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海底遺跡の調査ですね

 海底一万メートルで発見した重力障壁の向こうは、水が入って来ない大きな洞窟であった。

 かなり広くて島風でも問題なく移動できるが、少し進むと行き止まりになる。


 しかし今度は天井がなかったので、ゆっくりと上昇していくと広々とした空間に出た。

 念のために周囲の成分を調べると、地上と殆ど変わらない。

 有害物質が充満していることもなく、人類も普通に生存可能である。


 パワードスーツを着用しなくても活動可能なのは、普通にありがたい。

 水は入って来なくても少し肌寒いようだが、温度調整も可能な特別な服装なので問題はなかった。


 だが私は肉体強度は貧弱そのものなので、快適な環境でなくては割りとあっさり死んでしまいそうだ。


 そのような事情はともかくとして、レーダー手が周囲の探知を行い大きな声を出す。


「前方に古代遺跡を確認しました!

 この奥に、何らかの高エネルギー反応があるようです!」


 正面モニターに詳細情報が出るが、不明な箇所が多すぎる。


「ですが遺跡自体が特殊なフィールドを形成しているようで、探知は困難です!」


 それに奥に進むほど、特殊なフィールドの影響を強く受けて探りにくくなる。

 高純度のエネルギーがあるのは間違いないが、詳細は不明なようだ。


「それでも、何かがあるのは間違いなさそうですね」


 大いなる秘宝の可能性が高いが、たとえ違っても何かがあるのは間違いない。

 島風は古代遺跡の前の広場にゆっくりと降下したあとに、反重力推進機関を停止させる。


 艦長席に座った私はこれからどうすべきかを考えて、結論が出たのでおもむろに口を開く。


「当初の予定通り、探索隊を編成しましょう」


 やはり事前の計画通りに進めるのが良さそうだ。

 そして探索隊は既に組まれていて、準備万端である。


 当然私も同行するので、転送装置を起動して格納庫まで瞬間移動する。


「では、行ってきますね」

「かっ、艦長!?」


 予想はしていたが、副長や他の乗務員が困惑しているようだ。

 しかしこれがベストな選択なので、転送したあとに艦内スピーカーを使って全乗務員に伝える。


「この艦の最大戦力は私です。

 特殊なフィールドで転送も妨害されていますし、遺跡で何が起きるかわかりません。

 大いなる秘宝の解析も、自分が適任です」


 特殊なエネルギーフィールドのせいで、遺跡の探知は難しい。

 だが私が行って直接調べれば、大いなる秘宝の正体もすぐにわかるだろう。


 あとは最奥まで一直線というわけにはいかず、十中八九で侵入者避けの罠が仕掛けられている。

 なので探索隊の損害を減らすためにも、やはり私が行ったほうが良いのだ。


「そういうわけで副長。留守を任せます」

「はっ、はい! 艦長も、どうかお気をつけて!」


 格納庫には、既にパワードスーツを着用している探索隊メンバーが揃っている。

 ついでにトーキョーテレビの取材陣とレジスタンスも、準備万端という顔をしていたのだった。




 探索隊はパワードスーツを着用した白兵戦部隊十名。

 機械生命体五名と私の、計十六人であった。


「しかし、キミは見たところ軽装だ。

 本当にそれでいいのか?」


 古代遺跡に突入する直前になり、リーダーが心配そうに声をかけてきた。


「重装備をしても、私の体が耐えきれません」


 私は幼女並のパワーしか出せないし、これ以上は成長もしない。

 なので大人以上の身体能力を無理やり発揮させた場合、負荷がかかって体が壊れる。


 それに軽装に見えても特別頑丈な女王専用装備だし、いざというときのために護符も複数持ち歩いていた。

 フェザー兵器と同じで予算や人材や時間度外視で作られているが、技術の発展は国民にも還元されるので、無駄にはならない。


 そんな事情はともかく、機械生命体のレジスタンスは豪快に笑う。


「リーダー! 嬢ちゃんの代わりに、俺たちが戦えば済むことだぜ!」

「その通りだ! 今まで世話になったんだ! お守りは任せな!」


 機械生命体にも良い人が居るとわかり、自然と和やかな雰囲気になった。

 ちなみに探索メンバーのパワードスーツ隊とトーキョーテレビの取材陣は、私の強さを良く知っている。

 なので口は開かないが、俺たちが守られる側なんだよなぁという空気を出していた。

 一部はヘルメットで隠れていたけれど、そのぐらい読み取ることができる。


 何にせよ遺跡はかなり広いが、入り口も大きい。

 体格の良い機械生命体でも、問題なく入れるようだ。


 今この瞬間にも、悪の帝王の艦隊は地球に向かって接近している。

 少しでも早く大いなる秘宝を見つけるために、私たちは探索を開始するのだった。







 古代遺跡は老朽化が進んでいるが、探索するのに問題はないようだ。

 周囲の材質を調べると、土と金属が混ざった変わった構造をしている。


 なお、明かりはないのでライトで照らしながら移動しないといけない。

 皆が油断せずに通路を進んでいき、島風との通信は常にオンにしている。


 私たちの会話は丸聞こえではあるものの、今も生放送しているので気にしたら負けであった。


(ふむ、予想はしてたけど。……これは)


 データベースに該当するものはなく、未知の文明の遺跡であることがわかる。

 私は周辺調査をしながら進んでいると、感知範囲にあるモノが引っかかった。


「危ない!」


 なので、一番前を歩いていた機械生命体の真下に、シールドフェザーを急ぎ展開する。


「うわぁ! なっ、何だぁ!?」


 彼の足元の床が突然消えて奈落の底に真っ逆さまだったが、間一髪で半透明で六角形の盾で受け止められる。


 お尻を激しく打ちつけたが、無事なようで何よりだ。

 驚きのあまり周りの皆も足を止めたので、私は警戒しながら近寄ってライトで穴の底を照らす。


「重量を感知すると作動する、落とし穴のようです」


 かなりの高さがあり、真下には無数の棘が鋭い槍のようにズラリと並んでいた。

 これを見た人たちは緊張で体が強張ったが、私は平然と説明を続ける。


「機械生命体でも関節に刺されば、機能不全を起こすでしょう」


 いくらオリハルコンやミスリルの皮膜を塗っているとはいえ、無敵ではない。

 それにパワードスーツも一部脆い箇所があるし、耐久力にも限界があるので油断は禁物なのだ。


 取りあえず私は、説明を終えたあとにシールドフェザーとレジスタンス一名を回収して、堂々と告げる。


「ここから先は、私が先頭を歩きます。

 罠の設置箇所を表示しますので、全員気をつけて進んでください」


 私は空間圧縮鞄から、マジックアイテムの小型の3D投影ドローンを飛ばす。

 そして自身のデータベースと繋いで、半径二十メートルで感知した罠を赤く点滅表示する。

 さらに周囲を明るく照らし、ライトを不要にした。


「おおっ! まさか、このような機能があるとは!」


 レジスタンスや地球人類から、感嘆の声が聞こえる。


「私が所有するドローンは多機能なので、これぐらい容易いことです」


 女王である私には、いつも一番良い物が回ってくる。

 なのでピンキリなため、我が国のドローンが皆こうだとは口が裂けても言えない。


 とにかく目に見える半径二十メートルに感知範囲を絞ることで、精度を上げる。

 そうして迷うことなく、古代遺跡を進んでいく。


「こりゃ便利だな!」

「全く、宇宙は広いな!」


 機械生命体にも好評なようだ。

 侵入者撃退用の罠を回避しながら、会話をする余裕がある。


「島風も同じことができますが、流石に遺跡の奥には入れません」


 しかも遺跡は探知阻害のフィールドになっており、私が直接向かったほうが探索効率は良い。


 それに航宙艦を操作しているのは人間で、いつでも時間を停められる自分とは違う。

 一瞬の油断で命を落とす危険があるため、やはり私が直接やったほうがいい。


 そんなことを考えながらしばらく歩くと、やがてある反応を検知して足を止める。


「全員、止まってください」


 曲がり角の先には大広間があるが、そう簡単には進めない。

 皆に警告してから、慎重に先の様子を伺う。


「この先の広間に、番人が二体居ます」


 視覚情報を3D表示して、探索隊に見せる。


「戦闘が予想されるので、準備をしておきましょう」

「でかいな! 五、六メートルはあるぞ!」


 広場の奥にある大きな扉の左右には、騎士のような巨大な機械人形が立っていた。


 私は全身鎧姿のミスリルゴーレムを思い出すが、彼らと違ってファンタジーではなく機械の体だし、老朽化であちこちガタが来ている。


 だが門番としての機能は、まだ生きているようだ。

 侵入者を発見すると、動き出して襲いかかってくる可能性が高い。


「艦長、ハッキングして無力化することは可能でしょうか?」


 パワードスーツを着用した隊長が尋ねてきた。

 なので私は、少し考えて答えを返す。


「見たところ有線式のようですし、直接アクセスを試みることになるでしょうね」


 激しく動き回る巨大な機械人形に接近するなど、無謀極まりない。

 何より、壊したほうが手っ取り早かった。


 だが大いなる秘宝は、彼らが守っている扉の奥にある。

 エネルギーフィールドが張られているとはいえ、バリアのように攻撃を弾くわけではなく、探知や転送を妨害するだけだ。


 遺跡も老朽化しているし、あまり派手に暴れると何が起きるかわからない。


「できれば大扉を傷つけずに、門番だけ倒したいところですね」


 フェザー兵器を使えば瞬殺できるが、シールドを展開して周辺被害を抑えるのも限度がある。

 なので程々の火力で普通に門番を倒すのが、一番穏便に済むと結論づけた。


「私の出番だな」

「やれますか?」


 レジスタンスのリーダーが自信満々に口を開いたので、私はすぐに尋ねた。


「一対一ならな」

「では、片方はお任せします」


 もう片方の門番は、残ったメンバー全員で囲んで棒で叩けば良いだろう。

 単純な作戦ではあるが、私はこれまで高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処してきた。


 今回もそうするだけだし、いつも通りと言える。


「では、私は大広間にシールドを張ります。

 あとは皆に任せますね」


 とにかく広間から外に衝撃が伝わらないのが重要なので、ソードとガンタイプも一時的にシールドモードに命令を書き換える。

 他のメンバーも指示が聞こえたようで、やる気十分だ。


「おうよ! 任された!」

「艦長! では行きます!」


 そして探索隊は、一斉に行動を開始する。

 私は例によって例のごとく、地味な後方支援だ。

 けれど元々第三者の立ち位置で、ここは地球人と機械生命体に主役を譲る。


 本来ならこの星の人々が解決すべき問題で、自分はやっぱり部外者なのだ。

 真正面に立って好き放題にやるよりも、縁の下の力持ち的なポジションのほうがあとで問題が起きなくて良い。


(あんまり派手に動くと、あとで面倒だからね)


 現実は悪の帝国を退けて、それで終わりではない。

 戦後処理もきっちりやらないといけないし、ノゾミ女王国が矢面に立つとそっちもやらされることになる。


 だからこそ、機械生命体や地球人を前面に立たせているのだ。

 私は影から助力した、第三者的な立ち位置を崩さない。


 そして大広間を守っていると、周囲に大声が響き渡る。


「受けよ! 我が剣を!」


 リーダーが大剣を振り回して、真正面から門番に襲いかかる。

 一定範囲に近づいたので敵も起動し、武器を持って迎撃を行う。


「くらいやがれ!」

「こっちだ! ノロマめ!」


 他の者も数の有利を活かして、もう片方を攻撃していた。

 飛んだり跳ねたりと三次元的な戦闘を行い、上手く関節部分を狙って近接武器で少しずつダメージを与えている。


 門番は言語を喋れないようだ。

 しかし蝶のように舞って蜂のように刺す動きに翻弄され、悔しがっているように思えたのだった。


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