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第53話 ロボチューブ生配信です! その一

「さあ皆さん。さあ皆さん。え? おっけー? さあ皆さん」

「進めてください!」

「さあ皆さん、始まりました。『ご主人様チャンネル』第一回目のライブ配信です」


 白ティーおさげ、丸メガネにグラサンをかけた女が画面に登場した。


「えーと、ごめんなさいね。ロボチューブの配信初めてなもんで」


『なにこの配信?』

『初見です』

『誰ですの?』


「あ、もう見にきてくれてる方いますね、三人。ども」

「ご主人様! 自己紹介、自己紹介です!」

「あ、皆さんはじめまして、ご主人様チャンネルの黒男(くろお)です」


『誰だよwww』

『男これ?』

『丸メガネの上からグラサンかけてますわ』


「あ、もうさっそくコメント書いてくれてる方、いますね。ありがとうございます」


『なにするチャンネルなの』

『背高いし男でしょ』


「このチャンネルはですね。あ、女です。女性です。このチャンネルはですね、私、黒男がですね、色々と面白いことをやっていこうじゃないかと、そういうチャンネルになって、あ、女ですよ、そういうチャンネルです」


『だからなにするんだよ』

『胸がないし男でしょ』

『なんのご主人様ですの?』


「あ、コメントありがとうございます。ふっくらもりもりさん、飛んで平八郎さん、おフランスざんすさん」

「ご主人様! 企画いきましょう!」

「あ、ではですね、はい、さっそく企画の方にいきたいと思います」


『今の声誰?』

『もう一人いる?』

『可愛い声がしましたの』


「あ、います。助手がいます。助手のメル蔵(めるぞー)です。ではですね、最初の企画がこれ」

「デデン!」

「メントスロボコーラ〜!」


『なに今の効果音www』

『メントスコーラって百年前のネタじゃん』

『今きました』


「メントスロボコーラはですね、あ、生え際にカレー粉さん、ゆっくりしていってください。メントスロボコーラはですね、普通のメントスコーラではありません。コーラではなくてね、ロボコーラを使いますので」


『ロボコーラってなんですの?』

『この人男?』

『メントスの方はロボじゃないのかよ』


「はい、用意したこのロボコーラ500mlの蓋を開けまして、はい、こちらのメントスをこの中にですね、入れますとブワーって噴き上がるというものですね、あ、女ですよ」


『……』


「あれ? コメントこないな。みんないるのかな? まあ、じゃあやっていきましょうか。メントスをロボコーラに入れて、飛び出してきたコーラを全部飲めるかチャレンジー!」

「パフパフパフ!」

「じゃあ、メントスを入れます! よし、入れますよ。さんにー、よし、今だ、さんにー、よし!」


『はやくしろよ』

『ロボコーラってなんですの?』

『いけ!』


「はい! 入れました! ガボガボガボ」


 勢いよく飛び出したロボコーラを口で受け止めようとしたが、すぐに口から溢れ出し、コーラが部屋中に飛び散った。


「ガボボ! ゲホッゲホッ!」

「ご主人様! 部屋が!」


『アホやwww』

『は? 意味わからん』

『これなんですの?』

『www』


「ハァハァ、あかん。無理だこれ、無理です。皆さん無理でした。勢いが、すごいから、ハァハァ、無理です」

「これ部屋はどうするのですか! だからシートを張ってくださいと言ったのに!」

「いやだって、いけると思ったから。ゲホゲホ」


 画面にメイド服姿のメル蔵が現れ、雑巾で床を拭き始めた。頭には紙袋を被っている。


『これメル蔵?』

『メイドロボじゃん!』

『でっか』


「メル蔵、カメラに写ってるよ。うわ、視聴者が一気に百人増えた。メントスロボコーラすげぇ」


『違うわwww』

『なに言ってんだ、この貧乳』

『おっぱい! おっぱい!』

『でっけぇー!』

『この人男?』


「よしよし、メントスロボコーラ、だい、せい、こう〜!」

「チャララーン!」


『この効果音なんなのwww』

『おっぱいがデカすぎてキモい』

『ロボコーラってなんだったんですの?』

『この人男性?』

 

「あ、浅草の大仏さん、ニコラ・テス乱太郎さん、きてくれてありがとう。踊るカツオ節さん、私は女ですよ。はい、ゲホゲホ、次の企画いきます。次、なんだっけ?」

「ロボヤングです! ロボヤング!」

「あ、そうそう。次の企画は〜、これ!」

「デデン!」

「激辛ロボヤング一気食いチャレンジ〜!」

「パフパフパフ!」


『また百年前のネタかよ』

『ロボヤングってなんですの?』

『もうメル蔵の出番なし?』

『おっぱいと聞いて飛んできましたw』


「はい〜、この企画はですね、激辛ロボヤングを何秒で食べられるかというですね、あ、金的ザムライさん、いらっしゃい、楽しんでいってください。ええ、ロボヤングのタイムアタックですね」


 メル蔵はお湯を入れたロボヤングを黒男の前に差し出した。


「はいこれ、もう三分経ってるのでね。はい、お湯を捨てます」


 黒男は立ち上がり、背後の流しにロボヤングのお湯を捨てた。ベゴン!とシンクが音を出したのにビビり、黒男は麺を少しこぼしてしまった。


「やべ。びっくりして中身こぼした、アチチ」


『www』

『アホだろwww』

『帰ります』


「大丈夫です。中身はちゃんと戻しましたからね、はい」


 黒男はカメラの前に座り、添付の袋を開け、ロボヤングに激辛ソースをかけた。


「はい、激辛チャレンジなのでね、このとおりソースは全部、全部入れますよ。あれ? この袋は先入れかやくじゃん。メル蔵!」

「ごめんなさい! 入れ忘れました!」


『メル蔵www』

『やらかした』

『メル蔵可愛いよ』


「まあいいよ。もう先入れかやくを後入れしちゃいます。なんつてね」


『……』


「あれ? コメント欄が更新されてない? てかさっきまで視聴者百人いたのに、今十人しかいない。みんなどした? あ、僕のドリルはチンチンチンさんいらっしゃい。あ〜目が痛い。激辛ソースで目が痛いです。私は激辛はね、意外に、はい、意外に強いんですよ。池袋の汁なし担々麺も完食しましたし」


『いいからはやく食えよ』

『ロボヤングってなんですの?』

『この人男なの?』


「それではね、そろそろいきますか。あ、女です。メル蔵、タイマーの準備いい? メル蔵はタイマーを内蔵してますからね。メル蔵内蔵つてね」


『……』


「あれ、やっぱりロボチューブの調子悪いのかな。コメント欄が更新されてない。まあいいか、じゃあいきますよ。メル蔵、スタートの合図よろしく」

「ご主人様、いきますよ。さん、にー、いち、スタート!」


 黒男はロボヤングを手に持ち、容器の中に顔を突っ込む勢いで麺を啜った。


「ブバッ! ゲホッ! ゴホッ! 辛い!」


 黒男は口の中から麺を吐き出した。カメラの後ろに座っていたメル蔵の顔に直撃した。


「ぎゃあ! 顔にかかりました! 目が! 目に入った! 痛い!」


『www』

『やると思った』

『汚いですの』


「ゲホゲホ! 辛い! ズボボ!」


 黒男は必死に麺を啜るが、またもや吹き出してしまった。


「辛い! なに……なにこれ! 池袋の汁なし担々麺より辛い! 池袋は全部、完食できたのに。池袋の!」


『池袋はどうでもいいだろwww』

『マジ汚ねえw』

『¥3000。初見です。これで美味しい焼きそばでも食べてください』


「ゲホッ! ゲホッ! 炙りカルビブーさん、ゲホッ! 三千円のロボチャット、あり、ありがとうございます! ハァハァ」

「ご主人様! 水です!」

「メル蔵ありがとう、ハァハァ」


 黒男は水を一気飲みしたが、またもや吹き出してしまった。


「ブー! 辛い! これトムヤムクンだ! グエー! 喉が焼ける!」


『メル蔵の復讐w』

『さすがにトムヤムクンは気づけ』

『男の人?』


「喉がやばい! これ、人間が食べたらダメなやつでは? ねえメル蔵。これ、人間用なの? 女です女! よく見て! 女でしょ!」

「ロボヤングですので、ロボット用ですね」

「なんでそんなの食べさせるの!」


『自分で勝手に食ったんだろwww』

『メル蔵悪くない』

『自業自得ですの』


「ハァハァ、それでは今日の配信はこれで終わりたいと思います。はい、チャンネル登録、ロボだねボタンのクリック、お願いします。それでは皆さん、次回の配信でお会いしましょう」


(軽快なBGM)


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