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<魔術の塔>のアリエス   作者: なぎさん
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第12話 「僕が決める」その③

ハイファンタジーです。

女の子とサボりが大好きな、魔法使いの王子。自分の言動のせいで今日もやること増えて行く。


気心のしれた冒険仲間と向かった先には、地獄。 第12話、その③です。(3/3)

 渓谷に挟まれた村。このように切り立った断崖に挟まれた所に作るのだから、恐らく鉱山か、又は何か特殊な生産物が在るのだろう。


4人の冒険者が、来た。馬には乗っていない。飛行で空から、村の入り口に舞い降りた。


魔術師、アークマスターたるアリエス。

精霊術師メイフェア。

神官戦士、シャリー。

身長2m20cm、同じく2mの剣を操る仮面の剣士、ユ=メ。

仮面は只の白。目に上向き三日月のような、人を小ばかにしたような穴が在るだけ。


「久しぶりじゃないの。暴れようか。」とシャリー。

「うむ。」いつも無言かウム、しか言わない寡黙なユ=メ。

「用心していこう!」メイフェア。

「罠かも知れないんで宜しく。取り合えず、最初はゴーレム出しとくよ。2体。」


「出でよ、石のゴーレム。“サモンゴーレム・ストナ!”」

「アルファ、お前は最後尾を守れ。ベータ、戦闘でユ=メと並べ。フーゴ、来い!メイフェアの肩で守れ。」

アリエスの使い魔がメイフェアの肩に止まる。

「フーゴ、今日もお願いね。」

「相変らずメイフェアにだけ甘い。あーヤダヤダ。カヨワイ女性は此処にもいっぞー?」

「メイフェアがキミぐらいムッキーになったら考える。」

「ならない。」

「ムッキーでもあたしはモテる~モテる~♪」


ム=ラが2mの剣を抜く。

「判ってる。殺意。来るね…。」


人ひとり居ない村に入ってあっと言う間に。

周り中に獣のニオイ。唸り声。アリエス達は取り囲まれていた。


巨大なダイアウルフ。通常の狼の2倍はあろうかという体躯。

「早速お出まし。行こうか!」


「アルファ、左へ!ユ=メ、前と右頼む!」

「うむ。」


「“ディバイン・モール!”」シャリーが呪文を唱えると、その右手には光り輝く巨大なモールが。左手には鋼のモール。

シャリーは神官魔法の使い手。神々の加護を持つ光の武器を使う。


「精霊よ、おいで!風の精霊シルフ、土の精霊ノーム、邪悪を打ち倒して!」

メイフェアの言葉に、小さな竜巻が現れる。地面から、ドワーフのような形の土くれが立ち上がる。


相変らず、頼もしい。負けはしない。この仲間たちとなら。


「“ライトニング・フラッド!”」


襲い掛かるダイアウルフを、ゴーレムが拳で吹き飛ばした。

ユ=メの斬撃は、一度に10匹を切り刻み、更に衝撃波が数体を吹き飛ばす。

彼の剣<グルムウィング>は、衝撃を生み出す魔剣。祖先から継いだ剣。

シャリーのツインハンマーは次々に狼を打ち据える。足元に来た狼は蹴り飛ばされた。

風の精霊はかまいたちを起こして狼を寸断し、土の精霊は岩石を飛ばして、狼を吹き飛ばす。

メイフェア本人も炎を呼び出し、狼を焼いた。

アリエスの呪文は言う間でもなく、目の前に来た一群を、大きな河の様に流れる雷で動けなくした。


一瞬で。数10体。恐らく、40体ほど。


「狼だけ?楽勝じゃーん。」

「む?」

狼たちは、確かに切り刻まれたし、骨を砕かれたし、雷に焦げ落ちた。

はずだ。


骨が折れたモノは、ゴキ、ゴキと音を立てて再生した。

燃えたものは、少しづつ形を取り戻した…。


人狼…ウエアウルフ!?


全員、その後、半獣半人の姿を取り始めた。


「まずいな…場所変えようか?」

「奥の教会へ行こうかね。扉は塞げるでしょ?」


人狼たちのシェイプチェンジの間に、4人は駆け出した。

ゴーレムはしんがりに就いた。


民家を幾つも通り過ぎ、奥の教会へ向かう。

途中、色々な大きさの狼が出てきたが、吹き飛ばした。本来なら瞬殺だが、死なない。


教会の上、鐘が鳴った。

誰か、鐘のところに居る。

笑い声だけ聞こえて来た。若い男だと思う。

「あはは、あはあははは、4人追加、4人、4人!ははは」

…きっと、狂ってる。それだけは感じ取れた。


4人は教会へ駆けこむ。即座に、アリエスが“エバーロック”の呪文をかけた。

入り口前には、2体のゴーレム。もうじき、消えるだろう。タイムアップだ。


振り返る。多くの椅子が並び、神のシンボルが正面に掲げられている。両側。窓…窓!

追加で呪文を唱えるのが少し早かった。

「“マス・エバーロック!”」


全ての窓は鋼鉄の強度になり、割れない。狼の鉤づめが窓を激しく叩く。

入口の扉も同様、唸り声と共に激しく叩く音。


…並の人間なら、発狂しかねない恐怖の事態。


「さて、どう退治する?」とシャリー。

「うむ。」ユ=メは何も言わず扉の前に立った。

「銀の武器?精霊魔法じゃ無いなぁ…。」

「“サモン・ウエポン・シルバ”」

アリエスは数本の銀の武器を錬成した。

「まぁ。取り合えず持ってよ。これで戦うのは地道だけど。」

「まぁ、無いよりいい。」


「僕、ちょっと上の、鐘んとこのへんな人のとこ行ってくる。待っててね~戦わないでね~」


彼らは、負けることを欠片も考えていない。


アリエスは階段を上る。

敵感知発動…防護円発動…指輪の効果を活性化する。不意打ちは無い。


扉を開けると、鐘の下に男がいる。

羊皮紙に、一生懸命、記録を取っていた。


「へ-、何やってんの?」

アリエスは悪びれず覗き込んだ。

男は無視し、いや、気付かず。

「初日1人、2日目6人、3日目23人、4日目、鉱山に閉じこもって0人、0、0、0、8日目出て来たヤーツ、43人、全滅、全滅、全滅、0人、0人、ゼロ、冒険者4人、4人、仲間、仲間、あはは、仲間、0、0、0、0、ゼロ、今日来た、4人、4人………あ、あ、あ、飯、飯くおお、飯…」

男のバックパックと思わしきものは、既にカラだった。

男も、既にやせ細り、死んでいないのが不思議なくらいだった。

男は、ずっと鞄をあさっている。ずっと、あさり続けている。


アリエスは、それ以上の情報は諦めて降りて来た。


「…みんな、鉱山の中に逃げ込んだ村人が居るらしい。」

「生存者がいるなら助けなきゃ…」

「いや、上の男のいう事が正しければ、もう10日ぐらい飲まず食わずという事になる…」


「どこかに穴が通じているかも?」


「いや。なら、出て来ないはず。出て来た40人ぐらいが全滅したとか…」

………3人は押し黙った。


「狼たち、村人らしい」

「…やっぱそうか…」

「シャリーの呪文なら、呪いとけるよね?」


「解けるよ?解いていいの?狼になっちまった連中、ならなかった、なれなかった人たちを………るよね…。それを見せて、良いのかな?教えて良いのかな?」


「久しぶりの冒険なのに、後味悪いなぁ…ごめんよ。僕が誘ったばかりにさ。」

「いや、アリエスいっつも一人で突っ込むから、嬉しかったよ?そのほうがわたし嬉しいけど…。たまたま、だよ。あの頃も、辛い冒険は何度もあった。目を塞ぎたくなることも。」

「そうだよ。アタシ達が迷っちゃだめだよね。」

「うむ。」


「僕が決める。良いね。」


アリエスは強く言った。


――――――――――


 鐘の横。鞄を探っていた男は、もう気を失っていた。もうじき、死ぬだろう。

―――不思議なことに、男の書いていた羊皮紙は全て白紙になっていた。

そうかい。”送った”のかい。キミの役目は終わったんだね。


石化。男を石にした。街へ運ぼう。運が良ければ…悪ければ、いつか正気に戻るだろう。そして、再び狂うだろう。でもね、それを決めるのは、キミなんだ。怖ろしい誰かの指示に狂いながら従った、キミの意思なんだ。


「“マス・ライトニング・ストーム”!全員、一度、死ね!!」


勿論、仲間たちはメタライズしている。


教会を中心に膨れ上がる雷。狼たちは皆、死んだ。

復活し始める前に、シャリーは次々に呪文をかけた。神の恩恵による、解呪の呪文。破壊者たるアリエスには使えない、光の呪文。


ある日。


ひとりの女が、邪悪な月の女神像を置いて行った。呪われた像を。

次々に人狼になる村人。だが、鉱山跡に半数近い人間は逃げ伸びた。

逃げ伸びた先は、飢えの地獄だった。


アリエスには、判っている。


そうなんだろう?お前の狙いは、人狼に人を食わせる事じゃない。

人と人で地獄を見せることだったんだろう!?


お前がばら撒く悪意、判ってきた。

…絶対に、許しはしない!絶対に!!


だが、この村の人々は、お前が望んだより美しかった。

殺し合うより、生きる望みにかけ、脱出を試みたんだ。

――そして死んだ。食われて死んだ。


だから、人狼にされた人々よ、あなたたちを人に戻そう。

泣け。喚け。悔しさに土を嚙むがいい。


でも、貴方の大切な人は、人として殺し合うより、狼の群れに挑むことを選んだ。


それを知った上で。生きるも、死ぬも、決めてくれ。

僕はそれを決められる存在じゃないから。


でも、願わくば―――。


生きてほしい。



アリエスは女神像を粉々に破壊した。


――――――――――


「じゃあね、ユ=メとシャリーは教会に送ろうか。2人でイチャつくなりご自由にどうぞ!」


アリエスは、テレポートで2人を送った。


メイフェアと、荒野で、2人。


メイフェアは、アリエスの胸に額を押しつけた。

「…いつも、そうやって、辛いことを抱え込む」

「そんなことないよ~?」

「僕が決めるって。バカじゃない。みんなで決めるで、いいじゃない…」


「だって。その方が…」


「キミが泣くよりいいから」



「…妃になる条件なんだけどさ。何でも、2人で決めたい。それが条件。」

「えーやったぁ!」

「…子どもの名前も、困ったときも、悲しいことも。一緒に決めるの。」

「うん、約束する。」

「軽いなあ…ほんとかなぁ…やっぱやめようかなぁ…」

「お願い捨てないでメイフェア~!」




「…子供は、女の子に決まってるんだけど…聞いてくれる?」



続く――。


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