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<魔術の塔>のアリエス   作者: なぎさん
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第80話 「創世の神話」前編

ーーーお前に聞かせよう。創世の神話



そうだ。嘘ではない。これを知れば、お前は、何かが、何処かが、人ではなくなるだろう。


それは、真実を知るものが。神と呼ばれる古の存在の中ですら、古き者しか知らない故に。



今後、お前の頭を誰も覗き見ない様、お前の中には我が力が住み着く。


さて、それは人間であろうか。


まぁ 神族とすら情を交わす者に、今更であろうかな。



お前の問いに、答えようか。


我ら神は、人を救う存在ではない。



お前は優しき子だが、道端の蟻、その一匹一匹にまで情けをかけるだろうか。


いや、見下しているのではない。目も手も届かぬと言っている。



この世界を教えてやろう。


だが、お前に全てを理解することは出来ない。


だから、簡単な言葉で、伝えてやろう。




この世界は、いや、世界など、元々、無いのだ。


此の世に初めから在ったのは、無だけだ。



だがある時、悠遠な<無>の中に1つ、<存在>が生まれた。


なぜ生まれたのか、誰も知らぬ。答えられぬ。



<存在>を消すべくして、<無>の中に<時>というものが、生まれた。


<存在>は、消えたくなかったのだろうかな。体をかがめて、縮めて、己の中に<宇宙>を創り出した。


次に、それを司るものを生み出した。


所謂、<神>。そう。我らだ。




此処から先は、お前達を農園のリンゴと置き換えようか。


<存在>が消えぬためには、<無>に対抗する力を生み出し続ける必要があった。


その力を、命と呼ぼう。創造と呼ぼう。営みと呼ぼう。愛と呼ぼう。


そうだ…リンゴの種を撒き育てるという事だ…。


避けようのない滅びである<時>の中で、次々と新しきものを生み出すことだ。



…おっと。リンゴに例えるのだったな…。


宇宙を司る神々の中で、死神と云う存在には特別な役割があった。


それは、リンゴを収穫することだ。


実を収穫し種を残す。そしてまた、種は撒かれる。



…僕たちはリンゴじゃない、か。


お前達が育てているリンゴは、どうあろうと、必死に生きている。お前達と何が違う?



いや、よそう。


その循環は、太古の昔はまだ、健全に生きていたのだ。


理解したか?お前達人間の中でさえ、死神だけは“神”と呼ばれるのは、何故か。



かつて。


全ての邪神や魔神は、死神であった。


今は、<時>がそれすら、失わせた。創世の目的を知る邪神すら少ない。<時>がそうした。


…もはや、“時”は戻らぬ。説いたとて変わらぬ。



…理解できたか?太古の巨神との戦いは、<時の使徒>との戦い。


かの巨神たちは、我ら神の力に抵抗する力を供えている。神聖魔法に耐する体を持っている。我らだけの力では、戦えぬ。



太古、唯一、その力を存分に振るえたのは、死神の軍。


数多の<時の巨神>を葬り、眠らせ、消し去ったのは、死神の率いる魔族。


…信じられない?事実だ。



そして、多くの神と多くの死神が。あの時に滅んだ。


太古に我らが。神・魔がただ一度、共闘して退けた、<時の使徒>



奴らは、時を操る。同じく時を操らねば、神であろうと、無事ではすまぬ。まして眷属では。


我らが、時の女王に対抗するため作り上げた<時の転輪>。それは今、残念ながら、あの者の額にある。



…さて。判ったか。


お前の問いの、答えになったであろうか。



怒っているな。そうであろうな。



だが、種を撒き育当てることは、光で在り是であり、慈しみである。


故に、神々は“時”に人を守り。導き。信仰を得る。


お前達が想像し、あらんと願う神の姿もまた、偽りではない。



だが、魔は、いつしか「刈り取ることだけ」を目的にしてしまった。


お前のよく知る魔が、世界を覆っている。真の姿を持つ魔は、僅か。


…お前が愛した魔族が…邪悪で無かったように。



アリエス・メイフィールド。


<真祖と同じく>、我の眷属として、仕えよ。



万能である我ら神々であろうと。時を見通し、操る力は、<時>の抵抗により、長くない。


吸血姫を人に戻す? 簡単に言うが、だがそれは、300年の“時”を遡ることに他ならない。


故に、王になるより、大金持ちになるより。死人を甦らすより、力を必要とする。



それを願うならば、己を捧げよ。



「そんな化け物に、たかが、人間のこの僕に何をせよと言うのだい?」


僧侶では役に立たぬ。何故なら、彼らの魔術は神聖魔法。即ち、神の力を借りているに過ぎん。


精霊魔法。自然魔法。同様だ。だが、其方らの言う純魔法は違う。


気付いているか。魔法は、元々、魔界の力。魔族の力。悪魔の力。例え形を成す“結果”が同じでも、神聖魔法と純魔法は、根本が違う。



「だから、人形たちを傷つけることは出来た。という訳か。」



<時の転輪>を奪え。それが出来れば、戦いになるだろう。


出来なければ?


滅ぶのみだ。


我らもいずれ朽ち果て。魔族も、砂に還るだろう。


――――――――――


 時が、流れ込んでくる


 時の意思を感じる


 滅せよ。世界を真の姿へ導くのだ。


 それは、真なる、不変の安寧。無だ。無に還せ。


 

ドウしテ?



沢山ノ命が、向コウを飛んでイる。


そぐそばニハ、私と同ジ者も、居ル。



あの小さなイノチカラ、先ニ消さなけれバ…。


「アリエス!正気に戻って!」


ショウキ って ナニ



ワタシと同じモノガ、3つアル。


3つは、イマ、1つになって大きくなるラシイ。


ワタシモ、合流しよう。ヒトツニナロウ。ソウシヨウ。


「ふざけるな!アリエス!どうしてそっちに行くんだ!」


「吸われちまうぞ!やめろ!行くな!行くな!」


「り、離縁してやるから!アリエスなんか忘れちゃうから!もう、キスもしてやんない!」


エー。ソレハヤダナア。


「正気に戻れ!お前は、アリエスだろう!女王人形じゃない!私の夫だろう!?」


ワタシハ …ボクハ …僕は。




 本当の女王は、南北から来た巨大な人形を、たった今飲み込んだ。


飲み込んで、あの小さな3体を飲んだ時と同じように。


元の体を取り戻していく。


遂に、その足先まで、女王は体を再生した。



偽物は、ゆっくりと本物に近づいていく。


だがその時、後ろへ。人々へ、Vサインを送った。


この間抜けな所作は、歴史上最も大きなVサインとして、語り継がれるだろう。


「あ…!」


「アリエス!」


妃達は直感した。確信した。あれは、あれこそ、アリエス・メイフィールド。


「時の流レ、中和スる!!」


機械的な声に聞こえるが、所々聞き苦しいが、確かにニセ女王はそう言った。


本物。額に巨大なサークレットを持つ女王から、黒い炎が飛んで来る。


人間が触れれば、すぐに風化し粉となる、恐怖の黒い炎。



ニセ女王は、避けない。


「感じルぞ!時ヲ操るチカラ!!」


炎は、偽女王にも、効かなかった。


試しに、アリエスからも炎を撃ってみた。勿論、効果ない。


「互いに効かない。そうだろう!?」



アリエスのニセ女王は、勢いよく近づいていく。


近づきながら、絶えず、時間のダイヤルを回し続ける。


古いラジオで音を拾うように。女王の操る時の流れに絶えず逆らうように、回し続ける。



人々も理解していた。


ニセ女王は、とうに、<時の輪>の中に居るはずだ。


しかし、アリエスは風化していない。



<銀>のハイメルが、魔道師団に指示する。


「物質召喚にて攻撃せよ!」


赤、黒、銅、銀。


考え得る最高威力を誇る魔力の猛者たちが、巨大な槍を召喚して、女王に飛ばす。


ニセ女王の頭を超え、槍は次々に、女王を襲った。


――風化しなかった!



「時間の輪は中和されておる!我らがマスターに続け!怖れるな!」


人々は、一気に攻撃範囲に、飛び出した。



ギィィィィィィ―!


耳障りな音を立てて、女王が反応する。


相変らず、その表情は出来の悪いオートマタのようだが、それが怒りの表情であろうことは、確実だ。


女王は、アリエスのニセ女王に対しても、飛び回る人間たちに対しても、黒い炎を打ち出して来る。


勿論、アリエス以外は、触れれば終わり。



 アリエスは。本物に比べると3分の2程度の大きさであるニセ女王のアリエスは、宙に浮きながら、凡そ女王にあるまじき行動に出た。


…グーパンである。


太古の壮大なる戦いを経て来た女王は、このような原始的暴力を想定していなかっただろう。


女王の腹へ、ニセ女王の拳はめり込んだ。


姿勢を崩す、女王。



女王が首を上げ、ニセモノを見る。怒りの目で、見る。


目のまえの偽物は、またあり得ない行動を起こしている。


本物に出来ず、ニセモノが出来る事。


―――純魔法!



「“インパクト”!」


顔面へ。相手が本物の女性なら出来ない…と思う。


時間の中和と同時にやっているので、アリエスの感覚的には、4分の1から5分の1の威力だ。


しかし、女王の体を借りた魔力。その威力は絶大だ。


30mの巨大なクビ。20mもある美しい顔はバキバキにひび割れる。


怒りの咆哮。



 この時を、空飛ぶ虎は見逃さない。


虎は、思い切りよく加速すると、迷わず、その額に飛びついた。


そして、その牙で、“時の転輪”。直径1mほどの大きな輪を咥えて、飛び去る。


―――神々の秘宝は、神族の許へ戻った。


「女王!時の転輪!返してもらった!」


虎は、ヒトの姿に。美しい神族の姿に。


その神族へ向けて次々と黒い炎が撃たれたが、ニセ女王の腕がそれをかばう。



「アリエス!時の転輪!発動する!」


「頼む!キミなら出来るだろう!?」


「我は神族ディヴァ。主神マテリアの欠片。時の転輪よ!我らに勝機を与え給え!我らに、生きる希望を与え給え!」


1mのリングは、白き光を大きく広げる。


半径、10m…100m…1km…10km


時は、正常な流れを保つ。



「今だ!今しかない!」


だが、このままでは、周囲の時の輪を中和しただけ。女王自身の再生能力が無くなったわけでは無い。これだけの猛者が集中して尚、完全体となり、270mの巨体を持つ、女王の再生力が上回っている。



しかし、アリエスは言った。今しかない。と。


「みんな!覚悟を!今から、魔界のゲートを開く!時間は10分!」


何だとー!


じょ、冗談だろう!?


魔界から魔族が溢れ出るだけではないか!


「魔界に乗り込む!勇気ある魔道士は、ついて来い!周りは全て、敵!」


「だがその代わり、効きのいい酒でも入ったみたいに!魔力が上がる!気を付けろ!それは瘴気も吸う事だ!人間で居られるうちに、出るんだ!出損ねたモノは、魔族の仲間入りだ!」


「その魔力を持って、女王を一片残らず、溶かす!!」


「“サモン・ゲート・ダークネス”!ミルキシュ!僕と、シンクロを!キミの思いのある場所を思い描いてくれー!」



ゲートの呪文が使える最高位でなければ、アリエスが何に苦労しているかは分からない。


ゲートとは、次元の門を開く魔法。しかし、異界とは無限にあるモノ。


魔界と言っても、その無限の1つに過ぎない。だから通常、世界を特定して開けない。


無限にあるデータの中から、パスワードが必要なのだ。


自分の普段住んでいる世界ですら、<遠く>離れてしまえば帰って来れない。


魔族がこの世界に出入りできるのは、あの開きっぱなしの奈落があるから――。



だが、開きっぱなしの奈落があるお蔭で、魔界がこの世界の僅かに裏にあるお蔭で、アリエスは今、ミルキシュと繋がることが出来る。


あの時。アリエスは、魔界に潜って、飛びながら“記憶”した。ミルキシュに、思い出の品を1つ、手に入れてもらった。


アリエスは、一度訪れた王宮も、その場で覚えてしまう。かつて、パナティモアで行ったように。


繋がれ…。繋がれ…。今、ミルキシュが居る場所だ…繋がってくれ!


頭の中を、無限の光が彷徨う。



―――そこだ!“ゲート・オープン”!!


女王の足元に、巨大にして禍々しい闇の渦が広がる。


「一緒に!いこうぜえ!女王!!“ハイプレッシャー”!」


上から、女王を押し付ける!



女王は黒い炎をついに口から吐いてアリエスを包む。


この姿でなければ、とっくに消えている。


アリエスのニセ女王は、本物に抱き付く。その頭を押し付け、下に。ゲートに。共に沈んで行く!



巨大な2つの姿と、転輪を持つ神族ディヴァが、ゲートに沈む。



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