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<魔術の塔>のアリエス   作者: なぎさん
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第81話 「創世の神話」後編

 巨神の女王と、アリエスのニセ女王、そしてディヴァが魔界のゲートに沈む。


そして、人々の、一瞬の沈黙。


こ、ここに潜れば、魔界なのか!?


しょ、正気じゃない!アークマスター!真に狂気の沙汰!


し、死に行くに等しい!いや、人を捨てに行くに、等しい!!



「ふん、意気地なしの男どもはそこで待っていろ。」 アテンドル皇女アルティオラ。


「そうそう。バーカバーカ。意気地なし。」 世界一の美女と言われた女が言う。


「こ、こども…」(これはその侍女)


「あー、馬鹿の尻ぬぐいは妻の役目。」と、酒場の薔薇。


「流石に我らはムリか。キャステラ。行くなよ?」魔女イアが言う。


良く見れば、彼女のお腹は少し大きい。だが実は、イアほど目立たないが、今呼び止められたハーフエルフの美女も同様だ。


ずっと思い敵わないと思っていた命を…宿している。赤子を瘴気にさらすのは危険だ。魔界へは、さすがに入れない。


「うん…頼むよ!アルティオラ!ガーレル!メイフェア!」



「…ついてまいれ。これより、マスターの援護に向かう!魔術の塔!突入せよ!!」


魔術の塔、実質の最高指導者、銀のハイメル。


「馬鹿な弟を持つと、本当に大変だ。だが、弟を見捨てる兄などこの世に居ない!」


ファルトラント女王の夫。アリエスの兄、銀のレオ。


「いや全く。ここ数年で随分と俺も忙しくなったものだ!!」


西の全権を任される、銀のユタチェルティ。



人々が、妃達が。魔道士が、緑猫が、魔界へ飛び込んでいく。



そして、それを。使い魔のビジョンを通じて見ることも無く。


同時刻、ツァルトの城には、子供達が集められていた。



子供達は、集められた理由を知らない。久しぶりに集まって楽しい時間を過ごす。


ティアナは、笑顔でお菓子を作り。


ノエルは、絵本を読み聞かせて。


エディは、オモチャを操って笑わせ。


シャルロナは、霧になったりコーモリになったりしてふざけて。



みんなで食事をする。


…かあさまたち、お祈りするの?何をお祈りするの?


みんなが無事に帰りますように?うん。わかった。


―――届け。祈り。


――――――――――


 アリエスは、ついに元の姿へ戻った。それこそ、タイムアップ。アーティファクトの効果切れだ。


「ヴァンパイアケープよ。僕にこれを与えてくれた邪神よ。死神よ。感謝する!」



さて。あはは。さすが魔界。魔力が膨れ上がる。サイコーだ。あはははははは!!


「―――来い!女王!この世界で終わらせやる!この、魔力の根源たる魔界で!!」



高速で飛行、移動するアリエスとディヴァ。


アリエスが攻撃、ディヴァは転輪の維持だ。互いを守る。信頼する。


「アリエス。我は、本当は今も怖くて泣きそうだ。逃げ出したい!」


「知ってるよ。ありがとう、ディヴァ。愛している。」



「“ファイアボール”!」


女王の270mの体、その半分にも匹敵する爆発。


「でも、お前を信じる!我の全て、お前に預ける!」



女王はそれでも尚、再生していく。



<貴様!貴様!一体何をしでかした!何と言うモノを持ち込んで来た!>


急速に近づいて来る、禍々しくも強烈な魔力。


<やぁ!待っていたよ悪魔!このままじゃ、魔界が先に滅んじゃうねえ!一緒に戦おうぜええええ!>


<ふ、ふざけるなぁぁ!飛行魔よ!魔界の者どもよ!両方、全て食い殺せ!>


<あははは!やって来い!魔族たち!コイツの炎に気を付けろ!消滅するよ!?>


<ききき様、あの時から、このことを企んでいたのか!?そうか、あの時、連れて行けずとも2段構えで…!>


<いえーす!>


<どちらが悪魔だ!>



「アリエス―!」


仲間達が、魔界に飛び込んでくる。


<人間だと!?人間どもまでが此処へ!?ゆ、許せぬ!皆殺しにせよ!喰え!食い殺せえー!>



――この場にある 全ての 魔族へ 命ず――


その声は、まさに地獄の底から響くようで


それが何か、悟ってはいけない 考えてもいけない様にすら、思えた。



――ただ、この時のみを持って 命ず

  

  ヒトの子と 共に 時の女王を 討ち果たせ この魔界を 女王の血で満たせ


  これは、古の 復讐である。――



あの、アリエスさえ実力を認めた魔族は、飛びすがりながら、一瞬、アリエスの横を通った。


<我が名は、オルファギアファ。アリエス・メイフィールド。次に逢いし時は、また殺し合おう。>


アリエスは、ニヤッと笑った。



「確かに、我らも少々、魔力があがっているな。」


「いや、わたし全然っ上がってない!」


「アンタは精霊魔法だからあたりまえでしょーが!」


妃達の魔法が、女王を焼く。



「皆、離れよ!」


“メテオ”! “メルト・ファイアボール” “デストロイファイア”!


ハイメル。レオ。ユタチェルティ。


3人の最高峰。<銀>の魔法が、女王を打ち据える。常軌を逸した威力。見当違いの破壊力。


爆風が消えると、再び接近した魔族たちの魔法が、邪力が、呪術が、爪と牙が、更に女王の体を削り取って行く。削れて行く。


遂に、女王の再生速度を超えたのだ。超えた!


ヒトと、魔の共闘は、時の女王を確かに追い詰めている。



 しかし、この時すでに。


口から血を吐きだした術師がいる。


狂気と恐怖に、精神に異常をきたす者がいる。


徐々に、瘴気が、魔術師達を覆っていく。



もう時間が無い。


このまま行けば、勝てるのに!



アリエスは、周囲を眺めた。


これだけ追い詰めているのに、仕留めきれない。


次第に、犠牲も増えて行く。



 アリエスは、覚悟を決めて、静かに笑った。


「みんなぁ、悪いけど。魔力、貰っちゃうかも。ガード宜しくねー!」


え?っと誰もが思う。その意味するところを探る。


ただ一人、誰よりその意味を知るミルキシュは。


たった今、戦いの場に追いついたサキュバスのミルキシュは、声の限り叫んだ。



「やめてー!本当に、本当に人じゃなくなる!!」



「“ドレイン・オール”!!」



アリエスに、周囲の魔力が集中していく。


借りるではない。集めるでもない。奪い取っている。


人間からも!魔族からも!魔界の大地からも!魔界の瘴気からも!


禍々しい、紅い紅い巨大な光を、アリエスは手にしていた。



その体から、毒々しい煙が立ち上る。


瞳は、魔王の様に、金色に輝き。魔力のオーラは、黒々とした魔神の羽の如く、ゆらめく。



古代魔法王国、王家の血筋。とうに忘れられた、魔族の血筋。


先祖返りの様に“ドレイン”の力に目覚めた男が、膨れ上がったその力で、魔素を一身に集める。



「みんな!離れろー!! “メルト・ディスアセンブル・トルネード” !!」



巨大な女王を。


崩れかけては再生する、女王を。


炎の竜巻が包む。竜巻はタダの風ではない。


その硬き硬き、再生する外殻と背骨を、粉微塵に分解し、溶かす。


暴虐な”インフェルノ”と、無慈悲な”分解”。


2つの効果を1つの呪文に込める―――。


―――始祖魔法。



女王は、泣き声とも、怒りの叫びとも言える不快な、巨大な音を立てて。


――静かに、粉々の火花になって溶け落ち、魔界の大地へ積もる。



真っ赤な雪。灼熱の雪。


寂しそうに、降り積もる。




アリエスは、それが魔界の大地を焦がしながら消えていくのを見届けると、全魔力を失って落ちてゆく。



ああ、ゴメンよ、女王。


僕らは、まだまだ、存在して居たいんだ。



ゴメン。そんな、悲しい音を立てないでくれ。


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