第12話 「僕が決める」その②
ハイファンタジーです。
女の子とサボりが大好きな、魔法使いの王子。自分の言動のせいで今日もやること増えて行く。
気心のしれた冒険仲間と向かった先には、地獄。 第12話、その②です。(2/3)
―――パナティモア公爵領。
ダッカーヴァと同じくメルカーナ皇国を構成する一国。5つの巨大な公爵領の連合国家。皇帝は各国の公爵の中から投票できまる。敢えて王を名乗らず、皇帝以外は公爵の地位となる。これがメルカーナ。
アリエスの来たかったパナティモア公爵領はダッカーヴァの北から北西を支配する。
北。
「―――私は忙しい。次は北へ行く。」
追って来いともとれる、怖ろしい女の言葉。
北で何が起きているのか。起きていないのか。目に見えるかどうかは別として、肌で感じ取っておきたかった。
さて、再び<エル>、と<スアレス>が古い酒場へ入る。俗にいう、冒険者の宿。
時間が8の刻と遅いため、入ってすぐに、マスターに問われる。
「泊りか?酒か?」
「あ、まぁ、酒で。(ホントは泊まりたい)」
エルは、ニヤッと笑っていた。
「本当は泊まれたら良かったですわね~ふふ」
酒を頼み、多少はのんびりしながら、<スアレス>は立ち上がって手配書やら依頼書やらを見る…。いつの間にか<エル>も隣へ。
「ふうん、冒険の依頼とはこのように来るのですね。…500G、1000G、800G…安…」
スアレスはエルの口をがっちり塞いだ。
依頼書は定番の討伐やらのダンジョンやら、輸送、護衛。用心棒。東西に領地の広い、そして寒いこのパナティモアでは特に護衛が多かった。
…ということは、襲う者も多い。
×の付いていない依頼書を選びながら、考え事をしている時。
新たに酒場に入って来た男が大声で客たちに呼びかけた。
「誰か、これを受ける冒険者は居ないかー!金はなんと5000Gだ。5000Gだぞ!」
酒場の冒険者たちが色めき立つ。
「依頼は何だ?」
「海近いダカル山脈麓、ムールーの村。女神像を回収して来いとの事だ。その村は、先日来、正体不明の武装集団に占拠されている。」
マスターが大声で口をはさむ。
「オイ待て。ウチで斡旋する以上はオレを通せ!」
あー、すまん、男はそう言ってマスターに金を渡す…。
4人の男たちが、早速名乗りを上げた。屈強なドワーフだ2名。魔術師、僧侶。完璧と言える布陣。腕も良さそうではある。
「前金は1000だ。スゲエだろ。逃げるなよ?“アイアンブルズ”」
当り前よ。そう言って、男たちは即座に出かけた。
スアレスは、立ち上がり、酒を空にする。
「帰ろう、エル。」
「…あの方たち、追わないのですか?アリエス様、興味津々…」
「スアレスでしょー。」
この日は、これで彼女を城に送り、自分は離宮へ帰った。
――――――――――
―――1週間後。
“アイアンブルズ”は帰って来なかった。
ここは、パナティモアの酒場。アリエスはあの日か一人で通い詰めている。
あの男が、また大声で酒場に入って来た。
「誰か、コレを受けないか!?先日雇った奴らが帰って来ねえ!そいつらを助けるも依頼に追加だ。すれ違いで帰ってきた場合は無しだが!」
酒場は小さく静かにざわついた。
全滅したのか?アイアンブルズが?あの屈強な奴らが?
送れているだけじゃねえのか?
案外、感謝した村の女たちが返してくれねえのかも知れないぜ?
軽口を言いながらも、本心ではある可能性に疑いが行く。そもそも、5000等という破格の金だ。その金額なら騎士団でも動かせるかもしれない。現在価値で2500万円ほど。
「僕が行こう。仲間を連れて。」
アリエスが言う。
「小僧、やめておけ。多分、禄でもねえ依頼だ」
マスターが言った。キッパリこう言えるのなら、悪くない人物なのかも知れない。
「まてよオイ、俺が嵌めてるってのか!?」
「“スピークトゥルース“真実を言え。お前、先の奴らが全滅したことを知っているな?」
「て、てめえ!街中で魔法を……あぁ、知っている…っく!!」
「…悪いね。僕はツァルトの魔術師。<紫のアリエス>。文句は魔術の塔まで。」
どよめきが走る。
「お前を雇ったのは誰だ?」
「し、知らねえ…女だ。死んじまうくらい妖しい、女だ!!」
男が震え出した。口から泡を吹き始めた。
周りの冒険者たちが駆け寄るのを、アリエスは制する。
「悪いけど、もう遅い。呪いだ。」
男は、泡を吹きながら醜いトカゲになって、燃え出して、死んだ。
トカゲ…竜。
死にたくなるほど妖しい、女。
「この一件、ツァルトのアリエスが引き受ける。」
アリエスは高らかに宣言した。




