第75話 ロボチューブ生配信です! その四
「さあ、始まりました『ご主人様チャンネル』、どうも司会の黒男です。あ、第四回目の配信がね、始まりますよ」
画面に白ティー黒髪おさげに丸メガネの上からグラサンをかけた女が登場した。
『出たwww』
『誰なの?』
『今日はマリ助出る?』
「あ、もうさっそくコメント、ありがとうございます。スッキリペロペロさん、飛んで平八郎さん、今日もね、見ていってくださいよ。あ、ジャンガリアンハムカツさん初めまして」
画面に紙袋を被った和風メイド服のメイドロボが登場した。
「皆さんお久しぶりです。助手のメル蔵です」
『メル蔵きたー!』
『メル蔵〜』
『でっか』
「皆様、ご機嫌よう。近所に住んでるマリ助ですわー! オーホホホホ!」
画面に金髪縦ロール、シャルルペローの童話に出てきそうなドレスにグラサンをかけた少女が現れた。
『マリ助きたー!』
『マリ助ー!』
『かわえー』
『小学生?』
「お、すごい。視聴者が爆増しています」
画面に金髪縦ロール、シャルルペローの童話に出てきそうなドレス風のメイド服を着たメイドロボが現れた。紙袋を頭から被っている。
「皆様、ご機嫌ようですわ。マリ助お嬢様の助手のアンキモですわー! オーホホホホ!」
『アンキモ! アンキモ! アンキモ!』
『めちゃセクシー』
『紙袋はなんなのwww』
『Gカップはある』
「いやー、視聴者の数がすごいことになってます。やっぱりね、私がね、体張って配信頑張ってきた結果が、やっと、やっと出てきたという感じでしょうか」
『マリ助とアンキモ効果なんだよなぁ』
『なんでこの人、こんなに自己評価が高いのwww』
「ところで、今日はなにをやるんですの?」
「なにも聞いておりませんわー」
「ご主人様! 今日はなにをしますか!?」
『みんな知らないのかよ』
『マリ助って小学生?』
『全員貧乳ロボにしてやりたい』
「ふふふ、今日は私一人で企画を、準備しましたからね。それでは発表します」
「デュルルルルルルル、デン!」
「ロボハザード、やってみた〜」
「パフパフパフ!」
『ゲーム実況きたー!』
『ホラゲーかよ』
『ロボハザードってなに?』
『なんか、窓の外に幼女立ってない?』
「はい、やっぱりね、ロボチューバーといえばね、あの、ゲーム実況みたいなところ、ありますからね、はい。あ、くっころ大魔王さん、ロボハザードはですね、ゾンボと、ゾンボと戦って生き残る怖いゲームですね」
黒男はダンボール箱からなにかを取り出した。
「はい、これはですね、VRゴーグルというやつですね。これは、あの、会社からねちょっと借りてきました」
『横領www』
『最新のじゃん』
『ほしい』
メル蔵とマリ助とアンキモは、それぞれVRゴーグルを装着した。両手に専用コントローラーを握りしめる。視界は完全にゲーム画面で埋め尽くされ、サウンドも全方位立体音響だ。ゴーグルをつけている間は、周囲の様子は感知できない。
『顔がちょっと見えてるwww』
『メル蔵とアンキモもクソ美少女やんけ!』
『三人とも金髪とか、キャラ被りすぎwww』
『¥6000。アンキモかわいいよ』
「お、悪役第三辺境伯さん。ロボチャットありがとうございます。このゴーグルは借りてきただけなのでね、横領ではないです。さあ、メル蔵!」
「はい!」
「ゲームスタートするよ!」
「お願いします!」
『ロボオォ〜 ハザードォ ナイィ〜ン!』
「ぎゃあ!」
「始まりましたの」
「楽しみですわー!」
ゲーム画面の右側に、三人のワイプがそれぞれ表示された。
「はい、ここで視聴者の皆さんだけにお知らせがあります。あの、ただゲームをプレイするだけではね、ご主人様チャンネルらしくないのでね。プレイ中に三人に、イタズラをしようかと思いますよ」
『イタズラwww』
『バレるだろwww』
『帰ります』
「では、ゲームモードは『サバイバル』でいきますよ。このモードはね、館に立て篭もりまして、迫りくるゾンボの集団を撃退するというモードですね」
ゲーム画面が変わり、三人は館のホールに立っていた。
「さぁ、みんなはどんなキャラを選んだのかな?」
「もちろん、マッチョメイドですよ! 最強キャラですから! 最強武器の刺股も持ちましたから、これでゾンボなんて蹴散らしてやりますよ!」
メル蔵のキャラは、ゴスロリメイド服を着たマッチョメイドだ。筋肉がはちきれんばかりの威容見せつけている。手に持っているのは、長い柄の先が二股に分かれている刺股だ。
『マッチョメイドwww』
『刺股弱いだろwww』
『でけえ』
マリ助は金髪のクノイチ、アンキモは金髪の女スパイを選んだ。
「使い慣れたキャラが一番ですわー!」
「ゾンボなんて恐るるにたららせんしゃんせー!」
『今なんて言った?』
『お嬢様言葉がおかしいwww』
いよいよゲームが始まった。館の窓をぶち破ってゾンボが侵入してきた。
「ぎゃあ! さっそくきました! マリ助ちゃん、アンキモさん! 右の方は任せました!」
マッチョメイドは刺股を構えて、ゾンボの群れに突進した。刺股を振るうと、一撃でゾンボが吹っ飛んだ。マッチョメイドがゾンボの返り油を浴びて赤く染まる。
「さあ、ここでロボローションをね、塗ってみたいと思います」
黒男はロボローションを手に取り、メル蔵の顔に塗りつけた。
「ぎゃあ! 返り油が顔に! ヌルヌルします、気持ち悪い! すごいリアルなゲームです!」
『ロボローションwww』
『いや気付けwww』
「クノイチの忍術でゾンボを転ばしましたわ! 踏んづけてトドメですわー!」
クノイチが華麗に空中で一回転をし、ゾンボの頭に着地する。ゾンボの頭は砕け散った。すかさず黒男が、マリ助の足の裏にロボローションを塗りつけた。
「なんですのこれ!? 踏んづけたら足の裏がベトベトになりましたわー! 気持ち悪いですわー!」
『マリ助www』
『全身に塗れ!』
「お嬢様ー! 助けてくださいましー! ゾンボに噛まれていますわー!」
「アンキモ、今助けますわよー!」
黒男はアンキモの腕に噛み付いた。
「イダダダダ! 痛いですわー! 痛い……リアル過ぎますわこのゲーム、痛い!」
『ほんとに噛んでるwww』
『さすがに気がつくだろwww』
「離してくださいましー!」アンキモがゾンボを振り解こうと、勢いよくコントローラーを振り回した。そのコントローラーが黒男の顔面にヒットし、黒男は吹っ飛ばされた。「ぐええ!」
『ざまあ!』
『やったぜ!』
『この人、男なの?』
「ハァハァ、ゾンボに噛まれて体力が減ってしまいましたわ」アンキモはぐったりとしている。
「わたくしも体力が残り少ないですわー」
そこへマッチョメイドが両手にハーブを握りしめて近づいてきた。
「お任せください、お二人とも。これを食べて回復してください」
「助かりますわー!」
「赤いハーブと青いハーブ、どちらにしましょう」
「せっかくですので、わたくしはこの青いおハーブをいただきますわー!」
アンキモの女スパイは青いハーブを口に含んだ。黒男がアンキモの口の中に、ミントのキャンディを放り込む。
「このおハーブ美味しいですわー! スーっとして気分がリフレッシュしますのよー!」女スパイは元気になったようだ。
『美味そう』
『セーフ!』
『赤い方ヤバそうwww』
「せっかくですので、わたくしはこっちの赤いおハーブをいただきますわー!」
マリ助のクノイチが赤いハーブをムシャムシャと食べた。黒男は真っ赤なキャンディを、マリ助の口の中に放り込んだ。
「ブー!!!」マリ助はキャンディを吹き出した。
「ぶええ! ゲホゲホ! 辛い! このおハーブ激辛ですわー! ああああ! なんですのこれ……ああああ! アンキモ、おウォーターをくださいまし!」
『可哀想www』
『いつもの激辛www』
黒男はマリ助の手にコップを握らせた。マリ助はそのコップの中身をグイッと飲み干した。
「ブー!!!」マリ助は吹き出した。「ゲホッ! ゴホッ! ああああ! これ……これトムヤムクンですの! アンキモ! なんでトムヤムクンを飲ませるんですの!?」
「お嬢様、わたくしなにもしていませんわ」
『とうとうマリ助がトムヤムクンの被害にwww』
『恒例行事www』
その後は、順調にゾンボの集団を撃破していった。しかしその時、突然館の壁をぶち破って巨人が乱入してきた。
「ぎゃあああ! 出ました! スーパーロボヒガンテです!」
「大きいですの!」
「近づくと危険ですわよ!」
マッチョメイドは刺股を手に突進した。「ここは私にお任せください!」
しかし、マッチョメイドはあっさりとロボヒガンテに捕まってしまった。両手で体を掴まれて締め上げられる。
黒男は背後から、メル蔵を思い切り抱きしめた。
「ぎゃあ! く、苦しい! マッチョメイドが握りつぶされそうです! ううう! イタタタタタ!」
『リアルハグwww』
『セクハラだろこれwww』
『うらやましい!』
ロボヒガンテが巨大な口からゲロを吐きかけ、マッチョメイドはゲロまみれになった。黒男はメル蔵の頭に、これでもかとロボローションをぶっかけた。
「ぎゃあ! 汚い! ヌルヌルします! ばっちい! 助けて!」
『ロボローションまみれwww』
『エロいwww』
女スパイがロボヒガンテの足に爆弾を仕掛けた。爆発のダメージで、マッチョメイドを離してしまった。
「今ですわー!」クノイチと女スパイは、ここぞとばかりにひたすら銃弾を撃ち込みまくった。
「ハァハァ、お二人とも助かりました!」
銃弾を撃ち込んではいるものの、ロボヒガンテは一向に倒れる気配がない。
「このままではジリ貧です。そうだ!」
マッチョメイドはロボヒガンテがぶち破った壁から館の外に出ると、崖際まで移動した。
「なにをなさるんですの!?」
「その下はマグマですのよ!」
マッチョメイドの背後の崖下にはマグマが流れている。その熱気がチリチリと肌を焦がす。黒男はドライヤーでメル蔵の背中を炙った。
「あつい! あちあち! でも一か八か、やります!」
そう言うと、マッチョメイドが手にした刺股が光り始めた。ロボヒガンテはその光に吸い寄せられるように、のしのしと歩き出した。
「危ないですわ!」
「そのままじゃ、マグマに落ちてしまいますのよ!」
ロボヒガンテが唸り声をあげながら、マッチョメイドに向かって突進をした。地面がズンズンと揺れる。黒男はメル蔵の乳をツンツンつついて、プルンプルン揺らした。
『これは完全にアウトwww』
『逮捕されろwww』
「すごい揺れを感じます。でも勝つにはこれしかありません!」
光り輝く刺股が巨大化した。ロボヒガンテの突進を刺股で受け止める。すさまじい衝撃が地面に伝わり、大きな揺れが発生した。黒男は夢中になってメル蔵の乳を揺らした。
『なにしてんの、この貧乳www』
『もしもし、ロボマッポですか?』
その揺れにより、崖に亀裂が入った。マッチョメイドとロボヒガンテの足元が、ガラガラと崩れていく。
「落ちますわ! 逃げてくださいましー!」
「逃げません……!」マッチョメイドは巨大刺股でロボヒガンテの首を挟み込んだ。身動きが取れなくなったロボヒガンテは、マッチョメイドとともにマグマの中に落ちていった……。
『マッチョメイドー!』
『マジかよ;;;』
しかし、その時……!
「あれを見てくださいまし!」マリ助が指をさした。
その先には、崖にへばりついているマッチョメイドの姿が見えた。マッチョメイドは崖をよじ登り、見事生還した。
『すげえ!』
『マッチョメイドの勝ちだ!』
『¥8000。刺股最強!』
『やっぱり、窓の外に幼女いるよね?』
『マッチョメイド! マッチョメイド! マッチョメイド!』
「えー、皆様。司会の黒男です。なんだかこのオチ、前と被ってる気もしますが、これで今回の配信は終わろうと思います。あ、牛丼一筋なにゆーてまんねんさん、ロボチャットありがとうございます。あ、WHO世界チャンプさん、ここは二階なのでね、窓の外に幼女はいませんよ。それでは皆さん、次回お会いしましょう」
(軽快なBGM)