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<魔術の塔>のアリエス   作者: なぎさん
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第11話 「白から赤へ!」

ハイファンタジーです。

女の子とサボりが大好きな、魔法使いの王子。自分の言動のせいで今日もやること増えて行く。


王の命令で、ついに万年<白>の称号返上、一気に<赤>、ハイクラスの称号に挑むアリエス。

本来アークマスターなのに試練を受けるの!?と思いながら試験開始。

 「僕、昇格試練受けるよ!」


「………わたしの為?…なわけないよね?」

「いや!キミのため!」

「キミのため“でも”あります?」

幼馴染をそうそう胡麻化せはしない。


いやまぁ、嘘はつかない主義。だから、ここは逃げの一手。

「”テレポート!”」


…メイフェア、決めかねる。


――――――――――

 魔術の塔、9階。ドミナントの間。


ピザを3等分したかの様に、3つの部屋がある。

常駐する、ハイメル。たまに来る皇太子レオ。開かずの間になっている、もう一人の、<銀>。


「ホウホウ、王様に命じられたとはいえ、試練を受けますか。アークマスターが受ける試練となると、腕によりをかけて飛びきり危険な試練を。そう、我ら3人を相手に魔術勝負でも…」

「無理でしょー!負けるでしょー!!」


実際に恐らく勝てない。アリエスの実力は、ボクサーで言えば世界一強いパンチを打てるヘビー級ボクサー。しかし、魔法の強さは威力だけではない。早く、正確に、強く、多彩なパンチを操る同じ階級のボクサーに、勝目は薄い。仮にこの<銀のハイメル>と一騎打ちで勝てるかどうか。


アークマスターの座は、後継者と指名され、受け継いだものでしかない。


「真面目に言いましょうかね…。マスター、貴方には今回、<赤>まで飛び級して頂きましょう。アリーナを開催します。我らが召喚するもの達を、観客の前で。」

「へ!?観客!?」

「そうです。観客は、灰、白、黄、緑、青、紫、赤の魔術師達。そうでなければ、誰が飛び級など認めましょうか?王子は特別かと影で云われるだけ。」

「それでもいいじゃーん!」

「なりませんな!まして婚姻して姫を貰おうとする者が!」

え――――。


 こうして。またまた、アリエスの目論見は外れ、近年珍しく、魔術の塔に隣接する巨大なアリーナにて、公開昇格試練が行われることになった。



――――――――――


 昇格試練。当日。滅多に無いアリーナでの公開試練、まして受けるのは端くれとは言え、王子。街ではちょっとしたイベントの様に扱われた。希望する者は、<魔術の塔>構成員以外でも鑑賞可能だ。


迎賓席には、見慣れない姫が2人と、アリエスの母、王妃ネジーナ。


その美しい姫たちに、人々は視線を注ぐ。


どうやら、アリエス王子の、妃となる娘達らしい…。

王妃ネジーナ様も、元は<黒>の称号を持つ魔術師だったな…。

2人の姫か。少女の方は随分と可憐な…どうみても、ドレスに着られているが…。

もう一人の美しい娘…いや、まて、どこかで見たような…最近入門した娘では?


取り合えず。アリーナ中央に陣取るアリエスよりは、皆の注目を集めていた。


観客席のはるか後方に立って、アリエスをこっそり眺めているメイフェアもまた、迎賓席の姫たちを見る。


「ティアナと…エディね。そう…2人は“受けた”んだ。わたしは、どうしたいんだろ。」


もう一人、しっかり席に着き、片肘をついて眺める者がいる。美しいハーフエルフの青年、キャステリオ。このイベントにも興味深々。



「<白>の魔術師アリエスの昇格試練を行う。まず、この場の魔術師の中で、我と思わん者は申し出でよ。“試練の獣”を召喚することを許す。」


2名の、<赤>が手を挙げた。

「赤のフェルキが試練を呼ばせていただく。我々と同じ称号を得るならば、このぐらいは倒せるだろう。」

「赤のケルニフィーも試練の獣を呼ばせていただく。共に組む機会も増えようからな。」


「出でよ、赤き、猛きもの」

「出でよ、黒き、早きもの」


「では、始めい!」 <銀>のハイメルの声がアリーナに響き渡る。


魔方陣から、レッドサラマンダー。もう一つの魔方陣から、ポイゾンパンサー。


僅かな時間のみ異世界から呼び出す召喚の呪文。


共に、アリエスを見て雄たけびを上げた。


アリーナは騒然となる。<白>相手にこれか!?間違いなく死ぬぞ!?


「“ライトニング・バリア”」アリエスは落ち着いて呪文を唱えた。


低い知能しか持たぬ魔法的な存在、レッドサラマンダーは怖れず雷に近寄って来た。

黒いパンサーの方は、雷に躊躇した。だが、それを許すアリエスではなく。


「“テレキネシス!”」


毒のパンサーを目に見えない力で猛烈なスピードで自分の方へ引き摺ってきた。

一瞬で、2体の召喚獣は焼け焦げ、動かなくなる。


人々は驚愕した。これが<白>の魔術師の魔法か!?あり得ない。

今まで何故昇格しなかったのか!?


祈る様に手を組むティアナ。胸を張るエディ。当たり前と目を伏せるメイフェア。


メイフェアが目を閉じて浮かべるのは、15歳ごろにアリエス達と始めた冒険の日々。知っている。この程度でアリエスを倒せるはずがない。前みたく、私が隣に居たらどうなんだろ?それは、嬉しいの?アリエス。


「今の戦いで、<緑>の称号を認めるものとする。…試練を続ける!」


「我と思わん者は―――」

「俺でも良いのだろうか。自然魔法の使い手、キャステリオ。是非試して見たい。」


「やぁ!キャステリオ。手加減頼むー!」


笑いが起こる。


「残念、俺は状況を整えるだけ。見せてくれ、キミの力。“ブラッサム!”」


アリーナの一面に、花が咲く。

「この花を散らさず、戦って見せてくれ!アリエス王子!」


「では、召喚は我が。<黒>の魔術師、ムルーク。“出でよ!空を飛び、雷呼ぶもの!”」


空に浮かびあがる魔方陣。豹の形をした雷が現れる。

雷の精霊。上位の精霊召喚。精霊魔法。


「めんどくさー!!」

アリエスは空に舞い上がる。下で戦えば花が散ってしまう。面倒な条件を!


ハーフエルフのキャステリオは、その姿を見ながら呟く。

「そうだ、アリエス王子。その花は君の部下。恋人。親。友。散らさず戦えるのかな?君は?」


雷の精霊は驚異的な速度でアリエスに向かってきた。そして、至近距離で全身を発光させる。雷だ。アリエスが雷を得意としているからと言って、自分には効かないという訳ではない。


即座に“メタライズ”、硬質化して一撃目をやり過ごす。


背面まで駆け抜けた雷獣。再び発光してアリエスを狙う―――。


「“マジックブラスト”!」


さて、雷は燃えるだろうか。凍るだろうか。切れるだろうか。だから、アリエスは純魔法エネルギーで破壊する。それは、通常の5,6倍はあろうかと言う大きさのエネルギーの塊。


―――雷獣を吹き飛ばした魔法弾は、そのまま観客席の方へ。

魔法の透明な障壁にぶち当たり、轟音を立てた。階級の低い魔術師達は、悲鳴を上げて逃げた。


キャステリオは少々不満げな顔をした。

「花は守ったけど…力づくは良くないな、もっと知恵を見せておくれよ、王子。」


「――只今の試練を持って、<青>の称号を認める―――。」


「さて、では私が召喚しましょう。王子、美しい花の試練はそのまま課題とします。良いですかな?」

「えー、やだ。」

「…宜しいですな。では。」

「強制じゃないですかー!」


ティアナ、呟く。「アリエス様、ふぁいと…!」

エディ、呟く。「素直にやってくれ…恥ずかしい」

メイフェア。「この場面でもふざけるのね…。」


銀のハイメルは上空に大きな魔方陣を作った。「出でよ、“鉄の巨人” “骨の竜!“」


本物の竜の骨を触媒にしないと呼び出せない、ボーンドラゴンの一時錬成。

そして、アリエスも時々使う、鉄のゴーレムの一時錬成。


同時に、2体。


当然のことだが、ゴーレムは飛べない。

当然のことだが、竜は飛ぶ。


つまり、落下するゴーレム。下には、咲き誇る、花。

即座に襲い掛かるボーンドラゴン。ハイメルの錬成だ。破壊的な存在。


「究極呪文!“タイム・フリーズ!!”」


時よ、止まれ。

この呪文を使える者なら感じ取るだろう。場合によってはその時間の中でも動くだろう。

現在のアリエスが使える最強の呪文。


だが、時間はすぐに流れ出そうとする。

まさに、その僅かな“時間”に考える“猶予”などない。

“その間” に使える呪文は、呪文レベルによるが僅かに3つ程。


「“ショートレンジ・テレポート!”」ゴーレムに飛び乗る。そして接触。

「“分解!ディスアセンブル!”」


「“メルト・マスレンジ!”」最大範囲。アリーナ上空、巨大な骨の竜を溶かす酸の嵐。


人々が一瞬の沈黙の後で目にしたのは、どろどろに溶けた骨の竜が、上空で崩れ落ち、雨の様に降るさま。


「やっべー!!」アリエスは叫んだ。


銀のハイメルは、笑った。「ホホホ、甘い、甘い。まだ…ですなぁ。」


「“フィールド!”」

ギリギリ、溶け落ちる酸を魔法の障壁で受け止める。


「せーーーっふぅ!」

アリエスは派手なジェスチャーをとった。


「―――今の試練を持って、<紫>の称号を認める。この度の試練、これまでとする。」

アリーナに響く、ハイメルの声。


「えー。」

「えーではありませんな。倒したまでは良し。しかし、最期に助力を得てしまったので、<赤>への昇給は認めませんな。」

「助力?」


アリエスは、地面を見た。平らな魔法障壁。その端からは、酸の雨がしたたり落ちていた。


花々は、まるで自分の意志があるかのように、魔法障壁の真下へ移動、可愛らしく避難している…。


「あー…」


アリーナ観客席に居た美少年が、ヤレヤレといったジェスチャーをアリエスに見せる。

キャステリオが花を移動させていた。


「<白>の魔術師アリエス・メイフィールドを、その大いなる魔力を持って<紫>への昇級を認めるものとする。同意する者は<魔術の塔>の礼を持って答えよ!」


魔術師達が立ち上がり、ツァルトギルドの証、魔法の触媒であるミスリルの指輪を口にかざす。


見える限りでは、誰もが認める所となった。アリエスの驚異的な魔力を目の当たりにし、反対する者も居ない。そして、このやり方であれば、アリエスが王子だからであるという邪推は生まれようも無かった。


いや、むしろ。


あの、“白の王子”ですら、これほど強いのか。流石は王家。真祖の血族。魔王の血筋。

と、アリエスではない株が上がったのだが、それはアリエスの知らぬところ。


「尚、一気に4つの階級を上げた者は、<魔術の塔>初である。皆も、励み魔術を研鑽せよ」


ハイメルの一言で、昇級試練は終わった。



 ―――迎賓室。


「まぁまぁ…最後はさておき、流石は王子…」王妃は立ち上がって言う。

「アリエス様、<赤>になれなくてショックなのでは?」とティアナ。

「いや、むしろ良い薬だ。帰ってきたら私が慰めてやろう。」とエディ。

「それは…私でもできます…」


「2人とも、城まで来なさい。もう少し、お話いたしましょう?」


ネジーナ王妃は、上機嫌で2人の婚約者を城へ呼びつける…が。

エディとティアナは、ぎこちない微笑みを浮かべた…。


小声で話す…。

「エディさま、実を言いますと私、ドレスが苦しいんで逃げたいのです…。」

「それは奇遇だな。私もだ。ティアナは侍女だったんだから似たようなドレスは着ていただろう?私は盗賊だぞ?」

「侍女の服はこのようにウエストをきつくはしないのです…。ヒールも痛いのです…。」


「どうぞ、いらっしゃい。私の娘たち。ホホホ…」

2人は諦めの表情で城に向かった…。




 ―――熱気冷めやらぬアリーナ。


「あのバカさ加減がなければ、もっと格好いいのに…。」

メイフェアは、複雑な表情でアリーナを後にする。

もっと上の力でしょ、とも思う。抜けてるからだバカ、とも思う。


もう一人。


自然魔法の使い手、ハーフエルフの美少年キャステリオは、まだアリエスを眺めていた。

「…君は面白い。隙だらけの様で、強くしなやかだ。もう少し、君とこの国を知りたいものだ、アリエス王子。我らがエルフの森の為に…。」




当のアリエス。


「覚悟を決めて頑張ったのに。また試練受けるの!?」


「ああー!面倒だぁああ!!」



続く――。


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