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うちのメイドロボがそんなにイチャイチャ百合生活してくれない  作者: ギガントメガ太郎


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535/551

第535話 記者会見です!

 浅草某スタジオ。会議室はカメラを持った記者達で埋まっていた。

 白いクロスがかけられた長テーブルにはマイクが並べられ、その横には演台が設置されていた。パイプ椅子に座った記者からは、殺気にも似たオーラがほとばしっていた。彼らと長テーブルの間には、謎の直系4.55メートルの円が設置されていた。


 濃い化粧とピチピチのスーツで身を固めたロボットが演台に上がった。記者達はカメラのスイッチを入れた。


「皆様、ようこそお集まりくださいました。ただいまより、ゲームスタジオ・クロノス主催、八又(はちまた)産業協賛、新カードゲームプロジェクト『MERCO(メルコ)』の発表会を開催いたします。司会は私、ロボテレビの女子アナロボが務めます。またこの会見は、ロボチューブでも中継が行われています」


『いえーいwww』

『見てるよー』

『なんの会見なのこれww』


 まばらな拍手が送られ、それと同時にフラッシュが焚かれた。


「ではさっそく登場していただきましょう。ゲームスタジオ・クロノス代表取締役、黒ノ木社長とメル子さんです」


 控室の扉が開き、中から白ティー丸メガネ黒髪おさげののっぽと、緑の和風メイド服の金髪巨乳メイドロボが現れた。その途端、いっそう激しいフラッシュが浴びせかけられた。二人は長テーブルに着くと深々と頭を下げた。


「どうもこんにちは。ゲームスタジオ・クロノス代表取締役の黒ノ木です」

「メル子です!」


 再び激しいフラッシュ。ほとんどのカメラのピントはメイドロボの(アイ)カップの谷間に合わされていた。


『でけぇwww』

メル蔵(めるぞー)!』

『また黒男(くろお)やんけwww』

『前にある円はなんなのw』


「えー、お集まりいただき、まことにありがとうございます」

「ありがとうございます!」

「本日皆様をお招きしたのは、弊社の最新プロジェクト『MERCO』の立ち上げを発表するためであります」

「であります!」

「黒ノ木社長、MERCOとはどういったプロジェクトなんでしょうか? ご説明お願いします」

「はい」


 黒乃はデバイスを操作し、スクリーンの映像を切り替えた。謎の文字列が画面に表示された。


「MERCOとは『Multiple Eclectic Robust Card Opper』の略で、全方位型多機能カードゲームシステムをさします」


『カードゲームなのね』

『なんかすごそうw』

『最後のオッパーってなんだよww』


 メル子がマイクを握り締めた。


「ちなみに! MERCOとは私の名前のメル子から取られています! すごいでしょう!?」


『だろうねw』

『言わなくてもわかるよw』

『メル蔵、落ち着けwww』


「黒ノ木社長、いまいち名前からではどういうものかわからないのですが、詳しい説明をお願いします」

「もちろんです。MERCOはこれまでのトレーディングカードゲーム(TCG)の文脈をベースにしていますが、そこに新たな発想を付け加えています。それが『拡張性』です」

「拡張性と申しますと、いわゆるブースターパックが思い浮かびますが?」

「そのブースターパックで間違いありません。既存のTCGでは、ブースターパックによりカードが追加されます。それはMERCOでも同じです。しかしMERCOの場合、カードと同時に『新しい遊び』が追加されるのです」


 会場がざわついた。スクリーンにはピラミッドのような図と、ピラミッドを逆さにしたような図が表示された。


「既存のTCGはまずルールがあり、そのルールに従ってカードが追加されます。ルールという土台の上に、カードが乗っているんです。ブースターパックで拡張されても、その構造は変わることはありません。これはピラミッドで表されます。土台より広くはカードを乗せられません。上にいくに従ってカードを乗せられる幅は狭くなり、いずれピラミッドは完成します。

 その反面、MERCOは無限に拡張が可能です。基本ルールが土台として存在し、その土台の上に拡張ルールを乗せることができます。これは土台の拡張に他なりません。拡張ルールはいくらでも増やすことが可能です。よって、その上に乗るカードも無限に増やせるのです。これは逆ピラミッドで表されます。このピラミッドに完成はありません。故に、MERCOは無限の拡張性を備えているのです!」


『なんかすげえ!』

『よくわからんけどすげえ!』

『はんぱねえ!』


「黒ノ木社長、根本となる理念はわかりました。では具体的に、どのような拡張があるのでしょうか?」

「はい。現在予定していますのが、シナリオパックの拡張です」

「シナリオパック? TCGでシナリオがあるんですか? 対戦ゲームですよね?」

「MERCOにおいて、対戦はメインのコンテンツとなり得ますが、それがすべてではありません。一人プレイ、対戦プレイ、協力プレイ、シナリオプレイに対応しています。これが全方位型多機能カードゲームたる所以です。シナリオパックにはシナリオカードが封入されており、それをめくることで物語が展開します。プレイヤーはカードの文言に従い行動を決めます。それによってアイテムを手に入れることもありますし、戦闘になることもあります。次々にカードをめくりながら冒険をします」

「……」


『メル蔵?』

『なんか寝てね?』

『話が長過ぎて寝とるww』

『メル蔵、起きろww』


「黒ノ木社長、カードの持つソフト面での機能は理解できました。では、ハード面はいかがでしょうか? 特殊なカードを考案されたと聞いています」

「よくぞ聞いてくださいました。MERCOでは、前代未聞のカードを採用しました!」

「ふがっ!? ご主人様? 呼びましたか?」

「え?」

「今、呼びましたよね?」

「いや、呼んでないよ。会見中だからちゃんとして! MERCOの話をしているから!」

「だから、私がどうかしましたか!?」


『あかーんwww』

『寝ぼけてるww』

『しっかりしろw』


 黒乃は巨ケツのポケットから一枚のカードを取り出した。


「これが、弊社と八又産業が共同で開発したカードの試作品です」


 猛烈なフラッシュが焚かれた。その光を反射して、カードは七色に輝いた。


「普通のカードに見えますが?」

「見た目はそのとおりです。しかしこのカードは、特殊なローションでコーティングされています。私はこれを『ソラリスコート加工』と名付けました」


『ん?w』

『ソラリス?ww』

『なんかやばそうwww』


 記者達もざわめき始めた。


「ソラリスコート加工は、特殊なナノマシンが含まれたローションでコーティングされています。これにより、圧倒的な耐久性、安全性、赤ちゃんにも優しい手触り、汚れ防止など、様々な機能を実現できました。特にすごいのは自己修復機能です。見てください」


 黒乃はカードを真っ二つに折りたたんだ。悲鳴にも似た声が会場から上がったが、杞憂であることがすぐに判明した。


「社長!? カードの折り目が! なくなっていきます!」

「そうです。これまでのカードは汚損に弱く、カードを守るためにはスリーブが必須でした」


 スリーブとは、カードを保護する目的で装着させる透明なフィルムのことだ。カードゲーマーは一枚一枚、場合によってはカード一枚にスリーブ二枚、地道に装着する作業を夜な夜な行っているのだ。


「ソラリスコート加工は、その手間を完全に省いてくれます!」

「黒ノ木社長。すごいですが、その分製造コストがかかるのでは?」

「ふふふふ」

「はい! ご主人様がワロています!」

「普通はそのように考えますが、弊社の編み出した画期的な手法により、コストの大幅カットを実現しました」


 黒乃はスクリーンに謎の空間を映し出した。そこには大量の液体が満ちていた。


「これはなんでしょうか、社長? おや? なにか異様にテカっていますね? ひょっとして、これ全部ローションですか!?」

「お察しのとおり、これはロボローションの海です。場所は秘密ですが、浅草の地下にあります。とんでもない量があります。我々はこれを汲み取り、カードのコーティングに利用しているのです!」


『あかーん!』

『これソラリスの海だろwww』

『423話をご覧くださいww』

『なんでいつもローションが出てくるんだよwww』


 記者達が右往左往を始めた。デバイスでどこかに連絡する者、慌てて走り出ていく者、前に詰め寄ってくる者もいた。


「社長! これは本当に安全なんですか!?」

「えー、安全です。ロボローションは、完全に浄化されていることが確認されています」

「社長! またとんでもないことが起きるんじゃないだろうね!?」

「えー、ご安心ください。なにも起きません」

「社長! また浅草が壊滅したらどう責任を取るんだ!?」

「えー、そんなことは起こるはずがありません。もし起きたら、火星で一人で暮らしてやりますよ! ガハハハハハ!」

「貧乳!」

「誰が貧乳じゃい」

「デカケツ!」

「貴様らーッ!」


 黒乃は長テーブルを弾き飛ばすと、直系4.55メートルの円の中に踊り込んだ。


「文句あるやつは、かかってこんかーい!」

「ご主人様ー!」


『あーあー、また始まったよwww』

『そのための土俵ww』

『なんでいつもこうなるんだよww』


 記者達が土俵になだれ込んだ。それをちぎっては投げちぎっては投げする黒乃山。その痴態は全世界に放映されてしまった。


 結果、MERCOプロジェクトの知名度はうなぎ登り。反面、八又産業の株価は暴落した。


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