立てられる。

…先日などは王妃と並んでアリーナに居たのだから当たり前だ。


奥へ。兄の執務室、“謁見の間”へ。

「入るよ、兄さん。」

「おう、久しぶりだなエディ。」

「あら、いらっしゃい。」

兄の横にグラスを持って、女が居た。兄のオンナ、エンヴェル。


妖艶な大人の女性。金のウェーブのゴージャスな髪。恋多き人と呼ばれていたけど、兄の隣におさまった。お子様なエディやティアナ、メイフェアは、普段からほぼスッピンだが、彼女はとても手慣れており、淡く美しく自分を彩ることが出来た。正直、エディは彼女に少し憧れている。


「どうだ?新婚生活は?」

「まだ妃じゃない」

「…同じだろ」

「…言って無かったけど、求婚を受けた。近いうちに、その…」

<黒のK>は大笑いし始めた。

「でかした、と言っておこう。お前は魔術師ギルドと王家の両方を盗んだ稀代の大盗賊!」

「やめてよ。」


「とまぁ、それだけに。」

「なに」

「お前はこれからも狙われる。まさか今日も一人とは思わなかった。ヤツはともかく、護衛も居ねえのか。」


「居るよ」

エディは、ネックレスを指さす。使い魔フーゴの変化した装飾品。今も、周囲を警戒している。

「…なるほどな。」


「で、何?結婚の祝いでもくれるの?」

「…むしろお前がそういう冗談を言えるようになったことに驚きだが」

ぷ、っとエンヴェルが噴き出す。

「エリゴールに動きがある。前にお前らがやっちまった奴らな。奴ら、城塞の1つの王になりやがった。」

「何だって!?」

「驚きだな。表舞台の顔になりあがった訳だ。でもまぁ、考えようによってはお前も今回それをやり遂げた。」

「…そんなんじゃない」

「純愛だってか?別に疑ってねえよ。結果だ。」

「……お前は、王妃だ。」

「アリエスは王族だけど第3王子。王にはならないよ」

「…なるさ。」

「何で。」


「なるさ。アイツが、最も強いんだから」



――続く


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