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<魔術の塔>のアリエス   作者: なぎさん
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<皇太子セティス編>第7話「気球に乗って隠れ里」

 ファルトラントの街、<メジ>。首都に近い、大きな街だ。


ご多分に漏れず、巨大な広場が中央にある。


王や支配者の演説や、役人の告示などに人が集められる。


そうでないときは、バザールや大道芸、見世物など、まぁ常に人が集まる。



 セティス、ユシカ、ウィッグの3人娘(仮)がこの街に入った時も、同様に多くの人で賑わっていた。


「こういう所ではスリに気を付けろよ~セリスう。」


「そうだなーオマエみたいなヤツに狙われるからなー。」


そう言えば、セティスの財布はウィッグに盗まれたのだった。


お蔭で出会えた2人ではあったけど…。



 3人の目を引く大きなものが中央でゆらゆら揺れている。


気球だ…!


この魔法の世界では、20年ほど前に発明された、最新の飛行手段である!


…とは言え。魔術師の中で飛行できるものは少なくない。テレポートすら、一流どころにとっては余裕だ。



 気球は、魔術を持たない者にとっては空へ舞う憧れの新発明だった。しかし、呪文を掛けてもらえれば、もっと自由に飛べるのだ。誰だろうと。


…従って、今となっては、一部貴族や裕福な者の趣味的な扱いをされている。



 尚、この気球の理論は、技術は、ほぼ魔法に頼っている。


魔法ギルド<魔術の塔>が配っている<恒温の石>、及び販売している<恒冷の石>の組み合わせで、温かい空気を送り込み…という、現代科学とまるで関係ない浮力の得方。


気球の布も勿論、燃えることなく…。


実は下位魔法を“エターナライズ”すれば出来上がるので、そこまで高価ではない。魔法万歳。



 どうやら、簡単に言えば、市を盛り上げるためのアトラクションであるらしい。


ウィッグが指さす。「やってみっか?」


ユシカ即答。「やだよ!」


「僕、乗ったことある。父上と…」


「あー、出たよ?出たよ?王家の特権!」


「いやそんな」


「じゃあアタシ益々乗りたい。セリスだけ知っててズルい。」


「いや、ヤメヨウゼ…。」


「…オマエ、さては怖いな!?」


「んなことないし!ないしー!」


大騒ぎしながら、3人は気球へ。


ーーーーーーーーーー


 「ハイ、お嬢ちゃんがた、ちゃんと掴まってね。はい、お嬢さん、ハイ。」


「…!触るなエロジジイ!!」


ワザとかどうかは判らない。いや、セティスのピュア目線では事故だと思う。


ユシカのヒップに振れた操縦士は、激しくどつかれた。


で、そのまま気球のカゴから落下した。高さは1mほどだが。


「“ヒール!”す、すみませーん!」セティスが腕を伸ばし、操縦士に呪文を掛ける。


「いってー!わざとじゃねえよお~!」



そして、操縦士は、居ない。


ふわり。


「あ……。」



 誰もが「あ…」と言う中、気球はフワフワ上昇を始めた。


「ギャー!浮いたー!怖いー!!」


「お前が操縦士落とすからだろうが!」


「ゴメンよー!でも怖いいー!!」


「うるせー!」


―――大騒ぎの間、大勢が見守る中、気球は上昇を続けていた。


この時、関係者に魔法使いはいない。


広場に魔法使いは居たが、別にどうでも良い事だったのだろう。なんせ、この気球は安全がウリだ。


――――――――――


 さて、3人が落ち着きを取り戻したころ。


既に気球は街を離れ、ゆらゆら風に乗り、東へ。


「これ、どうやって降りるの?セティス?」


「…えっとね。」


「”恒冷の石”を入れると、下がったような」


「ひええ、めちゃ冷たい!」


「そうなんだけど。」


気球の中で小さく丸まっているユシカが、気弱に呟く。


「早く降りようよお…。」


「…気が変わった。もうちょい飛ぼうぜエ」


「鬼か!下着いたら覚えてろよ!」


「無事降りられるか判んねえなー!な!?」


「うううセティス~手繋いでええ」


「何甘えてんだよデカ女!」



「…えい!」


セティスが頑張って冷たい石を投げ込む。これで冷えて、徐々に下降するはずだ。


「聞きました奥様?えいっ!ですってよ。可愛くない?」


「全くですわね、何かしらこの小動物」


うう、えいで何が悪いと言うんだろう、僕。



 気球はセティスの努力で、ゆっくりと地上へ。


「…めちゃ山間じゃない?」


「げげ…これ木に引っかかるか?」


「…さっきの石を取り出せばまた上がるよ?」


「うおー!早く言えセティスう!」


しかし、僅かな熱でそんな急上昇はしない。


勿論、3人にそんな知識はない。


「あああー落ちるー!!」


…そして落ちた。


―――――――――


 気球の周りを、弓を番えた女たちが囲んで居る。


3人は両手を上げ、戦う意志がない事を示す…。


「わ、私達は敵じゃありません。事故で、気球が落ちてしまいました。」



一番背の高い、赤い髪、ワイルドな感じの女性がアゴで、「降りろ」と伝える。


「なんだよー。偉そうに。」


「ユシカどうするやっちまう?」


「2人ともやめて。ここは従おう。」


「あ、リーダーだ。」


「あ、本当だリーダー様だ。」


「…うう。頼むよ。」


渋々気球から降りる、3人。


気球は周囲の女たちによって即座に括りつけられ、キープされた。



「おい。言う通り降りたぞ。弓を降ろせよ。」


「そうだそうだ。この女がそう言ってるぞ。」


「き、聞いて下さい。怪しい者ではありません。」



 先程の長身の女性が口を開く。


背丈、筋肉。共に、ユシカより上だろう。恐らく、一対一で激しい戦いになりそうだ。


剣士よりモンクかグラップラーが似合いそうだ。背にはソードがあるが。


「まぁ、お嬢ちゃんたちが武器を捨てる分には、くつろいでいいし、話も聞こう。特にそこのお嬢ちゃんは僧侶だな。村のケガ人に呪文を掛けてくれりゃぁ歓迎する。」


「…ち。」


ユシカはバスタードソードを降ろす。


「盗むなよ?」


ウィッグも、バラバラと武器を落す。


ショートボウ、ショートソード、ダガー。


「…冒険者か。空から降ってくるとは珍しい。まぁ、女は歓迎だ。こっちへ来い。」


3人は、背の高い女性の後に続き、長の家らしき木造の家へ案内された。


椅子は無く床だが、柔らかい毛皮は敷いてある。その上に座る。


目の前には、果実酒と豆、サカナの干し物が置かれた。


「まぁ、食え。」


3人は顔を見合わせる。


「毒はない。殺すならさっき殺している。」


女性は3人の前にあぐらをかいてどかっと座り、酒を一気にあおる。


3人も、せっかくのものを頂くことにした。


がつがつがつ。


セリスだけは、ちびちびつまみつつ。まして、まともに酒を飲んだことはない。


のどが渇いたので舐めるようにちょっとづつ。


あー、葡萄のお酒って、こんな味かぁ…。酸っぱいんだなぁ。


そのセリスを見て、ユシカとウィッグはまた笑う。


「…見ました奥様?舐めてましたわよ?この小動物?」


「全くですわね…もはやアザトイですわね。」


「はは、その子だけは育ちがイイらしい。」女性は笑った。


「うっせえな。ガサツで悪かったな。」


「はは、2人も大層可愛らしいのにガサツなこった。」


「アンタに言われたくないな。」


「全くだな。そこは認めるゼ、お嬢ちゃん。アタシはジョルナ。お前らは?」


「せ、セリスです。ツァルトの僧侶です。」


「ユシカだよ。」


「超絶美少女のウィッグちゃんです。」


「コイツは自意識過剰なのでほっといてくれ。」


ジョルナは笑った。


「気に入った。まぁゆっくりしろ。此処は見ての通り女しか居ない。女は歓迎する。」


セリスが訊いた。


「あの、男性は?」


ジョルナはあっさり言った。


「殺すか、追い払うか。金奪って放り出すか。イイ男なら望む女達で楽しんで、その後追い出す。」



やべー。


ユシカとウィッグは顔を見合わせた。


やべーな。(ヒソヒソ)


これ、多分命の危険よりセティスの貞操の危機だな。(ヒソヒソ)


あ、そういうエロい単語言っちゃう?(ヒソヒソ)



「あの、どうしてですか?」


セリスが口を開く。


ジョルナの表情は少し厳しくなった。


「…ココは、弱いヤツの逃げ場だ。駆け込みの里、かな。まぁ、良くある話しだろ。」


「…え?良くある…?」


「家族に捨てられたヤツ、病弱なヤツ、働けないヤツ、逃げ出したヤツ、男に…ヒドイことされたヤツ…。なんかだよ。そんな女が駆け込む、隠れ里だ。別にアタシは男はキライじゃないが…追い出す。」


「どうして?」


「聞きたがるねぇ、お嬢ちゃん…。オトコは、特に複数いると”強く”なっちまうだろ?こんな弱いヤツラじゃあ、簡単に支配者になっちまうだろ。だから、悪いが、居させない。まぁ中には、オトコにも弱いヤツ悲しいヤツは居るだろうが。」


「なるほど…アナタは優しいんですね。」


「ちょっと違うかな。まぁ良いけどね。ま、世の中、お幸せだけの国は無いってこった。」


「え…?」


セリスの表情が強張る。


「…この村には、ツァルト出身の女性も?」


「隣国だ。結構いるだろうな。」


「そんなバカな!ツァルトは、女性に乱暴した者は死罪です!豊かで、“恒温の石”すら全家庭に配られて…。」


「あー。ツァルトの僧侶だっけ。そうさな、例えば結婚した後。夫が暴力を振るう場合も死罪かい?ケッコンした後で豹変しちまった夫はどう?身寄りのなくなった子供、病弱な年寄り。ツァルトは養ってくれるかい?教会を頼ったって一時だろ?」


ユシカとウィッグは、セティスの意外な反応に驚いた。もしかして、酔っているんだろうか。


「ツァルトは確かに、女に優しい国ではある。盗賊ギルドも正統派で、女を商品にしないしね。でも、個人の不幸まで請け負っちゃくれないだろ?だからこんな場所が必要なんだ。」


「そんな…。」


「セリス。こっちこっち。」


ユシカがセリスを自分の方へ引っ張る。


「あのさ、ジョルナ。セリスはツァルトを信じてる子なんだよね。傷つけないでほしいな。実際、ツァルトは周辺諸国で一番、安全な国じゃん。」


これを言ったのはウィッグだ。


「そうか。悪かったな。…じゃぁ、お開きとするか。お前らには向こうの部屋を用意しよう。明日には村を出るがいい。居つくなら、居ついても良いがな。戦える女は歓迎する。」


ジョルナは、再び酒を取りに立ち上がりながら振り返り。


「…仲良いんだな。」とだけ、言った。


――――――――――


 やや広めの部屋に、せまっ苦しく6つのベッド。粗末な毛布。


「セティス。こっち向いたらコロス。でもドキドキしちゃうかな~ん。」


ウィッグのいつものからかいにも、反応は薄い。


「あ、うん、絶対見ないようにするから、うん、後ろ向いてるよ…。」



 くるりと、セティスは後ろを向いた。


ユシカとウィッグは顔を見合わせた。


ウィッグが近づく。セティスを後ろから抱きしめた。


「…世の中を見るぜって旅に出たのは誰かさん。」


「…うん。」


「でもさ、無理に嫌なこと見る必要もないじゃん?良いじゃん?見なくても。」


「…うん。でも、僕はもっと知らなくちゃ。ありがとう。ウィッグ。」


「元気出せ。ちゅうしてやる。」


「ハイすとーっぷう!」ユシカに後ろへ引き摺られるウィッグ。


セティスは、やっと少し笑った。


ありがとう。2人が居てくれて良かった…。


――――――――――


 真夜中。静かに、扉が開いた。


「…武器、取り戻して来たぞ…。」


「さすがと一応褒めてやる。」


「…どうして逃げ出すのかな?明日、堂々と帰れば…」


「…アイツら、気球奪う気だと思うね。」


「…他にも奪うと思うね。」


「?」


「まぁとにかく、アタシらを信じろ。詳しい事は逃げてから言うからさぁ。」


「う、うん…。判ったよ。」



 3人は、木造の家を抜け出す。


ウィッグが、音を立てず気球に乗り込む。”恒冷の石”を外し、熱を溜め始める。


次に一番運動神経の悪いセティスが乗ろうとする。


最期にユシカが乗り込み、いっそロープを斬っちまえば、浮き上がるだろう。



 突然、周囲の松明が明るく灯る。


「やっぱ、そう動いたか。だろうと思ったぞ。オトコめ。あたしの目をごまかせると思うな。」


ウィッグが呟く。


「やべえ。バレてたか。セティスがやばい…!」



 ジョルナは大剣の切っ先を真っすぐに向けて勝ち誇る。


「オマエ!胸になんか入れて胡麻化してるが、オトコだな!?」


ジョルナは、真っすぐにユシカに向かって叫んだ。


次の瞬間、気球の中では笑い転げる少女1名。



 ユシカは真っ赤になって、ジョルナに向かった。剣を抜いた。


「てめええええええ~!」


「ほう、逃げ出さない男らしさは認めてやろう!綺麗な顔だしな、ボロボロにしてから可愛がってやろう!」


ジョルナも剣を向けた。大きなブロードソードだ。


おらああああ!!


両雄が剣をぶつける。


「やるじゃないか!」


「オマエ許さねえええ!!」


あははははっはー!! まだ気球の中からは笑い声が響いている。


「お前も後でコロス!」



「ま、待ってください!」セティスが駆け寄る。


「来るな!コイツは許さん!」


「お嬢ちゃんは近づくな!危ないぞ!」



激しく打ち合う2人。互角!


周囲の女達も見守るしかないモードだ。


2人は、剣を押し合う鍔迫り合いの状態になっている。


「てんめええ!許さねえ~!」


「なんだ?彼女の前でバラされたのが悔しいのか?」


ジョルナは、一瞬セリスを見た。


「こ、ここここの!」



 ユシカは、一瞬で下がり、間合いを取る。


そして、剣を横の地面に突き刺し、ばっとボタンを引きちぎり、胸の谷間を見せた。


「アタシは女だー!!」


「なにい!?」


冷静さを失っているユシカは、ついでに、近くまで来ていたセリスの後ろへ回り、同じように胸元までべりっと、セリスの服を破った。


「男はこっちだー!」


「ちょっちょっちょとー!」男でもそりゃ恥ずかしい。思わず隠すセティス。


「あ、ヘンタイだ。」気球のカゴからツッコミが入った。



 周囲は唖然としている。


「え…あの子が、オトコ?」


「ええええ…うそお!?」


ジョルナも唖然としていた。


ユシカは赤くなりつつも服を整える。セティスの事は放置。


「判ったかボケぇー!!」



 この時、この隠れ里を囲っていた、鉄で補強された太い丸太組みの壁が、やかましい音を立てて崩れ落ちる。


獣の低い唸り声。松明に照らされた巨大な影は3mを超える。


四つん這いになり、自分が壊した隙間をまた低くうなりながらくぐってくる。



 悲鳴が上がった。


その悲鳴は、獲物の位置をその巨大な生き物に教えてしまった。


巨大な影は、足がすくみ座り込んだ女に向かい、駆けだした。


再び悲鳴――。



 「”ホリー・フィールド”!」


怯え、動くことも出来ない女の前に、光り輝く大きな壁。巨体の爪を受け止め、寄せ付けない。


セティスは、タダの僧侶ではない。駆け出しで、よわよわで、低レベルの呪文すら数少なく、ままならない。しかし、ただ一つ普通ではないのは。


彼は、神の言葉を直接その心に聞いた、女神マグリテアの眷属である。


決して外れぬネックレスを首輪の様に巻かれた、祝福され、愛され、拘束された者である。


その魔法効果は、高司祭にも匹敵する。本人も、知らない事だが。



 光に浮かび上がった獣の姿。


ジョルナが叫ぶ。


「ムーンベア!なんて化け物が此処に!?」


ムーンベア。キメラ、合成獣の一種。既に繁殖体として確立している化け物。狂った魔法使いの、太古の産物と言われている。


グリズリー系の熊と灰色オオカミを組み合わせた肉喰らいの権化。狼の顔、狼の牙。熊の体と爪。太く巨大なオオカミの脚。狼の尾。



 ユシカは既に駆け出していた。気球から、ウィッグの矢が飛んだ。


「”ホリー・ブースト”!」


セティスの両手から伸びる光が、2人を包む。武器と身体と、同時に、全てに祝福を与える。


「おおっと!キタなぁ!この感じィ!!」


ユシカの駆ける速度が上がる。疾風のようだ。



 獣は、斜め前から来た素早い生き物に気が付いた。その生き物は、か弱い生き物に見えるが、光り輝く牙を持っていた。


獣が爪を振り上げる。


一瞬でその爪を横に掻い潜り、通り抜けざまに斬り抜く。


獣の腹から血が滴る。


だが、分厚い脂肪の層が、致命傷を止めている。


「なんだコイツ!切りにくいなぁ!」



 獣がユシカに振り返る。その首の付け根に、光り輝く矢が深々と刺さる。


獣は怒りの雄たけびを上げた。


ユシカの横に、隆起した筋肉の女性が追いつき並ぶ。ジョルナだ。


「…あたしは右へ行く。」


「そう。じゃぁアタシは左だ。」


「訂正する。アンタいい女だよ。」


「いや、最初から間違えるのがヘンだから!」


獣は2人に向き直り、体を低くして、体当たりの様に向かって来る。本当にその通りだ。その巨体を当てられたら、押しつぶされるしかない。のしかかり、押さえつけ、喰らう。


2人は左右に分かれ、突進を躱す。振り返ったムーンベアの目に、光る矢が突き刺さる。


この暗がりで、遠距離で。ブーストされた身体能力のウィッグは、その視力までも人間のそれを超える。神業の狙い撃ちだ。


ムーンベアがその目を抑え立ち上がる。


むき出しの腹を、その右側をユシカの剣が薙ぐ。


遅れて、重さについてはユシカのそれを超えるジョルナの一撃が左の腹を薙ぐ。


獣は、重低音の犬のような鳴き声を最後に、大きな音を立てて崩れ落ちた。


――――――――――――


 翌朝、3人は隠れ里の女達に別れを告げた。


ジョルナは、“3人”でこの村に残っても良いと誘ったが、旅立ちを選んだ。


今すぐ立ち去ることを選んだ。


「そっか。ユシカ。また剣を合わせようぜ。その子のブースト無しでな。」


「言っとくけど、アタシまだ成長途中だから、剣も胸もまだ育つんで。アンタに勝ち目は無いけど?ジョルナ。」


ジョルナは口を歪めた。


「あの、ジョルナさん。皆さん。僕に、大切なことを教えてくれてありがとう。僕は、いつか必ずまたこちらへ来ます。その時は必ず、お力になれる僕になって、来ます。」


隠れ里の女達は、未だに少女にしか見えない少年との別れを心から惜しんだ。



「さ、行くよ。セリス。」ウィッグがその手を引っ張る。


ユシカが剣を背負ってその後を追い、セティスの逆隣へ。


また何か言い合いながら、やかましく森へ消えていく。



 その姿を見ていた里の女達は、カシラのジョルナに訊いた。


「あの子ら、なんであんなに急いで旅立つのかね。」


「そりゃ、あたしの脅しを真に受けて、守る為だろうねえ。」


「守る?別に私達歓迎するのに。」


「誰にも取られたくない宝があるんだろうさ。」


「ああ…。いいなぁ。甘酸っぱい!」


里には、笑い声が響いた。


「さぁ、頼まれた気球、運ぶとするか!」


気球を乗せた馬車と、手のひらの中にある、セティスが置いていった190Gを見ながら。


ジョルナは仲間達に大きく声を掛けた。


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