第13話 「迷いの森、迷うエルフ」その①
ハイファンタジーです。
女の子とサボりが大好きな、魔法使いの王子。自分の言動のせいで今日もやること増えて行く。
友、美しい少年キャステリオが誘うのは、エルフの隠れ里。その①です。(1/3)
ハーフエルフのキャステリオが、アリエスの離宮ではなく、<魔術の塔>を訪ねて来た。
当然、当然で良いのかはともかく、アリエスは不在だった。
その美しい青年は、ギルドへの依頼として、太古の指輪を報酬に差し出すと言った。依頼内容は、エルフの隠れ里と森、そこに棲むもの達を救う事。
その話が本当ならば、魔法ギルドが動くべき事態であり、その使命に沿うものだ。
また、その指輪が確実に…驚異的な力を秘めたものであることは、この塔の住人ならば判るだろう。
ただ、キャステリオは条件を付けた。
「引き受ける者は、知恵が無くては務まるはずも無いんだ。力と、勇気と、知恵を持つ者でなければ。この俺と、チェスで勝負してくれ。俺に勝てる程の知恵と勇気が無ければ、不幸な人魚の様に海に還るだけ。」
それから数日、キャステリオは塔の来客室に泊まることになる。
日々、数回チェスの勝負をしているうちに、その強さは塔内に知れ渡った。
次々と魔術師たちが挑んでいった。魔力ではない勝負なので本来は階級の色は関係ないのだが、やはり上の階級に猛者は多かった。魔術師達が余暇で遊ぶことが多いからだ。このチェスと呼ばれるゲームを。
…そして、6日間。誰も勝てなかった。今日はついに、<銅のストライツ>が負けた。
キャステリオは、初めは喜んでいたのだが、やがて誰も勝てなくなると、つまらなそうにしていた。正確には、それでは依頼できぬと嘆いていた。
そこに、ついに、一人の重鎮が顔を見せる。滅多に会えない、塔のもの達にとっては英雄であり憧れの1人。
<銀のハイメル>という初老の男性。“ドミナント”の称号を持つ、塔の支配者の1人。
「優れた力をお持ちの様だ。どうですかな、私と一局。」
キャステリオが待ち望んだ瞬間だ。
――――――――――
周り中、めったに見られぬ余興に目を奪われている。
さすがのハイメル様でも無理じゃないか?トシだしな。
いやいや、ハイメル様は今もなお<銀>。これは目が離せぬ。
キャステリオは、ハイメルが座った瞬間に、達人であると理解した。
本気で、指してみようと思う――。
――中盤まで、互角。僅かにハイメルが押しているかもしれない。
「…お強いですね、ハイメル様。さすが、<魔術の塔>の支配者」
「いやいや、キャステリオ殿こそ素晴らしい。瞬時の判断。挑戦的な差し手。若さ溢れる力…失礼、エルフに年齢は関係ありませんな。」
「…俺は29歳です。見た目は人間の若者でしょうが。」
「確か、ハーフエルフは人間の倍は生きるのではなかったですかな?となれば、14、5歳ですか。」
「…まぁ、森では子ども扱いです。」
――終盤まで、形勢は動かない。
ここでキャステリオが、ハイメルを惑わせる強襲をかけて来た。
ギャラリーが沸く。
「ふむ?おお…これは迷う。」
「………」
「しかし、惑わせるための一手」
ハイメルは、無視するかのように攻めに転じた。
<私を、試されましたかな?キャステリオ殿?>
テレパシーだった。
<すみません>
<手としては失着。しかし、貴方の意向はそこには無い様子。>
<…アリエス王子は、ハイメル様より弱いのでしょうかね?>
<ほほ、チェスなら。そうでしょうな。>
<彼には、知恵は無い?>
<いえ?時に私以上。王子はチェスを知らないだけ。>
<はは、なるほど。教えてあげたいな>
<さて、そろそろ本当の願いを伺っても?>
<はい。ハイメル様、我らの森には、呪文を解かねば救えず、解いては救えぬ同胞が居るのです。その解決には力が必要です。俺の自然魔法では解除そのものが出来ません。>
<どうやら。我らの王子を買っておられる様子。派遣しましょう。その謎ときに。>
<謎ではありません。説明が難しいのですが、一目で理解できますよ。そして、打つ手がない。>
「…負けました。」
キャステリオが頭を下げる。ギャラリーが沸く。
銀のハイメルは、微笑んだ。
<貴女の願いが叶いますよう>
――続く。




